日々是思考〜組織のマネジャーのための学びの場〜

「マネジメントの本質を学ぶ、考える、実践する」 このポッドキャストは、組織のマネジャークラスの方々に向けて、ハウツーを超えた本質的なマネジメントの情報をお届けします。失敗から学び、適切な対応ができるリーダーシップを楽しく学ぶトーク番組です。Apple Podcast/Spotify/Amazon Musicで隔週火曜AM7時配信中。 ■パーソナリティ 大森寛明について IT企業の役員を歴任し作曲家/編曲家としても活躍。クリエイターと経営、理論と実践の間を自由に行き来しながら、マネジメントの魅力を探求しています。 《Xアカウント》 @flickertone ■番組へのお便り ぜひ感想をお寄せください! ⁠https://forms.gle/GRieST81bdhErH1x9⁠

世界を嘆く前に、ヴィルトゥを発揮せよ——中世イタリアが生んだ君主:君主論④

君主論シリーズ④チェーザレ・ボルジアが戦った条件は、彼が作ったものではありません。彼が生まれる210年前、1265年に教皇クレメンス4世がナポリ王国をアンジュー家に授けました。だからナポリの王冠は教皇が授けるものになり、フランス王が武力で奪っても正統な王にはなれなかった。彼が生まれる118年前、1357年の法で、教皇庁は土着の領主たちを「教皇の代理」として法的に認めました。上納金と軍役の代わりに実質の自治を認める、という妥協です。だからロマーニャの領主は反逆者ではなく契約相手で、討伐ではなく契約を切る手続きが必要だった。その前の100年以上、教皇はアヴィニョンにいて、さらに複数に分裂していました。だからローマの支配は崩壊し、地方は自立していた。そして彼が19歳のとき、フランス王がアルプスを越え、教皇はサンタンジェロ城に籠って自分の要塞を明け渡しました。軍隊を持たない権威の限界を、彼は目の前で見ています。——どれ一つ、彼の責任ではありません。教皇が世襲できないことも、彼が選んだわけではない。だから父が死ねば全部消える。その期限も、与件でした。マキャヴェッリの言葉で言えば、これがフォルトゥナです。自分では動かせない、外から来る条件の総体。では彼は、その盤面で何をしたのか。1502年10月、雇っていた傭兵隊長たちがまとまって離反します。町を失い、野戦でも負けた。その状態で彼は、他国の使節にこう言いました。「破産者たちの会議だ」「奴らをあしらっているだけだ。私は自分の時を待つ」。そして三ヶ月後、一度も戦わずにその反乱を終わらせています。これがヴィルトゥです。第25章にこうあります。「人間の事績の半分は運命が支配するが、残りの半分は人間の力によって制御できる」。この回で扱った記録原典マキアヴェッリ『君主論』——第6章(四英雄/武装した預言者)、第7章(チェーザレ/レミッロ/教皇選出の誤り/「彼は私に語った」)、第11章(教会君主国)、第12章(1494年「チョークを手に」)、第25章(フォルトゥナ/堤防)マキアヴェッリ『ヴァレンティーノ公がヴィテロッツォ・ヴィテッリ、オリヴェロット・ダ・フェルモ、パオロ殿、グラヴィーナ公オルシーニを殺害した方法についての記述』(1503年)マキアヴェッリ使節書簡——1500年8月(第12番、「セル・ニヒロ」)、1502年12月31日(セニガッリア発)制度・文書1357年の教皇領基本法(代理領主の承認。1816年まで存続)1499年の教皇勅書(上納金不払いを根拠とする代理領主の罷免)1454年ローディの和/1495年3月31日の対仏同盟評伝・二次資料Sarah Bradford『Cesare Borgia: His Life and Times』(1976)——チェーザレの人物像(無言と多弁の落差、夜通しの活動と数日の沈黙)はマキャヴェッリの観察としてこの評伝が伝えるものRafael Sabatini『The Life of Cesare Borgia』(1912)——「破産者たちの会議」「今年の星回りは反乱者に不利らしい」の二つの言葉はこの評伝が出どころ塩野七生『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』——冒頭の「イタリア?」の場面。および三ヶ月の処理の流れ全体マリオン・ジョンソン『ボルジア家——悪徳と策謀の一族』海保真夫訳(中公文庫、1987年)——一族の通史。教皇領の枠組みの中でボルジア家が何をしようとしたかという視点※注記:原典の引用は英訳(Marriott 訳ほか)からの拙訳を含みます。河島英昭訳(岩波文庫1998)との逐語照合、および使節書簡の伊語原文との照合は未実施です。参考書籍マキアヴェッリ『君主論』河島英昭 訳(岩波文庫、1998年) ISBN 978-4-00-340031-9河島英昭による定番の新訳。本シリーズが底本として参照する原典。岩波書店 公式:https://www.iwanami.co.jp/book/b248711.html鹿子生浩輝『マキァヴェッリ ――『君主論』をよむ』(岩波新書、2019年) ISBN 978-4-00-431779-1『君主論』を時代背景と原典に即して読み解く入門書。ヴィルトゥ・チェーザレ・傭兵論を扱う本エピソードの副読本に最適。岩波書店 公式:https://www.iwanami.co.jp/book/b452029.html塩野七生『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』(新潮文庫/新潮社)本エピソードが参照した主要な一冊。都市国家を統一して自らの王国とする野望を抱いた若者としてチェーザレを描く。冒頭で引用した「イタリアの不和の源を滅ぼしたのだ」「イタリア?」「そうだ、イタリアだ」の場面はこの本に描かれたもので、番組内でもそう述べている。マジョーネ同盟の危機をどう処理したかという本エピソードの背骨(オルシーニの懐柔 → 時間を稼ぎながら傭兵を雇う → 同盟を解体 → フランス軍を返す → レミッロの処刑 → 恭順 → セニガッリア)も、この本の叙述の流れに沿っている。なお調べたところ、この流れの大半はマキャヴェッリ自身の『記述』で裏づけられる。 物語として読ませる筆致なので、会話の再現部分は他の資料と併せて確認するのが安全。新潮社 公式:https://www.shinchosha.co.jp/book/118102/マリオン・ジョンソン『ボルジア家——悪徳と策謀の一族』海保真夫 訳(中公文庫、1987年/中央公論社、1984年) ISBN 978-4-12-201439-8本エピソードが参照したもう一冊。原著は Marion Johnson, The Borgias(1981年)。一族全体を通史として扱う評伝で、ロドリゴ(アレクサンデル6世)の教皇選出からチェーザレの失墜までを一本の家系の物語として追える。チェーザレ単独の評伝より、「教皇領という枠組みの中でボルジア家が何をしようとしたのか」という本エピソードの視点に近い。

09-07
47:41

チームを俯瞰せよ——同じ手がいつも通用する訳ではない:君主論③

君主論シリーズ③同じ研修を受け、同じことを教わった二人の新任マネージャーがいました。「まずは傾聴から」——マネジメント研修で必ず出てくる、あの教えです。一人は、前任者から名指しで後を託された部署のリーダー。もう一人は、社内公募でかき集めたメンバーによる、できたばかりの新設チームのリーダーでした。二人とも、教わったとおり数ヶ月間、傾聴に徹しました。半年後、評価は正反対でした。一人は「よく分かってから動いてくれた」と言われ、もう一人は「あの人、何も決めてくれない」と言われたのです。同じ研修、同じ教え、同じ実行。違ったのは、それを当てはめた先だけでした。マキャヴェッリは『君主論』第1章の第一文で、理想の君主像を語る前に、まず国家を「共和国か君主国か」「世襲か新規か」に分類するところから始めています。理想論ではなく、診断から入る——この発想こそが、なぜ同じ「傾聴」が正反対の評価を生んだのかを解き明かす鍵になります。今回のエピソードでは、この分類の発想を軸に、世襲・新規・混合・市民という4つの組織タイプ(番外として教会君主国も)を、現代のマネジメントの現場に置き換えながら解説します。参考書籍マキアヴェッリ『君主論』河島英昭 訳(岩波文庫、1998年) ISBN 978-4-00-340031-9河島英昭による定番の新訳。本シリーズが底本として参照する原典。岩波書店 公式:⁠⁠https://www.iwanami.co.jp/book/b248711.html⁠⁠鹿子生浩輝『マキァヴェッリ ――『君主論』をよむ』(岩波新書、2019年) ISBN 978-4-00-431779-1『君主論』を時代背景と原典に即して読み解く入門書。歴史編である本エピソードの副読本に最適。岩波書店 公式:⁠⁠https://www.iwanami.co.jp/book/b452029.html⁠⁠番組で取り上げた書籍紹介⁠⁠https://www.valuebooks.jp/shelf-items/folder/84676b46a574170⁠⁠番組へのお便りぜひ感想をお寄せください!⁠⁠https://forms.gle/GRieST81bdhErH1x9⁠⁠

08-24
40:58

なぜ君主論はリーダー論の古典とされるのか?ーー拷問を6回受けた男が最後に記したメッセージ:君主論②

君主論シリーズ②「傭兵に頼る国は、いつか必ず滅びる」——外交官として屈辱を味わい続けたマキャヴェッリが辿り着いた確信です。1505年、彼はフィレンツェを説得し、自国民による市民軍づくりに動き出します。自ら農村を歩いて兵を募り、訓練を監督する。1509年には、その市民軍が宿敵ピサを陥落させ、理論の正しさが証明されました。ここまでは、理想通りでした。ところが1512年、スペイン軍がフィレンツェ近郊のプラートに迫ったとき、マキャヴェッリの市民軍は崩壊します。プロの傭兵部隊の前に太刀打ちできず、プラートは占領され、凄惨な略奪が起きました。この知らせが届いた瞬間、フィレンツェの政権は倒れ、18年ぶりにメディチ家が復権。マキャヴェッリは書記局を解任されます。14年間積み上げたキャリアが、一日で消えた瞬間です。理論が正しくても、結果が伴わなければすべてが崩れる——このエピソードでは、マキャヴェッリが信じた仕組みが現場で機能不全を起こすまでの経緯と、その先で彼を待っていたさらに過酷な展開を辿ります。参考書籍マキアヴェッリ『君主論』河島英昭 訳(岩波文庫、1998年) ISBN 978-4-00-340031-9河島英昭による定番の新訳。本シリーズが底本として参照する原典。岩波書店 公式:⁠https://www.iwanami.co.jp/book/b248711.html⁠鹿子生浩輝『マキァヴェッリ ――『君主論』をよむ』(岩波新書、2019年) ISBN 978-4-00-431779-1『君主論』を時代背景と原典に即して読み解く入門書。歴史編である本エピソードの副読本に最適。岩波書店 公式:⁠https://www.iwanami.co.jp/book/b452029.html⁠番組で取り上げた書籍紹介⁠https://www.valuebooks.jp/shelf-items/folder/84676b46a574170⁠番組へのお便りぜひ感想をお寄せください!⁠https://forms.gle/GRieST81bdhErH1x9⁠

08-10
26:24

政治を「神の秩序」から切り離した男—マキャヴェッリが犯した最大のタブー:君主論①

君主論シリーズ①「社内政治、嫌いですか?」——そう聞かれて、反射的に「はい」と答えたくなる人は多いはずです。でも実際の職場では、要領よく立ち回る人が評価され、正論を言い続けた人がなぜか孤立していく場面を、誰もが一度は見ているのではないでしょうか。「正しいこと」と「うまくいくこと」がなぜか一致しない——この誰もが薄々感じている現実を、500年前に真正面から書いてしまった人物がいます。ニッコロ・マキャヴェッリです。彼の著書『君主論』は、のちにカトリック教会の禁書目録に指定され、シェイクスピアの台詞でも「卑劣な悪党」の代名詞として引き合いに出されるほど嫌悪されました。それでも、ナポレオンが読んだと語り継がれ、キッシンジャーは「マキャヴェリ的」と評され、今はシリコンバレーの経営者まで手に取る——500年にわたって読み継がれてきた本です。なぜこの本は、これほど長く私たちを揺さぶり続けるのか。今回のエピソードでは、その謎を解く手がかりとして、マキャヴェッリが生きた「世界」——神が定めた秩序を誰もが信じていた中世の世界観から、その秩序が崩れていく過程まで——を一緒に辿ります。参考書籍マキアヴェッリ『君主論』河島英昭 訳(岩波文庫、1998年) ISBN 978-4-00-340031-9河島英昭による定番の新訳。本シリーズが底本として参照する原典。岩波書店 公式:https://www.iwanami.co.jp/book/b248711.html鹿子生浩輝『マキァヴェッリ ――『君主論』をよむ』(岩波新書、2019年) ISBN 978-4-00-431779-1『君主論』を時代背景と原典に即して読み解く入門書。歴史編である本エピソードの副読本に最適。岩波書店 公式:https://www.iwanami.co.jp/book/b452029.html番組で取り上げた書籍紹介https://www.valuebooks.jp/shelf-items/folder/84676b46a574170番組へのお便りぜひ感想をお寄せください!https://forms.gle/GRieST81bdhErH1x9

07-27
26:31

#93 ベテランが去る日、組織は何を失い、何を得るのか|縮む社会の設計図④

ベテランが去るとき、組織に何が起きているか。去る前日まで誰も問わなかった問いが、翌月になって浮かび上がる。「なぜこの定例報告は、この流れでやってきたのか」「なぜこのクライアントには、このトーンで話していたのか」——推測するには考えなければいけない。考えるには、言葉にしなければいけない。暗黙知が形式知に変換されるプロセスが、強制的に起動される。ポッドキャストで詳しく語っています。参考資料野中郁次郎・竹内弘高(1996)「知識創造企業」東洋経済新報社 — 暗黙知から形式知への変換プロセス(SECIモデル)。「共同化→表出化→連結化→内面化」の4段階モデルとして定式化。ベテランの退職が「表出化」を強制的に起動するプロセスとして参照Lave, J., & Wenger, E.(1991). Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation. Cambridge University Press. — 実践コミュニティ(CoP)における知識継承の理論的枠組み。新人が周辺的正統参加から徐々に中心へ移行するモデル。「見て覚える・量をこなす」OJTモデルの理論的背景として参照番組で取り上げた書籍紹介https://www.valuebooks.jp/shelf-items/folder/84676b46a574170番組へのお便りぜひ感想をお寄せください!https://forms.gle/GRieST81bdhErH1x9

07-13
19:31

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