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朗読のアナ 寺島尚正
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朗読のアナ 寺島尚正

Author: roudoku iqunity

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Description

ラジオアナウンサーは言葉を読み語る表現者。

文化放送から、四十年にわたってリスナーに語りかけている寺島尚正アナウンサーがさまざまな作品を朗読します。

その声が紡ぎ出す物語に耳をすませ、語りから無限に広がる想像力、日本語の奥深さをご堪能ください。
207 Episodes
Reverse
 嘉永七年、伊豆の下田に黒船がやってきた。鎖国で世界から遅れをとった日本に危機感を抱いていた吉田寅二郎こと松陰、「何事もならぬといふはなきものを、ならぬといふはなさぬなりけり」の人、世界が見たいと矢も楯もたまらず、乗り込もうともくろみます。日本の歴史にを変えた密航未遂事件の裏側。
 ラジオ方法の開始とともにアナウンサーという職業が誕生します。日本でラジオ放送が始まったのは1925年、公共放送の電波にのせて多くの人に話しかけるノウハウをアナウンサーたちは作っていきます。和田信賢はその黎明期に活躍した伝説的存在の一人です。
 航海中に遭難して孤島に取り残された兄と妹からのメッセージが入った瓶が流れ着きます。幼くして二人きりとなった兄妹は、意外にも過ごしやすく恵まれた環境の島で、手元に残った聖書を唯一の学びの糧としながら、すくすくと成長していきます。時を開けて流されたと思われる瓶のメッセージは、二人に不穏な変化が起きてることを想像させるのです。 We are reading masterpieces of Japanese literature with correct pronunciation.
 家族唯一の働き手として家を支えている若い会社員の女性は、夏休みの間に働きに来ながら不遇な生い立ちを語る大学生の青年に同情し、話し相手となって励まし続けます。夏が終わるころに青年は去り、お互いを思いやる二人の関係を成り立たせていたのは"嘘"であったことがわかります。
 夢についてのメモのような断片が、脈絡があるようで無いようで、次々に登場します。ラジオでメールが読まれていくような感覚で、納得したりなにかを想像させたり、さまざまな視点から夢について考えさせられます。短い文章の一つ一つがなにを示唆しているのか楽しみながらお聞きください。
松林蝙也斉は夢想願流の創始者で伊達藩の剣術指南役をつとめ、落ちる柳の枝を13回も両断したり、小太刀で飛ぶ蠅を斬ったなどの逸話が残る剣豪です。その腕前を楽しめる活劇に、恋を絡めて男女の機微を映し出す山本周五郎ならでは短編です。
 興行の世界には、これまでどんな生き方をしてきたのか見当もつかない不思議な芸を身に付けた芸人が出入りします。時代風俗を切り取る名手の久米正雄が、売り込みに来た芸人の様子を生き生きと描き出します。ちなみに最後に登場する「二丁」という言葉は、歌舞伎由来で開演前の合図をあらわします。
 そのどこにでも生えている野草はまがまがしい効能を持つ一方で、ある一部の人にとっては天の助けに思えるものでもありました。興味本位で交わした雑談が思わぬ方向へと広がっていきます。明治大正から昭和の初め、日本の近代化が進むなかで、とり残された貧しい人々の差し迫った状況が生々しく伝わってきます。
「故郷は遠きにありて思ふものそして悲しくうたふもの」と詠んだ室生犀星は、石川県金沢市で幼少期を送りました。私生児として生まれて養子に出されたため、決して幸福な幼少時代とはいえませんでした。その時代、物心つくまえの幼い犀星が過ごしたなにげない時間の愛しさが伝わってきます。
 思わぬところに現れた見知らぬ人の顔が、自分になにかを語りかけてきます。なにを伝えたいのか、なにをしたかったのか。ことが進んでも謎は深まるばかり。多くの怪談を残した小泉八雲が、とらえどころのない不可思議な出来事を取り上げた掌編です。
 俳人で小説家の高浜虚子は、夏目漱石が「吾輩は猫である」や「坊ちゃん」を発表した俳句雑誌(のちに総合文芸誌)「ホトトギス」の編集者でもありました。漱石の作品掲載にも尽力した高浜について、漱石の弟子の寺田寅彦が書いた一文です。
 騙され裏切られて無一文になり世を拗ね旅に出た男。うらぶれた身なりでどうにでもなれと振舞う男は、今まで出会ったことのない人達に出逢います。禍福はあざなえる縄の如しという言葉のように、金五十両を巡って人間の善と悪を目の当たりにする話です。
 戦前戦後を通して創作を続けた沖縄出身の山之口貘の詩は、今も多くの人の心を捉えています。資産を得ることには無頓着=つまり貧乏で、なにも持たない一人の人間として作品を生む出したことが、時を越える普遍性を作品に与えたのかもしれません。そんな山之口の朗らかな貧乏ぶりがうかがえる作品です。
 国際的な医学博士で、探偵小説にも通じ江戸川乱歩を発掘した小酒井不木の短編です。老婆の往診に呼ばれた医者は、その老婆の家に古くから代々伝わる難病の話を聞かされます。医者は最新の医学でその病気を診断します。なぜ老婆は豹変し、この結末に至ったかの解釈を楽しんでください。
 街で自分そっくりな男を見つけて驚きのあまり後をつけていくと、その男は自分の部屋に入っていきます。同じような姿形、同じような暮らしぶり、個が埋没して自分を失いそうになる時代に、自分であるためには自分だけのお守りが必要となってきます。1960年に発表され、欧米の雑誌にも翻訳掲載された短編です。
 主人公は黒い野良猫が泰然と近所を徘徊する姿を目にします。そのうちに家のなかに勝手に入り込んでくるようになり、ついには祖母に捕らわれます。療養生活を送ってきた主人公は、黒猫の周囲を意に返さず孤塁を守るような佇まいに共感を覚えますが、祖母にとってその黒猫は害悪でしかありませんでした。
 お茶を飲もうと口元に引き寄せた茶碗の中に、思いもかけぬものが現れます。不思議は何のかかわりもなく突然に、身に降りかかってくることがあります。理由も因縁も描かれていないこの短編を完結させるのは、あなたの想像力です。
 満員電車で座ることの出来なかった主人公は、車内を観察しながら、席に着くべき人や譲るべき人について思いを巡らします。他人の自分勝手な態度に立腹しますが、思いやりや優しさを失わずに過ごしていくことはそう簡単ではありません。正しくありたいと思っている自分に、醜さを発見し愕然とします。
 日本が近代化に向かうなかで、持つ者と持たざる者の差が開く一方で、労働者階級の意識も高まり連帯して労働条件を変えようという運動が盛んになったころのことです。若く真面目な青年機関士が、薄幸な運命を生きる女と知り合いますが、思わぬ仲間の行動が女の運命を変えてしまいます。
 谷崎潤一郎のマゾヒズム小説のなかでも人気の高い作品です。気難しそうな哲學者蘿洞先は、取材に来た記者の質問になに一つまともに答えず、教職者としての熱意も一向に感じさせません。記者は取材の帰り際に、そんな先生の思わぬ姿を目にします。
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