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PLENUS RICE TO BE HERE

PLENUS RICE TO BE HERE

Author: J-WAVE

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Description

この番組は作家・文献学者の山口謠司が、日本の食文化を通して全国各地で育まれてきた“日本ならではの知恵”を紐解くポッドキャストです。(FMラジオ局 J-WAVE 81.3FM では毎週月曜日から木曜日 15:10〜15:20にオンエア中。)



552 Episodes
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新しい年のはじまり、寒い季節に恋しくなるのが、鍋を囲む時間。火を囲み、同じ鍋を分け合うという、人の温もりを感じさせてくれる一皿です。今年は60年に一度巡ってくる「丙午」の年。江戸時代の火事と恋の伝説、八百屋お七の物語から、かつては“火”と結びつけて恐れられた年でもありました。しかし今では迷信として語られ、私たちは改めて火とどう向き合うかを考える時代にいます。江戸時代から続く、出初め式に込められた祈りのように、今年一年、火を大切に、慎重に扱いながら、あたたかな食卓と穏やかな日々を重ねていきたいものです。
今日は「七草がゆ」の日です。邪気を払い、万病を除くことができます。正月で疲れた胃腸を休めるごちそうでもあります。お正月には書き初めをした方もいると思いますが、私は先日、知り合いのお店で「お品書き」を書くのを手伝いました。献立の内容に合わせて、そのイメージの書体で書き上げたのですが、とても楽しいものでした。七草の「せり・なずな・こぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ」もひらがなで優しく書くと、気持ちまで優しくなっているような気になります。自分がこれから食べようとしているものを書くのもある楽しさがあります。
年末年始に故郷に帰ってふるさとの味を楽しんだ方もいらっしゃるでしょう。ふるさとの味というものは、変わらない味ではなく、離れてみて初めて輪郭がくっきりするものだと思います。年末に故郷で食べた「大村寿司」という押し寿司は、すでに東京の味に慣れてしまった私には、ものすごく甘いものでした。食文化は日本の遺産です。そしてそれは、一人ひとりのふるさとの味でもあります。
「おせち料理」召し上がりましたか?お正月三が日は、神様もお休みなので竃に火を入れない。ということから、お正月は大晦日に作った「おせち料理」を食べて過ごすようになりました。料理に多く砂糖が多く使われているのも、長く保存できるように考えられた知恵なんですね。そして、日本には、昔から「ハレ」と「ケ」という考え方がありますが、「おせち料理」は、お正月という特別な時に食べる「ハレ」の食べ物、一方「ケ」は「日常」を表す言葉で、「ケ」の食べ物といえば、「ごはん」「お味噌汁」といった日常食になります。
12月31日、大晦日(おおつごもり)。おそばをたぐりに参りましょう。東京都内には「砂場」という有名な蕎麦店がありますが、実は江戸発祥ではなく、大阪が発祥です。大阪城築城の際の資材置き場の砂場の近くに店があったことからその名になりました。谷崎潤一郎もおいしいと褒めたお店です。砂場の「ざるそば」は蕎麦の実をみがいてその中心の部分を卵と水であわせて練り上げています。「もりそば」は蕎麦の実全体を使っています。それぞれの味わいがあって楽しいものです。そばは歯で切らず去年から続くいいことをそのまま来年に持っていきましょう。
都会で雪が降ると汚いものを白く隠してくれるようで嬉しい気がします。実は「雪」という漢字は「ほうきで掃くように、降り積もって世の中の汚れを払い清めるもの」という意味があります。日照時間が短く暗い印象のこの季節には、白いものを食べて気持ちを明るくしたいものです。さらに体も温まりたいとなれば「雪鍋」が最適です。ダシの中に具を入れ、大根や蕪をたくさんすって入れると鍋が真っ白な雪に埋もれたようになります。雪で真っ白くなった世界で、真っ白い雪鍋をいただいて、まっさらな気持ちで新年を待つのもいいかもしれません。
この時期食べたくなる「白い食べ物」といえば「イカ」ですね。そして、冬は「紋甲イカ」、表面を少し炙ると良い香りがして、さらに美味しくなります。今年の春、富山に行った時に「黒作り」と呼ばれる「イカ墨」を混ぜた塩辛を頂きました。大根おろしに柚子が絞ってありました。とっても美味しかったです。ちなみに「イカ墨」が入っていない「塩辛」は「赤作り」という呼ぶそうです。そして「墨」といえば、お正月は「書き初め」ですね。来年の抱負は「北船南馬」。今年以上に、全国色々な所を絶えず旅して動き回りたと思っています。
年末年始、めでたい時間に食べたくなる料理のひとつが「鯛飯」。日本の食文化らしい祝いの一皿です。広島・鞆の浦は、江戸時代から鯛の名産地として知られる場所。頼山陽の父、頼春水が記した鯛飯のレシピも、この地で獲れた鯛を用いるものでした。そして、その鯛飯に合わせたい酒として名を挙げられるのが、兵庫の銘酒「剣菱」。瀬戸内の明るい空の下、食と酒と歴史が静かにつながる、広島の一夜です。
江戸時代、漢詩・文学の世界で大きな影響を残したと言われる頼山陽。広島出身の彼は、当時から養殖されていた広島の牡蠣が大好きでした。京都に移り住んでも広島の牡蠣を絶賛宣伝し、漢詩にまでしています。とれたての新鮮なものはそのまま食べてもおいしいが、頼山陽は「桂皮(シナモン)」と「生姜」をつけて食べていました。実際にやってみると、これが想像以上に牡蠣に合いました。広島の養殖牡蠣を「一つ一つが峰から出てきた瑞雲のようだ」と称し、「故郷の美味は筆記になし難い」とまで頼山陽は言い募っていました。
広島でとてもおいしいあさりをスープでいただきました。「大野あさり」という広島の地域ブランドになっている名産品です。宮島(厳島)とその対岸にある廿日市市の間の水路で育てられます。なにこれと驚くほど味が濃いスープがとれます。はまぐりが身を食べるものなら、あさりはスープを取るものともいえます。「大野瀬戸」というミネラルを豊富に含んだ海で作られる「大野あさり」。このあさりで作ったパスタ「ボンゴレ・ロッソ」「ボンゴレ・ビアンコ」は最高においしいものでした。
広島の名産品と言えば「おしゃもじ」。「杓子(しゃくし)」とも呼ばれていますが、「おしゃもじ」という名前は、昔、宮中に仕える女官が使っていた「女房言葉」から来ています。「灼(しゃく)」に「お」と「もじ」をつけて「おしゃもじ」となりました。「おしゃもじ」を打ちならすと「カチカチ」という音がします。これが「勝ち」を連想させて縁起が良い!となって、必勝祈願の験担ぎとしても使われるようになりました。広島の野球の応援で「おしゃもじ」を打ち鳴らす様子は、もうおなじみですね。
宮城県・石巻は“橋の町”。橋の上から眺める水面はきらきらと光り、街の内側を映し出すような風景が広がります。そんな港町で味わったのが、大鍋で炊き上げる魚介たっぷりのパエリア。海の幸が豊富な石巻では、売り物にならない魚介も生かしながら、この料理が自然に街の食文化として根づいてきました。サフランの香りとともに広がる一皿のパエリア。その奥には、石巻とスペインをつなぐ、遠い時代からの交流の記憶が息づいています。
近所にフランスから出店されているおいしいパン屋さんがあります。そこで必ず買うのが「パンオレザン」。レーズン入りの「ぐるぐる巻きのパン」です。石巻という地名も石がぐるぐる巻くと書きます。石巻出身の有名人に、漫画家の石ノ森章太郎さんがいます。北上川の河口近くには「石ノ森萬画館」がありました。石ノ森さんの代表的な作品に「仮面ライダー」がありますが、その変身ベルトもぐるぐる回っていました。石巻でぐるぐる巻の「パンオレザン」を食べてみると、ぐるぐるぐるぐる、なんだか不思議な世界に巻き込まれていくような気持ちになります。
北上川の石巻市の隣の「登米地方」では、「ハット汁」という郷土料理があります。ごぼう、干し椎茸、にんじん、大根などとともに、小麦粉を耳たぶほどの硬さに練って、ひと口大に薄くちぎったものを入れた「すいとん」に似た料理です。ハット汁の「はっと」は「ご法度」が語源だとも言われています。米どころでありながら、コメを食べることを「ご法度」と禁じられた農民が、米の代わりとして、おいしく食べられる料理を作ったことからとも言われています。ありあわせの素材で作ることができる「ハット汁」、寒くなった今、おすすめです。
石巻で「ずんだ」のお菓子を食べました。「ずんだ餡」の材料といえば「枝豆」ですが、「青ばた豆」でも作るそうです。この「青ばた豆」は、東北では出汁に浸して食べることもあるとか。「青ばた豆」と「枝豆」それぞれ味わいがあって美味しいので、食べ比べてみるのもおすすめです。
松島湾に大きな満月が昇る夜、思い浮かんだのは“卵”という万能食材。茶碗蒸し、オムレツ、オムライス、プリン──形を自由に変えながら、人の暮らしに寄り添う味わいです。そんな卵料理の中でも、意外と一年に一度しか食べないという声も多い「伊達巻き」。そのルーツには、伊達政宗がローマへ遣わした支倉常長が持ち帰った“ロールケーキ”があるとも言われ、卵と魚のすり身を使った和洋折衷の知恵が詰まっています。
エンヤドットエンヤドットの掛け声でおなじみ、松島を代表する民謡「大漁唄い込み」。カツオ漁などの大漁を祝う歌でした。今では珍しくなったと言われる「ナマリブシ(生利節)」で、松島のカツオをいただきました。通常のかつお節か何度か燻製を繰り返して作るのに対して、「ナマリブシ」の燻製は一度だけ。だからなのか、カツオそのままの味が、芯のあたりに残っていて絶品でした。松島ではこうしてカツオをいつでも食べられるように工夫を凝らしていました。
松島に行くと「笹かまぼこ」が売っています。かまぼこはフランスの「シャキュイットリー」に匹敵するものだと思います。ハム・ソーセージ・やテリーヌ。肉に火を入れた加工食品のことです。かまぼこもさかなに火を入れてつくっていることからいわば「ポワソン・キュイットリー」です。「笹かまぼこ」は、松島ゆかりの伊達家の家紋「竹に雀」の竹の笹にちなんで名付けられたそうです。その焼き目がつけられたかまぼこは、蒸したかまぼことは違う、見た目のおいしさも醸し出しています。
松島で、お米を使った「紅蓮」というお菓子を頂いて来ました。炭火で焼くとグネグネと生き物のように動いて、表と裏をひっくり返すとちょっと焦げ目がついて、いい香りがします。まさに手間ひまをかけて作られているからこそ味わい深いお菓子なんですが、実はこの「紅蓮」は鎌倉時代の尼さんの名前から付けられています。そこにはどんな物語があるのでしょうか?
宮城県・塩釜で訪れた蕎麦店「しおがま庵」店の向かいに立つ大鳥居は、東日本大震災の津波が“そこで止まった”場所。その4メートル下にあった酒蔵・阿部勘さんは津波で大きな被害を受けましたが、見事に復活。こちらでは、縁起の良い「ミミズク」と「鶏」のラベルを2枚重ねたお酒を販売しています。めでたさを取り込み、災厄を乗り越え、日々にメリハリをつける。そんな塩釜の知恵は、お酒の一滴にも宿っています。
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