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Author: Morgan Stanley

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モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。


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モルガン・スタンレーMUFG証券日本株ストラテジストの中澤翔が、日本株の現在の反発を牽引しているセクターと、上昇が単なる循環的回復にとどまらない可能性について解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 皆さま、こんにちは。「市場の風を読む」へようこそ。モルガン・スタンレーMUFG証券日本株ストラテジストの中澤翔です。本日は、高市政権が今後数年にわたり日本株市場をどのように方向付ける可能性があるのかについてお話しします。本日は、東京時間で3月17日火曜日の午後3時です。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2025年10月21日、高市早苗氏は日本初の女性首相に就任しました。防衛力の強化と経済の強靭化を重視する保守政権の誕生です。そして2026年2月に本格始動した高市政権は、日本経済の構造的転換の始まりを明確に示すものとなりました。市場はこれに迅速に反応しています。過去数か月間で、政権が掲げる17の重点戦略分野へのエクスポージャーが高い銘柄群は、TOPIXを約15%ポイント上回って推移しました。これほどのパフォーマンス格差は、単なる循環的回復を超えた動きを示唆しています。資本は、構造変化を織り込み始めていると考えられます。まず、日本政府は経済安全保障およびサプライチェーンの強靭化を一段と重視しています。これは単なる政策変更ではなく、根本的な前提の転換です。これまでのグローバル経済では、「効率性」が最優先されてきました。ジャスト・イン・タイム型の供給網や、グローバル最適化モデルがその象徴です。しかし、パンデミックや世界の多極化の進展を受けて、考え方は大きく変わりました。現在は、「冗長性」と「自律性」が重視されています。この転換は、防衛・宇宙、先端素材・重要鉱物、造船、サイバーセキュリティといった分野に直接的な影響を及ぼしています。構造的変化の第2の柱は、AIおよびコンピューティング革命です。一部の投資家はAIへの過剰投資を懸念しています。しかし、AIの技術的ブレークスルーが進めば、リターンは非線形的に拡大する可能性があります。重要なのは、AIは単なるソフトウェアではないという点です。データセンターの冷却設備、通信ネットワーク、拡張された電力網、重要鉱物など、広範な産業基盤を必要とします。これは「産業スタック全体の高度化」と言える動きです。さらに長期的には、世界のヒューマノイドロボット市場は2050年までに年間7.5兆ドル規模へ拡大する可能性があると弊社のグローバルロボティクスチームはみています(Robotics: Humanoid Horizons: What to Watch for 2026)。これは、2024年時点での世界上位20社の自動車メーカーの合計売上高(約2.5兆ドル)の約3倍に相当します。産業構造そのものを塗り替えるポテンシャルを秘めています。日本市場を再形成する第3の力はインフラです。2026年度予算では、国土強靭化関連支出が5兆円を超えています。老朽化インフラの更新や自然災害の激甚化を踏まえると、強靭化投資は経済安全保障と直結します。港湾、物流、通信システムは、戦略的資産としての性格を強めています。また、1980年代後半のバブル期に建設された建物が建て替え時期を迎えつつあり、長期的な建設サイクルは拡張局面に入りつつあります。これは一時的な需要増ではなく、持続的な需要基盤を示唆しているとみています。重要なのは、株式市場におけるリーダーシップの広がり方です。一般に、物色は川上から川下へと波及します。素材や電力インフラから始まり、AI、防衛・通信へと広がり、最終的には創薬、量子技術、サイバーセキュリティ、コンテンツなどの応用分野へと波及する傾向があります。直近3カ月で最も高いリターンを示しているのは、先端素材・重要鉱物、および次世代電力・送電インフラです。一方、サイバーセキュリティやコンテンツ関連は出遅れていますが、産業ネットワーク上の結び付きは強く、物色が広がる局面では重要な役割を果たす可能性があります。真の制約要因は政治的反対ではありません。市場そのものです。投資家がこれを一時的な景気刺激策と捉えるのか、持続的な利益成長と評価するのかによって、バリュエーションは大きく変わり得ます。私たちは、日本株市場は単に上昇しているのではなく、経済安全保障、AIインフラ、国土強靭化を軸に再編成、リオーガナイズされつつあると考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
ボラティリティと原油価格が上昇する一方で、FRBの政策は緩和方向にあります。弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、足元の株式市場の下落がなぜ2025年3月を思い起こさせるのか、そして、なぜ強気シナリオが依然有効と考えているのかを解説します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが 株式市場が、ここ数か月にわたって直近のヘッドラインをどのように消化してきたのかについてお話しします。 このエピソードは3月16日 にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 先週のポッドキャストでは、初めて流動性が引き締まり始めた昨年去年秋に、現在の株式市場の調整局面が開始したことを、弊社は明確に認識していると申し上げました。資金調達市場がその引き締めによるストレスを示し始めるとすぐに、FRBはバランスシート縮小プログラムを当初の想定より早く終了すると発表しました。それに続いて、12月には資産購入を再開しました。この政策転換を受けて、1月の株式市場のパフォーマンスは改善しました。 同時に、米ドルは大きく下落し、新興国市場や、金・銀、産業用金属、原油、メモリ株といったコモディティ関連セクターにリターンが集中しました。しかし最近では、ドルが反発し、これらの分野は明らかに勢いを失っています。重要なのは、2週間前のイラン攻撃以前から、株式市場の調整は、その期間と株価の両面で、既にかなり進行していた点です。実際、ラッセル3000構成銘柄のうち50%は、過去52週間の高値から20%下落しています。現在は多くの点で、昨年去年とよく似た状況にあると弊社は考えています。昨年去年は、2月から3月初めにかけて主要株価指数の下落に弾みがつきました。当時の懸念材料は関税でした。しかし、現在と同様、株式市場は既に数か月前から低調に推移しており、その原因は関税とは関係のない懸念でした。より具体的に見ると、市場が懸念していたのは、DeepSeek、移民規制、そしてDOGEに関連するリスクでした。そこに最後の一撃として関税が加わったのです。今回は、イラン情勢がエスカレートする以前から市場では、AIによる労働市場の混乱、プライベートクレジットのデフォルト、そして流動性の引き締まりといった点が懸念されていました。興味深いことに、ただし驚くには当たりませんが、原油価格とボラティリティは1月から上昇し始めており、市場がこうしたリスクを先取りしていたことを示しています。通常、調整局面は、最も良好なパフォーマンスを示してきた銘柄や、最も質の高い株価指数が打撃を受けるまで終わりません。そうなるには多くの場合、全面的な投げ売りが必要になります。昨年、その役割を果たしたのがリベレーション・デーでした。今回は、イラン情勢の緊張と、1バレル100ドルを超える原油価格の持続的上昇への懸念が、それに相当します。今年は、S&P500が昨年4月以来最悪の2週間を記録したことで、この最終的な調整局面が既に始まっていると弊社は見ています。誤解のないように申し上げますと、私は、いくつかの理由から、今回の投げ売りや下落は、昨年去年ほど深刻なものにはならないと考えています。第1に、昨年去年の一連の出来事は、当時弊社が「ローリング・リセッション」と呼んでいた局面の終盤で起こり、実際、その景気後退の終わりを示すものとなりました。したがって、2025年4月の安値時点で、株式市場は景気後退を織り込んでおり、これが、S&P500が高値から20%下落した理由でした。第2に、企業収益と経済成長を取り巻く現在の環境は、1年前よりもはるかに良好です。第3に、財政政策の支援も現在の方が大きくなっています。具体的には、税還付が前年同期を17%上回っており、個人所得税減税の効果が表れています。「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」に盛り込まれた税制優遇措置によって、設備投資が増えるはずです。さらに、FRBは2025年にはバランスシート縮小を進めていましたが、現在は資産購入を通じて、はるかに緩和的な姿勢を取っています。結論として、株式市場は、いまニュースの見出しになっている多くの懸念材料を、ここ数か月にわたって消化してきました。これは、今回の調整局面が始まったばかりというより、むしろ終わりに近づいていることを意味すると弊社は考えています。投資家は、次の悪材料が出た際に最後の投げ売り局面があれば、買いに動けるよう備えておくべきでしょう。その最後の下押しを引き起こし得るシナリオの一つは、過去のデータに基づくインフレ指標を根拠に今週FRBがよりタカ派的な姿勢を示すことと、3つのデリバティブの満期が同時に到来する「トリプル・ウィッチング」が重なるケースです。あるいは、米国と中国の貿易協議が延期、または中止になるケースも考えられます。何がきっかけになるにせよ、市場の安値は高値よりも速く形成されます。したがって、強気相場の再開を見据えて、リスクを積み増せるよう備えておいてください。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
地政学的な懸念があるにもかかわらず、歴史、テクニカル要因、そしてファンダメンタルズは向こう6ヵ月間の米国株式の動向が意外に明確であることを示唆しています。弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがその理由をご説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、イランでの紛争と、それが株式にとってどんな意味を持つかについてお話しします。このエピソードは3月9日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。足元の株式市場の調整は2月に始まったとお考えの方がほとんどでしょうが、私に言わせれば、この調整が始まったのは明らかに[1] 去年昨年の秋、流動性がタイトになり始めたときです。実際、私は去年 9月に、FRBは自らのバランスシートを十分に活用していない、これでは金融が今後引き締まって株式市場に一定のストレスを及ぼすだろうと警鐘を鳴らしていました。翌10月に入るとそのストレスが、株式市場の最も投機的な部分と暗号通貨の急激な調整という形で顕在化しました。するとFRBはバランスシートの圧縮を予想より早く打ち切り、資産購入を再開するという対応を取りました。このことが1月の力強い株価上昇につながりました。この調整は時間的にも株価水準的にもかなり進んだ状態にあります。現時点で30%、あるいはそれ以上下落している銘柄も少なくありません。その一方で株価の上昇率・下落率のばらつきはまれにみるほど大きく、勝ち組と負け組の間には20数年ぶりの大差がついています。市場はいつものように、今では誰の目にも明らかな懸念の多くを予見することで、歪みを正したのです。では、株式投資家がいま抱いている疑問は何か。それは6ヵ月後の世界はどうなっているのか、そしてよりよい未来を想定し始めてもよいレベルまで株価は割安になっているのか、という2点でしょう。簡潔に答えるなら、株価はまだそこまで割安ではありません。しかし、購入したい銘柄のリストは用意しておきましょう。私たちは今いろいろな意味で、去年昨年と非常によく似た状況に置かれています。覚えていますか。去年昨年2月の終わりから3月の初めにかけて、主要な株価指数は下げ足を速め始めていました。あの時期の最大の懸念材料は関税でしたが、今日(こんにち)と同様に株式市場はすでにその前から、関税とは無関係な懸念のために数ヵ月にわたって伸び悩んでいたのです。今日の市場ではAIによる労働市場の混乱、プライベート・クレジットのデフォルト、そして流動性不足の3点が、イラン紛争がエスカレートするかなり前から懸念されています。一般に調整局面というものは、最も優良な銘柄や株価指数が打撃を受けるまで終わりません。そして、そこに至るには、「解放の日」や戦争のようなより大きなショックが必要になるのが通例です。そのプロセスはすでに始まっています。たとえば、S&P500は先週、10月以降で最低のパフォーマンスに終わっています。そしてもう一つ検討すべきなのは、相場のレベルは1年前の水準と結びついている場合が多いということです。この前年同期との比較は、下値支持について考えるとき非常に重要になります。今年の急落を踏まえると、株式市場はあと1ヵ月ほどもがくことになりそうだと私には思われます。このシンプルな考察といくつかのテクニカル指標に基づいて言えば、S&P500指数は4月の初めごろまでに6300に向かう展開になりうると思われます。ファンダメンタルズの好ましい見通しが再び定着しうるのはその後になるでしょう。では、イラン情勢によって原油価格が1バレル=100ドルを持続的に超えることを心配する必要などないのでしょうか。いや、そうではありません。軍事紛争の結果や原油価格の予想は誰にもできないと思われますので、私もあえて試みるつもりはありません。むしろ私は、ロシアによるウクライナ侵攻のときがそうだったように、あと6ヵ月たてば今のような事態も落ち着いている公算が高いのではないかと考えます。重要なのは、原油急騰の原因が供給不足によるものではなく、ホルムズ海峡で物流が阻害されている結果であることです。確かにこの物流の停滞はリアルな制約ではありますが、必要は発明の母と言いますし、解消される公算が大きいでしょう。6ヵ月先のことについて楽観的になれる理由はほかにもあります。まず、企業収益拡大の動きが広がっています。この傾向はまだ続いており、弊社の2026年の見通しにおける重要な根拠の一つでもあります。第2に、米国はエネルギーの面で自立できており、石油ショックに耐える力がアジアや欧州よりもはるかに備わっています。この点にひかれて米国に戻ってくる投資家も出てくるでしょう。そしてもう一つ、企業の設備投資に対する税制優遇措置と、「一つの大きくて美しい法案(OBBB)」法による個人の減税が、短期的には原油高を相殺する好影響をもたらす公算が大きいことが挙げられます。不安材料を一つ挙げるとすれば、それは「質と安全への逃避」が起きて米ドル高が進行し、グローバルな流動性を低下させてしまうことです。まとめますと、原油高と米ドル高は紛争が収束するまで続く可能性が高いでしょう。株式市場の最も脆弱な部分には、すでに大半のダメージが出尽くしている公算が大きいものの、株価指数は依然として不安定で、5~7%下落する余地がまだ残っていると私自身はみています。また機関投資家などに広く買われてきた人気銘柄の株価はこれから2桁の下げを経験する可能性が高く、来月に入って大底を打つ展開もありうるでしょう。相場の底は天井よりも早めに現れる傾向があります。強気相場の年内の再開を見据えつつ、今はリスクへの備えを進める時期だと考えます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社香港・中国運輸およびインフラ・アナリストのチエンレイ・ファンが、パンデミック後の反動的な回復局面から、複数年にわたる拡大局面へと移行しつつある中国の旅行産業について解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社香港・中国運輸およびインフラ・アナリストのチエンレイ・ファンが、中国経済のリバランスにおいて、なぜ旅行が急速に主要なけん引役の一つになりつつあるのか、その見解をお話しします。このエピソードは3月3日 に香港にて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。私は旧正月の休暇で中国本土を旅行し、つい戻ってきたところです。史上最長となった春節休暇の期間中、人々は外に出て歩き回り、探索し、笑い合っていました。国全体が、限られた時間を思い切り楽しもうという熱気に包まれているように感じられました。文化観光部の統計によると、この連休期間中の国内観光消費額は前年同期比で19%という力強い伸びを記録しました。実際、中国の観光産業は、単にパンデミック後の反動的な回復にとどまっているわけではありません。政策面での追い風、人口動態の変化、そして「モノ」から「体験」へと消費が明確にシフトしていることに支えられ、構造的により強い成長局面へと入りつつあります。2030年までに、観光収入は12兆元、米ドル換算でおよそ1兆7,000億ドルに達する可能性があります。これは2020年代半ばから年率11%の成長を意味します。今後5年間で、国内とインバウンドを合わせた累計収入は50兆元、米ドルで7兆2,000億ドル規模に近づくと見込まれます。この規模を考えると、旅行はもはや景気循環に伴う一時的な回復ではなく、中国における消費主導型成長の中核をなす柱になりつつあります。弊社では、観光産業のGDP比率が、2024年の4.8%から2030年にはおよそ6.7%まで上昇すると予想しています。国内旅行が引き続き基盤です。人々は単に再び旅行を始めたのではなく、以前にも増して頻繁に旅行するようになっています。政策も需要を後押ししています。祝日の延長、新たな学校休暇、イベントを軸とした観光が活動を押し上げています。2025年だけでも、およそ3,000件の大規模公演が開催され、延べ4,300万人以上を動員しました。支出面にもその変化は表れています。2025年の国内観光消費額は6兆3,000億元に達し、コロナ前の水準をおよそ11%上回りました。1回あたりの旅行支出はやや減少しているものの、旅行頻度の増加が全体の収入を押し上げています。海外旅行は、第2の成長エンジンとして台頭しています。2030年までに、インバウンド旅行は観光収入全体の16%を占める可能性があります。2025年後半には、主要都市における訪中外国人の増加率が前年比でおよそ30〜50%に達しました。これは、現在では外国人入国者の大半を占めるまでに拡大したビザ免除措置の後押しによるものです。こうした旅行者は滞在期間が長く、消費額も多い傾向があります。アウトバウンド旅行も力強さを増しています。2025年の国際線航空需要は22%増と、国内線の伸びを大きく上回り、現在では航空会社収益において無視できない割合を占めています。人口動態とテクノロジーも、この流れを後押ししています。若年層の消費者は旅行を重視しており、また、多くの貯蓄を持つ高齢世帯も、サービスの質が向上するにつれて支出を増やし始めています。同時に、スマートホテル、バーチャルリアリティを活用した観光施設、データ主導の運営といった取り組みが、顧客体験と支払意欲を高めています。これは単なる繰り越された需要ではありません。政策、人口動態、テクノロジー、そして供給が同時にかみ合い、中国の消費ストーリーの中心に旅行が位置づけられているのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、投資家の間でAIを巡る懸念が高まる中でも、依然として株式市場が成長サイクルにあると考える理由を解説します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが登場します。今回は、AIによるディスラプションを巡る最近の懸念についてお話しします。このエピソードは2月24日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週の市場の底流には不安感が漂っていました。短期的な混乱を招くニュースが相次ぎ、ボラティリティは上昇し、そしてAIによるディスラプションが、再び投資家の会話の中心になりました。しかし、その表面的な不安の裏側で、重要な出来事がありました。S&P500イコール・ウェイト指数が相対的な高値を更新し、「市場の裾野が広がる」という弊社の見方は堅持されました。投資家は一方では、AI主導のディスラプション、設備投資集約度の高さ、そして労働力削減の可能性について懸念しています。他方では、これまで出遅れていた分野に資金が流入し続けており、中央値銘柄の利益成長率は過去4年間で最も力強い水準に達しています。詳しく見てみましょう。まず、AIが雇用喪失につながるのではないか、という懸念があります。しかし、たとえそうだとしても、通常は段階的な移行期間があります。企業が一夜にして労働力を削減することはありません。重要なことに、こうした生産性向上が本格的に実現するには、企業全般が幅広くAIを導入する必要があります。そのためには、エージェント型アプリケーションのレイヤーを構築し、AIを業務フローに統合し、システムやプロセスのトレーニングをやり直す必要があります。これには時間がかかりますし、その意味では、現在はまだ初期段階にあると言えます。次に、現在見られる動きは、大規模な投資サイクルに典型的なものです。市場が奔放な支出ペースに疑問を抱く局面では、ボラティリティが高まります。勝者と敗者をめぐる議論が活発になることで、銘柄間のばらつきも大きくなります。時には市場をリードする銘柄が、急激に入れ替わることもあります。また、今回は1990年代後半のインターネットバブル期とは異なる点があります。現在は、景気回復の初期段階に伴う企業利益の伸びが期待できる環境にあります。2022年から2025年にかけて、実質的には「ローリング・リセッション」とも言える局面を抜けたばかりだからです。そのため、構造的な敗者と見なされる分野から資金が移動する際、長期的なAIの恩恵を受ける銘柄を追いかけるだけでなく、伝統的な景気敏感株にも資金が向かっています。逆風を受けているのは、長期的なサービス志向のセクター、とりわけソフトウエア分野です。こうした分野は、中長期的なキャッシュフローの不確実性に対して敏感です。また、過去10年から15年にわたって投じられてきた多額のプライベートキャピタルが重石になっています。さらに、他にもいくつかの要因があります。小型グロース株、これは市場の中でも恐らく最も長期的な性格を持つセグメントと言えますが、1月下旬、ケビン・ウォーシュ氏が次期FRB議長に指名された頃から下落基調に入りました。主要株価指数がほとんど反応しなかった一方で、より投機的な分野は、FRBのバランスシート縮小に積極的と見られるウォーシュ氏の姿勢を背景に、流動性が引き締まるとの見方に反応している可能性があります。加えて、一般に新しいFRB議長が就任する局面で株式市場のボラティリティは高まりやすい傾向があります。結論として、「ローリング・リカバリーの初期段階」という、弊社のより大局的な見方に変わりはありません。指数全体の動きが不安定に感じられる局面でも、市場の内部要因は下支えとなっています。ただし、季節的に小売需要が弱い時期に入ることや、流動性は十分にあるが、決して豊富とは言えない状況を踏まえると、目先はボラティリティが持続する可能性があります。こうした環境では、質の高い景気敏感株とヘルスケア株を組み合わせた「バーベル型」のポートフォリオが有効と考えます。小型株では、ラッセル2000よりも、質の高いS&P600の方が魅力的に見えます。また、短期的なボラティリティがあれば、一般消費財、資本財・工業、金融といった、選好する景気敏感分野に対するエクスポージャーを増やす好機となる可能性があります。もちろん、リスクは残っています。AIの導入が予想より大幅に加速すれば、労働市場により急激な圧力がかかる可能性があります。効率向上の裾野が広がり、価格決定力が低下するかも知れませんし、政策担当者が設備投資サイクルを減速させるような対応を取る可能性もあります。その一方で、モメンタム投資は資金が集中し、依然として脆弱です。それでも、市場内部からのシグナルは明確です。この局面は、市場が天井を打って下落に転じるというより、景気拡大の初期段階を確認する動きに近いように見えます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社欧州サステナビリティ・リサーチ責任者のレイチェル・フレッチャーが、主要な産業や地域において、AIがもたらす雇用や生産性の急速な変化についてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社欧州サステナビリティ・リサーチ責任者、レイチェル・フレッチャーが、世界の雇用市場にAIがもたらしている変化について解説します。このエピソードは2月20日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。AIをめぐる盛り上がりが、いつになったらデモンストレーションやニュースの段階を超えて、自分の仕事や投資、さらには日常生活に影響を及ぼすのだろうかと思ったことは、どなたでもあるでしょう。弊社の最新のグローバル・アルファワイズAI調査によれば、採用や生産性、職場で求められる技能にAIが影響を与え始めている労働市場を中心に、その転換点が訪れている可能性があります。この調査は、米国、英国、ドイツ、日本、オーストラリアを対象に、AI導入による効果が大きいと弊社が見ている5つの業種で実施しました。具体的には、生活必需品、小売流通、不動産、運輸、ヘルスケア、機械・装置およびサービス、自動車です。調査の結果、過去12ヵ月間で、AIの導入により11%の雇用が削減され、さらに12%のポジションが補充されていないことが分かりました。一方で、18%の新規採用も行われており、これらを差し引くと、世界全体では4%の純減となります。重要な点として、この調査は、少なくとも1年以上AIを導入してきた企業を対象にしています。実際には、調査対象企業の多くが2年以上にわたってAIを導入してきました。そのため、これはAIが雇用に与える影響としては、最も大きな下振れケースを示している可能性がありますが、それでもなお、雇用の混乱が起こり得ることを示す初期のシグナルと言えます。欧州に目を向けると、状況は一様ではありません。英国は、雇用の純減率が8%と、最も大幅になりました。その主因は、他の調査対象国より新規採用が少なかったうえ、補充されなかったポジションが多かったことです。一方、ドイツでは、全体の平均と同水準の4%の純減になりました。英国では、何か他の要因がAIの影響を増幅している可能性があります。たとえば、より高い人件費や、若年層の失業率の高さを背景とした労働市場全般の弱さです。結局のところ、AIの影響とマクロ経済要因をはっきりと区別するのは依然として困難です。欧州における業種別の影響を見ると、自動車業界の雇用の純減率が最も大きく、13%でした。これは、自動車業界の世界平均である10%を上回っています。これらの数字は、長引く販売低迷や、AIを活用したコスト削減を反映している可能性があります。運輸は最も影響が小さく、純減率は3%でした。一方、他の 業種セクターは、概ね6%から7%の範囲に収まっています。欧州企業の中でも、人員削減を進めている企業の上位20%は、より積極的に採用を行っている企業をアウトパフォームしています。これは、投資家が効率性を評価していることを示唆しています。その一方で、人材派遣会社は、AIによる代替が進むことで、成長リスクに直面する可能性があります。生産性については、欧州企業はAIによって10%から11%の改善を報告しており、世界平均の11.5%や、米国の10.8%とほぼ同水準です。なお、欧州はAIのイネーブラーや導入企業に対するエクスポージャーでは米国に後れを取っているものの、導入企業および導入を支える企業は、MSCIヨーロッパ・インデックスの3分の2以上を占めています。ただし、欧州のAI導入企業の株価は、同等の米国の導入企業と比べて、大幅なディスカウントで取引されています。したがって、欧州企業にとっては、AI導入を実際の投資収益につなげ、価格決定力を維持することが極めて重要になっています。次に、米国を見ると、世界全体の雇用は4%の純減だったのに対し、米国ではAI関連の採用により、2%の純増となりました。弊社の米国株式ストラテジストは、S&P500の利益率拡大について、2026年は40ベーシスポイント、2027年は60ベーシスポイントの上方修正を行っています。弊社の調査において、AIを導入する目的として米国で最も多く挙げられたのは、生産性の向上、顧客対応のパーソナライズ、そしてデータ分析の迅速化です。そのほかでは、検索、コンテンツ生成、ダッシュボード、バーチャルエージェントといった利用事例が一般的でした。明らかになりつつあるのは、AIはもはや理論上の存在ではないということです。今回の調査データは、AIが採用、生産性、そして利益率を変えつつあることを示しています。投資家が問うべきは、AIが重要かどうかではなく、その価値を誰が取り込むのかなのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、2026年初めは市場の変動が大きかったにもかかわらず、主要な市場指標がグローバルな景気循環に対して前向きな見方を示している理由を解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、多数の重要な指標が、これまでにない形で同時に一致している点についてお話しします。このエピソードは2月12日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。投資においてフラストレーションがたまる点の一つは、どんな指標であっても、いつでも期待を裏切る可能性があるということです。それは当然のことでもあります。これだけ多くのものがかかっている中で、市場の秘密が、私たち何千人もの人間がボタン一つでアクセスできる何百ものデータ系列の中の、たった一つにあるとは考えにくいからです。しかし、多くの指標が同じ方向を示しているとしたらどうでしょうか。それははるかに注目すべきことです。そして、2026年のスタートは日本国債からソフトウェア株に至るまで大きな変動を伴いましたが、水面下では、まさにそのような状況が起きていると弊社では考えています。具体的には、グローバルな景気循環の見通しに対する楽観と結びついたさまざまな指標が、そろってより力強く、右肩上がりに動いているのです。景気に敏感なコモディティとして注目される銅価格は大きく上昇しています。世界貿易への感応度が高く、循環色の強い韓国株式は、過去1年間で主要な世界株式市場の中でも最も高いパフォーマンスを示しています。信用創造の中核に位置する金融株は、米国、欧州、アジアのいずれでもアウトパフォームしています。さらに直近では、年初来で景気敏感株や運輸株がアウトパフォームしています。小型株が先行し、市場の裾野は広がり、イールドカーブはベア・スティープ化しています。これらはすべて、他の条件が同じであれば、将来のグローバル成長が現在よりも強くなるときに見られる典型的な結果です。もちろん、個々のデータポイントはそれぞれ別の説明も可能です。例えば、銅はAI関連の設備投資ストーリーの一部にすぎないかもしれません。韓国市場は、極端に低いバリュエーション水準からの反発にすぎない可能性もあります。金融株の上昇は、イールドカーブのスティープ化と規制緩和への期待によるものでしかないかもしれません。イールドカーブのスティープ化も、単に政策の不確実性が理由という見方もあります。また、小型株は長期的に出遅れてきたため、「いつかは順番が回ってくる」ということかもしれません。しかし、これらをまとめて見ると、投資家がグローバル成長の基調が強まっていることを確認するために探しているサインそのものです。弊社では、これらが非常に力強く、相互に重なり合う形でシグナルを形成しており、十分に尊重に値すると考えています。しかし、状況が良くなっているとすれば、どこからが「行き過ぎ」なのでしょうか。財政、金融、規制の各政策が緩和的になる中で、市場は「良すぎる状態」になっていないかを判断するため、別の指標にも目を向けるようになるでしょう。例えば、近い将来に顕著なインフレの兆しはあるのか、債券市場のボラティリティは高まっているのか、米ドルは理論的な公正価値から大きく乖離していないか、クレジット市場に弱さは見られないか、そして株式やクレジットが、良い経済データに対して悪く反応するようになっていないか、といった点です。現時点では、まだそのような兆候は見られません。先週この番組でもお話ししたとおり、米国とユーロ圏の長期的なインフレ期待は、依然として中央銀行の目標と極めて整合的な水準にあります。米国金利の予想ボラティリティは年初来でむしろ低下しています。米ドルのバリュエーションは、購買力平価が示唆する水準にかなり近いところにあります。クレジット市場は非常に安定しています。そして水曜日に発表された、予想を上回る労働市場データも、市場からは好意的に受け止められました。どんな単一の指標も、いずれは投資家を失望させるものです。しかし、景気に敏感な幅広いシグナルが同じ方向を指し示しているとき、弊社はそれに耳を傾けます。これらを総合すると、主要なストレス指標が落ち着いている一方、ファンダメンタルズ面で追い風が吹いているというストーリーを、依然として示していると弊社では考えています。その証拠が変わらない限り、これらのシグナルは尊重されるべきだと考えます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
北米貿易の将来

北米貿易の将来

2026-02-1108:11

米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の見直しを前に、弊社公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、2025年に示した「より深い貿易統合」という見通しが今も有効かどうかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、間もなく予定されているUSMCAの見直しについて、そして去年昨年から環境がどのように変化したのかについて、弊社の見通しを解説します。このエピソードは2月11日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。去年昨年秋にお伝えしたとおり、米国・メキシコ・カナダ協定、いわゆるUSMCAは、2026年に初めての義務的な見直しを迎えます。当時、弊社はリスクがやや上振れ方向に傾いていると指摘しました。協定に組み込まれている構造的なセーフガードが、下振れリスクを抑え、大半のシナリオを北米における貿易統合を維持し、時間をかけて深化させる方向へと導くと考えているためです。この枠組みは、現在も概ね維持されていると考えています。ただし、ここ数か月のいくつかの動きを踏まえると、より深い統合が実現するタイミングや構造は、当初の想定とはやや異なる可能性が出てきました。交渉担当者が個別の問題を解消し、限定的なアップデートを行うというシナリオは依然として想定していますが、AIに関する新たな章や、重要鉱物、中国の対メキシコ投資に対するより明確な歯止めといった、より野心的な幾つかの政策目標については、2026年半ばの期限までに正式な形で盛り込むことは、以前より難しくなっていると見ています。では、去年昨年示した弊社の基本ケースは、今どのような姿を保っているのでしょうか。弊社は引き続き、協定自体は維持され、いくつかの未解決の争点、具体的には、自動車の原産地規則、労働分野の履行手続き、そして一部のデジタル貿易規定、が解決されるという結果を予想しています。中国に関する論点についても、去年昨年の見方は変わっていません。メキシコは、迂回輸出のリスクを低減し、米国の貿易優先事項との整合性を高めるために、段階的な対応を進めると見ています。ただし、2026年半ばまでに、完全に制度化された執行メカニズムが導入される可能性は低いでしょう。なお、USMCAには10年ごとのエスケープ条項があり、少なくとも2036年までは協定が有効であるため、破壊的な貿易ショックが起きる確率は、構造的にかなり低いと考えられます。変わりつつあるのは、進む方向そのものではなく、スピードと形式です。より包括的な合意が最終的に実現する可能性はありますが、その時期は先送りされるか、あるいはUSMCA本文の改定ではなく、補足的な協定という形を取るかもしれません。当然ながら、その場合は、議会の裏付けがないことによる執行リスクが伴います。弊社では、正式な見直しは2026年半ば頃にまとまると引き続き予想していますが、より深い制度的な統合が、さらに先の時期にずれ込む、あるいは並行的な枠組みを通じて進む可能性は、以前より高まっています。また、期限が近づく中で、3か国すべてが交渉期間の延長を決定し、不透明感がさらに長引くシナリオも考えられます。では、こうした動きはマクロ経済や市場にとって、どのような意味を持つのでしょうか。メキシコにとっては、引き続き、米国への無関税アクセスを維持することが極めて重要です。基本ケースでは、自動車や電子機器を中心とした製造業の統合が続くと見ています。ただし、政策当局が議論してきたような、より戦略的な新章が盛り込まれない場合、メキシコは「安定してはいるものの、本格的なニアショアリング加速には至らない」という、これまでと同様の立ち位置にとどまることになります。これは去年昨年の弊社見通しと整合的ですが、短期的には、急速なより深い制度的統合というシナリオに対するリスクが、一段と明確になってきたと考えています。為替市場については、不確実性が低下することによる恩恵は見込まれるものの、その効果は緩やかなものになるでしょう。原協定に目に見える形で新たな要素が加わらない場合、短期的な市場インパクトは限定的になると見ています。カナダについても、影響は一長一短です。見直しを巡る短期的な変動リスクは、市場で十分に織り込まれていない可能性がありますが、限定的な合意は中期的に米ドル/カナダドルの下落圧力につながると考えています。経済全体については、弊社は去年昨年、中国からのサプライチェーン分散が完全に進まなくても、この見直しは「北米を一体的な製造拠点として強化するものになる」と指摘しました。この点については、現在も基本的に変わっていないと考えています。ただし、より野心的な統合ルートの一部は、より先の時期に持ち越されるか、もしくはUSMCAの正式な章立てではなく、別の枠組みを通じて実現される可能性がある、という新たなニュアンスが加わります。結論として、弊社の基本ケースは引き続き、「不確実性を抑えつつ、北米貿易の中核的な恩恵を維持し、主要な資産クラスの成長を支える、現実的で慎重な結果」です。一方で、一部の戦略的な機会は当面棚上げされ、より深い連携は先送りされ、やや長い時間軸で進む、あるいはより柔軟な枠組みを通じて進むことになる可能性が高まっていると見ています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
めったに見られない「春」が中南米に近づいている可能性がある――弊社中南米チーフ・株式ストラテジストのニコライ・リップマンはそう指摘しています。地政学、ピークに達した金利、そして選挙という3つの要素がそろい、投資主導の成長サイクルが始まる環境を整え、株価に大幅な上昇余地をもたらすというのがその理由です。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社の中南米チーフ・株式ストラテジストのニコライ・リップマンが、投資家が中南米に注目すべきである理由についてお話しします。このエピソードは2月9日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。弊社リサーチのコアとなる投資テーマは実にシンプルです。中南米地域は現在「トリフェクタ」つまり、3つの重要な変化に直面しており、投資家がこれまで慣れ親しんだ同地域の投資ストーリーとは大きく異なる局面を示唆しているとみています。グローバルな人工知能(AI)設備投資サイクルを背景に、中南米においても投資サイクルもしくは設備投資サイクルに移行し、従来の消費サイクルから完全に逸脱するサイクルに、同地域が向かう可能性があると弊社はみています。 現在の中南米地域のGDPは、およそ6兆ドルあります。しかし、世界株式の主要ベンチマークであるMSCIオールカントリー・ワールド株式指数における中南米株式の割合はおよそ訳0.80%にすぎません。率直に言って、これではこの広大な地域を投資家が見逃してしまうのも無理はありません。しかし、3つの主な要因のおかげでこの状況が変わりつつあります。第1の要因は、多極化がますます進むこの世界での地政学の変化です。これについては、貿易のルール、安全保障における優先事項、そして描き換えられつつあるサプライチェーンに見られるとおりです。資本や投資も、こうしたルール変更に伴って動いていくことがよくあります。ご承知のように、中南米における米国の優先事項は明らかに変化してきましたし、それに伴って中南米諸国の優先事項やインセンティブも変化しています。第2に、中南米の金利はピークに達している可能性が高く、2026年に低下に転じる公算があります。借り入れコストが低下すれば、工場、インフラ、AI、その他あらゆる種類の新規投資のための資金調達が容易になり、実現可能性が高まります。さらに言えば、中南米地域ではほとんどすべての国において国内資本市場の規模と成長に大きな変化が見受けられます。これは改革の成果であり、以前と異なる新しいサイクルだとみて間違いありません。そして最後に、選挙が中南米地域全体で政策の重要な変化につながる可能性があります。コロンビアとブラジルの選挙が近づくなかで、財政責任重視に向かう兆候が多くの国で見られるのです。すでにアルゼンチン、チリ、メキシコでは、新しい政策立案者が従来のポピュリズムをやめた様子が見受けられます。したがって地政学、金利、各国の選挙の3要素を合わせると、「中南米の春」が来るかもしれないという弊社のテーマの核心にたどり着きます。現状と決別して財政再建、金融緩和、そして構造改革へと舵を切るかもしれない、ということです。そして弊社では、この動きは投資家の信認回復と民間資本の誘致につながる可能性があると考えています。弊社の「春」シナリオでは、経済成長率がブラジルとメキシコで6%、アルゼンチンで7%にそれぞれ上昇し、チリは4%にとどまる、そして金利は上昇ではなく低下するとみています。中南米地域の再評価を後押しするシナリオです。そして、多くの投資家が見逃していると思われる強力な要因がもうひとつあります。それは、すでに指摘した過去のサイクルとの大きな違いは、中南米諸国の国内貯蓄です。中南米の現地のポートフォリオは今日(こんにち)はるかに大きくなっており、資本市場の懐も深くなっているうえ、そのポートフォリオの中身は債券に大きく偏っています。内訳をみますと、75%が債券で25%が株式です。ブラジルでは債券の割合がさらに大きく、90~95%にも達しています。もしこの半分でも株式にシフトすれば、現地の資本市場の厚みをさらに増しつつ、下値を底堅くすることにもなり得るでしょう。バリュエーションが下支えされるのです。地域全体で言うなら、このような大変化の影響を最も大きく受けるセクターは金融サービス、エネルギー、公益、ヘルスケアとなるでしょう。中南米はこれまで、多くのことが悪化しうる地域とみられてきたように思われます。そこで弊社はその逆の問いを立てました。好転しうることは何か、と考えてみたのです。もし前述の3つの要素、すなわち地政学、金利のピーク、選挙の3点によってこれまでよりも投資を奨励する政策や設備投資サイクルが可能になれば、中南米地域がコモディティと労働力の供給元というこれまでのイメージから、投資主導の色彩がこれまでよりもはるかに強い成長エンジンというイメージに転じることもあり得るでしょう。こうしたことから弊社では、投資家は今すぐ中南米地域に目を向けるべきだ、「春爛漫」になるまで待っていてはいけないと考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、ケビン・ウォーシュ氏の次期FRB議長指名が市場にどのような影響を与えるかについてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社の 最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、ケビン・ウォーシュ氏の次期FRB議長への指名がもたらす影響についてお話しします。このエピソードは2月2日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。1月30日にトランプ大統領は、ケビン・ウォーシュ氏を次期FRB議長に正式に指名しました。ウォーシュ氏について市場で語られている評価は比較的分かりやすく、FRBのバランスシート規模に対してタカ派寄りであり、金利については現在の指導部より柔軟で、無制限の流動性供給にはあまり積極的ではない、とみられています。こうした人物像は概ね正しいのですが、なぜ今ウォーシュ氏なのか、今回の指名でどのような問題を解決しようとしているのか、というより重要な問いには答えていません。私の見方では、その答えは政治ではなく、市場の動きから始まります。ここ数か月、貴金属価格は放物線を描くように上昇し、同時にドル安が続いてきました。現政権は、特に経済全体のリバランス戦略の一環として、ドル安は本質的に悪いことではないと明確に述べていますが、「管理された下落」と「無秩序な下落」には大きな違いがあります。これがなぜこれほど重要なのかを理解するには、視野を広げて状況を俯瞰する必要があります。現政権は、20年以上にわたり積み上がってきた巨額の債務負担を、最終的には経済成長によって乗り越えるという同じ目標のもと、3つの側面から米国経済のリバランスを同時に進めようとしています。現時点で歳出削減だけで対応するのは、経済的にも政治的にも現実的ではありません。名目成長こそが、唯一現実的な道筋なのです。現在の戦略は、より供給サイドに重きを置いています。すなわち、関税やドル安によって貿易構造を見直し、過度の消費から投資主導の経済へと転換し、移民政策の実施や規制緩和を通じて格差に対応するというものです。狙いは、政府ではなく企業が資本配分の判断を行える環境を整えるとともに、給付ではなく賃金を通じて所得を押し上げていくことにあります。もしこれが機能すれば、名目成長が加速し、生産性向上に支えられたより健全な実質成長とのバランスが実現していくはずです。市場は、ある程度すでにこのストーリーを織り込み始めています。昨春以降、景気敏感株がアウトパフォームし、市場の広がりが改善し、市場の牽引役は前のサイクルを支配していたメガキャップ銘柄から交代し始めています。中小型株も再び存在感を見せています。これはまさに、私の中心シナリオである「よりホットだが短い」景気拡大の中盤で見られる典型的な動きです。同時に、金価格の急騰は、別の動きが起きていることを示しています。貴金属がこれほど動くときは、投資家が「最終局面」に疑問を抱き始めているサインです。そこで登場するのが、ケビン・ウォーシュ氏です。今回の指名には、FRBのバランスシートに対する信認を回復し、こうした懐疑の勢いを和らげる狙いがあると考えられます。金曜日の値動きからすると、その狙いは奏功しました。金と銀は急落し、ドルは小幅に上昇し、株式と金利は比較的安定していました。この組み合わせは時間稼ぎを可能にします。そしてこの戦略が機能するには、まさにその「時間」が不可欠なのです。市場がこのストーリーを信じているかを測る最良の方法の一つは、S&P500と金価格の比率を見ることです。これは、生産的な成長への信認を測るシンプルで強力な指標です。直近の比率の急落は、主に金価格の上昇によるものでしたが、金曜日の急反転は、記録的な下落幅となった金価格の低下が主因でした。とはいえ、懐疑的な見方が消えたわけではありません。むしろ、政権側が市場のシグナルに注意を払い、信認回復の必要性を理解していることを示しています。もし比率の回復が続くとすれば、まずは金価格の下落と流動性引き締め期待の高まりが先行し、その後、生産性向上に牽引された企業利益の成長加速が続く可能性が高いでしょう。この過程では、株式を含む他のリスク資産が短期的に調整リスクにさらされることも考えられます。結論として、現在の「経済を過熱させる」政策は、従来の政策ミックスよりも持続的な成長を実現できる可能性が高いと考えています。ただし、その道のりはスムーズではなく、市場の信認は行きつ戻りつしながら進んでいくでしょう。市場の反応の仕方、特に金価格、ドル、設備投資動向といったシグナルに注目すれば、この戦略が最終的に成功するかどうかが分かるはずです。私はこれこそが、短期的には不安定さがあっても、2026年に向けて強気のスタンスを維持できる最善のアプローチと考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。 
一部の投資家の懸念にもかかわらず、バリュエーションはしばらく予想以上に高止まりしそうだ――市場の主要な指標がそう示唆していることについて、弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが解説します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、変化が連日押し寄せてくるように感じられるこの世界での、安定への重要な道しるべについてお話しします。このエピソードは1月30日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。モルガン・スタンレー・リサーチでは、2026年には財政、金融、規制の3政策の緩和がさらなるリスクテイク、企業活動、アニマル・スピリッツを下支えするとの見方を中核的なテーマのひとつに位置付けています。たしかにバリュエーションはすでに高いのですが、世界の非常に多くの地域で多くの力が、景気の刺激という全く同じ方向にはたらいていることから、バリュエーションは想定よりも高い水準に、かつ想定よりも長い間とどまる可能性があります。米連邦準備制度理事会(FRB)、イングランド銀行、欧州中央銀行(ECB)そして日本銀行は、政策金利を市場の想定よりも大幅に下げるか、市場の想定よりも小幅な引き上げにとどめるだろうと弊社では考えています。また米国、ドイツ、中国そして日本の政府が歳出を増やすため、財政政策も景気を刺激するスタンスが続くとみています。そして、私がこのポッドキャストで先日お話ししましたように、頻繁に変わるわけではありませんが規制がこの方程式には欠かせない項目でが 、規制がさらにリスクを取ることを後押しする方向に向かっています。もちろん、景気を刺激する要素が多く揃い過ぎていたら、帆を何枚も広げたボートのように、制御不能になるかもしれないという懸念はあります。地政学の逆風が渦を巻き、金の価格がこの1年で2倍になっただけに、政府も、そして財政・金融・規制の3政策も変化が大きすぎるのではないかと思っている投資家は少なくありません。こうした懸念を具体的に表現すればどうなるでしょうか。たとえば、私が投資家にお話しするときには、次のように言い換えられると思っています――私たちがいま目にしているのは、将来のインフレ率の予想の急上昇なのか? 国債のボラティリティは今後大きくなるのか? 米ドルのバリュエーションはフェアバリューから劇的に乖離してしまったのか? クレジット市場にはストレスの初期の兆候が現れているのではないか?以上の疑問に市場でのプライシングに基づいてお答えするなら、今のところ、答えはいずれも「ノー」です。まず、向こう10年間の消費者物価指数(CPI)上昇率の市場予想は2.4%前後です。実際、これは2024年や2023年のそれとさほど変わりありません。次に、向こう1年間の米国金利の予想ボラティリティは、今年1月1日時点でのそれよりも低下しています。米ドルについては、いろいろな報道が飛び交っていますが、ブルームバーグのデータに基づく購買力平価に基づいて言うなら、おおむねフェアバリューに当たる水準で取引されています。そして、リスクの重要な先行指標だと長らくみなされているクレジット市場は、多くの地域で非常に好調であり、歴史的と言えるほどタイトなスプレッドがまだ続いているのです。米国の外交政策の不確実性、日本の金利の大きな動き、そしてそれ以上に大きな金価格の動き。これらはすべて、マクロ経済環境が不安定になるかもしれないという投資家の懸念を強めてきました。無理もないと思います。ですが今のところ、市場に基づく安定性の主要指標の多くはまだ持ちこたえていると弊社ではみています。以上のお話しは事実ですが、ファンダメンタルズについての見方、具体的には企業の利益成長についての弊社の前向きな見方は、相場を下支えし続ける可能性があると弊社では考えています。ただし、これらの道しるべに大きな変化が生じれば、話が 変わってくる恐れがあります。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社グローバルリサーチ副責任者のマイケル・ゼザスが、米国で新たな政府閉鎖が起きるリスクについて、投資家が注意すべき点と、過度に反応すべきでない理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードは、弊社グローバルリサーチ副責任者のマイケル・ゼザスが、今週後半に米国政府が閉鎖される可能性について、投資家として何を心配すべきか、そして何を心配する必要はないのかをお話しします。このエピソードは1月28日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ここ数週間、投資家の皆さまは、さまざまな政策リスクが市場に与える影響を考える必要がありました。たとえば、ベネズエラでの軍事行動による原油供給や新興国市場への影響、イランでの軍事行動の可能性、さらにはグリーンランドをめぐる米欧関係の分断リスクなどです。 それと比べると、今回の米政府閉鎖の可能性は、やや小さな問題のように思えるかもしれません。しかし、優れた投資家はすべてのリスクをしっかり管理します。そこで、この問題を整理していきましょう。現在、上院では予算をめぐる交渉が続いており、民主党は最近の出来事を受けて、移民取締りの運用方法について、ルールの厳格化と監督強化を求めています。共和党側も一定の歩み寄りを示してはいるものの、最大の制約はスケジュールです。下院は来週初めまで休会しているため、たとえ上院が今週中に採決を行っても下院が対応できず、一時的に政府資金が途切れる可能性があります。そのため、「今週末に短期間の政府閉鎖が起き、下院が再開した後に短いつなぎ予算が成立する」という展開は十分にあり得ます。これは、どちらの政党も閉鎖を望んでいないというよりは、戦略について完全に合意できていないうえ、時間が不足していることが理由です。もちろん、ひとたび閉鎖が起きると、長引くリスクもあります。しかし、弊社の基本シナリオでは、経済への影響は限定的になるとみています。歴史的に、政府閉鎖は、影響を受ける職員や政府請負業者にとって大きな負担となりますが、マクロ全体への影響は比較的軽く、また元に戻りやすい傾向があります。政府支出の多くは後から執行されますし、成長率への一時的な悪影響も、予算が復活すれば比較的早く解消されるためです。経験則では、「全面閉鎖の場合、1週間続くごとに、四半期ベースのGDP成長率を年率換算で 0.1ポイント押し下げる」程度とされています。そして、今回はすでに複数の歳出法案が可決済みであるため、想定されるのは「部分的な閉鎖」です。その場合、影響はさらに小さくなります。市場についても、反応は比較的穏やかになる可能性があります。政府閉鎖が企業収益やインフレ、またはFRBの見通しといった、資産のパフォーマンスを左右する重要な市場ドライバーを大きく変えることはほとんどありません。そのため市場は、こうしたノイズを受け流して、より本質的な材料に目を向ける姿勢が続くと考えられます。最後に、政治状況についても触れておきます。ただし、多くの投資家が考える意味とは少し違う観点で重要です。今回の政府閉鎖リスクは、大統領および共和党の支持率低下につながる一連の動きの延長線上にあります。そのため、多くの投資家は「この状況が中間選挙にどう影響するのか、そして政策はどう変わるのか」と弊社に質問されます。一見すると、こうした政治力学は、共和党が厳しい中間選挙を迎える可能性を示唆しているように見えるかもしれません。しかし、弊社としては、まだ確かな結論を出すには早すぎると考えています。そして仮に結論が出たとしても、それが市場にとって本当に重要かどうかは別の話です。第一に、市場にとって最も重要な政策、たとえば貿易、規制、産業戦略、リショアリング、そして近年ではAI関連政策などは、議会ではなく大統領権限で進められているものが多い点です。つまり、短期的な政治の揺れでは、その方向性が変わりにくいのです。第二に、去年 成立した法人の設備投資を促す税制優遇措置について、仮に議会で撤回の動きがあったとしても、大統領はほぼ確実に拒否権を行使するとみられます。 これらの政策は、2026年の経済見通しにとって重要な要素です。 総合すると、議会のスケジュールを原因とする今回の政府閉鎖の可能性は、注意して観察すべきリスクではありますが、過度に反応すべきものではありません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社のアジア・ゲーミング・ロッジングおよび香港・インド・不動産リサーチ責任者プラヴィーン・チョウダリーが、ここおよそ約10年で初めて、香港の主要不動産セクターが同時に成長局面に入っている背景についてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、アジア・ゲーミング・ロッジングおよび香港・インド・不動産リサーチ責任者プラヴィーン・チョウダリーが登場します。世界の投資家が常に注目しながらも、十分に理解されていないことの多い 香港不動産市場 を取り上げます。このエピソードは1月27日 に香港にて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ニューヨーク、ロンドン、シンガポールの投資家が、なぜ香港の不動産動向を気にする必要があるのでしょうか。答えはシンプルです。香港は世界でもっともグローバルな影響を受けやすい不動産市場の一つであり、香港でサイクルが転換すると、アジア全体の流動性、資金フロー、そしてマクロ・センチメントの変化を映し出すだけでなく、時に先取りして示すことがあるためです。そして現在、2018年以来初めて、香港不動産の主要3部門、すなわち住宅価格、香港中環(セントラル)のオフィス賃料、小売店舗市場が同時に上昇に向かっています。このそろっての上昇はほぼ10年ぶりのことです。 この変化を生み出している要因とはまず牽引役となっているのが住宅用不動産です。住宅価格は2018年から30%下落した後、ようやく底を打ち、2026年は力強い回復の年になりそうです。弊社では、2025年に5%上昇したあと、2026年には10%超の価格上昇を見込んでおり、2027年もさらに上昇すると考えています。この市場コンセンサスに反した見方を支えるのは、主に3つの要因です。1つ目は政策です。2024年2月、香港政府は中国本土や海外の買い手にとって負担となっていた追加印紙税をすべて撤廃しました。印紙税とは不動産の購入時や売却時にかかる税金で、政府が需要を調整したり、税収を確保したりする主要な手段となっていました。この追加負担がなくなったことで、とくに中国本土の買い手にとっては、香港での不動産売買が格段にスムーズで、ペナルティのないものになりました。実際、撤廃後は中国本土の買い手による購入比率が全体の50%に達し、以前の10-20%から大きく跳ね上がっています。では、なぜこの見通しがコンセンサスと異なるのでしょうか。一般的には、中国本土の住宅市場が弱いと香港の住宅価格は上がらないと考えられているためです。2025年中頃の市場コンセンサスでは、この回復はHIBOR(香港銀行間金利)の急低下に対する一時的な反応に過ぎないとの見方が大半でした。しかし弊社は、需給のミスマッチ、賃料上昇と金利低下によるポジティブキャリー、そして中国と世界をつなぐ金融ハブとしての香港の役割がいまだ健在であることが主要な要因だと考えています。2つ目に、需要の基礎的な部分が着実に強まってきています。香港の人口はコロナ期に減少しましたが、2025年前半には再び増加に転じ、750万人に達しました。さらに、各種の「人材誘致スキーム」により2025年のビザ承認数は14万人と、コロナ前のおよそ約2倍に増えています。新規世帯の形成も長期平均を上回り、中国本土の買い手も非常に大きな購買力となっています。3つ目の要因は、アフォーダビリティ(購入しやすさ)です。住宅価格は数年にわたって下落が続いた結果、家計にとっての「購入しやすさ」が長期平均まで戻りました。実際、価格と所得の比率は2011年頃の水準まで改善しています。ここに米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げの影響を受けた住宅ローン金利の低下が加わることで、抑制されていた需要が再び戻りつつあります。さらに「資産効果」も見逃せません。2025年にはハンセン指数がおよそ約30%上昇し、株式市場の反発は歴史的に不動産購入に波及しやすい傾向があります。住宅市場の回復が加速する中、香港のオフィス市場や小売店舗市場にも新たな楽観ムードと活発な動きが広がっています。つまり全体として、香港の不動産市場は単に「安定している」のではなく、「転換」しています。住宅価格の10%超の上昇、中環オフィス市場の持ち直し、小売店舗市場の環境改善、これらが同じ年にそろって起きており、これは2018年以来もっとも明確な好転シグナルです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
今年のカギとなる投資テーマは何なのか、それらは市場と経済にどう影響するのか。モルガン・スタンレーの考えを弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが、2026年の市場と経済の特徴を決める4つの主要なテーマについてお話しします。このエピソードは1月26日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。さて、最近の市場のノイズやひっきりなしに生じる相場の変動にうんざりなさっていませんか。もしそうなら、 それはあなただけではありません。今日では、短期的な相場の変動をいかに無視するか、そして世界を本当の意味で変えているもっと大きなトレンドにいかに焦点を合わせるかを理解することが、投資家にとって最も高いハードルの一つになっています。モルガン・スタンレー・リサーチでは以前から、市場について考察する際、特にボラティリティが極端な時期に考察する際に、テーマ分析を重視しています。テーマというレンズを1枚挟むとノイズを避けやすくなり、経済、産業、社会を作り変える構造的な力に注意を集中しやすくなるからです。実際、この見方はすでに成果を上げています。2025年には弊社のテーマ別株式カテゴリーがMSCI世界株価指数を平均で16%、S&P500種株価指数を同27%アウトパフォームしました。長期的な投資テーマはアルファを強力に押し上げうるという弊社の見方を、まさに裏付ける成績でした。2026年の弊社の枠組みは4つのテーマを軸にしています。人工知能(AI)とテクノロジーの普及、エネルギーの未来、多極化世界、社会の変化という4つです。このうち3つは 去年昨年からの持越しですが、いずれも大きな変化を見せています。残る1つは、弊社の以前の考察を大きく拡張させたものです。1つ目の「AIとテクノロジーの普及」はこれまで通り重要ですが、明らかに成熟・進展しています。 2025年にはAIにできることが急激に増えていることに注目が集まりましたが、2026年にはその性能が非線形的な改善を遂げていることと、AIにできることと現実世界での導入レベルとのギャップが拡大していることが強調されるようになっています。ここで重要なのは、ソフトウェアとハードウェアの効率が高まっているにもかかわらず、コンピューティング需要はその供給を大きく上回ってしまうと思われることです。AIを利用するケースが増え、その内容も複雑化するにつれて、インフラが――とりわけコンピューティング・パワーと呼ばれる処理能力が――決定的な足かせになってしまうのです。2つ目はエネルギーの未来です。ここにきて新たに緊急性を帯びてきているテーマです。先進国のエネルギー需要は横ばいで推移すると長らく想定されてきましたが、足元では増加傾向に転じつつあります。AIインフラとデータセンターがその主な要因です。2025年に比べますと、このテーマは供給面の話から政策に注目する話へと広がりを見せています。エネルギー・コストの上昇は消費者の目にもますます明らかになっており、いわゆる「エネルギーの政治」という概念が浮上しています。政策立案者は、一つの施策を優先するならほかの施策を後回しにしなければならない「トレード・オフ」があるときでさえ、安くて頼りになるエネルギーの確保を優先するよう迫られています。また、電力網を不安定にしたり家計の負担を増やしたりせずに電力を確保する新しい戦略も登場しつつあります。3つ目は多極化世界です。これも去年昨年のテーマをもとにしていますが、輪郭がより鮮明となっています。各国が安全保障、耐久力、自給自足などを重視するにつれ、グローバル化の崩壊が続いています。2025年以降は重要な投入財、たとえばエネルギー、原料、防衛力、先端技術などにアクセスできるかどうかが、競争上の優劣を決める傾向が鮮明になっています。特に、2025年のパフォーマンスが最も高かったテーマ別カテゴリーはこの多極化世界の影響を強く受けていました。地政学や産業の変化が市場での運用成果に直接つながることが浮き彫りにされた格好です。そして、いま最も大きな変化が見られるのは4つ目の主要テーマです。弊社では「社会の変化」と呼んでいますが、これは「長寿」に関する以前の考察を拡張させたものです。この新しい枠組みでは、社会に影響を及ぼしているグローバルな力を幅広くとらえています。具体的には、AIに起因する労働の混乱とその後の展開、人口の高齢化、消費者のし好の変化、K字型経済、健康な老後を目指す取り組み、多くの地域でみられる厳しい人口動態などがあげられます。これらの変化は政府の政策、企業の戦略、そして経済成長にますます影響をもたらしており、そのインパクトは投資家の一般的な予想よりもはるかに多い産業に及んでいます。重要なのは、お話ししたこれらのテーマが単独で機能するわけではないことです。AIはエネルギー需要を加速させます。エネルギー・コストは政治を動かし、政治はサプライ・チェーンや国家の優先順位に影響を与えます。そしてこれらのすべてが、雇用から消費パターンに至る社会の変化に直接つながっていくのです。テーマ別投資の威力はこれらの交点を、すなわち複数の力が意外な過程を経て互いに強めあうところを理解することにあるのです。要約しますと、2026年の投資において最も重要なのは何かと問われたら、それは経済成長率の話だけで済むことではありません。重要なのは構造です。テクノロジー、エネルギー、地政学、そして社会はどのように変化するのか。それを理解することが、機会とリスクが本当はどこに向かっているのかを知る最も明快な方法かもしれません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
米国政府による規制緩和の取り組みはどのような影響をもたらすのか。銀行のバランスシートから資産のバリュエーションに至るまで、弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが展望します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、緩和政策の中心テーマのひとつについて、そして米国モーゲージ債券市場の最新動向についてお話しします。このエピソードは1月15日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。向こう1年間についての弊社の考察で重要なのは、金融政策と財政政策、そして規制政策の3つが同時に緩和されるという異例な展開になっていることです。このようなことは、通常なら起こりません。この種の支援策は、経済が今よりもはるかに厳しい状況に陥っているときにのみ講じられるのが普通です。しかも、弊社の予測によれば2028年末までに人工知能(AI)とデータセンター関連で3兆ドルを超える投資が行われるという、非常に大きな相場下支え要因があります。それと並行して3つの緩和政策が実行されていくのです。このすそ野の広い緩和策はグローバルなテーマでもあります。日本では、財政がさらに拡張されるとの期待から株価が上昇しています。欧州では、ドイツが歳出を拡大し続けるとみられる一方、欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行は市場予想を上回る幅で政策金利を引き下げると思われます。しかし、昨今よく見られるように、話の中心にいるのはやはり米国です。弊社では、米国のコアインフレ率が目標水準を上回っていても、FRBは今年も利下げを続けると考えています。また、米国政府による歳出は歳入をおよそ 約1兆9000億ドル上回る見通しです。関税収入による調整があるものの 「大きく美しい一つの法案(OBBBA)」による減税が発効するためです。しかし、私が今日注目したいのは、景気刺激策という3本脚の腰かけを支える3本目の脚です。おそらく、人々の関心を最も集めるのは金融政策と財政政策の緩和でしょうが、実は規制緩和という重要な政策レバーもこれら2つと同じ方向に入れられるのです。規制政策はわかりにくく、若干退屈な話題になりうることも否めません。しかし、金融市場がどのように機能するかを考えるときには、極めて重要になります。規制は、多くの種類の資産の買い手に刺激をもたらします。銀行・保険セクターという非常に重要なセクターの買い手にとっては、特にそうです。まず、ある資産が魅力的に映るためにはどれほどの価格で売買される必要があるか、特定の市場参加者が保有できる(あるいは、できない)資産の量はどの程度か、といったことは、規制によってほぼ当然に決まることがあります。規制政策は世界金融危機の発生を受けて劇的に厳しくなりましたが、ここにきて緩和され始めています。弊社の米国銀行株アナリストによれば、金融規制にとって重要な一歩となる自己資本ルールの最終化が今年のうちに実施され、金融システム上重要な巨大金融機関(GSIB)のバランスシートに計5兆8000億ドル前後もの貸し出し余力が生じる見通しです。また12月半ばには、通貨監督庁(OCC)と連邦預金保険公社(FDIC)が、2013年に導入した貸付のガイドラインを撤回しました。このガイドラインのために、銀行はこれまで、比較的多額の債務を抱える企業への貸し付けをあきらめてきました。そしてつい先週には米国の現政権が米国のエージェンシー MBS、すなわちファニーメイとフレディマックが2000億ドルのモーゲージ債を購入してバランスシートで保有すると発表しました。この重要な市場で急激にスプレッドを縮小する大きな動きだと言えます。このように、投資家にとっては読み取るべきポイントがいくつかあると弊社では考えます。金融、財政、そして規制という3つの分野で同時に緩和政策が講じられれば、過熱していてバリュエーションが割高になっているかもしれない市場が下支えされることになります。また、これら政府系MBSの具体的な見方については、私の同僚ジェイ・バコウと弊社モーゲージ戦略チームが、この変化は急速に相場に織り込まれていると考えています。そして、政府系MBSスプレッドに魅力があるという以前の見方から中立に転じています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社インド・リサーチ責任者兼チーフ株式ストラテジストのリダム・デサイが、「2025年に他の新興国市場をアンダーパフォームしたインド株は、回復に向かうのか」という大きな論点についてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社インド・リサーチ責任者兼チーフ株式ストラテジストのリダム・デサイが、今年のアジアにおける大きな論点のひとつ、歴史的な低迷のあと、インド株式は強さを取り戻せるのか、についてお話しします。このエピソードは1月14日 にムンバイにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。インド株は2025年、他の新興国市場に対して、1994年以来およそ30年ぶり にの大差でアンダーパフォームして1年を終えました。その理由としては、サイクル半ばでの成長減速、割高なバリュエーション、インドにはAI関連の明確な投資テーマが存在しないことが挙げられます。さらに、米国との通商協議の遅れや、世界的な強気相場におけるインドの「低ベータ」も、アンダーパフォーマンスの要因となりました。しかし、潮目は変わりつつあります。バリュエーションは大幅な調整が入り、おそらく10月に底を打ったと考えられます。さらに重要なのは、インドの成長サイクルが予想以上の上振れに向かっているとみられることです。政策当局は景気の勢いを取り戻すために、リフレに全力で取り組み、積極的な政策を次々と実施しています。インド準備銀行は利下げを行い、預金準備率を引き下げ、市場に流動性を供給し、さらには銀行規制の緩和を進めるなど、景気を後押しする施策を展開しています。政府も公共投資を前倒し、1兆5,000億ルピー規模の大幅なGST減税を発表し、国民がモノやサービスへの支出を増やせるよう後押ししています。こうした一連の動きに加え、インドと中国の関係改善、中国政府の新たな「反内巻き」政策、包括的なインド・米国通商協定の可能性などが、回復に向けた着実な基盤となっています。要するに、パンデミック後には厳しかったインドの経済スタンスが緩和に向かっているのです。こうした変化は、今後の市場に対する投資家の見方に大きな変化をもたらす可能性があります。インドのマクロ環境も進化しています。GDPに占める原油比率の低下、特にサービス分野における輸出比率の上昇、財政健全化の進展などは全て、貯蓄の不均衡が縮小していることを示しています。これは、構造的に今後、金利が低下することを意味します。柔軟なインフレ・ターゲティングのもと、インフレ率と金利の変動幅もさらに縮小するでしょう。高成長、低ボラティリティ、金利低下が揃えば、株式のP/E倍率は上昇するでしょう。加えて、家計の資産構成が株式にシフトしている点も重要です。国内ミューチュアルファンドへの継続的な資金流入が、こうした傾向を裏付けています。投資家の懸念は理解できますが、文脈の中で捉える必要があります。企業の資金調達が増えているのは、バリュエーションの高さだけではなく、将来の成長を示している場合も多いのです。株式への資金シフトが続く中、国内投資は引き続き堅調です。インド株式のプレミアムは、堅固な長期成長期待と、実質金利の低下見通しを反映したものです。政策面でも成長押し上げに向けた取り組みは力強く、実質成長率は上振れる可能性があります。インドは現時点でAI分野をリードしているわけではありませんが、2月に予定されているAIサミットは、技術イノベーションにおけるインドの役割についての懸念を和らげるかもしれません。投資家が注目すべき重要なカタリストは何でしょうか。企業収益の上方修正、インド中銀のさらなるハト派姿勢、民営化などの政府の改革、長らく待たれている米国との通商協定などが挙げられます。一方で、世界の成長減速や地政学的環境の変化といったリスクにも注意が必要です。では、15か月にわたる相対的な苦境を経て、インドは構造的な再評価の入り口に立っているのでしょうか。成長率が予想を上回れば、2026年のストーリーは「インドの復活」になるかもしれません。弊社は成長率の上振れを予想しています。続報をぜひお楽しみに。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
複数の指標がすべて同じ方向を指し、市場と経済が今後力強い成長を遂げることを示唆しています。弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツがご紹介します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日はコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、グローバルな景気サイクルへの楽観的な見方を示す複数の指標がこぞって同じ方向を指し示すという珍しい現象と、なぜそれが重要な注目点になるのかという2点についてお話しします。このエピソードは1月9日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2026年が始まりました。予測というものは難しく、惨めな思いをさせられる行為でもあります。2025年はまさにそうで、市場が好調な年であっても大きな変動が起こりうることを思い知らされました。しかし総じて言えば、モルガン・スタンレー・リサーチでは、今年は株高と債券利回りの小幅な低下が共存する良い年になるとの見方を変えておりません。たしかに、新年早々いろいろな事件が起きていますが、メッセージの中核部分は依然有効だと弊社では考えています。しかし、今回は向こう1年間の弊社予想を再度ご紹介するのではなく、グローバルな景気サイクルの先行指標に長らく位置付けられている数々の資産を幅広く検討してみたいと思います。私はこれらの資産を重要だと考えています。特筆したいのは、今はこれらがすべて同じ方向に動いていること。景気の循環的な拡大を示唆していることです。たしかに、今日の市場では一部で投機的な動きや過大なバリュエーションも見受けられますが、これらの資産が同じ方向を向いていることは、もっと本質的な何かが起きている可能性を示唆しているのです。まず、銅の価格です。ボラティリティが高いものの景気の変化に敏感に反応することが多い指標ですが、この1年間でおよそ40%上昇しています。また。ガラスから錫(すず)に至る非取引型工業原料を網羅する重要な指数は、投資家の活動の影響を受けにくいため有用なのですが、それもこの1年で10%上昇しています。また韓国株は、景気変動に非常に敏感に反応することが多く、投資家からはグローバル経済の楽観度の代理指標と以前からみなされていますが、こちらは 去年 昨年80%も上昇し、主要市場の中では最高のパフォーマンスを記録しました。小型株も景気変動に敏感に反応する傾向がありますが、これもこのところ大型株をアウトパフォームしています。そして、最後になりましたが、欧米の金融株です。これも景気に敏感なことが多いセクターであり、市場全体をかなり大幅にアウトパフォームしています。これらの異なる地域の異なる資産はすべて同じことを告げているようにうかがえます。すなわち、グローバルな景気サイクルの見通しは改善してきており、このところは経済活動自体も実際に良くなっていることを、これらの資産は示しているように見えるのです。個々の指標が誤っていることはあり得ます。しかし複数の指標すべてが同じ方向を向いているとなれば、これは十分注目に値します。しかも私が思うに、この現象は同僚のマイク・ウィルソンが1月5日付の配信でお届けした重要なメッセージ、すなわち、米国株に対する強気な見方は経済の基礎的な活動の改善としっかりリンクしているのだというメッセージに見事につながっています。具体的に言えば、企業の利益の伸びは認識されている以上に大幅かもしれないという弊社の見方には裏付けがあるのです。もちろん、データは今後変動します。値が低下すれば、それは経済や景気サイクルの悪化を示唆している可能性があります。しかし今のところ、景気サイクルの様々な指標は良好な値を示しています。この状況が続けば、中央銀行の政策をめぐる疑問や、グローバル経済の成長拡大を示すこれらのしるしと釣り合う追加利下げ幅はどの程度かといった疑問が、さらに浮上してくるかもしれません。今回の市場のサイクルにはまだ上昇余地がある。そしてこの弊社の見方の中核を支える証拠はまだ健在である。弊社は今のところそうみています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
2026年の米国株を押し上げる公算が大きいものの、投資家が見落としているかもしれない主な材料について、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがお話しします。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  本日は弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、市場に作用する諸々の力がひとつにまとまり、2026年に対する弊社の強気な見通しを補強していることについてお話しします。このエピソードは1月5日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。新年を迎えるときには、将来のことに目を向けるのが普通です。ですが今日はあえて一歩戻り、市場が見落としていることについてお話ししたいと思います。いくつもの強気な材料が勢ぞろいしているのに、それらが一つにまとまってもたらす総合的な影響を、市場はまだ過小評価しているからです。堅調な増益基調、FRBによる追加利下げなど、個々の好材料は大いに注目されています。しかし弊社がみる限り、本当に重要なのはこうした力がお互いを強めあっていることです。規制の緩和、プラスの営業レバレッジ、緩和的な金融政策、そして景気を下支えする性質をますます強めている財政政策。これらはすべて、同じ方向に作用しています。今年の後半には中間選挙も予定されており、こうした政策手段は今後も景気を支える方向に維持されそうです。重要なのは、私が思い描く展開がまだ相場に織り込まれていないことです。循環株の売買ポジションは比較的軽いままで、景気敏感株に対する投資家の心理は熱狂には程遠い――。この組み合わせ、すなわちファンダメンタルズの改善と慎重なポジションという組み合わせは、回復の初期段階の特徴そのものであることが多いのです。私は引き続き、こうした追い風が最も過小評価されているのは循環株だとみています。業種でいえば一般消費財、金融、資本財・サービス、そして中小型株です。弊社が追跡している指標の多くは、まさに上向き始めたばかりです。私にはもう、これはサイクルの終盤には見えません。むしろ、私が「ローリング・リカバリー」とみなしているものの初期に見えるのです。投資家が躊躇(ちゅうちょ)してしまう理由の一つは、従来型の景気循環指標、とりわけ米供給管理協会(ISM)による製造業購買担当者景気指数(PMI)がさえないことに求められます。これらの指標が明らかに再加速するまでは、循環株の売買の推進がためらわれるのです。そしてこの躊躇の根底には、米国経済が「グロース・スケア(成長失速への警戒)」に逆戻りしないだろうかという根強い不安感があります。私は違う見方をしています。私は、3年間に及んだローリング・リセッションは 去年 昨年4月の「解放の日」をもって終わったと考えています。もしその通りであれば、伸び悩む雇用関連統計におけるいくぶん弱い動きは、株式にとっては前向きな材料となります。FRBのハト派的なスタンスがその分長期化し、かつ強化されるためです。まさに株価にとっては好材料です。私は、主要なマクロ経済指標は2025年下半期に底を打ち、2026年がその再加速の年になるとみています。より長いサイクルの分析もこの見方を支持しています。具体的には、ISM製造業PMIの45ヵ月サイクルが反転を示しています。この指標の回復は遅れていますが、取り消されたわけではありません。もうひとつ、十分に注意が払われているとはとても言えない追い風として、エネルギー価格をあげることができます。特にガソリン価格はほぼ5年ぶりの安値水準にあり、低中所得の消費者には経済面の大きな救いとなっています。こうしたクッションは重要です。経済のほかの部分が堅調な時は特にそうです。この週末にベネズエラで起きたことも、長期的には原油価格を押し下げそうです。次はセクターごとに見ていきましょう。規制緩和の恩恵を享受するセクターの筆頭は金融です。こうした変化を見越して、金融株は過去1年間、高パフォーマンスをあげてきました。2026年に入ってもこの上昇は続くだろうと私は見ています。 住宅も回復局面の重要な要素になり得ます。賃金の伸び悩みと賃料相場の下落は住宅価格を押し下げるかもしれませんが、一部の住宅建築業者は利益率よりも量を重視しています。そのため、これらの業者の利益は頭打ちになるかもしれませんが、住宅取引の回転を高め、よりハト派的なインフレ環境を形成することにつながる可能性があります。当然ながらリスクも存在します。弊社では9月以降、流動性を最も懸念していますし、それは投機的な資産の弱さという形で相場にも反映されています。ただ、FRBがこれに対応して量的引き締めを先に終了させ、準備金管理プログラム(RMP)を通じて資産購入を再開したことは好材料です。このプログラムは、ストレスが加わっている気配をここ数ヵ月間見せていた金融システムの流動性を効果的に増やしています。AI関連の設備投資が減速するのではとの懸念の再燃というリスクもあります。借り入れた資金による投資の見返りがどうなるのかもっと明確に知りたいと市場が要求する場合は、特にそうです。また地政学的には、米国によるベネズエラへの介入が新たな問題を引き起こしています。戦略的には、この一件によって西半球に対する米国の影響力は強まりますし、弊社の「景気を過熱させる」という仮説も支持されますが、中国が対応策を取るか否かという大きなワイルドカードが残ります。まとめますと、現在はサイクルの回復局面の初期段階にあると考え2026年の米国株を強気にみている弊社の見方は、リスクとリワードのバランスから見てもやはり支持されると弊社では考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
弊社チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターが、モルガン・スタンレーの2026年グローバル見通しに対するお客様からのフィードバックにお答えします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターが、2026年の弊社見通しに関して、特に議論を呼んだテーマを選んで、お寄せいただいた御意見について考察します。このエピソードは12月16日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。数週間前に、弊社はグローバル経済および市場に関する2026年の見通しを掲載したOutlook(アウトルック)を発行しました。その後、アウトルックで示した重要なテーマについて、世界中のお客様と幅広い会話や意見交換、議論を重ねてまいりました。いただいたご意見は、強い賛同から鋭い反論まで多岐にわたり、その間には多くの微妙に異なるご意見がありました。こうした対話、特に反論は、弊社の前提を再検証し、思考を磨く上で非常に重要であると考えています。AIおよびデータセンター関連の設備投資に対する前向きなスタンスと、クレジット市場の役割が極めて重要であるとの弊社見解は、特に注目を集めました。弊社の2026年の設備投資予想は、今後数年間、コンピューティング需要が供給を大きく上回るという強い確信に基づいています。弊社は引き続き、公募、私募両方の無担保、仕組み債、証券化商品を含むクレジット市場が、次なるAI主導の投資の波を支える資金調達の中心になると確信しています。ここで重要なのは、この支出がマクロ経済の状況、つまり金利や経済成長率の水準に対して比較的鈍感であると考えられる点です。AI投資の規模については、弊社の経済予想に対して「もっと高い成長になるのではないか?」というご指摘がありました。これは複数年にわたるプロセスであることから、成長への影響も長期にわたると弊社は考えています。米国クレジット・ストラテジストは、投資適格債、いわゆるIG債の供給について、発行総額が前年比25%増の2兆2,500億ドル、純発行額が前年比60%増の1兆ドルと予想しており、大きな注目を集めました。この発行額の弊社予想に対して反論がありました。設備投資が売上高の成長を上回るペースで拡大し、フリーキャッシュフローを圧迫するため、その間はクレジットが資金調達の重要な手段となるためです。なお、弊社が予想している発行増の主因はAIだけではありません。M&A活動の活発化と、それに伴う買収資金調達を目的としたIG債の供給増加も重要な要因になると考えています。また、信用スプレッドが小幅に拡大するとの弊社予想にも反論がありました。IG債のスプレッドは15bp前後拡大すると弊社は予想しており、供給の急増にもかかわらず、過去のレンジの下限付近にとどまると考えています。より大幅な拡大を予想する声もありましたが、AI関連の新規発行の大半は、現在、株式市場におけるウェイトに比べてクレジット市場における構成比が小さい、ダブルA格からトリプルA格の高格付けの発行体によるものになると弊社は見ています。さらに、今後2回の利下げによる金融緩和政策の継続、景気の緩やかな再加速、利回りを重視する投資家からの需要の持続が、スプレッドを下支えると考えています。弊社のマクロストラテジストは、2026年を、各国中央銀行が均衡点に近づく中、協調的な引き締めから非協調的な正常化に向かう、世界の金利にとっての移行の年ととらえています。この見方は、概ね好意的に受け止められました。また、国債利回りが概ね総じてレンジ内で推移するとの見通しも同様です。ただし、FRBの政策がハト派寄りに傾くことを市場が織り込むという見方は、かなりの議論を呼びました。イールドカーブのスティープ化については広く合意がありましたが、スティープ化がブル・スティープニングなのかベア・スティープニングなのかについては依然、意見が分かれています。米国以外については、ECBが2026年に追加で2回利下げを行うとの予想に対して最も大きな反論がありました。弊社エコノミストは、「ディスインフレのプロセスは終わった」とするラガルド総裁の見解に同意していません。ドイツの財政拡張によってユーロ圏の緩やかな成長が続いても、他の諸国が財政再建を進める中、依然として需給ギャップが存在し、インフレ率はいずれECBが目標とする2%を下回ると弊社は見ています。中国についても活発な議論がありました。最大の論点は、ミクロとマクロのどちらの視点で見るかという点です。言い換えると、「市場は経済そのものではなく、経済も市場そのものではない」ということになります。今年、中国への投資に対する市場のセンチメントは好転し、弊社ストラテジストもこの見方に賛同しています。ただし、経済面ではデフレが続き、政府の財政政策の規模では目先、リフレーションを促すには至らないと見ています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
FRBが毎月400億ドルの米国債購入を再開することを決定しましたが、その意味について、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストの マイク・ウィルソンがご説明します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、先週のFRBの決定と、それが株式にとって何を意味するかについて、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストの マイク・ウィルソンがご説明します。このエピソードは12月15日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週のFRBの会合は、弊社の前向きな2026年株式見通しをさらに後押しするものとなりました。FRBは予想通りタカ派的な利下げを実施しましたが、労働市場がさらに軟化すれば、追加の措置を取るとも示唆しました。利下げ以上に重要だったのは、FRBが資産購入の再開を決定したことです。具体的には、FRBは金融市場の円滑な運営を確保するため、毎月400億ドルのTビルの購入をすぐに開始する予定です。発表前に投資家と話をした限り、この購入額とタイミングは、コンセンサスや私自身の予想を上回るものでした。また、これは私が数ヶ月間議論し、来年の見通しでも強調してきた重要な洞察を裏付けるものです。まず、FRBは市場から独立しているわけではなく、市場の安定性が、完全雇用と物価安定という定められた二つの使命を超えて、FRBの政策において主要な役割を果たすことがよくあります。次に、債務と赤字の規模を考えると、FRBには財務省が政府資金調達を行うのを支援する追加責任があり、この関連で今後も財務省とより緊密に連携していく可能性が高いでしょう。最後に、予想よりも早く、より積極的に資金調達市場に介入するという決定は、FRBの定義する「量的緩和」ではないかもしれません。しかし、これは債務の貨幣化の一形態であり、特に財務省が長期国債よりも短期国債を多く発行する中で、依然として増加している米国債発行によるクラウディングアウトを直接的に緩和するものです。FRBの10月の会合では、流動性の引き締まりについて若干の懸念が示されましたが、私はこのポッドキャストで、これが株式の強気相場にとって最大のリスクであると述べてきました。流動性の引き締まりの証拠は、暗号資産や利益の出ていない成長株など、流動性に最も敏感な資産価格の動きに見られます。FRBはこれらの資産クラスのパフォーマンスにはあまり関心がないかもしれませんが、債券、信用、資金調達市場の金融安定性には関心があります。これが、FRBが大方の予想よりも早く、より大規模な形で資産購入を再開した理由でしょう。先ほど述べたように、短期国債の発行を今後増やすという財務省の目的を踏まえ、弊社はこれを債務の貨幣化の一形態と見ています。さらに重要なのは、これらの購入が市場に追加の流動性を提供し、利下げと組み合わせることで、FRBがインフレ目標の未達をそれほど心配していないことを示唆している点です。これは「経済を過熱させる」という2021年初頭から続く弊社のシナリオに極めて合致しています。念のため申し上げると、インフレ加速は、FRBが2022年のように「パンチボウル」を取り上げざるを得なくならない限り、資産価格にとってポジティブな要因です。皮肉なことに、短期的なリスクは、このように予想よりも大規模な資産購入プログラムであっても、市場が円滑に運営されるために必要な準備金の水準をFRBが大幅に過小評価していた場合、不十分になる可能性があるということです。これは2019年に起こったことであり、FRBがそもそもスタンディング・レポ・ファシリティ(常設レポファシリティ)を作った理由です。しかし、これはどちらかというと必要に応じて使われるツールです。FRBが円滑に機能する金融市場に必要な準備金の水準を過小評価していた場合、市場が求めたり、必要としたりするかもしれないものは、より大きなバッファーです。はっきり言っておきますが、それがどれほどの水準かは私には分かりません。しかし、市場が今回のFRBの措置で十分かどうかを教えてくれると信じています。この点に関しては、流動性に敏感な資産クラスや株式市場の分野に注目することが重要でしょう。特に、先週の金曜日と今朝の取引でこれらの相場がどれほど低迷していたかを考えるとなおさらです。結論として、FRBは過去数か月間にわたり市場の揺れに対応してきました。もし市場が再び不安定になれば、FRBは状況が落ち着くまで再び反応するだろうと弊社は強く確信しています。先週のFOMC会合を受け、そうした確信はさらに強まり、弊社は今後6~12か月間について強気の姿勢を維持しています。S&P500の目標価格は7800です。短期的な調整は買いの機会として歓迎します。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。 
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