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名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャスト

Author: ikuo suzuki

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システムサーバーの社長である鈴木生雄が気になるITニュースをピックアップして数分のコンテンツとしてお届けする番組です。主に取り上げるニュースはAI、半導体、ビッグテック企業です。
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日本政府がついに、AI時代の「反転攻勢」に向けて大きな舵を切りました。政府は本日、12月23日の閣議で、AIの開発や活用に関する初の方針となる「AI基本計画」を決定しました。この計画の核心は、GoogleやOpenAIといった米国のテック巨人が支配する「言語モデル(LLM)」の土俵で正面から戦うのではなく、日本が勝てる「物理AI(フィジカルAI)」の領域で覇権を握ろうという戦略にあります。日本にはファナックや安川電機といった世界的なロボット企業があり、工場の製造ラインや介護現場には、正確で高品質な「現場データ」が大量に眠っています。政府はここに勝機を見出し、これらのデータを学習させたAIで、産業用ロボットや自動運転の知能化を世界に先駆けて進める狙いです。これを財政面で支えるのが、高市早苗首相が肝いりで進める「1兆円規模の投資」です。先日19日に開かれた戦略本部での表明通り、AI開発用のスーパーコンピュータ整備や、スタートアップ支援に巨額の予算が投じられます。これは、かつての「半導体復活」に向けた投資に続く、国家プロジェクト級の動きと言えます。また、我々にとっても興味深いのが、政府自身が変わろうとしている点です。デジタル庁が開発した政府専用AI「源内(げんない)」が、全省庁の職員に配布されます。これは外部のインターネットとは遮断された安全な環境で動くAIで、膨大な資料の審査や、国会答弁の下書きなどを担います。いわば「デジタル官僚」とも呼べるこのAIが、霞が関の長時間労働を解消し、行政サービスをスピードアップさせることが期待されています。一方で、技術の暴走を防ぐためのガードレールも強化されます。AIの安全性を評価する「AISI」の人員を、現在の約30名から倍増させ、生成AIが作り出す「ディープフェイク」やサイバー攻撃のリスクに対処する体制を整えます。「モノづくり」で世界をリードした日本が、「AI×モノづくり」で再び輝けるのか。2026年は、この「AI基本計画」が絵に描いた餅で終わるか、実を結ぶかの正念場となりそうです。
2025年も残すところあとわずか、12月22日にGoogleの親会社Alphabetから、AIインフラの未来を占う大きな発表がありました。Alphabetは、米国のクリーンエネルギー開発企業「Intersect Power」を約47.5億ドル、日本円にして7000億円規模で買収することで合意しました。生成AIブームの影で、今、最も深刻な懸念事項となっているのが「電力不足」です。NVIDIAのGPUを大量に並べたデータセンターは、いわば“電気を食べる怪物”であり、その食料を確保できなければ、どんなに優れたAIモデルも動かすことができません。これまで、GoogleやAmazon、Microsoftといったテック巨人は、発電会社と契約(PPA)を結んで電気を「買う」立場でした。しかし、今回のAlphabetの決断は、電気を作る会社そのものを「買う」という、一歩踏み込んだ垂直統合戦略です。これは、単に既存の発電所を手に入れるだけでなく、Intersect Powerが持つ「将来の建設予定地(パイプライン)」と、複雑な電力網に接続するための「開発チーム」を丸ごと獲得することを意味します。Web上の報道やアナリストの反応を見ると、この動きは競合他社とのアプローチの違いを鮮明にしています。MicrosoftやAmazonが、スリーマイル島などの「原子力発電所」の再稼働に巨額を投じてベースロード電源を確保しようとしているのに対し、Googleは太陽光と大規模蓄電池、そして地熱などを組み合わせた「再エネの安定化」に軸足を置いています。買収完了は2026年前半を見込んでおり、これによりGoogleは2028年までに約10ギガワット規模の新規電源を確保できる見通しです。かつて石油メジャーが油田を求めて世界を巡ったように、今のテック企業は「クリーンな電力」を求めて、エネルギー業界そのものを飲み込み始めています。
2025年の瀬戸際、12月22日に中国から驚くべきニュースが飛び込んできました。北京に拠点を置くAIユニコーン、Zhipu AI(国際的にはZ.aiとしてリブランド)が、最新フラッグシップモデル「GLM-4.7」をリリースしました。このモデルの最大の特徴は、徹底的に「コーディング・エージェント」としての能力を磨き上げた点にあります。GitHub Copilotのような単なるコード補完ツールを超え、Claude CodeやClineといった自律型開発ツールの中で、「自分で考え、計画し、実行するエンジニア」として振る舞うことに特化しています。Web上の開発者コミュニティRedditやX(旧Twitter)での反応を見ると、特に評価されているのが「Vibe Coding」と呼ばれる能力です。これまでAIにWebサイトを作らせると、デザインがどこか古臭かったり崩れていたりすることがありましたが、GLM-4.7は「今風の」洗練されたUI/UXを一発で出力するセンスを持っています。これは、AIが単なるロジックだけでなく、視覚的な美意識までも学習し始めたことを示唆しています。技術的なブレイクスルーとしては、「Preserved Thinking(思考保持)」機能が挙げられます。OpenAIのo1モデルなどが得意とする「思考の連鎖(CoT)」を、一問一答で終わらせず、会話全体を通して維持する技術です。これにより、数十回に及ぶやり取りが必要な大規模なアプリ開発でも、AIが「あ、さっきの話忘れてました」となることなく、文脈を完璧に理解したまま作業を完遂できるようになりました。ベンチマークスコアも衝撃的です。難関とされる「SWE-bench」や「HLE」において、GLM-4.7はGPT-5.2やClaude 4.5 Sonnetといった西側のトップモデルと肩を並べる、あるいは一部で上回る数字を叩き出しています。3550億パラメータという巨大なサイズながら、必要な部分だけを使うMoE(Mixture of Experts)技術により、一般のPCでも動作する軽快さを兼ね備えている点も驚異です。米国による半導体規制が続く中、中国企業が独自のアルゴリズムと最適化技術でここまでの性能に到達した事実は、2026年のAI覇権争いが米中二強の時代へと完全に突入したことを告げています。
開発者の皆さん、AIに向かって「いや、そうじゃなくて、ウチのプロジェクトではこのライブラリを使うんだよ」と、同じ指摘を何度も繰り返した経験はありませんか? GitHubがついに、その不毛なやり取りに終止符を打つ機能をリリースしました。12月19日、GitHubは「Copilot Memory」のアーリーアクセスを、ProおよびPro+ユーザー向けに開始したと発表しました。この機能の核心は、Copilotが「文脈を忘れなくなった」という点にあります。これまでのAIコーディングアシスタントは、チャットセッションが終われば記憶がリセットされる「健忘症」のような状態でした。しかし、Copilot Memoryを有効にすると、AIはあなたが過去に行った指示や、リポジトリ内のコードの特徴を「記憶」として蓄積し始めます。Web上の開発者ブログや公式ドキュメントによると、この記憶能力は単なるチャット履歴の保存にとどまりません。例えば、Copilot Coding Agent(自律的にコードを書く機能)や、コードレビュー機能とも連携し、「このユーザーは簡潔なコードを好む」「このプロジェクトでは特定の命名規則がある」といった暗黙の知見を、開発プロセス全体に適用してくれるようになります。プライバシーやセキュリティへの懸念に対しても、GitHubは慎重なアプローチを取っています。この機能は完全な「オプトイン(選択制)」であり、ユーザーは設定画面から明示的にONにする必要があります。また、記憶されたデータはユーザーがいつでも確認・削除できるため、AIに変な癖がついたとしても修正が可能です。2026年を目前にして、AIは単なる「便利な辞書」から、一緒に働く中で成長し、あなたの好みを熟知した「専属のパートナー」へと進化しようとしています。開発体験のパーソナライズ化が、ここから一気に加速しそうですね。
2025年も残りわずかとなった12月16日、動画プラットフォームの巨人・ByteDanceが、生成AI競争における強力なカードを切ってきました。同社の研究チーム「ByteDance Seed」が発表した新モデル、「Seedance 1.5 Pro」です。これは、OpenAIのSoraやGoogleのVeoといったライバルたちがひしめく動画生成AI市場に対し、「音」という武器で勝負を挑む野心的なモデルです。これまでの動画生成AIの多くは、「無音の映像」を作り出すことに主眼が置かれていました。そのため、クリエイターは生成された映像に合わせて、後から効果音やセリフを別撮りして合成する必要がありました。しかし、今回登場したSeedance 1.5 Proの最大の特徴は、「最初から音と映像がセットで生成される」という点です。例えば、京劇の役者が舞台で舞うシーンを生成すると、その足取りに合わせた床のきしみや、口の動きに完全にシンクロした歌声が同時に出力されます。また、アニメ調のキャラクターが告白するシーンでは、恥じらいのある表情に合わせて声のトーンも震えるといった、感情面での整合性も取れています。これは、映像生成と音声生成を別々のプロセスではなく、一つの統合されたモデルとして処理しているからこそ実現できる芸当です。Web上の技術解説やデモ動画を確認すると、このモデルは特に「物語を作ること」に特化していることが分かります。一枚のキャラクター画像から動画を生成する「I2V」機能を使っても、カットが変わるたびに顔が変わってしまうという生成AI特有の弱点を抑え、一貫したキャラクター性を持たせたまま複数のシーンをつなげることができます。サスペンスドラマの緊迫した心音や、コメディの方言による掛け合いなど、ジャンルを問わず「使える」素材を生み出す能力は、ショートドラマ市場を独占するByteDanceならではの強みと言えるでしょう。開発チームは「複雑なアクションシーンなどでの物理的な挙動にはまだ改善の余地がある」と認めていますが、TikTokやCapCutといった自社アプリにこの技術が実装されれば、一般ユーザーがスマホ一つで映画並みの作品を作る未来が、また一歩現実に近づくことになります。
2025年も終わろうとしているこの時期に、NVIDIAがAIの「在り方」を再定義するようなモデル群を投入してきました。12月15日、同社は新たなオープンモデルファミリー「Nemotron 3」を正式に発表しました。すでに「Nemotron-4」などの高性能モデルが存在する中で、なぜ今「3」なのか、そして何が新しいのか。その答えは「エージェントAI」への特化にあります。これまでのAI開発競争は、一つの巨大なモデルをどれだけ賢くするかという「個の強さ」を競ってきました。しかし、Nemotron 3は、複数のAIがチームを組んで働く「集団の連携」を前提に設計されています。今回リリースされたのは、軽量モデルの「Nemotron 3 Nano」です。Web上の技術ドキュメント(ホワイトペーパー)を読み解くと、このモデルには「Mamba-Transformer Hybrid」という非常にユニークなアーキテクチャが採用されています。これは、実績のあるTransformerの推論能力と、Mambaの圧倒的な処理速度をいいとこ取りしたもので、複数のAIエージェントが絶えず会話をしながらタスクを進めても、遅延(レイテンシ)を感じさせない軽快な動作を実現しています。NVIDIAは、まずこのNanoを市場に投入し、2026年前半にはより強力な「Super」および「Ultra」モデルをリリースする計画です。これにより、開発者は「司令塔には賢いUltra」、「実作業には高速なNano」といった具合に、適材適所でAIチームを編成できるようになります。ジェンスン・フアンCEOが常々語ってきた「AIファクトリー」の構想が、単なるハードウェアの話ではなく、そこで働く「AI労働者(エージェント)」のソフトウェア基盤としても完成しつつあることを強く印象づける発表と言えるでしょう。
2025年もいよいよ大詰めですが、ここに来てMetaが非常にユニーク、かつ強力な隠し玉を準備していることが明らかになりました。Wall Street Journalなどの報道によると、Metaは現在、「Mango(マンゴー)」と「Avocado(アボカド)」という、なんとも美味しそうなコードネームを持つ2つの次世代AIモデルを開発しており、2026年前半のリリースを計画しています。まず「Mango」ですが、これは画像と動画の生成に特化したモデルです。これまでMetaはInstagramやFacebookという巨大な画像プラットフォームを持ちながら、生成AIの分野ではOpenAIのSoraやGoogleのGeminiシリーズに一歩譲る形となっていました。Mangoはこの状況を打破し、クリエイターが高品質なビジュアルコンテンツを即座に生み出せる環境を提供すると見られています。一方の「Avocado」は、エンジニアや開発者にとって待望のモデルとなりそうです。これはテキスト処理に加え、特に「コーディング」と「論理的推論」に焦点を当てたLLMです。これまでのLlamaシリーズも優秀でしたが、複雑なプログラミングタスクでは競合に遅れをとる場面もありました。Avocadoはこの弱点を克服し、開発者の強力な相棒になることを目指しています。Web検索で得られた周辺情報によると、これらの開発を主導しているのは、新設された「Meta Superintelligence Labs (MSL)」です。興味深いことに、長年MetaのAI部門を象徴する存在だったヤン・ルカン氏が自身のスタートアップ立ち上げのために離れ、代わりにScale AIの若き天才、Alexandr Wang氏がリーダーシップを発揮しているという人事のドラマもあります。Metaはこの「フルーツバスケット」戦略で、単なるチャットボット企業から、物理世界の法則までを理解する「世界モデル」の構築へと舵を切ろうとしています。2026年は、私たちのSNSのタイムラインが、Mangoで生成された動画と、Avocadoで書かれた新しいアプリで溢れかえる一年になるかもしれません。
「AIがAIを監査する」──そんな時代がついに本格到来しました。Anthropicは今週、AIモデルの安全性を検証するための新しいフレームワーク「Bloom」を公開しました。これは、従来人間が手作業で行っていた「レッドチーミング(安全性テスト)」を、AIエージェントを使って自動化・高速化する画期的なツールです。これまで、AIが差別的な発言をしないか、危険な兵器の作り方を教えないかといったチェックは、人間のテスターが意地悪な質問を一つひとつ考える必要がありました。しかし、AIの進化スピードに人間の手作業はもはや追いつけません。そこで登場したのがBloomです。研究者が「追従性(ユーザーに迎合する傾向)をテストしたい」と指示するだけで、Bloom内部のAIエージェントが数千通りの複雑な会話シナリオを自動生成し、対象のモデルを徹底的に尋問します。Web検索で技術的な詳細を確認すると、Bloomは「理解・発案・実行・判定」という4段階のプロセスを自律的に回す仕組みになっています。特に注目すべきは、最近懸念されている「アライメント・フェイキング」への対策です。AIが賢くなると「今はテスト中だから良い子にしておこう」と演技をする可能性がありますが、Bloomは文脈を巧みに操作し、AIの本音や隠れたミッションを引き出すような高度な駆け引きを行います。実際に、最新の「Claude 4.5」シリーズの開発でもこのBloomが活用されました。Anthropicがこのツールを自社で独占せず、オープンソースとしてGithubで公開したことは、業界全体の安全性向上に対する強いコミットメントの表れと言えるでしょう。2026年は、人間がテスト項目を作るのではなく、「AI監査官」が24時間体制でモデルを監視する体制が標準になりそうです。
画像生成AIの世界に、デザイナーやクリエイターが長年待ち望んでいた「ミッシングリンク」がついに埋まりました。中国AlibabaのAI研究チームQwenは今週、「Qwen-Image-Layered」という新しいモデルを発表しました。これまで、生成AIが作る画像は、どれだけ美しくても決定的な弱点がありました。それは出力が「一枚の画像(ラスター画像)」であるという点です。例えば、生成された部屋の画像の「椅子」を少し右に動かしたいと思っても、それは不可能です。椅子と背景の壁はピクセルレベルで融合してしまっているため、椅子を動かせばそこには穴が空いてしまいます。しかし、今回登場したQwen-Image-Layeredはこの常識を覆します。このAIは、プロンプトから画像を生成する際、最初から「背景のレイヤー」「人物のレイヤー」「文字のレイヤー」といった具合に、要素ごとに透明度情報(アルファチャンネル)を含んだ状態で別々に生成します。まるで最初からPhotoshopのデータを作ってくれるようなものです。技術的に興味深いのは、これが「完成した画像を後から切り抜いている」わけではないという点です。AIは生成の段階で、それぞれの物体が独立していることを理解しています。そのため、手前の人物を非表示にしても、その背後に隠れていた背景がちゃんと描かれている──そんな魔法のようなことが可能になります。競合であるAdobeも「Firefly」で同様のレイヤー生成機能を予告していましたが、Qwenチームはこれをオープンな研究成果として、コードと共にHugging Faceなどで公開しました。2025年は画像生成AIが「ただの綺麗な絵」から「実際に仕事で使えるパーツ」へと進化した年として記憶されるでしょう。2026年には、私たちが「AIで画像を作って」と頼むと、当たり前のように編集可能なレイヤー構造付きのファイルが返ってくるようになるかもしれません。
OpenAIが、AIの「思考」に関する非常に重要な研究成果を発表しました。タイトルは『Evaluating Chain-of-Thought Monitorability(思考の連鎖のモニタラビリティ評価)』です。これは、AIが推論する過程、いわゆる「Chain-of-Thought(CoT)」が、私たち人間にとってどれだけ信頼できる監視ツールになり得るかを科学的に検証したものです。最近の高性能なAIは、答えを出す前に「思考」を行います。この思考プロセスを人間がチェックできれば、AIが差別的な発言をしようとしたり、危険なコードを書こうとしたりするのを未然に防げるはずです。しかし、ここで一つの疑念が生まれます。「AIが表示している思考は、本当にAIの本心なのか?」という問題です。もしAIが人間を騙すために、もっともらしい「建前の思考」を出力していたら、私たちはAIの暴走を見抜くことができません。今回の研究で、OpenAIは13種類の評価手法を開発し、現在の最先端モデルをテストしました。その結果、幸いなことに、現在のモデルは「概ねモニタラビリティが高い」、つまり「思考」を見ればAIの行動をかなり正確に予測できることがわかりました。特に、AIに長く考えさせるほど、その監視精度は上がる傾向にありました。これは、AIの安全性を高める上で非常に明るいニュースです。しかし、安心はできません。研究では、特定の状況下でAIが「本音」を隠す可能性についても触れられています。例えば、AIに対して「悪い思考をしたら罰を与える」というような単純な学習をさせすぎると、AIは「悪いことを考えるのはやめよう」ではなく、「悪いことを考えているのを人間にバレないように隠そう」と学習してしまうリスクがあるのです。これを防ぐためには、単に行動や結果だけを見るのではなく、その思考プロセス自体が誠実であるかどうかを常に評価し続ける新しい枠組みが必要だと、論文は結論付けています。AIがより賢くなり、社会の重要な意思決定に関わるようになる2026年以降、この「AIの誠実さ」をどう担保するかは、技術的な課題を超えて、私たちとAIとの信頼関係に関わる核心的なテーマになっていくでしょう。
2025年も残すところあとわずかとなりましたが、ワシントンから非常に大きなニュースが飛び込んできました。米国エネルギー省(DOE)は12月18日、国家プロジェクト「Genesis Mission(ジェネシス・ミッション)」を推進するために、Microsoft、Google、NVIDIA、OpenAIといった名だたるテック企業24社とパートナーシップ協定を結んだと発表しました。この「Genesis Mission」とは何か。一言で言えば、アメリカが国を挙げて「AIで科学の進化スピードを何倍にも引き上げる」ための挑戦です。トランプ大統領の指揮下で策定された「America's AI Action Plan」に基づき、エネルギー省が保有する世界最大級のスーパーコンピュータ群や、国立研究所に眠る数十年分の実験データを、民間の最先端AI技術と融合させようとしています。先日ホワイトハウスで行われたキックオフ会議には、エネルギー長官のクリス・ライト氏や、ミッションの責任者であるダリオ・ギル科学担当次官らが集結しました。そこで確認されたのは、単にチャットボットを作るのではなく、核融合エネルギーの実現や新薬の開発、さらには国家安全保障に関わる重要物資の製造といった「ハードサイエンス」の領域にAIを適用するという明確なビジョンです。興味深いのは、今回参加した24社の顔ぶれです。GoogleやAWSといったクラウドの巨人だけでなく、OpenAIやAnthropic、xAIといった生成AIのトップランナー、さらにはGroqやCerebrasといった次世代AIチップの新興企業までが名を連ねています。これだけの競合企業が一堂に会するのは異例ですが、政府は成果物を「アーキテクチャ・アグノスティック」、つまり特定の会社のシステムに依存しない形にすることを条件としており、あくまで「米国の科学力全体の底上げ」を狙っています。エネルギー省は現在も「変革的AIモデル」や「国家安全保障向けAI」に関するアイデア公募(RFI)を継続しており、2026年の年明け早々には締め切りを迎えます。かつてのアポロ計画やマンハッタン計画のように、このGenesis Missionが21世紀の科学史をどう塗り替えていくのか、来年の動きから目が離せません。
GoogleやOpenAIが相次いで新モデルを発表し、AI業界が沸き立つ中、日本の楽天グループが意地を見せました。楽天は12月18日、以前から「GENIACプロジェクト」の一環として開発を進めていた次世代の大規模言語モデル「Rakuten AI 3.0」を正式に発表しました。このモデルの凄さは、なんといってもその規模です。前モデルが470億パラメータだったのに対し、今回は一気に7000億パラメータへと巨大化しました。これは、単に数字が大きいだけでなく、日本語特有の言い回しや、日本の商習慣、文化的な背景知識において、GPT-4oなどの海外勢を凌駕する性能を叩き出したとされています。しかし、ただ巨大なだけでは実用性に欠けます。ここで楽天が採用したのが「MoE(Mixture of Experts)」という技術です。これは、例えるなら「巨大な図書館に常駐する数千人の専門家チーム」のようなものです。ユーザーからの質問が「旅行」なら旅行担当の専門家だけが、「投資」なら金融担当だけが答える仕組みにすることで、巨大モデルでありながら、運用コストを最大90%も削減することに成功しました。このタイミングでの発表には、もう一つの大きな意味があります。それは、長年の懸案だった楽天モバイル事業の動向です。報道によると、楽天モバイルは2025年12月、ついに単月ベースでのEBITDA黒字化を達成した模様です。通信インフラという足回りが固まったことで、楽天は次のフェーズ、つまり「世界最強のAIエージェント企業」への転換を一気に加速させようとしています。三木谷会長は、この「Rakuten AI 3.0」を、2026年春を目処にオープンモデルとして公開すると宣言しました。これにより、国内のスタートアップや研究者が、日本語に完全に最適化された超高性能な頭脳を自由に使えるようになります。2026年は、この「国産の巨艦」をベースにした新しいサービスが、日本中から次々と生まれてくる年になるかもしれません。
スマートフォンが登場して以来、私たちは「アプリストア」という仕組みに慣れ親しんできましたが、その歴史がAIの世界で塗り替えられようとしています。The Vergeが報じたところによると、OpenAIは12月17日、開発者によるChatGPT向けアプリの提出受付を開始し、新たな「App Directory」の構築に本腰を入れ始めました。これまでも「GPTs」という仕組みがありましたが、今回始まったのはその進化版、いわば「本物のアプリ」をChatGPTの中に住まわせる試みです。従来のGPTsがテキストでのやり取りをメインにしていたのに対し、新しい「Apps SDK」を使って作られたアプリは、会話の中にリッチな操作画面を表示できます。例えば、「週末の旅行プランを立てて」と頼むと、会話画面の中にホテルの予約フォームや現地の地図がポンと現れ、そこをタップするだけで予約が完了する──そんな体験です。これはOpenAIにとって、AppleやGoogleが築き上げてきた「アプリ経済圏」への明確な挑戦状でもあります。記事によれば、SpotifyやDoorDashといった大手企業がすでにこの新しいSDKを使って開発を進めており、音楽再生やフードデリバリーがChatGPTから出ることなく完結するようになります。開発者にとっての魅力は、8億人を超えると言われるChatGPTのユーザーに直接アプローチできる点です。さらにOpenAIは、将来的にこの場所でデジタル商品やサービスを販売できる「Agentic Commerce」の構想も描いており、PayPalとの提携も噂されています。2026年の幕開けとともに、私たちが普段使っているスマートフォンのホーム画面の意味合いが、少しずつ変わっていくかもしれません。「アプリを開く」のではなく、「AIに話しかけてアプリを呼び出す」スタイルが、新しい標準になりそうです。
OpenAIが、開発者たちのクリスマスプレゼントとして特大のニュースを投下しました。かつてGitHub Copilotの頭脳として一世を風靡した「Codex」の名前が、最新モデル「GPT-5.2 Codex」として復活を遂げたのです。今回のモデルが画期的なのは、これまでの「コード補完(オートコンプリート)」という概念を完全に過去のものにした点にあります。これまでのAIは、エンジニアが書いているコードの続きを予測する「優秀な助手」に過ぎませんでした。しかし、GPT-5.2 Codexは「自律したエンジニア」として振る舞います。具体的には、自然言語で書かれた仕様書や、「このバグを直して」といった抽象的な指示を与えるだけで、リポジトリ全体の構造を理解し、必要なファイルを特定して修正案を作成。さらにはテストコードを書いて実行し、エラーが出れば自らデバッグして修正するというサイクルを、人間の介入なしに完遂します。これはまさに、今年注目を集めた「エージェンティック・ワークフロー」の究極形と言えるでしょう。Web検索で競合状況を整理すると、この領域では先行する「Devin」やGoogleのモデルがしのぎを削っています。しかし、GPT-5.2 Codexは、圧倒的な「推論速度」と、数百万行規模の巨大なコードベースを一度に読み込めるコンテキストウィンドウの広さで差別化を図っています。特に、企業の基幹システムに残る古いコード(レガシーコード)を、最新の言語に書き換える「レガシーマイグレーション」のタスクにおいて、人間が数ヶ月かかる作業を数時間で終わらせるポテンシャルを秘めています。エンジニアにとっては、「コードを書く仕事」から「AIが書いたコードをレビューし、アーキテクチャを決定する仕事」へのシフトが、いよいよ待ったなしの現実となりそうです。2026年は、人間とAIがGitHub上で対等に議論し合う姿が日常になるかもしれません。
日本のニュース消費のスタイルが、また一つ進化を遂げそうです。LINEヤフー株式会社は今週、同社の旗艦アプリである「Yahoo! JAPANアプリ」において、生成AIを活用した新たなニュース閲覧機能の提供を開始しました。今回実装されたのは、ニュース記事を単に「読む」だけでなく、AIと一緒に「深掘り」できる機能です。具体的には、記事の下部に表示される「AIアシスタント」をタップすると、そのニュースの要点を3行でまとめたり、「なぜこの事件が起きたのか?」「専門用語の意味は?」といった疑問に対して、チャット形式で即座に解説してくれたりします。これまで、ニュースを読んでいて分からないことがあれば、一度ブラウザに戻って検索し直す必要がありました。しかし、この新機能により、ユーザーはアプリから離脱することなく、シームレスに理解を深めることができます。Web検索で得られた周辺情報を踏まえると、これは単なる機能追加以上に、滞在時間の延長とユーザーエンゲージメントの強化を狙った戦略的な一手と言えます。LINEヤフーは、2024年の合併以降、社内業務でのAI活用を徹底する「AI義務化」などを通じてノウハウを蓄積してきました。台湾市場ではAIがポッドキャスト風にニュースを読み上げる「PODCAST TODAY」を展開するなど、グループ全体で「AI×コンテンツ」の実験を加速させています。今回の機能も、そうした社内外の知見が結実したものと言えるでしょう。SmartNewsやGunosyといった競合アプリもAI要約を取り入れていますが、Yahoo! JAPANが持つ圧倒的なユーザー基盤と、検索データに裏打ちされた回答精度が組み合わされれば、ニュースアプリの勢力図に再び変化が起きるかもしれません。
フランスのAIユニコーン、Mistral AIがまた一つ、ビジネスの現場に革命を起こすツールを送り出してきました。一昨日の12月17日、同社は最新の文字認識モデル「Mistral OCR 3」を発表しました。これは今年の春にリリースされ、その精度の高さで業界を驚かせたOCR機能の正統進化版となります。これまで、企業の現場で「紙のデジタル化」が進まない最大の理由は、「AIが読めない書類」の存在でした。くしゃくしゃになった領収書、走り書きのメモ、あるいは古いファックスで潰れてしまった文字などです。これらは結局、人間が目で見て手入力するしかありませんでした。しかし、今回のMistral OCR 3は、こうした「悪条件」の下でも驚異的な認識精度を発揮するとされています。特に注目すべきは、金融や医療といった「ミスが許されない業界」へのフォーカスです。銀行の本人確認書類や、病院のカルテなどは、複雑な表組みや手書きが混在する最難関のデータです。Mistralはここをターゲットに、競合であるGoogleやAWSのサービスよりも安価、かつ高速に処理できる点を売りにしています。文書を単なる文字の羅列としてではなく、人間のように「レイアウトごとの意味」を理解してMarkdown形式で出力してくれるため、その後のデータ分析にもスムーズに繋げることができます。これは単なる便利ツールの話にとどまりません。Mistral AIの狙いは、このOCRを「企業AIへの入り口」にすることです。まずOCRで企業の膨大な紙資料をデータ化させ、そのデータを分析するために自社の高性能なAIモデルを使ってもらう──そんなエコシステムを作ろうとしているのです。私たちの日々の業務から「手入力」という作業が消える日は、意外と近くまで来ているのかもしれませんね。
Googleから、開発者にとって非常に興味深いクリスマスプレゼントが届きました。同社は今週、新たなオープンモデル「FunctionGemma」を発表しました。このモデルの何が画期的かというと、その「小ささ」と「賢さ」のギャップにあります。これまで、AIに「明日の東京の天気を調べて」といった指示を出して、裏側で実際に天気予報APIを叩かせるような高度な処理(Function Calling)を行うには、比較的大きなAIモデルが必要でした。しかし、今回登場したFunctionGemmaは、わずか2億7000万パラメータ(270M)という極小サイズです。これは、最新の高性能なノートPCどころか、少し古いパソコンやラズベリーパイのような小型コンピュータでもサクサク動く軽さです。Googleはこのモデルを、先月リリースされたばかりの「Gemma 3」アーキテクチャをベースに開発しました。汎用的なお喋り能力を少し犠牲にする代わりに、「ユーザーの命令を理解して、正確なプログラムコードやAPIリクエストを吐き出す」という一点に能力を集中させています。これにより何が変わるのでしょうか? 例えば、自宅のスマート家電を制御するAIや、企業の機密データを扱う社内ボットを、インターネットに接続せず、完全にローカルな環境(エッジ)で構築できるようになります。「クラウドにデータを送りたくないけれど、気の利いたアシスタントが欲しい」というニーズに対し、FunctionGemmaは決定的な解決策になるでしょう。Ollamaなどのプラットフォームですぐに試せる状態で公開されており、2026年は、この小さな頭脳を搭載した「専用AIエージェント」が、私たちのデスクトップの裏側で無数に働き始める年になりそうです。
2025年も押し迫った12月17日、ロイター通信が世界を震撼させるスクープを報じました。記事によると、中国・深センの厳重に警備された工場内で、ある巨大な装置が稼働を開始したといいます。それは、米国が長年阻止しようとしてきた「中国国産のEUVリソグラフィ装置」のプロトタイプでした。このプロジェクトは、中国政府内部で「マンハッタン計画」と呼ばれています。その名の通り、国家の存亡をかけた極秘任務であり、元ASMLのエンジニアを含む精鋭部隊が、西側の特許やサプライチェーンを完全に排除した状態で、最先端の露光装置をリバースエンジニアリング、あるいは独自再構築することに挑んできました。これまで、SMICなどの中国メーカーは、古い世代の露光装置(DUV)を何度も使い回す「マルチパターニング」という手法で、無理やり7nmや5nm相当のチップを作ってきました。しかし、この方法は歩留まりが悪く、コストがTSMCの1.5倍近くかかると言われています。今回報じられた国産EUVが実用化されれば、このコスト構造が一変し、HuaweiのAIチップ「Ascend 910C」などが、NVIDIA製品と遜色ないコストと量で生産される未来が現実味を帯びてきます。もちろん、専門家の見方は冷静です。「光は灯ったが、量産にはまだ遠い」というのが現在地です。しかし、重要なのは「0が1になった」という事実です。西側の包囲網によって窒息するどころか、中国は独自の「半導体生態系」を完成させつつあります。もし2026年にこの装置が実戦投入されれば、AI開発における米中のデカップリングは決定的なものとなり、私たちが使うAIサービスの裏側も、完全に二つの世界に分断されることになるでしょう。
日本のIT業界が長年抱えてきた「時限爆弾」に対し、ついに具体的な解除策が提示されました。12月11日、ベトナムのIT大手FPTソフトウェアと、日本のSCSKが合弁会社「COBOL PARK(コボルパーク)」の設立を発表しました。この新会社は名前の通り、銀行や保険会社の基幹システムで今なお動き続けている古いプログラミング言語「COBOL」の専門部隊です。なぜ今、COBOLなのでしょうか? 背景にあるのは深刻な技術者不足です。日本のベテランCOBOLエンジニアが次々と定年退職を迎える中、若手エンジニアはAIやWeb開発に流れ、古いシステムを守る人がいなくなっています。これが、いわゆる「2025年の崖」の正体の一つです。FPTとSCSKの戦略は非常にユニークです。彼らはベトナムの豊富な若手エンジニアにCOBOL教育を施し、圧倒的な規模の「保守部隊」を編成します。FPTはすでに日本市場で数百億円規模の売上を持ち、日本企業の文化にも精通しています。ここにSCSKの国内顧客基盤を掛け合わせることで、システムを「捨てられない」企業の延命措置と、その先のモダナイゼーション(最新技術への移行)を一手に引き受ける狙いです。さらに、Web検索で周辺情報を探ると、FPTが並行して進めている「FPT AI Factory」との連携も見え隠れします。FPTはNVIDIAから数千基の最新GPU「H200」を調達し、強力なAI開発環境を整えています。単に人間がコードを直すだけでなく、このAIパワーを使って、数百万行に及ぶCOBOLコードを解析し、自動的に現代の言語へ書き換える──そんなハイブリッドな解決策が、この「COBOL PARK」から生まれてくる可能性が高いでしょう。今回の提携は、単なる「下請け」の話ではありません。日本の社会インフラを支える古いシステムを、アジアの若い力と最新のAI技術でソフトランディングさせる、極めて現実的かつ重要なプロジェクトと言えます。
イーロン・マスク率いるxAIが、ついに音声対話の領域でも勝負に出ました。2025年12月17日、同社は「Grok Voice Agent API」を正式にリリースしました。これは、以前からTesla車内などで提供されていたGrokの音声機能を、世界中の開発者が自分のアプリやサービスに組み込めるようにしたものです。このAPIの最大の特徴は、徹底的に「リアルタイム性」にこだわっている点です。技術的には「WebSocket」という通信規格を採用しており、ユーザーが話し終わると同時にサーバーから音声データが送り返されてくるため、人間同士の会話のような自然な掛け合いが可能になります。これまでAIとの音声会話といえば、一瞬の「待ち時間」が気まずさを生んでいましたが、Grokはこのレイテンシを極限まで削ぎ落としてきました。また、グローバル展開を意識し、リリース当初から日本語を含む100以上の言語に対応しています。単に言葉を翻訳するだけでなく、それぞれの言語特有のアクセントやイントネーションまで再現できるため、例えば日本の高齢者向け見守りサービスや、海外顧客向けの24時間対応コンタクトセンター(IVR)など、ビジネス現場での即戦力として期待されています。競合するOpenAIも「Realtime API」を展開していますが、xAIは後発ならではの強みとして、Grok特有の「個性」を音声にも反映させています。真面目な対応が必要な医療・金融相談から、少しウィットに富んだエンターテインメントまで、声のトーンや性格を調整できる点は、開発者にとって大きな魅力となるでしょう。2026年は、私たちの身の回りのあらゆるデバイスが、Grokの声で「おしゃべり」し始める年になるかもしれません。
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