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今日は映画と文化のシリーズで「2001年宇宙の旅」です。1968年に日本公開でスタンリー・キューブリックという有名な監督のサイエンス・フィクション(SF)です。SFというのは実在しない異文化を覗き込むというようなところがあり、異文化シリーズと少し関係があるかと思います。もとになっている作品は、アーサー・C・クラークという人の小説ですが、直接の映画化とは言われたくないようですので、そこは注意しておきたいと思いますが、大体のあらすじを少しお話します。 音楽はリヒャルト・シュトラウスの「ツラトストラはかく語りき」、この音楽が「2001年宇宙の旅」の音楽というのはご存知だと思います。最初の場面は生存競争で闘いを繰り広げる人類の祖先たちの様子を延々と流します。相手を倒すときに、道具を使う事を覚えた猿が、骨を道具にして相手をうちのめすのです。実はその入れ知恵をした物体が「モノリス」というのですが、後で将来の時代に話が移った時に、モノリスが月の中から現れてきて「これは何だ?」という話に繋がります。実はこれは人類に知恵を授けた地球外生命の仕掛けだったという話です。その猿が相手を倒し、勝ち誇って思わず骨を空中に投げ上げた物が、宇宙船だか何だかに変わり、時代がパッと移るというシーンが非常に有名です。 実はそういう事になっているということは、ぼーっと観ていると最後まで全く分かりません。私も後で解説などを読んで「ああ、そうだったのか」と膝をかなり打ちました。よく分からない状態でぼーっと観ていると眠たくなります。スター・ウォーズのような作品は、すごく動きがあってそれはそれで良いのですが、それを想像したらダメです。つまり、ものすごくテンポが緩い作品です。1分間、画が動かないと寝てしまうタイプの人は多分途中で寝てしまうと思います。でも後で分かってから思い返すと、「あぁ、あの時のこれはこうだったのか」というのが分かって、実は無駄なことは無かったというのが分かる、そういう作品です。 当時、キネマ旬報ベスト10で第3位の映画でしたが、これはいいと言う人と全く評価しない人とバラバラでした。その後の時代、歴史上の外国映画のベスト10をこの雑誌が企画した時に、第2位に入るくらいの作品です。従ってこれを観ていないと、映画ファンとしてはモグリと言いますか、やはり観るべき映画の筆頭に近いという事になります。この話を聞いて、じゃあ観てみようかと腰を上げて下さる方がいらっしゃったら、すごく嬉しいです。 先程アーサー・C・クラークという人の原作だと話をしましたが、原作という言い方をするな、とよく言われるのですが、その次の作品として「2010年宇宙の旅」「2061年宇宙の旅」「3001年終局への旅」と続きがあります。私はこの映画を観て興奮して、先に原作を読みたくなり、結局最後まで読んでしまったことがあります。例えて言うと「風の谷のナウシカ」の原作は、映画の4倍か5倍くらい先まであります。それを読んでとても嬉しかった覚えがありますが、その時の嬉しさと同じものをこの映画で久しぶりに感じました。 映画は残念ながら2001年の後は2010年という続編がありましたが、それっきりです。この2010年は残念ながら2001年の謎解きで終わってしまい、2001年の時の謎めいた感じ、哲学的な感じが失せてしまっていて、それ程の評価ではありませんでしたが、映画ではとにかく先の方まで観られないので、興味を持ったら原作も読んでみて下さい。 前から申し上げているように、映画を観て原作が気になる人、或いはロケをした場所が気になる人、或いは監督が気になってしまう人、色々なタイプの人がいると思いますが、今回は監督にこだわると、スタンリー・キューブリックという監督ですが、名前を聞くとそこにひれ伏してしまうような偉い人です。もう一つ有名なSFとしては「時計仕掛けのオレンジ」というのを聞いた事がありますでしょうか。これも是非観てほしい作品で、バイオレンス映画的なものですが、あまりにもバイオレンスが続き過ぎる、強制されすぎると、心が壊れてしまうという哲学的な背景がある作品です。 そのほか反戦ものと言えるでしょうか、戦争を扱った「フルメタル・ジャケット」とか或いは核戦争を描いた「博士の異常な愛情」とか、スタンリー・キューブリックを知っている人ですと、そうだそうだと言ってくれる作品が目白押しです。もし良ければ、皆さんもこういうものに監督から辿っていって映画の世界を広げる事をしてもらえたら、もっと嬉しいなと思います。 そして映画というのはお酒を飲みながら娯楽として観てもいいのですが、この作品は頭を働かせて、ここはどうなっているのだろう?と思いめぐらせながら観る映画だと思うのです。その楽しみを得るものとしては最高の作品になっていますので、良かったら是非挑戦してみてください。この作品に関する解説本の類やWebサイトも沢山ありますので、種明かしを観る楽しみもありますから、1週間や2週間は楽しめると思います。 今日のまとめ:スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」。名作の一つに数えられているものですが、もし見逃している方がいたらと思い、ご紹介をしました。是非ご覧になって下さい。
ASEAN

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2021-04-08--:--

後日掲載致します。
後日掲載致します。
自動車産業のこれからというテーマで話しています。今後の車について語る上でCASEがキーワードになっています。これは常時接続を意味するConnected、それから自動運転のAutonomousのA。そしてSharingのS、それから電動化のElectricのEでCASEです。前回は四番目の要素である電動化の内容についてお話をしました。そもそも、この電動化の背景にあるのは地球温暖化問題です。地球温暖化を食い止めるために今二酸化炭素排出量を減らしていこうということで、各国で環境規制が導入されてきています。この環境規制で先行しているのがヨーロッパです。 ヨーロッパの環境規制の特徴は、企業平均燃費で規制をかけている点です。Corporate Average Fuel Economyを略してCAFE規制とも言います。走行中に排出されるCO2は、燃料に含まれている炭素が燃焼時に空気中の酸素と結びついて生み出されます。したがって、燃費の良さ=CO2排出量の少なさという合わせ鏡の関係にあります。燃費を良くすればCO2排出量も減りますから、環境規制では燃費の目標水準を決めるわけです。 これをヨーロッパでは企業平均燃費という形で定めているのです。車種毎に燃費が違うので、燃費の良い車と燃費の悪い車の販売台数の比率が重要です。モデル毎の燃費、つまりCO2排出量とそのモデルの販売台数を掛け合わせて計算したのが企業平均燃費です。欧州における企業平均燃費、いわゆるCAFE規制ですが、数年毎に改定されています。実は今年はとても重要な年で、2021年規制はCO2排出量を企業平均で車が1㎞走行するあたり95g以下に抑えることになっています。これは非常に厳しい水準の規制です。販売車種のほとんどをハイブリッド車かプラグインハイブリッド、もしくはバッテリー電気自動車にしないと達成出来ないような、そんな厳しい燃費基準です。 規制の実効性を高めるために、ヨーロッパの燃費規制では罰金も設定されています。企業平均燃費で95g/kmの目標を1g超過する毎に95ユーロの罰金が、販売台数分かけられることになっています。95ユーロ(およそ1万円)が1g毎ですから、10g超えていたら10倍です。販売台数が50万台とか100万台になってくると、とんでもない金額になるわけです。これはもう絶対守らなければならない、自動車メーカーにとって死活問題になってきます。これがどの程度になるのかはまだ出てないのですが、2020年1月に発表された英国のコンサルティング会社による予測によると、EUで販売している大手13社の全てが目標をクリアできないだろうと予測しています。この罰金の総額はヨーロッパで146億ユーロ(約1兆7,500億円)にもなるとみられている。 この内、目標達成に最も近いと言われているのがトヨタです。目標値に対して2021年の予測値は95.1gですからほぼほぼ達成できそうです。その一方で、ヨーロッパで最も販売台数の多いフォルクスワーゲンの場合、2021年の予測値が1㎞あたり109.3g。罰金総額は約45億ユーロ(5,800億円)なると考えられています。なお、この規制は年々強化されていきます。現在検討されている2025年規制はまだ決定していませんが、1㎞走行あたり81g、2030年に至ってはこれが59gとなるのではないかと言われています。こうなると、今のまま地道な燃費改善をしていっても難しいのではないかというレベルまで来ているわけです。 ただ、企業にとってはこの企業平均燃費をどういう仕組みでクリアするかに関して、かなり自由度があるとも言えます。ハイブリッド車でいくのか、電気自動車でいくのか、燃料電池でいくのか、どれでも構わないから結果として95gをクリア出来ればいいわけです。企業平均燃費方式では、色々な技術開発の可能性を残しているのです。各社が95g/kmをクリアするための戦略には多様な方向性があります。例えば、日本のトヨタのように出来るだけ全てのモデルの二酸化炭素排出量を削減するという方向性もあれば、ヨーロッパのフォルクスワーゲンのように、一部の車種で突出して燃費を良くしていって、それで全体のCO2排出量を引き下げようという方向性もありえるのです。 今日のまとめです。自動車業界における電動化の背後には世界各国で強化されている環境規制の存在があります。環境規制は達成すべき目標水準を示すだけではなくて、罰則を設けることで環境技術の開発と普及を強力に推し進める効果があります。2021年から始まるヨーロッパにおける規制では目標値の95gを超過すると、1g毎に95ユーロ×販売台数の罰金が生じます。このように環境規制が世界における車の電動化の強力な推進力となっていると言えるでしょう。
このところ自動車産業の話をしています。これからの車の未来を考えるにあたって、CASEがキーワードになるという話でした。CASEとは、常時接続のConnected、自動運転のAutonomous。それから、Car ShareやRide ShareのSharingです。今日は四つ目のキーワードである電動化=Electricの話をしてみたいと思います。 自動車産業の歴史の中で、電池に蓄えた電気で走る電気自動車の時代になるという話は、これまで幾度となく現れては消えてということの繰り返しでした。歴史を振り返ってみると、車の誕生が19世紀末から20世紀の初めですが、その頃は実に多様な動力源が使われていました。蒸気自動車やガソリンエンジン車、そして電気自動車と色々なタイプがありました。当時はどの技術も有望であったのですが、電気自動車に関してはやはり電池性能がなかなか向上しなかったこと、逆に、当時大規模油田が次々と発見されてガソリンが安価で豊富に供給されるようになったといった事情があって、その後ガソリン車が主流になっていきました。それからほぼ100年が経って、車の動力源として再び電気が注目されるようになったのです。 その大きな原動力となっているのが、今各国で相次いでいる環境規制の導入です。例えば、フランスでは2040年までに、イギリスでは2030年までにガソリン車の販売を禁止するという方針が出されています。さらに、ノルウェーのように、2025年までにハイブリッド車を含むガソリン車の販売を禁止するという方針を出している国まであるのです。日本はどうかということですが、2020年12月に経済産業省は2030年代半ばまでに乗用車の新車販売からエンジンだけの車を無くして新車の全てを電動化するという目標を検討中です。さらに政府は2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げています。日本全体の二酸化炭素排出量の約2割を運輸部門が占めていますから、出来るだけ早く脱炭素社会を実現したいということで今世界中が動いてきている状況にあります。 このように、車の電動化が注目を集めているのですが、そもそも電動化は何でしょうか。厳密に言いますと、電動化=電気自動車化では必ずしもありません。車の動力源として電気を使う比率を高めていくことが電動化です。例えば、ハイブリッド車はエンジンと電池に蓄えた電気で駆動する電動モーターを組み合わせて走る方式です。ハイブリッド車の電池容量を大きくして、外部電源からの充電機能を持たせたのがプラグインハイブリッドです。これに関しては電気だけで走るEVモードも備えているモデルがあります。我々が電気自動車と呼んでいるものは、電池に蓄えた電気でモーターを駆動して走る車のことで、エンジンを持ちません。ガソリン等の燃料を燃やさないわけですから、走行中のCO2はゼロになるというわけです。 ただ現在に至っても、やはり電気自動車の弱点は電池にあります。一回の充電で走ることの出来る距離はカタログ上でいっても最大400kmくらい。エアコンを付けると、一気に半分くらいになってしまう。さらに、充電ステーションが少ない、充電に時間がかかるといった様々な弱点があるわけです。そうした弱点を補うために、車の中に発電機を積んでやればいいじゃないかという話もあって、それをRange Extender EVと言います。発電機というのは実はエンジンです。小型の発電用のエンジンを積んだ車ですから、見方を変えればこれはハイブリット車になるわけです。 発電しながら走行する車にはもう一つタイプがあります。それが燃料電池車です。車に水素タンクを搭載しており、そこから供給される水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を取り出すのです。この電気でモーターを回して走行するわけです。発電しながら走ることが出来ますから、航続距離が長く電気自動車の大体2倍くらい走行できると言われています。弱点は価格の高さです。700万円以上することから、一般に普及するまでにはまだまだ価格の壁があります。 いずれにしても、一口に電気で走る電動車といっても、技術的構成や電動化の程度には大きなバリエーションがあるわけです。車の電動化が進むという時、それはガソリン車からバッテリー電気自動車に一気に切りかわる一かゼロかという話ではなく、100%エンジンで走る車と100%電気で走る車の間に電動化の緩やかなグラデーションがあるとご理解頂いた方がいいでしょう。 今日のまとめです。車の電動化は地球温暖化対策の一環として、二酸化炭素削減の重要な手段と考えられています。各国で環境規制が強化されていて、2030年頃までにエンジン100%で走る自動車の販売が規制される方向にあります。車の電動化は、従来のガソリンエンジン車にとって代わるものとして普及が期待されています。但し、電動化とはハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車及び燃料電池車といった具合に徐々に電動化のグラデーションが濃くなっていくということです。エンジン車か電気自動車かという一かゼロかという話ではない点に注意が必要です。
前回から、「多様性」というテーマでお話ししています。多様性というと女性・障害者雇用という話になりがちですけれど、そうではなくて、誰もが働きやすい環境はどういうものなのかを企業が考えていくことが大事だというお話でした。ただ、講演とかセミナーで誰もが働きやすい環境の重要性についてお話をすると、きまって「男性だろうが女性だろうが、あるいは外国人だろうが、それは関係ないのではないですか」と言われます。「誰かを特別扱いするのではなくて、全員同じ条件にして、それで成果を出せる優秀な人を客観的に評価すればいい」と。これについては、僕も「特別扱い」はしなくていいと思います。ただ、こうした指摘が見落としていることが合って、それは、実は多くの面で現在の日本社会ではむしろ健常者の日本人男性こそが特別扱いを許される場面が多い、という事実です。つまり、現在の日本社会の有り様そのものが元々「全員同じ条もともとになっていないということが指摘をされています。 分かりやすいところで言うと、子持ちの男性が夜遅くまで残業したり泊まりがけの出張をしたり、あるいはもっと家族の負担が大きなケースで言うと、単身赴任をしたりといったことが日本ではいまだによくあることと受けとめられる場面が多いかと思います。しかし、同じことを女性がするとなると、急にお子さんは大丈夫ですかというチェックが入ります。尋ねる側はチェックをかけているという意識はなくて、むしろ善意で聞いているのかもしれません。けれども、言われる側からすると「なぜ私だけがブレーキをかけられて、男性にはそれがないのか」と感じる人もきっといるでしょう。言い替えると、現代の日本ではまだ健常者の日本人男性以外の人に対して、ビジネスで活躍する上で有形無形の様々なハンデが課せられていると言ってもよい状態なのです。そして、それは結果として、自社のメンバーが本来ならなし得る筈の成果が毀損されているということであって、組織にとっても本来望ましくないことです。 先程述べたような分かりやすいケースのほかにも、近年の社会心理学の研究によって組織の中でのマイノリティに悪影響を及ぼす可能性があることが明らかにされてきています。それは、「ステレオタイプの脅威」と呼ばれるものです。ステレオタイプとは、ある人が属する集団に対して社会的に蔓延している固定観念や思い込みのことです。たとえば、日本人は英語が苦手であるとか、男性は論理的で女性は感情的だなどといったものが典型的です。ステレオタイプの脅威とは、ある人に対して彼女ないし彼が属する集団へのステレオタイプを意識させると、それによって思考力が弱められたりモチベーションが低くなったりする等の悪影響が出てしまう現象のことを言います。たとえば、女子大学生を二つのグループに分けて数学のテストをさせた有名な実験があります。振り分けは完全にランダムで、二つのグループの平均的な学力は同じです。しかし、実験前に自分が女性であることを意識するようなアンケートに回答した一方のグループの学生は、そうしたアンケートへの回答なしで受験したもう一方のグループと比べて、著しく低い点数をとってしまいました。これは、自分が女性であることを意識した結果、女性は数学が苦手であるというステレオタイプを思い起こしてしまい、半ば無意識のうちにそれにとらわれることで本来の力が発揮できなかったためであると結論づけられています。 同様の結果は、これ以外の場面でも見られます。日本人に国際会議の前に日本人であることを意識させると、急に英語がたどたどしくなるといった現象も知られています。ここからすると、例えば、男性は全員自前のスーツ姿で仕事をしているのだけれど、一部の女性社員は制服で働いているとか、あるいは人事部や広報部等特定の部署でだけ女性従業員の比率が高いのだけれど、部長や役員等の経営陣は全て男性で占められているなど、部門や職位で偏りが見られる人員配置になっている組織では、常にステレオタイプの脅威が働いてしまっている可能性があります。明示的にうちの会社では男性を優遇しますとは当然言うわけはないのですけれど、それでも影響を受けるということです。そうした場合に伝わってくるメッセージ、例えば、この組織の主役は結局男性であるということが伝わっていくと、たとえ給与だとか産休・育休といった制度上の面では平等であったとしても、「全員が同じ条件」で仕事をしているとは言えない、ということになります。 ステレオタイプの脅威を軽減するためには、いくつか方策があります。まず、人数的にマイノリティにあたるメンバーがそのことを意識するような仕組みとかルールについて、可能な限り見直すとことが第一です。先程述べた一部の女性社員だけが制服で働く等は、正にその典型となります。また、もう少し時間はかかりますが、より本質的な改善策として、マイノリティにあたる人に組織の中核的な役割を担ってもらうように支援するということが挙げられます。というのも、ステレオタイプの脅威が働いてしまうのはマイノリティの人達がステレオタイプを意識するあまりこの組織で自分は活躍できないとか、ここで中心的な存在になりたい、活躍したいと思ってもマイノリティである自分は認めてもらえないのではないかと気に病んで、本来の力を発揮できなくなってしまうからです。したがって、それらの不安を払拭するような存在、例えば、経営陣で辣腕を振るう女性役員がいるとステレオタイプの脅威は半減します。前回は、単に外形的な数字合わせで女性を登用してもかえって経営にはマイナスですよとお話しましたけれど、そうではなくて、きちんと誰もが働きやすい職場環境を整えていく中で、周囲のロールモデルになれるような女性・外国人、あるいは障害者の方がいれば、彼女ないし彼を積極的にサポートすることでそれ以外のマイノリティのメンバーの人達も勇気を得られます。そうすると、結果として組織全体が活性化するようになるのかなと思います。 今日のまとめです。多様性を活かせる組織づくりには、誰もが働きやすい職場環境の整備が欠かせません。その一環として、マイノリティメンバーが力を発揮することを妨げる「ステレオタイプの脅威」を、いかに軽減していくかが重要になります。ステレオタイプの脅威とは、マイノリティメンバーが自分に向けられるステレオタイプを意識するあまり、思考力やモチベーションが低下してしまう現象のことを言います。これを改善するには、マジョリティとマイノリティの違いを意識させるようなルールや制度を修正するとともに、マイノリティメンバーが組織の中核で活躍できるように支援することが重要です。
今回から、多様性というテーマを取り上げてお話していきます。最初に皆さんに二つお伺いします。まず、「多様性」あるいは「ダイバーシティ」と聞くとどんなことを連想しますか? もう一つ、多様性・ダイバーシティが組織にどんな影響を及ぼすかについてもちょっと考えてみてください。組織行動論における多様性の定義について述べると、学問的には個人の様々な特徴の組合せからなる個性のことを指すものとされます。たとえば、僕の場合であれば、日本で生まれ育った中年の日本人でヘテロセクシャル男性です。コミュニケーション学を中心とする社会科学に関する知識を持っていて、教育や統計分析等に関して一定のスキルを備えている。ちょっと落ち着きがない傾向があったり、身体的には視力が低いので眼鏡による矯正は必要だったりするのだけれど、概ね健常。三歳の子どもがいますので、夜の飲み会にはちょっと参加が難しい。こういったものを見ていくと、例えば、年齢や国籍が僕と同じ40代前半の日本人であっても、その他の面では僕とは全然違う特徴を備えた人たちがたくさんいますし、逆に年齢や性的アイデンティティが僕と違っても、その他の面で共通点が多い人もいるわけです。 多様性にフォーカスした経営とは、こうした組織のメンバー一人ひとりの個性を活かすための方策を考えていくものだということになります。似たような経験、知識を持つメンバーが集まって仕事をしていても、なかなか斬新なアイデアは出て来ません。一方で、異なる世界観を持つ人同士で意見交換をすればお互い新鮮な発見がありますし、多様なスキルを備えたメンバーがチームにいれば、誰かが課題解決の糸口を見つけてくれる可能性も高まる。事実、多様性を上手く活用出来ている組織とそうでない組織を比べると、イノベーションや新規事業の創出は前者の方が良いパフォーマンスをみせますし、また、成長率も前者の方が優れる傾向があることが、世界各国の研究で示されています。 ただし、日本ではいまだに多様性というと女性や外国人、あるいは障害がある人を対象にした特別な施策や是正措置というイメージを持っていることが多く見受けられます。これは多様性を活かすという方向性とは似て非なるものであって、実は経営に対してもあまり良い効果がないということが知られています。例えば、組織の女性従業員比率や障害者雇用の数を単純に増やすだけでは、かえって組織の業績にマイナスの影響が出ることもあると近年指摘されています。 これはなぜかというと、組織とは(当たり前ですが)そこに属する人が作るものだからです。日本の場合、これまでは障害のない日本人男性が中心となって、何十年も組織が運営されていることが多いですね。そうすると、健常者の日本人男性のために最適化された様々な仕組みがそこでは張り巡らされているわけです。例えば、長時間労働が常態化しているような組織だと、家事や育児、介護をこなさなければならないヒトにとっては非常に働きにくいです。また、日本語の細かい機微まで精通していないと社内のコミュニケーションが上手くいかないというのであれば、非日本語母語話者にとっては毎日毎日+αの負担が生じるということになります。こうした組織文化や風土を変革することなしに表面的に女性や外国人の数だけ増やしても、彼女ら彼らがイノベーション創出等に多様性を発揮して活躍するのは難しいわけです。 性別や国籍、障害の有無だけに着目をすると、自覚的な障害がまだない日本人男性グループの中に存在する多様性を見落としてしまうという問題もあります。例えば、僕は性別や国籍といった面では日本におけるザ・マジョリティですが、経歴や考え方、スキル等については結構ユニークな面があると思います。それはおそらく、一見すると一般的な日本人男性社会人と括られてしまう多くの人達についても同様であるはずです。しかし、多様性といえば女性の活躍推進とか障害者雇用と考えてしまうと、そうした目に見えづらい多様性を掘り起こして活用しようという発想が出てきにくくなります。その結果、社内に眠っているイノベーションの種が芽吹かないままに埋もれてしまう。これは、すごく勿体ないことだと思います。 では、どうしていったらいいのでしょうか? 言うまでもなく、ここまでの話は男女共同参画を推進することは止めましょうとか、障害者雇用は経営にマイナスですといったことを言いたいわけでは全くありません。むしろその逆で、表面上の数字だけを追うのではなく、多様なメンバー一人ひとりの特徴をしっかり捉えて、彼女ら彼らがそれぞれ自分の力を発揮できるように真の組織改革を進めましょう、というのが本日お伝えしたかった重要なポイントとなります。 組織の仕組みやカルチャーを振り返ってみて、例えば、健常者日本人男性だけがそれ以外の人と比べて仕事がしやすいといったことがないか、あるいは逆に特定のグループに属する人達だけがそれ以外の人達と比べてより一層の努力や負担を強いられていないか。こうしたことを丁寧にチェックして改善を積み重ねていく組織では、結果として誰もが働きやすい環境が整っていきます。そして、そうした誰もが自分本来の力を発揮できるといった環境を通じてそれまでの常識を覆すような発想が花開き、革新的なプロダクトとかサービスが生み出されていくという流れになるのかなと思います。言いかえると、多様性とは解決すべき課題ではなくて、イノベーションを生み出し組織の業績を高めるための資産と捉えた方がいいのではないかなと個人的には考えています。 今日のまとめです。多様性とは個人の様々な特徴の組み合わせからなる個性を指します。したがって、多様性とは単に女性や外国人、障害者の活躍や雇用促進に関する特別措置のことではありませんし、女性従業員比率や障害者雇用の人数を表面上の数字を追うだけではかえって経営上のマイナス効果がもたらされることがあります。一方、特定のグループに有利ないし不利な仕組みがないか丁寧にチェックして改善を重ね、誰もが働きやすい組織風土と仕組みを整えていくことで、組織の業績は確実に上向くようになります。
「首都圏の人材を地方で採用しよう」というテーマでお話ししています。前回は、最近首都圏の優秀な人材が地方に転職するという事例が増えてきているというお話でした。これまでは、転職業界の仕組みの影響もあり、地方と首都圏の情報が分断され、首都圏の人々に地方にある企業の情報が伝わらず、地方企業では社長の右腕となる人材が不足、首都圏では優秀な人材が力を持て余しているという状況でした。そこを上手くつなげる取り組みを行った結果、首都圏から地方への転職が増えてきているというお話でした。 今日は、その具体的な事例をご紹介します。 まず一つ目は、「息子に継がせるのはまだ早い」と考えた社長が外部から後継社長を招くことを希望されたケースです。その会社は、東北地方の沿岸部のサービス業を展開されている会社で、地元では知らない人がいない有名企業ですが、東京ではほとんど知られていませんでした。東日本大震災で甚大な被害にあいながらも何とか回復し、ようやく次のステージが狙えるとことでした。そのため、社長が外部人材に「新しい視点で成長を作り上げてほしい」という思いで決断されました。事業にかける熱意も凄い方ですが、お人柄も大変良く、私も楽しみにしていました。その結果、なんと東京の一部上場企業の執行役員の方が辞めて転職されました。 実際に転職されたご本人に決め手をお聞きしたとこ、やはり社長が決め手だったとおっしゃいました。その社長から、名前を呼ばれて「自分は誰でもないんだ、貴方に来てほしいんだ。貴方にこの企業の将来を預けたい」と言われ、感激したと仰っていました。 オーナーは人を魅了する力がすごいと思いました。考えてみれば、東京の大企業の社長は皆サラリーマンです。一方、地方企業というのは、ほとんどオーナーの方が社長をされています。サラリーマンと比べると、やはりオーナーは背負っておられるものが凄く多いわけです。例えば、借入金に個人保証を入れていますし、当たり前ですが事業のこれまでの歴史や従業員の生活、そして、地域経済も背負っています。多くのものを背負っていることがもの凄いオーラとなって、東京のビジネスパーソンに伝わっていくのです。   ただ、こういう話をすると必ず聞かれる質問があります。それは、「給料は高いんでしょう。うちは高い給料は払えません」と必ず言われます。これはとても大事なポイントです。正確に、そして正直に申し上げておきます。給料は高いです。流石に首都圏と同レベルの給料を払わないと来てくれません。しかし、ここで是非考えいただきたいのは、では無理だと辞めてしまうのか、それでも何とか手を出そうとするかということです。 我々の5年間の経験で言うと、多くのオーナーが「分かった、確かに高いけどこれは投資と考える」「事業の成長で回収しよう」「成果を厳しく問えば良いんだ」と仰って、採用に踏み切った方が多かったです。ここで「投資」と考えるのは流石だと感じました。つまり、今後の成長機会の方が大事だと捉えて、長期的に回収する視点を持たれていました。特別な人材の採用ですから、「投資」と割り切れるかどうかが大変大きなポイントではないかと思います。 とはいえ、いきなり採用するのはリスクも高いし、可能であれば少し費用も抑えたいというケースも多いと思います。そういう方にお勧めなのは、「兼業副業」による採用です。週に一回、あるいは二週間に一回会社に来てもらい、社長の相談に乗ってもらったり、現場の社員に色んなアドバイスをしてもらったりすることが広がっています。特に、今回のコロナの影響からオンラインで兼業副業をする人が増えています。首都圏に居ながらオンラインで地方の企業と繋がり、様々なアドバイスをするわけです。 兼業副業による採用の分かりやすい例をご紹介します。西日本の従業員数名の和菓子屋なのですが、大変美味しいお菓子を作られていて、あまりにも観光客からの評判が良いため、オーナーが中国向けにインターネット販売をしたいということで、ゼロからインターネットを立ち上げてくれる人が欲しいという希望でお話が来ました。しかし、国内向けのネット販売もしたことがなくゼロからのスタートですが、事業規模も小さく多くは支払えないということで、兼業副業でやろうという話になりました。なんとわずか数日で25名の応募がありました。その応募の方の職歴を見て本当に驚きました。日本で誰もが知っている超大手のeコマース企業の中堅の幹部や、有名食品メーカーのアメリカ法人の幹部、もしくは中国でECをやっていたという日本人の元中国企業の幹部などが応募してきていました。本当に選ぶのに困るほどでした。 副業兼業の良い所は、限られた日数で比較的安い賃金で仕事を頼み、本当にこの人が良いなと思ったらオーラで口説きに行けば良いというところです。今は非常にチャンスです。 では、どこに相談すれば良いのかについて話をします。もし、首都圏人材を採用しようと思われたら、「人材紹介会社」か「地域金融機関」に相談してみてください。地元の人材紹介会社は、最近では地元の人材に加えて首都圏人材も紹介を始めています。実は、昨年金融庁が規制緩和をして、人材紹介業の免許を金融機関が取れるように変わっています。それは何故かと言うと、地元の企業のことを一番よく知っているところ、そして首都圏人材にその魅力を伝えることを考えた時に、地域金融機関が適任だからです。また、幹部クラスの人材紹介を手掛けた場合には、政府が助成金を払うことになりました。今、多くの金融機関が免許を取り、人材紹介業への参入が始まっています。是非ご存知の人材紹介会社や金融機関に一度ご相談いただければと思います。 では、今日のまとめです。 改めて、力が余っている首都圏人材を上手く使って、次の展開を考えてみてください。オーナーの皆さんは口説く力を強くお持ちなので、是非チャレンジしていただきたいと思います。
今回は、「首都圏の人材を採用しよう」というテーマでお話します。 私は以前、首都圏人材が地方企業へ転職出来るような新しい市場を作る仕事をしていました。これまでは、地方から首都圏企業への就職/転職が多く、その逆の首都圏のビジネスパーソン、中でも力のある中堅や幹部クラスの方々が地方企業に転職することはほとんどなく、そもそもそういう転職市場すらありませんでした。それを何とかしようと5年間あれこれと試行錯誤をしてきました。その甲斐もあり、最近では地方企業に転職する方も増えてきています。 地方企業の社長の皆様からは「人材が足りない」という声を頻繁にお聞きしますが、その対策として首都圏人材を採用することを考えて頂きたいと思っています。「そんなこと本当に出来るのですか」と言われますが、出来ます。 今回は、その背景や具体的な方法をじっくりご紹介します。 そもそも、これまで何故地方への転職が少なかったのでしょうか。その理由は、人材紹介業の事業モデルにあります。「人材紹介業」というのは、ビジネスパーソンの転職を斡旋することを生業としていますが、この事業モデルは、一人転職を斡旋するとその人の年俸の約30%~40%を紹介料という形で貰う形になっています。 例えば、年俸700万円の人を幹部としてある会社に紹介するとします。その場合、30%の210万円を紹介料として事業者が貰う形になっています。これを前提にすると、首都圏の人材紹介会社は首都圏のビジネスパーソンを地方企業に紹介するインセンティブがほとんどなくなってしまいます。それは、事業の効率を考えるためです。 例えば、首都圏の人材を首都圏内の企業に紹介するとします。そうすると、一日に4件、5件の面談が簡単に入ります。しかし、例えば首都圏の人材を福岡の企業に紹介しようと思うと、福岡空港は便利ですが、移動時間を考えるとせいぜい一日に1、2件が限度です。必然的な結果として効率を考えると、首都圏の人材は首都圏内の企業ばかりに紹介されることになります。そのため、首都圏内で人材がグルグル回ることになり、首都圏の人材には地方企業の情報がほとんどありません。つまり、彼ら彼女らは地方にどんな会社があるのかを本当に知らないのです。したがって、転職の選択肢に入らないわけです。 これではマーケットが出来るわけがありません。それを何とかしようと思い、私は前職の時に、来る日も来る日も地方の企業に訪問をしていました。そうすると自分自身も不勉強を恥じたのですが、素晴らしい事業展開をする会社にたくさん出会いました。そこで、社長さんが揃って「人材が足りない」と仰っていました。それも、社長の右腕となって一緒に経営をしてくれる人材、もしくは新しい事業の責任者として事業全体を牽引するような幹部クラスの人材が本当に足りないことがよく分かりました。もし、そこに一人でも二人でも知恵と経験を有する人が入ってくると、本当にその会社が大きく成長出来る可能性があるということを本当に実感しました。したがって、首都圏の人材に、「この地方にはこんな会社があって、社長はこんな方でこんな事業展開に挑戦している。もし、ここに貴方の知恵と経験が入れば、大きく成長出来るんです。是非人肌脱いでくれませんか」と話してみようと思いました。 そうすると、驚くほど力のある人たちが次々と転職することが分かりました。それも、地縁など全くない地域にです。ほとんどの方がIターンの方です。これは本当に、私自身も驚きました。分かったことは、首都圏のビジネスパーソンは力が余っているということです。東京の大きな大企業は、九州を含めて全国から優秀な人をがっさり採用する一方で、組織が大きいため、その中で力を十分に発揮出来ない人がたくさんいるということです。首都圏では、力はあるのに活躍出来ていない優秀な人材が埋もれているわけです。 同時に分かったことは、彼ら彼女らにとっても、地方企業の仕事は凄く魅力的に映るということです。東京の大企業の仕事というのは、組織が大きいため、いわゆる分業になっており、仕事が全て小間切れです。そのため、今自分がやっている仕事が具体的にどのように社会の役に立っているのかがわかりにくいのです。一方で、地方の会社は確かに小さい会社が多いのですが、特に幹部クラスの仕事をすると自分の仕事がダイレクトに地域社会に役立っていることがよくわかります。これは仕事の醍醐味です。そこに彼ら彼女らは惹かれるわけです。 私は、首都圏で働く方々に「東京の歯車なんか辞めて、地方の心臓をやってみましょう」とお伝えしています。少し強烈な言葉ですが、「歯車は辞めて心臓をやろう」というキャッチコピーで、東京にあるビジネススクールをグルグル回り、ビジネススクールにせっかく入ったのだから使わないともったいない、大企業よりも中小企業でこそ腕がふるえるという話をしてきました。多くの人はそれに気づき出しています。特に、今回のコロナがこの傾向を更に強めるのではないかと思っているところです。 では、今日のまとめです。 ほんの少し前までは、とても珍しかった首都圏人材の地方転職が急速に増えています。是非、彼ら彼女らの力を使うことを考えてみませんか。社長さんや企業幹部の皆さん、是非ご検討頂ければ嬉しいです。
4回に渡って、私が会社役員を務めていた時にアメリカから来た経営者トップによって会社がどのように変わっていったのかについてお話ししています。前回は、赤字事業の立て直しをする際の闘いについてお話ししました。今日は、社内の管理の中でも特に数字をどう管理するのかについて、私がかなりしぼられたお話を共有します。 私は常務執行役として一つの部門の責任者を務めていたわけですが、その部門の月次の会議にトップが突然やってきて会議を見学した後、私を呼び出して不思議そうな顔で私に向けて次のように言いました。 「サトシ(名前)、お前はたくさんのリーダーを会議室に集めて、毎月数字を確認して、一見賢いスマートな質問をして、納得して"がんばれ"と言って会議を終えているけど、お前それが本当のマネジメントだと思っているの?」 私はこれを聞いて「えっ?」と思いました。どういう意味か尋ねると、次のように風に言いました。 「本当のマネジメントとは、数字を詳細に把握してその項目別に細かい変化というのを1つ1つ理解して、正すものはその場で正していくようにきちんと指示ができて、結果がちゃんと良い方向に変わっていく、それができて始めてマネジメントと言うんだ。お前が今やっているのは、マネジメントと言っているものとは全然違うぞ。」 そして、最後にこう言いました。 「数字は現在までの結果を見るんじゃない。今後12ヶ月に渡って、例えば毎月の数字予測をしっかりとしなきゃいけない。お前の部下が事業で何をこれから予定していて、いつごろどのようなキャッシュイン、キャッシュアウトがあるか。それを1つ1つ意味あるものか、意義あるものか、お前が決断をしていかないといけないんだ。会議というのは決断の場であり、情報共有の場なんかでは絶対ない。具体的にどういう風にして売上を上げていくのか。どういう風にして出費を抑え、よい投資をしていくのか。よい投資というのは、ちゃんとその投資をした時に適任の担当者がアサインできているのか、その担当者は忙しくないかどうかまでも含めて全てを予見しながら決断していかないといけないんだ。そういう事を考えるとサトシ、この会議は月次でやって間に合うか?これは週次でやるべきじゃないのか。そうしないとお前、手ざわり感をもって経営なんかできないんじゃないか?そういう事を1個、1個できて、予想ができて始めてお前は給料を貰えるんだ。成り行きの会社の姿、成り行きの延長線上の姿と戦って変えていくというのが、お前がしなきゃいけない事なんだ。」 諭すように、でも一部は顔を赤くして強く主張するかのようにわざと演じながら、私に伝えてきました。 これは私自身、全くできてなかったと思います。報告を受けて何か相談事があったら「分かった承認する」と言ったり、相談を受けたら相談にのってあげて「こうやったらいいんじゃない」と言ったり、それでいいと思っていました。今振り返ると「マネジメント」というものの意味合いをしっかりと理解できていなかったのではないかとさえ思います。大切なことは、現場の状況を早く的確に理解して正しい方向に軌道修正できるようにすることです。それが始めて「管理」と言うことができます。 そのためには、どういう形で売上が生まれて、どういう形でコストが出て、月次でどういう変化があり、税金をいつ払うのかといった事業構造を全部理解した上で、成り行きの延長線上とは異なるより良い結果になるようにするにはどうしたらいいのかという決断を毎回、毎回下していかなければなりません。もちろんそれができるような人達を適材適所で配置したり、現場の方々がその意味合いをきちんと理解できるように教育したりしなければなりません。 そうやって取り組んでいくと面白いことが起きてきます。確実に、月次の会議を週次にして毎回、毎回、一定額以上の費目の変化を全て質問し、答えられなかったら「次回会議に来なくてもいいよ。答えられる人だけが来てね」と伝えるとみんな悔しいのでもっとがんばって勉強して毎週集まってきてくれるようになりました。その後、自然と組織が鍛えられてはじめ、そうするとありがたいごとにリーダーが生まれ始めました。それによって、結果的には徐々に会社が正しい方向に進んでいきました。 一般論として、「管理職とは何なのか」どこか「管理職は楽では」と思われていますが、管理職というものの責任は広く重大で、先のことまで考えて決断しなければならなかったり、その結果の責任を負わないといけなかったり、非常に大変なのです。その一方で、やり甲斐もあります。管理職を務めながら気づいたことは、そこでリーダーになっていった次世代のリーダーの方々は、決して有名大学を出た人達ではなかったということです。「出ていく数字」「入ってくる数字」に対して自分事として、自分の預金口座からお金が出て行くような意識で考えられている人達、これは学歴ではなく、自分事感のあるなしで差がついてくるということを学んだ気がします。そして、その後の私自身の経営者としての動き方に大きく影響を与えてくれた出来事でした。 では、今日のまとめです。 「経営を管理する」とは、ありのままの状況をそのまま認めることではなく、どのように変えていくのか。変えていくことを数字や人事、ルール、そして何より人を育て、コミュニケーションをすることを通して実行していくこと。それが経営であるということをアメリカから降臨したトップから教えていただいたような気がします。
4回に渡り、アメリカから有名な経営者がトップとして"降臨"してから会社がどのように変化していったのかについてお話ししています。前回は、役員会でそのトップがどのような話をしたのかについてお話しました。 今日は、私が「赤字事業」そして「クライアントとの赤字の契約」を見直すときのお話です。 実は、このトップが降臨してから私が担当したのは「赤字事業の見直し」でした。いくつかの大きなお客さまとの契約が大きな赤字を出しており、これを解決するというテーマを与えられていました。私は直接そのお客さまのところへ出向いて契約の見直しをお願いしますが、かなり強硬に反対されました。そもそも契約を交わしたのは昔のことで、既に決まったことを今更言われても、とお叱りを受け、そのことをトップに報告した時のお話です。 役員会の中でそのアメリカから来たトップは顔を真っ赤にして次のように言いました。 「サトシ!(私の名前)今から取引先に行って"この契約をすぐに変えてもらえなければ、うちはもう御社との取引は止める。私達は自分の会社の企業価値を壊すようなビジネスをやる気は一切ありません"と言って来い。」 彼はそう言うと、私に向かって契約書を投げつけてきました。そして、彼は次のように続けました。 「サトシ!お前は大学院でファイナンスの講師をしているのだろう?それでいて企業の価値を日々壊していくような取引を経営者として受け入れてしまう"負け犬"なのか?お前、それで本当に教壇に立って、学生の前であるべき経営を語れる資格があるのか。」 彼は更に、こう続けました。 「この契約は我々にとって厳しいと分かっていながら、彼らは敢えてサインしたんだ。極端に言えば騙したのは相手側なんだと相手に言ってこい!」。 「闘え。契約内容を変えてもらうか、うちが全部降りるかだ。うちがすぐに全部降りると言ったら相手は困るはずだ。相手もそもそもこういうことが起き得るということは分かった上でサインしているはずなんだ。何をもたもたしている。早く客先へ行け、闘え。闘うんだったら最後まで支援する」 と言われました。厳しいですが、闘うということをやはり求められたわけです。 日本のビジネスの風習として、例え短期的に赤字だったからとしても、長期的には相手は考えてくれるだろうという想定をしがちです。この契約を交わしたときには(当時私の担当ではありませんでしたが)、このお客さまとこういう契約をしてしばらくの間赤字を出しても、将来的にはきっと黒字になってくれるだろう、相手はそういう風に我々のことを信頼してくれるだろう、と考えていたのではないかと思います。 ただし、これは昔の考え方なのかもしれません。特に、今のような国際的に安いコストの国にどんどんビジネスを移転していくような時代では、このような甘い姿勢を見せると逆にとことんつけ込んでくることもありうるということを、おそらくこのトップはアメリカやヨーロッパ諸国等、世界中の国でビジネスをしてきた経験から理解していたのだと思います。そして、私を通してこのことをこの会社に染みこませたいと考えたのではないかと思います。 そこまで言われた私は、その後闘いに行かせざるを得なくなったわけですが、言われた通りに文句を言ってもしょうがないので、徹底的に分析・計算をしました。このビジネスは私達にとって価格がいくらになったら黒字になるのか、そして相手はどういう契約だったら社内で通しやすいだろうかということを徹底的にExcelで分析解析をし、その上で先方のトップと役員の皆さんにお会いしました。 そうは言っても、話をしても当然相手先の役員室で私に対する非難の雨嵐になるわけです。「一回約束したことを変えるとは何事だ!」、「むしろコストを下げて利益が出るように努力するのはあなた方なのに、なぜ顧客である私達が犠牲にならなければならないのだ」などなど。罵詈雑言とはこういう事だなと感じる時間がしばらく続きました。 しかし、こちらもアメリカからきたトップに言われていため、次のように言い返します。 「私にとって自分の会社の価値を壊すような取引は、自分が経営者として罪を犯すことと同じです。あなた方が取引先とそういう取引を結んだ責任もゼロではないと思います。こういう取引をしたら取引先がどうなるか、サプライヤーがどうなるかということをあなた方は分からないはずはない。だから、我々はもうトップの決断として、もし皆さんが条件を飲まなければすぐに取引を降りさせていただきます。私達も苦しみますが、皆さんも苦しんで下さい」 そう言って席を立ちました。それから1時間後です。私の携帯が鳴り「どこの契約をどのように変えたいの?」とお客さんの方から言ってきて、最終的には契約の見直しが成立することになります。 結果的に見て、こちらも主張をして闘うことによって、相手も飲んでくれたということです。私はここで色んなことを学びました。一つは、経営者は妥協してはいけないということ、そして経営者の責任というのはちゃんと利益(価値)を残すこと、それが結果的には大切な社員の皆さんをお守りするということだということ。 実は後で教えてもらったことですが、私が席を立った後に、アメリカ人のトップが裏で相手方の社長に電話をかけてきてくれていたそうです。私が厳しい議論をするということを分かった上で、実はかなり丁重にまとめてくれるような交渉をしてくださっていたようでした。 大切なことは最初から妥協せず、しっかりと会社のために戦うこと、そうすると周りはサポートしてくれますし、合理的であればお客さまも納得してくれるということを私自身ここで学ぶことが出来ました。
産業名を英語で何と表現するのか、色々な産業を紹介して、その産業の勉強も一緒にしているコーナーです。前回は工事現場の表現が出てきて、今日はその続きになります。 ビルなどを建てる時は鉄を使います。鉄骨で組み上げてそこにコンクリートを流したりして建てていくのですが、最初の鉄骨の工事の事を"steel framework"といいます。鉄鋼でフレーム・枠組みを作る工事という意味です。それから鉄筋工事という、ブロック塀の中に鉄の棒を入れて強化しているものがあり、そのイメージですが、「鉄」という文字をわざわざ言わなくてもいいようで、強化工事というような言い方になります"reinforcement work"です。"force"が力で、"ment"は名詞にする言い方で、それに"in"と"re"で、これが繋がって"reinforcement work"と言います。 それから専門用語で石工工事という言い方があるのだそうですが、ヨーロッパの大聖堂などで古くなった石の部分を取り替える、50㎤くらいの大きさのブロックを入れ替えたりします。そのような工事をイメージしたらいいと思います。"masonry"と言います。スペルはm・a・s・o・n・r・yと書きます。工事を担当する工人、職人の事を"mason"と言いますが、それに"ry"が付くと工事という名詞になります。英語の表現で○○メイソンというのは聞いたことがあると思います。ここではただ"mason"と言うと、石を扱う職人さんのことです。 それから次は煉瓦を積む工事、これは"bricklaying"と言います。つまり煉瓦が"brick"です。"lay"は置くという意味で、それを合わせて"bricklaying"と言います。三匹の子豚で一番下の子豚が作る煉瓦の家は "brick house"です。 次はタイル工事です。タイルを貼る工事のことです。これは"tile"をing形にして"tiling"と言います。 コンクリートブロック工事、コンクリートのブロックを積み上げていったりする工事の事で、そのまま"concrete block work"と言います。"concrete"の"rete"の部分は"r"で"block"は"l"です。 次は塗る工事で、左官工事、"plaster work"です。"plaster"って日本語になっていませんか?塗り物のぶよぶよしたものをプラスターと言います。 次に板金工事の板金はなんて言うのだろうと思ったら、英語も同じです"sheet metal"。 "sheet"は板状になったもので、"metal"は金属で、"sheet metal work"で板金工事。 道路に白線を引く工事の事を正式な用語で「道路標示区画線工事」と言うのだそうです。英語では"roadside and lane marker painting" 直訳に近いと思います。"lane"は雨の"rain"ではなくて"l"の方の"lane"です。 物が出来てくると今度は床が作られます。床工事"floor construction"。そして内装工事は"interior work"です。 ガラス工事。これも専門的な言い方ですが、英語では"glazing work"と言います。"gla"は嵌め込むという意味です。これは特殊な言い方で、嵌め込み仕事=ガラス工事という意味になっています。 今日のまとめ: 今日はビルを建てていく中で、鉄骨の工事からガラスを嵌めるところまでしました。次回も楽しみにして下さい。
イギリスのロンドン及びそれ以外の地域を交互にご紹介していますが、本日はロンドンで、大英博物館に次いで行く方が多そうな所としてナショナル・ギャラリーという所をご紹介いたします。 ナショナル・ギャラリーは要するに国立の美術館にあたるものです。ロンドンに行ったことがある方はここに行かないことはないと思うので、有名だと思いますが、ご存知ない方もいらっしゃるでしょう。ナショナル・ギャラリーは西洋式の絵画でしかもクラシックなものを主に集めている所です。イギリスでは王立と国立と二つほど公的に近いものがありますが、こちらは国立です。それで「ナショナル」と言っているわけです。 王立だとロイヤルです。こちらは実はロンドンの中でも中心部にあり、Googleマップで「ロンドン」と入れて飛ぶと、丁度ここに旗が立ちます。それほどロンドンの中心であるという事で、非常に良い所にあります。 私は絵画の趣味があるわけでは無く、どちらかと言うと「ふーん」で済んでしまうような人間ですが、そんな人間でもナショナル・ギャラリーに入ったら1時間や2時間じゃ足りません。西洋式の絵画はすごく大きなサイズのものが多いですが、それが本当にたくさんあって、恐らく部屋が100近くあると思います。その一つ一つの部屋の中に「あ、これはあそこで見た!ここで見た!」というような有名なものがたくさん並んでいます。 ゴッホのひまわりは実は幾つかあるのかもしれませんが、ここにもあります。すごく良いのは目の前で間近に鑑賞できるということです。もちろん触ることは出来ませんが、触ろうと思えば触れるような距離なのです。文化遺産は皆のものだからということで、ガラスケースに入れて遠くから見るという形ではないというのが、すごく嬉しいことです。しかも無料です。もちろん寄付を受け付けるというような事はありますが、原則無料です。従ってお金を払ったからには全部見てやろう、と思って欲張らなくてもいいところがすごく良くて、自分の好きなだけ好きなものを見ればいいという理想的な見方が出来るというのが非常に羨ましいです。 絵を見ていると有難いものを見ている雰囲気になってきて、頭の中をムソルグスキーの「展覧会の絵」が駆け巡って、とても豊かな気持ちになってきます。WEBで確かめるとどのようなものが置いてあるかを調べることは出来るのですが、画家の名前を挙げていくと皆さん知っている方ばかりで、イギリスだとターナー、コンスタブル、フランスだとセザンヌ、マネ、モネ、ドラクロワといったものがずらっと並んで、その名前を聞くたびに胸がワクワクして仕方ない状態になります。 古いヨーロッパの絵画ですから、当然キリスト教的な宗教画が多かったりするのですけれど、見ていて自分はキリスト教信者ではないのだけれども、この時代の人達は有難いと思っただろうなぁというような細やかな出来栄えのものが多くて、見ていてとても素晴らしいです。 ナショナル・ギャラリーはもう一ついい所がありまして、写真が原則OKです。もちろんパーソナルユースに限ります。それをどこかに転載したり、それで一儲けは駄目ですが、自分で見て楽しむ限りは原則としてOKです。撮影がダメなものはダメというマークがありますので、原則OKになっていることが素晴らしいと思います。これも先程申し上げた文化遺産は皆のものだというのが現れている施策だと思います。日本だと多分逆で、原則撮影はNGという所が普通じゃないかと思います。恐らく日本でここと同じ物を作って公開したら、多分一人15,000円位でないとペイしないだろうなぁという感じはします。そのぐらいの絵画が揃っているということです。 それからここのものすごく面白い所は、普通こういった大きなコレクションは王侯貴族が集めたものが一度に寄付されて始まることが多いですが、ここは民間人からの寄付で始まりました。1824年に開館したと色々な所に書いてありますけれども、基になっている物から始まって、最初はこじんまりとしていたようですが、増築を繰り返して拡大したようです。建物自体も、イギリス、ヨーロッパに行くとよくあるドーム型のもの、それから新古典主義といってパルテノン神殿を模したようなものといったクラシカルな建物になっており、中身が昔の絵画が多いということと響き合っている感じがします。ここまで聞くとそれは是非見逃さずに行きたいなと思われる方もいらっしゃると思います。入る時には手荷物検査で時間が掛かることがあるので、その点はご注意頂ければと思います。 今日のまとめ: ロンドンのナショナル・ギャラリーは国立の美術館です。ここを逃したらロンドンに行ったことになりません。是非入って丸一日鑑賞していただければと思います。
保健機能食品②

保健機能食品②

2021-03-18--:--

今健康志向が高まっており、いわゆる『保健機能食品』に対する消費者のニーズは増え、その市場規模は7,000億円を超すまでになっています。前回はこの『保健機能食品』には、特定保健用食品(いわゆる「特保」)、それから「機能性表示食品」、「栄養機能食品」の3種類あり、これらにはそれぞれ異なる基準が設けられており、その基準をクリアしないと機能性を表示することはできないということについてお話しました。 今日は、それぞれの食品に対する効果・機能についてお話します。 「特保」や「機能性表示食品」を購入する際に、消費者の方の多くが注目するのは、いわゆる「ヘルスクレーム」です。 「ヘルスクレーム」とは、それを摂取することでどのような効果が得られるかといったうたい文句のことです。例えば、「血圧が高めの方に」であるとか、「糖の吸収を抑える」、「睡眠の質を高める」等がヘルスクレームに当たります。 では、今最も市場規模の大きいヘルスクレームは何でしょう。 実は、一位は「腸内環境」についてのヘルスクレームです。これが約1,800億円と言われています。第二位が主に「脂肪の吸収」に関するヘルスクレームで、およそ1,500億円です。その他にどのようなヘルスクレームがあるかというと、「血圧」や「歯」、「肌の保湿」、「認知」等があります。市場には類似の商品が沢山ある中で企業はどうやって消費者の目を引くヘルスクレームの製品を開発するかが他社との差別化を行う上では重要になってきます。 このように様々なヘルスクレームがありますが、コロナ禍で皆さんが非常に高い関心を示しているものが「免疫機能」の分野です。この免疫機能に関する機能性表示食品は、昨年キリングループが発表した『イミューズ』という製品で、「健康な人の免疫機能の維持をサポートする」と製品に記載されています。この製品にはプラズマ乳酸菌という成分が含まれており、この成分が免疫の司令塔である細胞を直接活性化するということをキリンが発見しました。実は、機能性表示食品で免疫に関する製品はこれが第一号でしたが、コロナ禍も相まって市場は高い関心を示しています。 現在、全てのヘルスクレームを含めて「特保」がおよそ1,100件、「機能性表示食品」が2,500件の届出がされています。 では、なぜこれほどまでに『保健機能食品』が増えてきたのでしょうか。 実は、「特保」は1991年にスタートした制度で、約30年の歴史があります。一方、「栄養機能食品」は2001年に、さらに「機能性表示食品」は2015年に導入されたばかりの比較的最近の制度です。「機能性表示食品」が導入されるまでは、機能性を表示することが出来る食品は「特保」と「栄養機能食品」に限られていました。 前回もお話しましたが、「特保」はその許可を得るために時間や費用が莫大にかかるため、その開発が出来るのは開発力や資金力がある企業に限定されていました。こうした中で新規参入の緩和という背景もあり、新たに設けられたのが「機能性表示食品制度」です。これは自分で研究をして効果を証明する必要がなく先行研究を使って機能性を表示することが出来るため、「特保」と比較して開発力を抑えることができ、新規参入が一気に進みました。 この制度により機能性がわかりやすくなり、消費者が様々な商品を選択出来るようになったわけですが、機能性表示食品だけでも2,500件届出がなされており、予想以上にその数が多くなりすぎて、企業側は競合他社にどう差別化するか、また消費者側は自分に合った製品はどれかというのを適切に選択することが迫られるようになりました。 では、今日のまとめです。 現在巷には多くの「保健機能食品」がひしめきあっています。企業側は独自のヘルスクレームで製品の魅力を消費者に伝えようとしています。三種類の保健機能食品の違いや、各製品のヘルスクレームを吟味して消費者は自分に適した「保健機能食品」を選択することが求められています。但し、「保健機能食品」はあくまでも健康増進のための補助的な役割で、それだけを摂取したからといって十分ではありません。普段から運動や食事の節制をする等の健康管理が大事です。
保健機能食品①

保健機能食品①

2021-03-17--:--

皆さんは、健康食品に関心がありますか。 今日は「特保」や「機能性表示食品」を含む『保健機能食品』についてお話します。 「特保」は正式には「特定保健用食品」と言います。「機能性表示食品」、そして「栄養機能食品」の三つを合わせて『保健機能食品』と言い、食品の持つ効果や機能を表示出来る食品です。これらを取り締まる役所は消費者庁になります。逆に、保健機能食品以外の食品は法律で効果や機能を表示することが禁じられています。ここで言う効果や機能は、例えば「脂肪の吸収を抑える」、「お腹の調子を整える」、「血圧が高めの方に」といった効果や機能です。この『保健機能食品』には、効能を記載するために「特保」「機能性表示食品」「栄養機能食品」ごとに基準が定められています。 最もわかりやすいのは「栄養機能食品」です。錠剤やカプセルなどのいわゆるサプリメントがこれにあたります。「栄養機能食品」は、法律で定められた成分、例えば「ビタミンC」などのビタミン類や「カルシウム」など科学的にその成分が機能を持つと確認された20種類の栄養成分を一定の基準量を含む食品で、特に届出をしなくても国が定めた表現であればその機能性を表示することができます。ここでは"国が定めた表現"というのがポイントで、成分毎に決められた決まり文句があります。例えば、ビタミンCであれば「皮膚や粘膜の健康維持を助けるために抗酸化作用を持つ栄養素」、カルシウムであれば「骨や歯の形成に必要な栄養素」などです。企業は様々な製品を出していますが、決められた文言以外の表現は使えないため、企業間での製品に対する差別化は難しくなっています。 次に、「特保」と「機能性表示食品」の違いについて説明します。少し複雑なのですが、成分については、成分の効果・効能が科学的に証明されているものであれば基本的になんでもOKです。例えば、整腸作用があると証明された乳酸菌などが広義に含まれます。表現方法は、「栄養機能食品」と同様に決まり文句があるのですが、「特保」と「機能性表示食品」は一定の制約を満たせば企業独自の表現をすることが可能です。ただし、表現方法は「食品表示法」や「景品表示法」という法律により制約が細かく規定されています。「特保」と「機能性表示食品」の最大の違いは、特保には国の審査があるのに対して、機能性表示食品は国の審査はなく届け出だけで良いという点です。従って、「特保」の方がより厳しい基準をクリアしていると言えます。 「特保」は特定成分を摂取することで、「コレステロールの吸収が抑えられる」、「お腹の調子を整える」などといった作用が実際に期待できるか、人を対象とした臨床試験を実施して証明しなければなりません。この臨床試験は1,000万円以上の費用と数年に及ぶ時間がかかります。そのため、「特保」は中小企業ではなかなか手を出しにくい製品となります。 一方、「機能性表示食品」は、大変な臨床試験を実施しない代わりに、製品もしくは成分に関する研究レビューを消費者庁に提出して受理されれば、機能性を表示することが可能となります。この研究レビューは、ある成分について誰かがこれまでに調査した先行研究の結果を引用して使用することができます。 例えば、私が「成分Xが腸内環境を良好にする」ということを発見して論文発表をするとすれば、別の人が成分Xを含む食品を開発して、私が発表した論文を消費者庁に申請すると、開発された食品は「腸内環境を良好にする」という機能性を表示することが可能になります。これにより、大手だけではなく中小企業も「機能性表示食品」を販売しやすくなりました。 今では「特保」と「栄養機能食品」「機能性表示食品」合わせて7,000億円を超える市場規模と言われています。 では、今日のまとめです。 食品の持つ効果や機能を表示できる食品のことを『保健機能食品』と言い、「特保」、「機能性表示食品」、「栄養機能食品」の三種類があります。これらは効果・機能を表示することが出来ますが、各々に一定の基準が義務付けられています。健康志向が高まる中、保健機能食品に対する消費者ニーズは増加傾向で、現在の市場規模は7,000億円を超すまでになっています。
損益分岐点2

損益分岐点2

2021-03-16--:--

前回は、売上の減少により事業が赤字に転じる境界である「損益分岐点」を採り上げました。損益分岐点の定義と共に、総費用を下げれば損益分岐点が下がって売上減少に対する抵抗力が増しますが、単に変動費用や固定費用を下げようとしても弊害が生じがちで、そうした場合には、固定費用と変動費用のバランスを変化させて損益分岐点と収益力をコントロールする方法もあることに触れました。加えて、変動費用を固定費用化する例をお話ししましたが、今回は、固定費用の変動費用化についてお話しします。 繰り返しになりますが、固定費用とは売上の水準に拘わらずに一定金額発生する費用のことで、例えば事務所の家賃、減価償却費、間接部門の人件費などが含まれます。これに対して変動費用というのは売上に比例して変動する費用のことで、メーカーでは原材料費、サービス業の場合には出来高払いの賃金や燃料代などが含まれます。そして固定費用の変動費用化というのは、それまで固定費用であったものが変動費用となるように事業構造を変換することです。 例えば、従来正社員が行って人件費が固定費用となっていた業務をパートやアルバイトに任せることで変動費用化するような方法が考えられます。もっともこれはコロナ禍では魅力的かもしれませんが、雇用の維持の観点や再び労働力不足になる可能性から考えるとあまり好ましいとは言えません。寧ろ、同じ正社員に対する人件費を固定給から歩合給や業績給的な形に切り替える方が望ましいかもしれません。 他にも、従来内製化していた業務をアウトソースすることも考えられます。例えば、社内で行っていた給与計算や売掛金回収、買掛金支払やコールセンター業務を社外に委託して、従量制で費用を支払うことにすれば、固定費用だった人件費が委託費として変動費用化されます。他にも社内にコンピューター・サーバーを置いて(On premise)そのための費用(減価償却費)が固定費用として掛かっていたものを、クラウド・サービスの利用に切り換えて従量制の契約にすることでも変動費用化が可能です。皆さんも職場を見回してみれば、大小色々な転換の種が見つかるかもしれません。 このような固定費用の変動費用化が有効となるのは、何もコロナ禍の状況下に限りません。事業者は常に自社のみならず顧客やベンダー等に起因する様々な売上減少リスクに晒されているので、リスクが顕在化した場合のことを考えると、固定費用負担が大きいことは破綻と背中合わせとも言えます。また、大きなリソースを抱えていることがその背景とすれば、人員や設備の固定化に伴う社内技術の陳腐化や、先端技術導入の障碍に繋がるといった弊害もあり得ます。その点でも変動費用化によって常に外部から情報や技術が導入され循環する形を作っておくことは望ましいと言えます。 尤も、固定費用の変動費用化は売上減のリスク対策になる反面、売上の増加に伴って総費用の増加ペースが早まるので、利益率が低下して成長が抑制されかねないことには注意が必要です。成長企業であれば、売上増に伴って新規の雇用や設備の増設が図られることになるので、人材や資産の固定化をそれ程懸念する必要はないとも言えます。 もう一つ、この固定費用の変動費用化と似た概念で、資産のオフバランス化というのがありますが、これと混同しないように注意しましょう。資産のオフバランス化というのは、バランスシート上の資産に計上されているものをオフバランス、即ち非計上にすることで、財務の柔軟性を図るもので、資産を保有する代わりにレンタルやクラウド・サービスの利用で済ませたり、資産を一旦売却した上でリース使用契約を締結して当該資産を引き続き利用する(セールス・アンド・リースバック)といった形で行われます。これ等は固定費用の変動費用化に繋がるものも多いですが、セールス・アンド・リースバックなどはバランスシートをスリムに見せ、総資産回転率とかROAといった指標を改善する効果はあるものの、固定費用はそのまま残ります。 固定費用の変動費用化のもたらす効果についての一般的な議論は以上の通りですが、コロナ禍における経済・社会環境の変化の重大さ、影響の大きさから考えれば、固定費用の変動費用化によって対処できることは限られているのも事実です。それでも他の対応策との組合せ、或いはより本質的な対処策までの繋ぎとして、検討する価値はあると思います。 まとめ:固定費用を減らして損益分岐点を引き下げるための「固定費用の変動費用化」の手段としては、固定給から業績給への切り替え、業務のアウトソーシング、クラウド・サービスの利用など様々考えられますが、同時にそれ等は抱えるリソースの固定化に伴う陳腐化、硬直化などのリスクへの対策にもなります。また、資産のオフバランス化とは混同しないように注意することも必要です。
損益分岐点1

損益分岐点1

2021-03-15--:--1

長引くコロナ禍の下で、サービス業中心に事業者は大きな影響を受けています。中小の事業者では廃業に追い込まれたところも少なくありません。ただ、同じような業種で同じような規模の事業者が同じような売上減に見舞われた場合でも、全ての事業者が同様に赤字化するとは限りません。その理由は事業者によって損益構造に違いがあるからです。このように売上が変動した場合、利益にどう影響するかを示す指標として「損益分岐点」というのがあります。今回は、この「損益分岐点」について考えて見たいと思います。 損益分岐点とは、売上がこの水準を上回れば利益が出るし、下回ると損失が出る、別な言い方をすれば収入と支出、売上と費用がバランスする売上水準のことです。企業によってこの損益分岐点は異なるのですが、現在の売上が損益分岐点より遥かに高いところにある企業はこの先多少の売上減に見舞われたとしても耐えられるのに対し、売上水準が損益分岐点に近い企業ではたとえ僅かの売上減少でも赤字に転落しかねないという違いがあります。 それでは、この損益分岐点はどのように決まるのでしょうか。これを考えるには売上と総費用の増加の関係を見ていく必要があります。総費用は大きく分けて変動費用と固定費用からなりますが、変動費用とは売上増加に比例して増加する費用のことで、メーカーで言えば原材料費、サービス業の場合には出来高払いの賃金や燃料代などが含まれます。変動費用が売上より大きければそもそも事業が成り立たないことになりますが、売上との差が限界利益とか貢献利益とか呼ばれ、それも売上と比例して増減します。 これに対して固定費用は、その名の通り売上水準に拘わらず一定額固定的に発生する費用のことで、例えば事務所の家賃や機材の減価償却費、間接部門の給与などが含まれます。どんな企業でも固定費用が全く無しという訳には行かないので、売上がゼロの時にはその固定費用分だけ損失が生じることになります。また、売上が増えて限界利益が生じ始めても、それが固定費用を下回っている間は赤字が続き、限界利益が固定費用を上回るようになって初めて利益が生まれます。この境界が損益分岐点です。 これは図に書いて考えると分かり易いのですが、横軸に売上高を取り、縦軸に費用または売上でカバーされる費用の金額(売上高に等しい)を示すと、先ず、固定費用は売上に左右されずに一定なので横軸と平行な直線で表せます。一方、変動費用は売上高に比例するので原点を通り右上がりの直線として表せ、その合計である総費用は変動費用線を固定費用線の上に載せたような線、即ち売上ゼロの時固定費用と重なる右上がりの直線で表せます。そして売上でカバーされる費用は売上と等しいので、原点を通り傾き45度の右上がりの直線で示され、それと総費用線との交点が損益分岐点ということになります。 それでは、この損益分岐点を下げて売り上げが簡単にそれを下回らないようにするにはどうしたら良いのでしょうか。損益分岐点の求め方から考えれば、変動費用と固定費用からなる総費用を抑えて総費用曲線を下に下げれば、より左側で売上でカバーされる費用線(45度線)と交差することとなり損益分岐点は下がります。しかし、固定費用にしても変動費用にしても、単に抑制するのは簡単ではありません。例えば変動費用を削減しようとして原材料費を削ると、粗悪な原材料を使うことになって品質の低下が起こりがちですし、固定費用を抑えるために抱える設備をスリム化すれば、逆に売上が増加する場合にチャンスを逃しかねないという問題があります。 こうした場合に考えられるのは、固定費用を変動費用化したり、逆に変動費用を固定費用化して両者のバランスを変化させることで損益分岐点をコントロールしてやることです。この内変動費用の固定費用化とは、例えば社外より購入していた中間財を設備を購入して内製化するようなケースです。この場合、固定費は増加しますが変動費率が下がって総費用の増加ペースが抑えられるので、売上が小さいところでは総費用が増加しますが、売上が損益分岐点を超えると利益が急速に増加します。そのため成長局面にある事業にとっては有効な方法と言えますが、逆に固定費が増加するので損益分岐点が上昇(右にシフト)しがちなので、売上不振の企業にはあまり向きません。 逆に固定費の変動費化を図れば損益分岐点が低下(左にシフト)するので売上の減少に対して有効な防衛策となることが考えられます。この固定費用の変動費用化については、次回改めて具体的な例を含めてご説明したいと思います。 まとめ:コロナ禍でサービス産業中心に事業者は売上減に見舞われ、大きな影響を受けています。そうした中でも、損益分岐点の低い企業は相対的に売上減少への抵抗力が強いのですが、損益分岐点の高い企業が損益分岐点を下げようとして単に変動費用や固定費用を下げようとしても上手くいくとは限りません。そうした場合、固定費用の変動費用化や変動費用の固定費用化によって、損益分岐点と収益力をコントロールすることが一つの方法です。
今日は、環境対応と自動車産業の再編という話です。この間、カーボンニュートラルという話をしました。EUとか日米は2050年までにカーボンニュートラルを達成して、中国は10年遅れで2060年に達成する予定です。それを達成する為にはガソリン車が二酸化炭素をいっぱい排出してはいけないだろうという事で、色々な国だとか地域だとか自動車会社がいついつまでにガソリン自動車とかディーゼル車の新車販売を禁止する、あるいは、製造販売を止めるという様なことを言い始めているのです。これって、日本だとか各地域では何て言っているか知っていますか? 日本は2030年代半ばくらいにガソリン車の新車販売をゼロにしたいと政府が言っているだけですが、イギリスは2030年にガソリン・ディーゼルの新車販売を禁止するときっちり言ってしまっています。それから、アメリカのカリフォルニア州も2035年までに新車販売はゼロ・エミッション車のみにするという様なことを言ってしまっているのです。一番心配なのは、EUがkm当たりの二酸化酸素発生の達成目標を挙げていることです。リッター当たりの燃費に換算すると今年でリッター24km、2030年でリッター当たり40kmくらい走らなくてはいけないという厳しいものなのです。これを達成できないままで放置していると罰金を払わなくてはいけません。そこで、排出権取引によって、お金を払って排出していないので排出権を持っている企業から買うのです。誰が排出権を売ってくれるのかというと、アメリカのテスラみたいなところです。 テスラの電気自動車は全然二酸化炭素を出さないので排出権を持っています。テスラは、これを売って儲けているのです。二酸化炭素を排出していない企業が排出権を持っていて、一杯排出している企業は全然排出していない企業から排出権を買わなければいけないという事なのです。2019年で6億USドルの売上が排出権売上としてテスラに発生しています。去年はそれが2倍になって12億ドルになりました。排出権の販売だけでテスラは結構儲けているのです。 国だとか地域がそういう事を言い始めると、企業は対応しないといけないでしょう。このため欧米の自動車会社は結構年限を決めて色々な事を言っているのです。例えば、GMが2035年までにガソリン・ディーゼル車の生産販売を停止すると言い、ボルボも2030年までにすべてEVにするとか、フォードはEUだけですけど2030年までにすべてEVにすると言っています。ジャガーに至っては、2025年までにすべてEVにするという恐ろしいことを言っているわけです。しかし、日本はきっちり期限を打ち出せないのですよ。トヨタは一生懸命ハイブリッドを作ったでしょう? それから、トヨタだけではなくて日本政府や九大もそうなのですが、水素に力を入れてFCVを売ろうという将来計画を立ててきました。水素であれば走っても水しか出てこず、電気自動車みたいに電気も使わなくていいので、FCVは究極のエコカーです。しかし、世界ではもうEVの方に動いてしまっているのでちょっとまずいのです。 トヨタとか日産が何を言っているかというと、EV比率を段々高めますという事を言って、いついつまでに何かをしようという様な事を言っていないのです。ホンダに至っては去年の10月に初めてのEVを出してみたのですが、ものすごく値段が高くて走行距離が短い車で全然遅れているのです。急速に電気自動車とか自動運転車になってしまうと、自動車産業では製造からサービスまであらゆるところでたくさんの人が雇用されているので、今まで働いていた人はどうなるのという事になります。その為になかなか対応出来ないというのもあって、なかなかいついつまでにと言えないという状況です。 ところが、電気自動車の流れはもう世界中で出来てしまっています。IT企業も参入しつつあるわけです。例えば、ウェイモだとかアップルだとかバイドゥがどうやって自動車産業に参入しようとしているか知っていますか? 今まで自動車メーカーじゃなかったとすると、自動車メーカーと組んだ方がやり易いと普通は思うでしょう。ウェイモはグーグルのグループ会社ですから、日産とかルノーと組んでいるのです。バイドゥは吉利という中国の自動車会社と一緒にEVを作ろうとしています。バイドゥというとアポロプロジェクトといって、トヨタとかフォルクスワーゲンだとかもちょっと絡んで一緒に自動運転車を走らせる実験をしてきましたが、初めに組んだのはやはり中国の吉利でした。 ここのところ新聞で騒ぎになっているのが、アップルがどこかと提携しようとしているという話です。最初は日産と提携しようとしたのですが協議停止の新聞記事が出てきて、その次が韓国の現在自動車が交渉したのですがやっぱり協議停止したようです。なかなかどこと組むことになったという記事が出てきません。その理由について、アップルが自動車会社を下請けに使って、アップルのブランドマークを付けてアップルカーを走らせようという予定だからだといわれています。ちゃんとした自動車会社は、「なんでアップルの下請けにならなくてはいけないのだ」「嫌だ」と言ってなかなか組もうとしないようなのです。どこかと組むつもりにはなっているようなのですが、色々条件を付けて上から目線で高飛車に委託生産だけしろという様な事を言っているので、なかなか話に乗る会社が現れないようです。 今日のまとめです。カーボンニュートラルのために、新車販売のガソリン車禁止みたいな話が国とか地域だとか企業の予定としてもう時期設定が始まりました。エンジン車から電動車への転換をしなくてはいけないという事で、アップルとかバイドゥみたいなIT企業も参入してEVへの動きが早まっているのですが、日本企業はまだハイブリッドとか水素自動車にしがみついていて、急速な電動車とか自動運転車の普及に追いつけるかどうかよく分かりません。EVだとか自動運転車になると、それを作っていた自動車会社とか部品会社とかサービス会社とか色々な企業の雇用が相当失われるので、これを一体どうするのかが凄く難しくなっているところです。
今日は、中国の超大国化と対米冷戦という話です。最近、コロナ対応でワクチン接種が問題になっています。ファイザーとかモデルナ、アストラゼネカのワクチンを皆欲しいのですが、なかなか手に入らないという状況です。日本にも来るのが遅れる、というような話になっているでしょう? しかし、中国は自分でワクチンを作っている。中国のワクチンは、カンシノ・シノファーム・シノバックの3社が作っています。カンシノは人民解放軍と一緒にやっているところで、シノファームは国営の中国医薬集団。シノバックは北京大学と一緒にやっています。もう中国では全部承認されたので、承認されたワクチンを持ってコロナ外交をやっているわけです。東南アジアだとか中南米とか中東、アフリカ辺りに中国ワクチンを持って行って、「ワクチンをあげるからこれをやってくれない?」という話をしつつある状況です。皆ワクチンは欲しいのだけど、ファイザー・モデルナ・アストラゼネカはなかなか手に入らないのです。もう命の問題なので、「ワクチンをくれるのだったら中国の言う事を聞かなくては」という状況です。中国・ロシアは自分の所で作ったワクチンを使って、コロナ外交をやっているのです。 共産党の動きで、最近また中長期計画が出てきていますけれど、これはどういう将来計画なのかご存知ですか? 一人当たりのGDPが中等先進国で大体3万ドルくらいです。一人当たりGDPが1万ドルにならないと途上国だというような話があります。そこで、中国は今では1万ドルをやっと超えたのだけれど、2035年までに3万ドルにしたいと考えています。ご存知のように、中国は去年の1-2月はコロナがひどかったのですが結構早く回復して、去年もプラスの2.3%GDP成長を達成しました。世界のほとんどの国がマイナスに陥っている中で、中国はプラスでした。この間全人代で、今年は6%以上成長するという正式な目標を設定したところです。国際機関とエコノミストは8%くらいいくのではないかという様な事を言っているところなので、5%ずつ成長して2035年までに一人当たりGDP3万ドルを達成するというのも満更難しいわけではありません。2049年に世界一になるというのも、それほど難しい話ではないという状況にもうなってしまっています。 それで、アメリカとしては当然面白くないわけです。トランプがバイデンに変わったのですが、バイデンとしても対中強硬路線を止めるわけではありません。トランプとはちょっと考え方が違うので、中国の人権がどうなのというあたりがバイデンの一番気にしているところです。香港で中国が国安法を成立させて、政権転覆罪で民主派を逮捕したり起訴したりというようなことをやっているわけです。去年の9月に立法会という法律を作る機関の選挙があったのですが大騒ぎでデモになったので、ちょっと無理だから1年延期しようということで、今年の9月に立法会選挙があります。愛国者基準って知っていますか? 愛国者基準というのは最近言われ始めたことなのですけれど、愛国者ではない者は立法会選挙の候補者になれない、共産党に反対するような民主派の人達はそもそも候補者にしないという事です。結局、共産党の言う事を聞く人に全部なるので、もう一国二制度がガラガラと崩れ落ちている最中という状況です。人権ですから、アメリカは、ウイグルだとかモンゴルだとかチベットとかも文句を言っているのですが、中国は内政干渉だと言っている。 ただ、人権の問題だけならまだ兎も角、日本企業が最近一番慌てているのは、不当域外適用阻止弁法が出来てしまった事です。アメリカはファーウェイと付き合うなとか、色々なことを言っていました。取引が有ったら切れという様な事を言っていたでしょう? 日本企業としてはしょうがないなと言いながら、アメリカと喧嘩するのもなんだしと切り始めていたのです。ところが、不当に中国企業との契約を止めて中国企業に損害を与えたという事になれば、損害賠償をしてもらわなければならないという法律を中国は作ってしまったのです。そうすると日本としては、アメリカの言う事を聞けば中国に怒られるし、アメリカの言う事を聞かなければアメリカに怒られるし、どっちを選ぶかというとても困った状況に追い込まれているのです。本当に難しくて困った立場です。そういう意味では、二つの超大国の狭間でどっちの事を聞いても怒られるので、板挟み状態。なんとか両方のマーケットに売りたいところですけど、これから一体どうやって生きていけばいいのかと言って困っている状況です。 今日のまとめです。コロナから早く収束した中国が、経済的な関係だとかあるいは自分の開発したワクチンを使って、新興国の支持を得ながら超大国化を再び進め始めました。2035年まで5%成長を継続して、一人当たりGDPでも中等先進国に入って、建国100年で世界一を目指しています。欧米・日本は怒っていますけれども、香港国安法で一国二制度を崩壊させつつあります。米中冷戦が始まりつつあるのです。欧米日本企業は、中国市場から撤退することはできないが、工場はASEAN辺りに移そうとしています。そのため、ASEAN各国は工場誘致競争をしています。日本と欧米の企業はアメリカ市場も中国市場も失う訳にはいかないので、サプライチェーンの最適化に色々難しい対応を迫られているというところです。
今日は、マルコ・イアンシティとロイ・レビーンによる『キーストーン戦略:イノベーションを持続させるビジネス・エコシステム』という本を紹介します。著者のイアンシティは、ハーバード大学ビジネス・スクールの教授、レビーンはマイクロソフト社のプログラム・マネジャーや経営コンサルタントとして活動してきた人です。原著はThe Keystone Advantageというタイトルで2004年に刊行されています。  この本を紹介したいと思ったのは、「ビジネス・エコシステム」という言葉について、具体的な概念を与えてくれるからです。このビジネス・エコシステムとか、イノベーション・エコシステムという言葉は、近年、日本の経営実務家や政策担当者の間でも頻繁に使われるようになっており、例えば経団連は2018年に「Society5.0の実現に向けたイノベーション・エコシステムの構築」という提言を発表していますし、政策に関しては文部科学省が2016年度から「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」という事業を始めています。このエコシステムという言葉は生態系と訳されており、要するに様々な生物間の相互関係と、生物を取り巻く環境と生物群の関係をひとつの全体をなすものとして捉えた生態学の概念です。しかし、それをビジネスやイノベーションをめぐる活動に当てはめて使うことが、単なる比喩表現以上にどんな意味を持つのかについては、いまひとつ明らかではなく、そのためバズワード化してしまった観があります。ただ、この生態系メタファーを使う実務家の背景的な問題意識の方は明らかです。それは、イノベーションは一企業の単独の努力だけでは実現できず多様なプレーヤーとの相互依存関係の中で成立するものだという認識に立つものだと言ってよいと思います。  実際、「ビジネス・エコシステム」という語を始めて使ったのは、ジェームズ・ムーアという経営コンサルタントが1993年にハーバード・ビジネス・レビューに発表した論文であることが知られているのですが、その後、この概念を学術的に明確にしようという試みは長らく行なわれず、90年代には主としてインテルをはじめとするIT企業などで用いられてきました。  さて、イアンシティとレビーンは、まずエコシステムを「多数の緩やかに結び付いた参加者たちが共同の発展と生き残りを目的として相互依存している」システムと定義し、ビジネスネットワークを理解するためのアナロジーとして、この概念を展開していきます。生物界ではエコシステムが健全であれば、個々の種は生き残ることができますが、不健全であれば厳しい運命に直面することになります。このエコシステムの健全性を維持する存在を理解するため、著者たちは生態系生態学から「キーストーン種」という、もう1つの概念を借りてきます。生物界におけるキーストーン種の例として、著者たちは米国北西部太平洋沿岸のエコシステムにおけるラッコを上げています。ラッコは人間を除くとウニを捕食する唯一の生物だそうですが、その毛皮を目的とする乱獲が行なわれた前世紀に生息数が減少すると、海岸のエコシステムが一時崩壊したと言います。それは沿岸の食物連鎖を支えていたケルプという大型海藻が、制約なく増殖したウニによって食いつくされてしまったからだそうです。  このような生物界のキーストーンとよく似た役割をビジネス・エコシステムの中で果たす企業が採用している戦略を、著者たちは「キーストーン戦略」と呼んでいる訳です。それらの企業は、ビジネスネットワークが交差するハブ(中心)を占有し、多数のニッチを創出する基盤を提供し、メンバー同士の結び付きを管理し、多様性と生産性を高めるように行動すると特徴づけています。因に「ニッチ」という言葉は、隙間市場などと訳されることもありますが、ここでは生態学の「ニッチ種」の概念を踏まえて用いられており、小規模ながらエコシステムの中で固有の棲息領域を確立した多様な存在を意味しています。  本書の中では、キーストーン戦略を具体的に説明するために、多くの企業が事例として取り上げられていますが、その1つはマイクロソフト社です。著者たちは、マイクロソフトを「コンピューティング・エコシステム」の極めて重要なハブとして位置づけていますが、それは同社のネットワークに数千ものハードウェア製造業者、ソフトウェア開発業者、コンサルタントなどの結合体が形成されているからです。その重要性を測る方法として、ウィンドウズ・プラットフォームを利用してソフトウェアを作っている企業や開発者の数を計測することが上げられていますが、著者たちの引用した調査結果によると、ソフトウェア企業2,000社のうち同社のプラットフォーム向けのソフトウェアを開発したことがある企業は84%に達しているということです。また、著者たちは、このような影響力の大きさにも関わらず、ソフトウェア産業全体の売上高や従業員数に占めるマイクロソフト社の比率が小さいことから、同社のキーストーン戦略が効果的に実行されていると評価しています。  ただ、この評価は、恰もマイクロソフト社がソフトウェア産業全体のキーストーン種であるかのような印象を与えている点で、ミスリードを起こしかねないと私は思います。マイクロソフト社のネットワークは、産業内で他の企業のネットワークと競合関係にあり、同社はウィンドウズとエクスプローラーを抱き合わせで販売し、競合するウェブブラウザを排除するような戦略をとってもきたわけです。著者たちのビジネス・エコシステムの概念は明確ではあるけれども、その限界は特定の企業をハブとするサプライヤー、補完財提供者、顧客の関係の範囲でシステムの境界が規定されてしまう点にあると言えるでしょう。 今回のまとめ:特定の企業をハブとする多様なアクター間の相互関係の範囲内にあるものとしてビジネス・エコシステムを定義した文献です。
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