Discover作曲・編曲・曲分析 | Haracem's world【作曲練習】ペンタトニック研究。「いちむじん」と「フラクタル」から。
【作曲練習】ペンタトニック研究。「いちむじん」と「フラクタル」から。

【作曲練習】ペンタトニック研究。「いちむじん」と「フラクタル」から。

Update: 2015-12-29
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ペンタトニックスケールを勉強しています。ペンタトニックというのは、とても簡単に言うと、5音だけで構成されているスケールのこと。ふつうのドレミファソラシは7種類の音ですが、ペンタトニックは5種類の音でできています。ドレミソラとかドミファソシとか。


そんなに難しい話ではないでしょう?


最近聴いた曲の中からペンタトニックスケールが効果的に使われているものを2つ紹介します。あとちょっとした練習を。


『ひだまり(2014)』- いちむじん


まずはギターデュオいちむじんの曲から。大河ドラマ「龍馬伝」のエンディングテーマ曲で有名になりましたよね。「恋むじん」は、彼らが去年のクリスマスイヴにリリースした初のカヴァーアルバムです。


アルバムのラストを飾る曲『ひだまり(2014)』は、とてもきれいで暖かい曲。この曲のサビにはペンタトニックスケールが使われていて、和の雰囲気も演出されています。



151219penta-hidamari


『ひだまり(2014)』作曲:山下俊輔(「恋むじん」より)


サビはもう1コーラス続くのですが、最後のほうに1回だけペンタトニック外の音が使われるだけで、それ以外は全部ペンタトニックです。


ここで使われているのは、Aメジャーペンタトニックスケールと言ってペンタの中ではもっともよく使われるものです。構成音は


A,B,C#,E,F#


です。普通のAメジャースケールからD音とG#音を取ったものですね。


サビ冒頭で繰り返される C#-E-C# の流れが気持ちいい。行って返ってくる、を繰り返すことで安心感を与えてくれるメロディだと思います。後半の F#-C#-B も同じです。


『昼の星』- AZUMA HITOMI


2曲目はアニメ『フラクタル』のサウンドトラックから。この『昼の星』は作中でも重要な挿入歌となっています。作中で聴いていたときから、なんだか不思議な感じのするメロディだなと思っていました。


それもそのはず、不思議な音階を使っているのです。サビを聴いてみましょう。




151219penta-fractale


『昼の星』作曲:神前暁(「FRACTALE ORIGINAL SOUNDTRACK」より)


不思議な感じがしませんか?


ここで使われているスケールは、


C,D,E,G,B


です。B音がどことなく異世界感を放って聴こえます。とくに1小節目の最後の音。ここで「おっ」となる。


この曲は、曲調そのものもかなり不思議な雰囲気です。最初のキーはCmで、サビのこの部分になるといきなりCメジャーキーに転調。そして全体的に90年代のジブリアニメのエンディング曲を彷彿とさせるアレンジになっています(伝われ)。


比較


2つの例を比較してみます。


先ほどの『ひだまり(2014)』のペンタトニックスケールをCメジャーキーに移調すると、


C,D,E,G,A


となりますね。『昼の星』は、


C,D,E,G,B


でした。


ペンタトニックスケールとしては、最後の1音がAかBかの差なんです。使われている音が1音違うだけで(メロディそのものが違うとはいえ)ここまで印象に差が出るのです。


試み


試しに『昼の星』を『ひだまり(2014)』で使われていたペンタトニックスケール(C,D,E,G,A)で弾くとこうなります。



151219penta-fractale-A


一気に童謡チックな雰囲気へ。インパクトも異世界感もどこかへ消えてしまいました。


実践編


研究したら実践しないと身につきません。下手でもいいからとにかくつくるのです。ぼくは『昼の星』のスケールが気に入ったので、C,D,E,G,B の音を使ってフレーズをつくってみました。



151219penta


うーん、難しい…


でも、ぼくがどういう音の流れのときに、F音やA音(今回のペンタ作曲では使えない音)へ行きたくなるかがよく見えました。ペンタという制約を設けてはじめてわかった心の動きです。


納得のいくものとはほど遠いけれど、これを読んでくださるみなさんの何かの役に立つなら、と思って置いておきます。


作曲の手グセ


作曲の手グセを可視化するにはもってこいの手法かもしれません。でも手グセが出ないようにペンタで作曲、というのは本来の使われ方と違うんだろうな。だってペンタトニックスケールというのはもともと、その5音しか存在しない文脈で使われていたわけだから。


日本古来の5音音階だって、5音以外の音を使わないように縛るための5音ではなく、その5音で全部完結していた。現代日本に生きるぼくらが、1オクターブの中で12音しか使わないのと同じように。


どんなにメロディがうまくいかない… と思っても12音の外にはみ出ようとすることはほとんどないですよね(一部の現代音楽ではあるかもしれませんが)。


だから聴いたときに制約感のあるペンタを使ったフレーズは、本来的なものではない気もする…


なんて難しいことは考えないでどんどんつくっていこうと思います。

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