Discoverよっしーの「今週のエッセイ」今週のエッセイ/麻雀介護
今週のエッセイ/麻雀介護

今週のエッセイ/麻雀介護

Update: 2024-03-05
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Description

義父が天に召されて、もうすぐ二年になる。


本当に手のかからない人だった。


介護できる人間はわたしだけ。


94歳で天に召されたが、あまり会話をする機会も


最後の方は、なかったような気がする。


今思うと、聞きたいことがたくさあんあったのに・・・。


 


このエッセイは、2013年10月の作品です。


 


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麻雀介護


 


 昭和三年生まれだから、八十五歳である。何だかんだと言う割には、頗る元気である。若い時には自ら志願して少年飛行兵に行って、韓国の水原(スウォン)を中心に出陣の支度をしているうちに終戦となり、日本へ引き揚げて来たそうである。運動能力は高く、身体能力も誰にも負けないほどの強者である。数年前の自動車事故で大怪我をしたにも関わらず、寝たきりになることもなく、最近は、要介護のランクが下がってきた。要は、手のかからない老人ということである。その義父は、隣に住んでいるので、家内は毎日顔を出しているようだが、私は、麻雀の時に顔を出している。麻雀は、ほとんど毎日やっているので、私も毎日ということになる。


 家内が、まだ幼かった頃は、ミルク代を麻雀で稼いでいたようである。自宅に雀士が集まってきては、卓を囲んでいた。現在と同じじであるが、違うのは賭けないことである。ミルク代を稼ぐ必要もないし、お金に困っているわけでもない。そこそこに暮らしていけるのである。ただただ、楽しんでいるようである。一日のリズムは麻雀を中心に回っている。麻雀以外の時間帯に、病院や買い物、その他の所用を済ませているようである。メンバーも忙しいので、一時間半ぐらいで切り上げる。それも毎日続けられる理由のひとつかもしれない。


 麻雀は、四人のメンバーでの会話あり、手を動かし、相手を観察し、捨て牌から相手の当たり牌を予測する、また、相手の性格から手牌を推測する。そして、計算もしなければならない。呆ける暇がないのでる。呆け防止で麻雀をしている団体もある。賭けさえしなければ、精神的にも経済的にも負担は少ない。


 義父の家に行くのは、ただ単に麻雀を楽しむためだけではない。介護なのだ。介護だけの目的で行くとしたら、行く方も来られる方も少し構えるし、だんだんと重荷になってしまう。でも、麻雀を目的にしていたら、それが少し和らぐ。その日の体調も分かるし、精神的状態も垣間見ることができる。一石二鳥どころか何鳥にもなるのである。でも、こんな環境にあるのは、日本広しと言えど、うちぐらいではなかろうか。義父の家のひと部屋は、全自動の雀卓が備え付けられているし、メンバーはすぐに調達できるし、時間も融通がきく。あと五年は、この麻雀介護が続くことを望む。


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ある時、12時間ぐらい義父の話を聞いていた時があった。


あの時、なぜいろいろと質問しなかったのだろうか、


今なら、きちんと質問できただろうに・・・。


謎の多い森田家である。ちなみに私は養子です。


 


それも亦、愉しからずや です。

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森田義夫