半分と半分で一つ
Update: 2020-09-07
Description
緑色緑光のスリランカ旅行の、もう一人の同業者は、女優の浜美枝さん。好奇心プラス取材力も抜群で、いろんなものを仕入れて来ます。その中の逸品は、小学校一年生の算数の算数の教科書でした。「ねえ、ほら、見て見て!すごいわねえ。一年生で、もう、分数の計算よ。」粗末な教科書でしたが、見るとなるほど、一ページ目から分数の計算。「進んでるわねえ」といわれて、本当だなあと感心しながら、フト思ったんです。二分の一プラス二分の一は一・・・これはこっちの思い込みかもしれないけれど、この分数の概念というのは、すばらしいものでありまして、さすが仏教国ならではだと思ったんです。というのは、日本なら、一年生はやっぱり「イチタスイチハ、ニ」ですよね。ところがあちらは、まず、「半分と半分で一つ」なんです。つまり、一つと一つがあつまって二つになった、というのではなくて、半分と半分が寄りそって、一つに成り立っているということ。ねえ、すばらしいじゃないですか。「うーん、ほんとねー。これだけで、人生観が変わっちゃいそうだわ」浜さんも、しきりに感心しています。夫婦は、1人の男と、1人の女が出会って2人になる、というのが日本の一般的な考え方。「要するに、正数の足し算と引き算の世界ってわけねえ。それで、イヤになったら、2引く1は1で、また1人前、1人立ち・・・か。でも、日本になって、夫婦は二人三脚なんてことばあるじゃない」まあ、それにしたって、片っぽの足がちょいとくっついているぐらいのことでしょうが。それに引きかえ、スリランカは、なんてったって半分と半分で一つですからね。夫というものがいて、妻と呼ばれる。妻がいるから夫と呼ばれる。夫婦はだからやっぱり、半分と半分が寄りそって、やっと一つじゃないですか。これ、じつは、仏教の根本、縁起の世界なんですよね。あらゆるものは、縁によって起こる。「此あるが故に彼あり、此無ければ彼なし。此生ずれば彼生ず。此滅すれば彼滅す」すばらしい一体感だと思うなあ。「そうか・・・そうすると、親子もそうよね。うちは4人いるけど、子供が生じて、親生ずよね。」親子もそう、家族もみんなそう。町だって、村だって、国だって、世界だって、宇宙だって・・・みんな相寄り相あつまって、共に生きているんですよね。二分の一、三分の一、浜さん一家は六分の一、私の一家は七分の一が七つあつまってやっと一つ。そう考えてゆけば、私たちって「無限大分の一」。数かぎりないあらゆるものと、関わり合い、手をつなぎ合い、寄りそい、助け合って生きているんですよね。「そうよねえ。やっぱり、生かされているのよねえ」あらあら、算数のお勉強が、仏さまのお話になっちゃった。そばで手を合わせて聞いていた同行の門徒のおばちゃん。「そうそう。おかげさまやっちゃ。けどさあ、おら、小学校一年で、こんなむずかしい算数せんならんのやったら、スリランカじゃ小学校も落第ですちゃあ。アハハハハ」
昭和52~53年にかけてサンケイ新聞婦人面に掲載された「お茶の間説法」の文章です。
「お茶の間説法」(37話分)>> https://www.zengyou.net/?p=5702>>「お茶の間説法」 プレイリスト>>「続・お茶の間説法」 プレイリスト
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