#19 シカ兄『雨あがる』 from Radiotalk
Update: 2021-11-16
Description
note(https://note.com/chicagocoffeee/n/n339558efd803)に全文を掲載しています。
スカシウマRadio63回にお便りした『はじまりの雨』の続編です。「何やってんの?」なご感想はtwitter #かくシカ まで。
三が日が明けた一月四日、大阪の外は雨だった。彼は物憂げな表情で窓から空を眺めている。その眉間には“今日くらい休んでしまいたい”って書いてあって、彼が発する曇天色した空気がジワジワと私を侵食するのを遮るように、ふぅ、とひとつ息をする。暦通りの仕事を自分で選んだのはあなたなんだよ、出かかった言葉はひとまず飲み込む。
さて、今日の雨っていつまで降るのだろう。
彼の眉間にあどけなさすら感じていたあの一月四日はよく晴れていて、面倒くさいって顔中に書いてある彼に「休めばいいじゃん」と声をかけてあげたらパッと表情が晴れて、初詣に行こう!などという。私はそのシンプルな彼の頭のつくりが時折羨ましくなるし、少し不安にもなる。今が今のまま続くと思いたいけど、私はそうじゃない。
あのね、今ってのはね、立ち止まってくれないんだよ。
悲願だった転職を機に東京へ移り住んで三ヶ月と少し。日常は目まぐるしく回転していて、ここ最近は自分がちゃんと呼吸をしているかどうかすら忘れてしまいそうになる。研修の余韻もそこそこに現場に投入されて日々は正に戦場のようだ。それでも目の前にある全てを吸収したいと私は強く思う。飛び込んだ世界だからだろうか、生きてる実感が湧く。
先週、彼が始めて上京してきて会ってみたのだけれど、実はちゃんと目を合わせることが出来なかった。目を合わせると引き戻されてしまうからだ。心地良さともどかしさが共存するあの日々に私は引力すら感じてしまうのだけれど、従属的に思えてしまう日常は私のものじゃない気がしている。
………
スカシウマRadio63回にお便りした『はじまりの雨』の続編です。「何やってんの?」なご感想はtwitter #かくシカ まで。
三が日が明けた一月四日、大阪の外は雨だった。彼は物憂げな表情で窓から空を眺めている。その眉間には“今日くらい休んでしまいたい”って書いてあって、彼が発する曇天色した空気がジワジワと私を侵食するのを遮るように、ふぅ、とひとつ息をする。暦通りの仕事を自分で選んだのはあなたなんだよ、出かかった言葉はひとまず飲み込む。
さて、今日の雨っていつまで降るのだろう。
彼の眉間にあどけなさすら感じていたあの一月四日はよく晴れていて、面倒くさいって顔中に書いてある彼に「休めばいいじゃん」と声をかけてあげたらパッと表情が晴れて、初詣に行こう!などという。私はそのシンプルな彼の頭のつくりが時折羨ましくなるし、少し不安にもなる。今が今のまま続くと思いたいけど、私はそうじゃない。
あのね、今ってのはね、立ち止まってくれないんだよ。
悲願だった転職を機に東京へ移り住んで三ヶ月と少し。日常は目まぐるしく回転していて、ここ最近は自分がちゃんと呼吸をしているかどうかすら忘れてしまいそうになる。研修の余韻もそこそこに現場に投入されて日々は正に戦場のようだ。それでも目の前にある全てを吸収したいと私は強く思う。飛び込んだ世界だからだろうか、生きてる実感が湧く。
先週、彼が始めて上京してきて会ってみたのだけれど、実はちゃんと目を合わせることが出来なかった。目を合わせると引き戻されてしまうからだ。心地良さともどかしさが共存するあの日々に私は引力すら感じてしまうのだけれど、従属的に思えてしまう日常は私のものじゃない気がしている。
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