シグナルとシグナレス
Description
📖『シグナルとシグナレス』朗読 – 霧に包まれた線路と、星空に誓う二つのシグナル🚂✨
静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『シグナルとシグナレス』。
「ガタンコガタンコ、シュウフッフッ」——さそりの赤眼が見える明け方、軽便鉄道の一番列車がやって来ます。凍えた砂利に湯げを吐き、まぶしい霜を載せた丘を抜けて走ってきます。その線路のそばには、木でできた軽便鉄道のシグナル、すなわち「シグナレス」が立っています。そして少し離れたところには、金属でできた立派な本線のシグナルが立っています。
本線のシグナルは、シグナレスに恋をしていました。けれども二人のあいだには身分の違いがありました。本線のシグナルは金属製で新式、赤青眼鏡を二組も持ち、夜は電燈で光ります。一方、軽便鉄道のシグナレスは木製で、眼鏡もただ一つきり、夜はランプで灯ります。
「僕はあなたくらい大事なものは世界中ないんです」というシグナルの言葉に、「あたし、もう大昔からあなたのことばかり考えていましたわ」と答えるシグナレス。けれどもシグナルの後見人である電信柱は、この想いに猛烈に反対します。その反対の声は二人の前に立ちはだかります。風が吹きつのり、雪が降り始める中、シグナルとシグナレスは悲しく立ちすくみます。月の光が青白く雲を照らす夜、霧が深く深くこめる夜、二人は星空に祈ります。
擬人化された信号機たちが織りなす、切ない恋の物語です。汽車の音、霧、星空、そして電信柱どものゴゴンゴーゴーというざわめきが響きます。機械たちの世界は、まるで人間の社会のように、恋や嫉妬、身分の違いや社会的制約に満ちています。
「ガタンコガタンコ」という列車の音、電信柱のでたらめな歌、倉庫の屋根の落ち着いた声が物語を彩ります。リズミカルで音楽的な言葉が響き、物語は詩のように流れていきます。遠野の盆地の冷たい水の声、凍えた砂利、霧に包まれた線路という鉄道のある風景の中で、シグナルとシグナレスは互いを想い、星空を見上げます。線路のそばの小さな世界から、やがて視線は遠く広がり、星々の中へ、宇宙へと開かれていきます。
「あわれみふかいサンタマリヤ、めぐみふかいジョウジ スチブンソンさま」と、聖母マリヤと鉄道の父スチブンソンの名を呼びながら祈る二人。霧の中で、星空の下で、シグナルとシグナレスが見つめ合い、想いを交わすこの物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。
#鉄道 #月 #柱























