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就職・転職の扉をひらく「ことばランド」

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ことばって雰囲気で使っていることの方が多いすよね。「雰囲気」も「ふいんき」っていう人も多いそうです。私の母は、「ブランド」のことを「ブラインド」と言い間違えていたし、「雲泥の差」をなぜか「うんぜいのさ」って言っていました。
言い間違えの類いは、日常会話なら笑っていられるのですが、就職や転職の場では。とんでもないことになる場合があります。ある人事担当者から、メールに書類を添付して提出してきた受験生が「宜しくご査収ください」と書くところを「宜しくご査証ください」って書いてきて驚いた、という話を聞いたことがあります。「査証は、VISAのことなのにねえ」って言うんです。
「査収」は「金品・書類などを調べて受け取る」という意味です。「査証」は「調べて証明すること」です。「査」は「調べる」という意味があります。査収も査証も「調べる」という点では一致しています。「考査」は「調査して検討する」こと。つまり、「試験」という意味です。「捜査」は「「まさに調べること」です。
ことばって周辺の言語環境に影響されるんです。その地方独自に流通することばを「方言」と言うんですが、これは「会社・組織」「仲間」の間のみで通用する単語や言い回しも含めて、「方言」と言っていいと思うんです。
そこで使われることばを、いちいち辞書で確認することはないでしょ?だから、いったん覚えると共通言語になって、それっぽい状況で使ったりするんですね。
せめて、就職や転職のときくらいは、いい感じのことばを使うときには辞書を引いた方がいいと思います。「査収」を「査証」と間違えると常識を疑われることにもなるので、注意しましょう。
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最近、「〜だと思っていて・・・」という表現が気になります。「思っています」と言いきらないのでスッキリしないし、「思っていて」の後に、長々と理由や言い訳めいた話を続けるんです。これは、どういう話の構造なのだろうと気になります。
「思います」というのは、いろいろな使い方がありますが、「〜と思う」という形で、話し手の個人的な判断や推量であることを示すものです。たとえば「その判断は正しいと思う」「明日は晴れると思う」というように、そこで文がいったん終わるはずなんです。ところが、「〜だと思っていて・・・」は、終わらないんです。
面接で「その判断は正しいと思っていて・・・」と言われると、それが正しいという判断をしながら、その反論を言おうとしているのか、正しいとした判断の補足を言おうと思っているのかが、わからないんです。結論が出ているのか出ていないのかがわからない。つまり、自信がないんだな、と受け止められてしまいます。さらに言うと、話が長い、もっと端的に話してください、という印象になってしまいます。
自分の意見を伝えるときには、はっきりと主張しなければなりません。英語の授業の時に「I think」を文末に言ったら、それは自信のない人との言い方なので、やめた方がいいと注意されたことがあります。堂々と「I think〜」と文の最初につけて話しなさいって言うんです。「と思っていて」は、それに似た感覚のようなのだと思います。
面接は、ことばで自分をプレゼンする場です。そこでは、言うべきところは、はっきりと伝える、と言うのが基本です。相手の顔色を窺いながらおどおどと話していても、気持ちは通じません。ことばの最後はしっかり言い切るように心掛けましょう。
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番組リニューアル後、早速、お便りを頂戴しました。常連のつみたて兄さんからです。いつもありがとうございます。テレビの食レポなどを見ていると、「早速、いただいてみたいと思います」という表現をよく聞くのだけれど、今すぐ食べるのだから「思います」というのは、おかしいのではないか、という内容です。
つみたて兄さんは、企業の採用担当にも関わることがあるそうで、面接やエントリーシートの内容を見ていて、ことばの使い方について、度々気になってきたとのこと。細かなところだけれど、もうちょっと配慮すれば印象が変わるのに、もったいないなぁ、と思ってきたのだそうです。
「早速、頂いてみたいと思います」に対する違和感のポイントの一つは、「みたい」の「たい」だと思うのです。「たい」というのは助動詞で、「面白い本が読みたい」「旅行に行きたい」というように「話し手の希望」を表すんです。
「食べたいなら食べればいい」「勉強がしたくてもできない人がいる」となると「話して以外の人の希望」を表します。「ある」「である」などについて、他に対する願望を表す場合もあります。「〜してほしい」「〜であってほしい」という意味です。「健康でありたい」「犯罪のない町でありたい」とかいう具合です。
少し先の未来をいうのが願望です。ですから「今すぐ行動する」のとでは時間軸が違うんです。その違和感だと思うんです。もう一つが「思う」です。これも「希望する」ことを言うので、「〜してみたいと思います」は「希望」を表すキーワードが二つ重なっているんです。それで、ますます時間のズレが起こるんです。
面接などで「あなたはこの会社で何をしたいですか?」と聞かれれば「広報の仕事をしてみたいと思います」というのは、OKです。これは、将来の希望だからです。
特定の役割を言わずに「何でもやりたいと思います」というと、受け身のスタンスだと思われます。この場合は「何でもやります」と言いきった方がいい。しかし、ある程度具体的な将来像を提示できないと、面接では弱いと思います。
一方、会社などで仕事を頼まれて「すぐ取りかかってみたいと思います」と答えるのは、「すぐ」と「みたい」「思う」との時間がずれてしまいます。「すぐ取りかかります」で十分です。今すぐ行動するのに「〜したいと思う」というのがおかしいと思うのは、時間軸のズレが生じているからなのです。
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いまどきのエントリーシートは、パソコンでつくって会社に送付するのが一般的でしょうか。
僕のころは、すべて手書きだったので、結構しんどい思いをしました。字も丁寧に書かなくちゃいけないし。
校閲の試験を受けたときは、面接担当者から「君の字は読みやすいね」と言われました。くせ字だし決して上手くはないのですけどね。
その質問の趣旨を入社後に聞いたら「校閲は乱雑な字を書くに人には向かないから」と 言われました。パソコンでエントリーシートを作成すると、字の丁寧さは測れないですね。その点、少し負担は軽くなっているのかもしれません。
それでもそこに書かれている文章となると、常識が噴き出してくるんです。
最近気になったニュースは何ですか」という質問項目に「僕的には・・・」と書いてきた受験者がいました
僕も「ことばランド」や本では、「僕」を使うことがあります。ちょっと視聴者や読者に親しい感じを持ってもらいたいと思うからです。それでも、正式な場では「僕は」は使いません。
もう一つ「僕的には」の「的」の使い方なんです。「僕的には」は「私としては」「私の意見としては」という意味だと思うんです。「的」を辞書で見てみると、主に物や人を表す名詞に付いて、それそのものではないが、それに似た性質をもっていることを表すんです。「百科事典的な知識」といった具合に使います。
もう一つが、「ある観点や側面から見て」という意味を表すときに使われます。「学問的に間違っている」「事務的な配慮」っていう具合です。元々「的」は、中国の宋・元時代の俗語で、「の」の意味を表す助辞だったのです。明治以降、英語の -ticを有する形容詞の訳語に用いたことに始まる用法なんです automaticを「自動的に」と訳すような感じです。
つまり、「僕的」は、どちらにも当てはまらない俗用なのです。
俗用を使うことが悪いのではなく、公式の場に俗用を使う、あるいはそれが俗用であることを知らない、というのが問題なんです。つまり「常識がないな」と思われてしまうということです。知っていることばでも辞書を引いて確認することはとても重要なのです。ことばの常識は、未来の扉を開いてくれますから。
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100回を超えたポッドキャストことばランドは、今回からシーズン2に入ります。オープニングも変わりました。「ことばで未来の扉をひらく」をコンセプトに、ことばから就職や転職、人事を考えていきます。
シーズン1では、ことばの変遷などを眺めながら、その時代や社会のなかで生きていることばなどについて、ちょっとした蘊蓄や感想などをお伝えしてきました。いわば、ことばの教養についてのお話でした。今回から、実際の生活に役に立つ実用的なことばを取り上げていこうと思っています。
先日、100回を記念して、スタッフ3人で小籠包を食べにいきました。そのときに、「もう少し、実践で役立つものにしてもいいかな」という話をしたんです。そうしたら、その2日後に知り合いから「エントリーシートが書けないで困っているという方がいるから相談に乗ってもらえないか」という話がきました。嘘みたいな話なんですが、時々そういう偶然が訪れることがあるんですねえ。だったら、いま就職活動とか転職を考えている人向けにお話ししようかな、と思い立ったわけです。
実は、10万部超の『マジ文章書けないんだけど』(大和書房)は、エントリーシートの書き方をベースに、自分が伝えるべきことを文章にする、つまり自己プレゼンテーションのつくり方の本でした。
新聞社にいたころは、校閲採用の担当もしていました。1人ないしは、2、3人の採用に、100人を超える応募があって、その全てのエントリーシートを、部長の僕と部長代理の二人がそれぞれ読んで、書類選考するんです。朝から別室に缶詰めになって3日ほどかかる作業です。その結果を突き合わせると、評価が大体一致するんです。
そんな経験も踏まえて、エントリーシートの書き方や面接対応などについて、ことばから考えていきたいと思います。ということで、今回はエントリーシート(ES)に絶対書いてはいけないことについて、お話しします。
長所や短所などを各欄があると思うんです。そこに「これまでで一番辛かったことは何か」という欄があったとします。就活生だと大体「浪人してしまった」「部活で失敗してしまった」という内容が多いんです。ところが、絶対書いてはいけないのは、面接担当が質問できないような内容です。
たとえば、付き合っていた人からDVを受けたというような、あまりにもプライベートに踏み込みすぎる内容についてです。面接で何を聞けばいいのか、面接委員も戸惑ってしまいます。
警察は呼んだのかとか、その後どうなったのかなどなど、不安が頭をよぎりますが、これは就職での面接とは趣旨が異なります。
やはり、プライベートに踏み込みすぎるエピソードは、避けておくべきだと思うのです。
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「茶摘み」っていう歌に「夏も近づく八十八夜」という歌詞があります。この歌は、1912年(明治45年)に刊行された『尋常小学唱歌・第三学年用』に載っていたものです。八十八夜っていつから数えてなのか、わかりますか?
八十八夜は、雑節の中の一つです。立春から88日目の日。現行の太陽暦では5月2日頃のことです。茶摘み・養蚕など、農作業で農家は忙しいとされます。雑節は、二十四節気以外の季節の移り変わりの目安となる日の総称なんです。他にも土用とか、節分、お彼岸、入梅、半夏生、二百十日などがあります。二十四節気は、立春、雨水、啓蟄とか季節ごとに6つずつ設けられています。二百十日は、台風が来る季節だよ、ということを教えてくれるサインにもなっています。
二十四節気の立夏は、5月6日ころ。ここから夏の季節が始まるというのです。八十八夜が過ぎて、夏がやってくるということです。だから「夏も近づく」なんです。暦の上で梅雨期に入る日を入梅(にゅうばい)といい、これが6月11日頃です。日本は、自然の動きをよく見て、季節を感じ仕事をしていたんですね。
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僕は「出身」と言われると困りんです。辞書によれば、「出身」は、どこを経て現在に至ったか、ということで、出生地や卒業した学校、勤めたところ、社会階層なども含めたものなのですが、一般的には「生まれ育ったところ」というイメージで使われています。僕は、父が転勤族だったので、引っ越しも多く、出身と言われてもピンとこないんです。
「地方」ということばがあります。最近では「地方創生」ということばもよく見聞きします。僕はこの「地方創生」っていうことばに、違和感があるのです。どの視点で見てるんだろうと思うんです。
辞書を引くと「地方」は、「首都以外の地域」って書いてあるんです。どうも、中央集権型のお上的意識がプンプン匂ってくるんです。「地方創生」ということばにも、そういう感覚が漂っているような気がしてならないんです。「地方創生」の基本政策を定めた「まち・ひと・しごと創生法」にも「地方」について、明確に定義していないんです。
僕は、町村議会の広報研修に行く機会が年に数回あります。そこで、確かに「まもなく過疎指定になる」という声も聞きます。2022年度には、総務省が「過疎地域」に指定する自治体が885市町村になりました。この制度は、1970年につくられて以来初めて、東京23区を除く全国1718市町村の半数を超えたんです。人的・経済的な差は広がっていることは間違いありません。
しかし、東京23区もそのうち過疎になる区は出てくるだろうし、地方だけの問題じゃないはずなのに、なぜか地方創生と言っている。喫緊の課題かもしれないけど、人口は1年、2年で変わるものではない。20〜30年先を見越して考えるべきです。東京だけ生き延びても仕方ないですもんね。
そこに受け継がれ、根付いた文化がいったん途絶えると、それを継承することができない。全てがなくなってもいい、という発想もあると思うんだけど、そこに生まれ育った人たちの拠り所って大切だと思います。震災などで家が失われても、やはりそこから離れて暮らすことに抵抗があるのは、当然だと思う。
東京一極集中も危機管理の問題から考えても、危ない。少数での競争は激化するだろうし、幸せ指数は減ってしまう気がするなあ。「地方」ということばの新しい語釈を考えていくべき時代にきているかもしれない、そんな気がしています。
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トヨタ自動車は昨年度(2023年度)1年間のグループ全体の決算で、本業のもうけを示す営業利益が5兆3500億円余りとなり、日本の上場企業で初めて5兆円を超えたそうです。
売り上げにあたる営業収益は、前の年度から21.4%増えて45兆953億円となり、過去最高を更新したんですって。すごいですね円安の利益があったとはいえ、ハイブリッド車を中心に販売が好調だったんだそうです。このトヨタ自動車の会社で使われてきたことばが、ビジネス用語になったものがいくつかあるんです。
その一つに「カイゼン」ということばがあります。漢字の「改善」という言葉では、「悪い部分を良くする」という意味です。それに対して、トヨタではカタカナの「カイゼン」に「現状を満足せず、今よりもっと良くする」という意味を持たせているんだそうです。自ら課題を認識し、自ら対策を考え、改善していくということなんですね。このことばはローマ字表記として、「KAIZEN」として世界的にも活用されています。
もう一つが「乾いた雑巾を絞る」です。これは、徹底的に無駄を省いて収益につなげるという意味で使われています。すごいですよね。問題が起こったときに「なぜを5回繰り返す」と言うのもあります。「なぜ」を5回繰り返して突き詰めて分析していけば、間違いの本質にたどり着くというんです。現場の責任者が泣き出すと言われるほどだそうです。これを「5WHY分析」と言ったりするんです。
「見える化」ということばです。「システムを見える化する」というように、ビジネス用語として「見える化」というふうに使うでしょ。手元にある三省堂国語辞典第8版にも、「情報を、だれにでもわかる具体的な形にして示すこと」「何かが行われているかが、だれにでも、わかるようにする」という語釈が載っています。
生産現場で何か問題が起こったら、誰にでも一目でもわかるようにして、問題解決につなげる」という意味で、1960年代には、使われていたようです。それが2000年代に入って、一般的に使われるようになったんですね。同じような言葉に「可視化」というのがありますが、それよりも「見える」ということばを使った方が、より具体的に感じますもんね。
まさに、パナソニックの創業者松下幸之助のことばもそうですが、ことばが会社をつくる典型だと思います。優れた企業は、ことばを活かして、ことばに活かされているんだとつくづく思います。
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新入社員研修などが始まっているんでしょうか。そのうち上司に注意されたりするでしょ。その時の対処法をことばの観点からお伝えしようと思います。
次の例をちょっと見てください。
1)「僕のお弁当を友達に食べられた」
2)「僕のお弁当を友達が食べた」
この違い、わかりますか?
1が「食べられた」だから受動態、受け身の言い方です。2は「食べた」だから能動態です。言い方の違いが精神的に大きな違いを生むんです。
それは、受け身だと被害者意識が生まれると言うことです。「僕の大切なお弁当を、友達に食べられたなんて。腹が立つ!」っていう感じになるでしょ。
「僕のお弁当を友達が食べた」だと、フラットな感じになります。「仕方ないなあ」という許容が生まれます。受け身の被害者意識が、意外に自分を追い詰めてしまうんです。
普通「上司に怒られた」って言いますよね。この時点で、上司と自分に精神的な序列をつくっているんです。納得がいかないと「なんで私が・・・」って思い出して、夜も寝られなくなる。その結果、お酒や甘いものに走って、体がどんどん大きくなってしまうんです。
「彼女に振られた」「彼氏に振られた」も同様です。こういった途端「私の何がわるかったのか」と、自分に落ち度があるかのような感覚に陥る。失恋のほとんどはこういう被害者感情が根っこにあるんです。
これを受け身の表現ではなく能動態に変えるんです。「上司が私を怒った」「彼女が僕を振った」「彼氏が私を振った」と言い変えると、精神的にゆとりが生まれます。
「上司が、何だかわからないことを言って怒ってる」「上司が怒ってる、だから何だって言うんだ?」みたいな感覚になるでしょ。「彼女が僕を振った。僕の良さがわからないんじゃ仕方ないか」「彼氏が私を振るなんて、残念なヤツだなあ」って感じに、スルーできるようになるんです。
若い頃は、僕もよく怒られたけれど、心の中では「何を怒ってんだろうね。どうせ、そのうち異動でいなくなるし」と思っていました。
これを、ノートでも手帳でもいいから、能動態で書きとめておきます。そして、そのうえにバッテン付ける。一種の魔封じです。結構精神的に楽になります。
反省の材料だけ取り込めばいいんだから、怒られる筋合いじゃないんです。怒る人は怒っている自分に興奮しているだけだから。それと同じ土俵に乗る必要はないからね。
ことばは上手に使わないとダメなんです。そのためにもことばの勉強をして、受動態の役割などを知っておくと引き出しが増える、ということです。受け身表現で被害者感情をつくり出す必要はないからね。
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議論と論議、習慣と慣習、運命と命運、平和と和平、途中と中途、息子と子息、父親と親父、愛情と情愛のように、熟語の漢字をひっくり返しても成立することばがあります。これについて、調べてほしいという「つみたて兄さん」からのリクエストが届きました。今日は、これについて考えてみたいと思います。
これについての研究はあまりないようなのですが、酒井芳徳さんという方が「可逆語を探す」という本を出しているくらいです。大きく分けて3つに分類できるようです。
その1つは「逆にしても意味の変わらないもの」。
「途中」と「中途」は「道の半ば」とか「物事が進行している中頃」という意味で変わらないですよね。意味は同じだけれど用法は違います。同じ意味では途上ということばもあります。
「途中」は、広く、ものごとが始まってから終わるまでの間のどこかの点を指します。
「中途」は、物事の進行が、まだ中ほどであり、まだ終わっていないという点に意味の中心が置かれているんです。
2つ目が「意味を共有するか関連性の高いもの」。
「議論」と「論議」は、意味は非常に近くて関連性がありますよね。「議論」は「それぞれの考えを述べて論じあうこと」で、「論議」は「ある事柄について意見を出し合うこと。意見をたたかわせること」という意味です。
考えを述べたり意見を出し合ったりする部分は共通するんだけれど、「論議」の方が対立構造を持っているでしょ。この関係のことばが一番多いと思います。
「習慣」は「長い間続けていること」、「慣習」は「長い間続けていることが慣わしになっていること」です。「運命」は「天命によって定められた人の運」とか「将来」のこと。「命運」は「ある事柄の存続にかかわる重大な運命」のことです。
「平和」は「争いや心配事もなく穏やかであること」を言います。「和平」はそれに加えて「戦いをやめ、仲直りすること」を言います。「息子」は「自分の男のこども」を指し、「子息」は「人の息子」のことです。近い関係だけれど、わずかながらずれている感じです。
そして3つ目が「入水」と「水入」のように「全く意味が変わるもの」。
入水は太宰のように水中に身を投げることで、「水入」は、相撲で、相長く組み合ったまま勝負がつかないときに勝負を一時中断して、力士を土俵下で力水を与えてしばらく休ませること。読み方も違うけれどね。物干しと干物もこれと同じ。
こういうことばがなぜ生まれたのか、ということはわからないのですが、「権利」ということばには、権力とそれに伴う利益という意味があるんですね。
「荀子」という中国の戦国時代の思想書があって、そこに「権勢と利益」の意味で用いられるんです。荀子は性悪説を唱えた思想家なんです。権利に伴う利益が、しだいに利益を伴う権利になってきたんだと思うんです。それが「利権」というように、ひっくり返ったことばを生んで「権利」と使い分けられたんだと思います。
「利権」は特に、業者が政治家・役人などと結び公的機関の財政・経済活動に便乗して手に入れる巨額の利益を伴う権利のことをいいます。 「可逆語」は、元々のことばに収まらない意味が生まれて、その関係の強さが生み出したことばではないか、と妄想しているのですが・・・。
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「一寸法師」っていう昔話を読んだことがあると思います。この「一寸」って尺貫法での単位です。一寸は大体3.03㎝。尺貫法というのは、長さの単位を尺、質量の単位を貫、体積の単位を升とする日本古来の度量衡のことなんです。
今のメートル法が基準となったのは、1885年(明治18年)にメートル条約に加入後のことなんです。1891年(明治24)にメートル法を基準として、尺・坪(面積の単位)・升・貫を定義て、1958年(昭和33)までメートル法と併用されていました。
でも、今でもこうした単位は、ことばの中に生きているんですね。小さな生き物にも魂が宿っているんだという意味で使われる「一寸の虫にも五分の魂」ということばもあります。「一寸先は闇」は「未来のことは全く予測することができない」という意味だし、「一寸下は地獄」は、船乗りの仕事が危険だということに使われて「薄い船板一枚の下は底深い海だ」という意味です。「板子一枚下は地獄」なんて言い方もあります。「寸分の狂いもない」「寸分違わず」とかね。「寸を詘(ま)げて尺を信(の)ぶ」というと「小事にこだわらずに大事を成し遂げる」とか「小利を捨てて大利をとる」という意味です。
今でも、居酒屋さんに行くと「一升瓶」とか「一合」なんてことばを使うでしょ。お酒の容積を表しているんです。「一升」は「十合」で1.8リットル。「裸一貫からたたき上げた」というと「一文無しの状態から財をなした」というような意味で使われます。「一文」もお金の単位で「一貫の千分の一」を言ったものです。令和の時代になっても、生活に根付いたことばは、残っているということなんですね。
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接続詞についての本を出したところ、「日本人なら、ほとんど感覚で接続詞は使える」という意見があったんです。確かに、この番組でも日本に生まれ育った人だからことばを知らない人はいないし、文章が書けない人もいない、ということを話したことがあると思うんです。
でも、日本語を使っているからことばも文章も使いこなせるわけではないんですね。じつは、そこに日本語の問題があるんだと思うんです。感覚で覚えたことをことばにできないんです。ことばの言語化とでもいえばいいのか。最近は本を読む人も減ってきたという話ですし、街から書店が消えていく時代でしょ。
先日、ちくま学芸文庫の『高校生のための文章読本』を買ったんです。 1985年に出版されたものが2015年に文庫化されたものです。その中に、一度は読んでおきたい70本の名編があがっているのですが、モーパッサンの『ピエールとジャン』とか、開高健の『夜と霧の爪痕を行く』とかが紹介されているんです。
ここで選ばれた作品は、ことばで表現することの意味を問うことが基準になっているように思ったんです。文章読本といいながら、ことばでどう表現するかという書き方が、問い掛けられているように感じました。結構、大人でも手を出したことがないような本が紹介されているんです。いまどき、こうした本を読む高校生がいるのかなあ、と思ったりもするんです。
感覚で覚えたことばを一回振り返って確認することは、自分を表現する手段にもなると思っています。
たとえば「大学時代にファイナンシャルプランナーの資格を取ったことで、深く考えず金融機関に就職を決めた」という文と、「取ったことで」の「で」と「松下幸之助のことばで『一つに希望をもつか、99に失望するか。失敗か成功かの分かれ目が、こんなところにもある』というのがある」の「ことばで」の「で」の使い方、どうですか?
助詞「で」と「に」には違いがあるんです。「で」は「行為」、「に」は「存在」を表すんです。「食卓でお茶を飲む」は行為です。「食卓にお茶がある」は存在です。そうすると、「資格を取った」は行為なので「取ったことで」でいいのですが、「松下幸之助のことば」は「存在」なので「松下幸之助のことばで」ではなく「松下幸之助のことばに」とした方がいいんです。
さらに言うと、「資格を取ったことで」というより「資格を取得し、それを活かせるだろうと、深く考えずに金融機関に就職した」とした方が、「で」の内容が具体的にわかるでしょ。
学校で助詞の分類は習うと思うのですが、文章のなかでどういう役目を果たしているのかっていうことは、習わないんですよね。だからちょっと乱暴な言い方になるけれど、「感覚でわかる」というのは「わかっていない」と同じ意味なんです。感覚を言語化していくことを心がけて、表現力、説得力を増すようにすると、人生変わりますよ。これ、ほんとです。
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前回、「ご苦労様」「お疲れ様」「了解しました」について、お話ししました。これについては、「つみたて兄さん」という方からお便りを頂戴していたことを紹介するのを失念していました。申し訳ありませんでした。 「つみたて兄さん」ありがとうございました。
今回は、SNSなどの広告などでよく見かける「不」について、考えてみたいと思います。
「不必要」「不確か」の「不」は、「…でない」「…しない」の意味を表すでしょ。「…が悪い」「…がよくない」の意だと「不手際」「不出来」っていうことばがあります。SNSなどでは、よく「不」の意識を刺激します。「不安」「不満」「不足」「不確か」「不幸」「不便」「不都合」とか。これは、社会課題を表すキーワードでもあり、それを解決する際のキーワードでもあることはわかるんです。でも最近、多くないですか?「老後に不安はありませんか」「NISA始めないとまずいですよ」「健康に自信はありますか」「顔のシミ、気になりませんか」などがそうです。「不」を煽ることが多すぎる気がするんです。
そして「その不安にお答えする商品・サービスがこれです」みたいなサイトに誘導されて「いまなら25%オフとか」いう特典を提示されて、定期契約不要とか安心材料を見せられる。そうすると、お得な感じがして「ポチ」っとしてしまう。ちゃんとした商品もあるけど、怪しいものもあるでしょ。僕は、このパターンを信じていないんだけど、信じちゃう人も結構いますよね。接触率が高いと信じやすくなるからです。
この「不安を煽る」商法がずっと続いているってことは、みんなが不安を抱えているということでもあるのだと思います。一方で、「あなたなら大丈夫」「この映像に出会えたあなたは幸せです」とかいうスピリチュアルな感じのものだったり「神アプリ」「○○5選」だったり、発想の貧弱さと語彙の貧弱さに辟易しちゃうんです。
ことばを盛ってバブルな感じになっている分、ことばの奥行きが失われて薄っぺらく感じてしまうんです。語彙のなさってその辺にも依るのではないかなあ。
いつも何かに責め立てるような感覚で「不」を語るのは、やめた方がいいと思うし、こういう仕立てでつくられた広告はいかがなものか、と思うのだけど。
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丁寧に言ったつもりが、実は失礼にあたっているんじゃないかと、悩む人が多いらしいのです。間もなく社会人になる人たちにとっては、ビジネスマナーとしても気になりますね。
今回は、「ご苦労さま」「お疲れさま」「了解しました」について、考えていきます。
「ご苦労様」は、「『ご苦労』をさらに丁寧にいう語。普通,目上の人には使わない方がよいとされ、『お疲れさま』を使うことが多い」と辞書にも載ってるんですね。
「雨の中をジョギングとはご苦労なことだ」というように、「ご苦労」という言い方には、「人の努力や骨折りをひやかしたり、やや皮肉をこめたりしている場合があります。こうしたことから目上には使わない方がいい、と言われているのかも知れません。
「お疲れ様」は、仕事などの疲れをねぎらうときに使います。仕事を終えて帰るときの挨拶としても使いますよね。「お疲れ様でした」とか「お疲れさまです(でした)」は、同輩や目上の人にも使えると、辞書にも書いてあります。
「了解しました」は、「事情を思いやって納得すること。理解すること。のみこむこと」とあります。「了承」とも言いますよね。これを目上に使ってはいけないというのは、無線などの通信で、通信内容を確認したときに「『ただちに行動を開始せよ』『了解』」といように、縦割りの組織での、命令・指令にたいしての短い返答に使われるからかもしれません。
ただ、命令や指令は上司から受けるので、「了解」が目上に使ってはいけないとは思いません。
ある出版社の編集者から「了解しました」を目上に使わない、というのはメールの書き方を扱った本で、ある著者がそう書いたことが切っ掛けだと言っていました。もしこれが本当なら「都市伝説的な語感」を広めてしまったということにもなると思うのです。
「承知しました」が「了解しました」より丁寧かどうかは、わからりません。だって、「おっと合点承知の助」なんてふざけた言い方もあるからね。
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前回、「親父の繰り言」と言ったら、江川さんが「それどういう意味ですか?今度聞かせてください」ということでしたので、今回は、「繰り言」を機に、もう使われなくなった「死語」について、話をしてみようと思います。
「繰り言」は「繰り返しいうことば」という意味です。どちらかというと、愚痴などを何度も繰り返して言うことなので、いい意味では使われません。辞書には「老いの繰り言」という例文が載っています。つまり、老人の愚痴ということ。「最近の若いもんは〜」みたいな感じですかね。
「繰り言」は、流行語ではないので、時代によって使われなくなるようなことばではないのだけれど、すでに三世代同居ということもないし、そういうことばを使うシチュエーションがないのかもしれません。
ジェンダーの意識が広がって消えたことばの使い方もあります。たとえば、野球のキャッチャーを「女房役」なんて少し前まではよく使われていたけど、いまはもう使われなくなった。これは「女房役」は、ピッチャーの球を受ける受け身の役目であったり、ピッチャーを補佐しているという意味合いで使われてきたように思うんです。ところが、いまはキャッチャーというのは、守備の要だということが認識されているし、妻を受け身だとする考え方もなくなってきました。こうした比喩表現が時代に合わなくなってきたのだろうと思います。
会社員の働き方が変わってなくなったことばが「半ドン」。40年ほど前まで、週休1日で、土曜日が午前中までの半日出勤だったんです。午前中なでのことを「半ドン」と言ってました。ドンはオランダ語の「Zondag」(ゾンターク)から来ていると言われて、その意味は「日曜日」とか「休日」という意味です。
元々着物を掛けていた「衣紋掛け」も「ハンガー」になったし、「筆箱」「下駄箱」なんてことばも以前、お話ししたかも知れません。筆も下駄もないのに、これはいまでも理解できる。ダビングなんてことばは、どうでしょうね。ビデオや音楽などのデータをコピーすることです。
流行語なんて、1、2年で消えていきますものね。朝シャンとかチョベリバ、ナウい、マジ卍なんて、もう使わないでしょ。ことばは生き物だということなんでしょうね。
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「この答え、違くない?」とか「この答え、間違ってなくない」とか。「・・・くない」の使い方がしっくりこないんです。ほかにも「違かった」「違くて」なんて言い方もありますよね。
これは、「うまくない」「正しくない」という形容詞の否定のときに使う「・・・くない」が、間違って「違う」という動詞に接続された形なんです。本来、形容詞の活用になるものが、動詞の活用語尾についた形です。
「うまい」は、「うまくない、うまい、うまければ、うまくて」というように、あとに続くことばによって、語尾、言葉の後ろが変わるんです。これを活用と言います。ここに「うまくない」という形が出てきます。「違う」という動詞の場合は、「違わない、違う、違えば、違った、違って」となります。
だから、本来「この答え、違わない?」という言い方になるんですが、形容詞の活用が入り込んでしまったんですね。中には、「違う」は、動詞だけれど、状況を表す形容詞的な意味合いが強いので、形容詞の活用に引きずられたという意見もあるけれど、確証は持てない感じです。
「うまくなくない?」は、「うまくないことはない」という二重否定で、結果として「うまい」と言っているんですね。「好きくない」っていうのも時々耳にします。「好き」は形容動詞なので、「好きだ」というのが終止形です。これも、「好きでない、好きだ、好きならば、好きだった、好きで」と活用するので、「好きくない」は、形容詞の活用に引きずられているんでしょうね。
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きょうは、1月にすばる舎から出版した『伝わる文章がすぐ書ける接続詞のコツ』の中から「そして」について、お話ししたいと思います。
のっけから宣伝になってしまいますが、お陰様で、丸善丸の内本店、池袋のジュンク堂本店、新宿紀伊國屋本店で大きく展開していただき、好調な滑り出しです。兵庫県の未来屋姫路大津店ではポップを作ってくださったりして、並べてくださいました。ありがとうございます。
「そして」には、大きく分けて二つの意味があります。それが「継起」と「並列」です。「継起」というのは、前の話から続く内容を導く役目です。「並列」は同時に成り立つことを表します。
「家に帰って、お風呂に入り、パジャマに着替え、そしてゆっくりお酒を飲む。至福のひとときだ」という継起の例を見てみましょう。
この文は、家に帰ってからの時系列で話が進んでいて、お風呂に入って、パジャマに着替えるという流れを受けて、そこからフェーズが異なる行動が自然な流れで続きます。前の文や語句の補足や因果関係を強調するために使われることがないんです。口語では「そして、どうなった?」みたいに話を促すときにもよく使うでしょ。
「そして誰もいなくなった」は、アガサクリスティーのミステリー小説のタイトルとして有名です。劇的なイメージがありますよね。あらゆることが済んだあとに「誰もいなくなった」という感じ。これを「だから誰もいなくなった」というと、誰もいなくなった明らかな因果関係が必要になります。「そして」には、そうした因果関係を伝えるものではないので、余計ミステリアスな印象が残るんです。
これに類した接続詞は「そうして」とか「それで」というのがあります。「そうして」は「そして」の丁寧な言い回しですが、少し時間の流れを意識させます。
「やる気がでないままボーッとテレビを見ていた。そうして一日が終わった」を
「やる気がでないままボーッとテレビを見ていた。そして一日が終わった」
とすると、やや客観的なイメージがついてきます。「そうして」の「そう」にはこそあどことば」の役目が強調されるので、それまでの時間や経緯という継続した流れを受けるイメージが強くなるんです。
同じ継起の接続詞「それで」との違いも見てみましょう。民謡の「会津磐梯山」の有名な一節も「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで、それで身上つぶした」というのがあります。「それで」っていうのも、「朝寝、朝酒、朝湯」が続けば、身上(財産)をつぶすという当然の流れを表しているんです。合いの手のような軽い感じ。これを「だから身上つぶした」というと、その理由が厳しく表現されるんです。
「そして」には、前に書かれた事柄と同様の事柄を並べる「並列」の役割もあります。
「彼女は、歴史・文学そして教育分野で活躍している」は、名詞が並列している用法なので、「そして」を「中黒(・)」に置き換えることができます。
「彼女は、歴史・文学・教育分野で活躍している」という具合です。こうすると、歴史と文学と教育が等価値で並列していることがわかると思います。「教育分野」を強調したり因果関係を示したりものではありません。
ただし「彼女は、歴史・文学そして教育分野でも活躍している」というように、「そして〜も」という形で、「も」がついたところに力点が置かれる特徴があります。
こうすると、歴史と文学での活躍を理解したうえで、「それのみならず教育についても」という意味なり、教育の分野に力点が置かれます。
「そして」一つをとっても、結構、面白いでしょ。『接続詞のコツ』には、こうした話がたっぷり書かれているので、ニッチな世界をぜひ味わってみてください。
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右と左という漢字の、1、2画目の書き順が違うのをご存じですか?
右も左も、腕と手首の先の象形なんです。横棒が意味するところが違っていて、右の横棒は腕、左の横棒は手首の先の部分を示しているんです。腕は手首の先より長いでしょ。だから、右の横棒は左の横棒より長く書くんです。カタカナのノのような左払いは、左の方が右より長いんです。辞書を見てみると形の違いがわかると思います。
で、短い部分は長い部分より先に書くというのが、右と左の書き順のミソ。だから右はノが1画目で、横棒が2画目。左は横棒が1画目でノが2画目になります。腕とは関係ないけれど、「布」や「有」は、ノが横棒より先。「在」は横棒がノより先。
ところで、律令制度の官名なんですが、左大臣と右大臣、どちらが偉いかわかりますか? これは、左大臣の方が偉いんです。一般的に「左」の方が「右」より上なんです。正面から見ると、左大臣は右側に位置していて、右大臣は左側なんです。これは、内裏いる天子から見ての左右なんです。この「左右」も、左が先でしょ。左が偉いんです。
ちなみに、京都の右京区、左京区も内裏・天子のいるところから見ての言い方です。天子は公的は執務や儀礼は、対極殿で行います。その時には背を北にして南面に座るんです。 従って右手は西で、左手が東になります。天子の居住する内裏は京の北端に位置しているので、そこから市街地に向かって西側を右京、東側を左京としているんです。
ところが、「左遷」ということばもあります。これは、中国の戦国時代は、右の方が左より上位だったんです。それで、左に降りる「左降」っていう官位を下げられる意味がありました。漢和字典にも「右」には「高貴なさま」とあり、「左」には「下位、低い位置」と書いてあります。時代によって右左の位置が違うんですね。
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先日、新聞の投書を見ていたら、定年退職をして再雇用で働いている夫をねぎらおうと、日帰り旅行をした妻の話が載っていました。妻は夫のために、電車の時間や好物の料理などを調べたんだそうです。
ところが、夫は大荷物で出かけ、予定がどんどん遅れて、あげくに途中で立ち小便をするわ、電車では大きないびきをかいて寝てむせこむわ、の残念オンパレードだったそうです。ホテルでお茶をしようと思っていたら、安いチェーン店に変えられたり、夫は地酒を買うけど妻の欲しいものは聞かない。おでん屋で追加注文したものは全部夫が平らげる。それで蛙化してしまったんだそうです。
なんで蛙なんだろう、と調べてみたら、グリム童話の「かえるの王さま」に由来する心理用語なんですね。2004年に跡見学園女子大学の藤澤信介先生が「女子が恋愛過程で遭遇する蛙化現象」という論文から生まれた言葉なんです。
いまは、投書の例にあるように、 ある行動や態度を見て、好きだった相手が嫌いになるという意味で使われるようになっているようです。たとえば、レストランにいって注文するときに横柄な態度を取るとか、食べ方が汚いとか、マナーが悪いとか、そういう現場に立ち会って、スーッと冷めてしまうというときに使うようです。これは、わかる気がしますね。
2023年のユーキャン新語・流行語大賞のトップテンにも入っていたらしいんです。これ、見落としていました。投書に登場した定年退職の夫も、気を許せる妻の前で見せる一種の甘えなのかも知れません。妻も夫には悪気はないのだろうと思いつつ、この日一日で30回ほど蛙化したそうです。
蛙さんには、何とも気の毒な話ではあります。
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ぜいたくをせず、倹約に努めて質素に暮らすことを「つホニャララしい」って言うんですが、 ホニャララのところに何が入るかわかりますか?
「つつましい」って答えた方が多いかも知れません。「つつましい」は「慎ましい」と書きます。この動詞「慎む」は「人目をはばかる」「気兼ねする」「つつしむ」という意味があるんです。
「包装紙」の「包」と同じような意味です。「つつんで周囲に見せない」という感覚が基本にあります。だから「つつましい」は、「思慮深く物静か」「控えめ」という意味になるんです。
一方、倹約するという意味では「つましい」ということばがあるんです。これは漢字で書くと「倹約」の倹を使った「倹しい」と「倹約」の「約」を使って「約しい」という二通りの書き方があります。まさに「倹約」なんです。「爪に火を点す」ということばのように、ろうそくの代わりに爪に火をつけたりして倹約するっていう感じです。でも、「つつましい」と「つましい」の境がそうはっきりしていないんじゃないか、という見方もあるんです。
ぜいたくをしない生活、つまり、「つましい生活」は、華美ではない「つつましい生活」でもあるとも言えます。イメージとしては、どちらも派手ではなく質素だという点では一致しています。だから「つましい」と「つつましい」を混同するのもわからなくはないですね。もっとも、お金がたくさんあっても「華美ではない生活をしている」場合もあるので、この場合は「外に見せない」という意味で「お金があっても慎ましい生活をしている」と言えますもんね。
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