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渡部龍朗の宮沢賢治朗読集
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渡部龍朗の宮沢賢治朗読集

Author: 渡部製作所

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Audibleで数々の文学作品を朗読してきたナレーター 渡部龍朗(わたなべたつお) が、宮沢賢治作品の朗読全集の完成を目指し、一編ずつ心を込めてお届けするポッドキャスト。
▼ 朗読音声とテキストがリアルタイムで同期する新体験オーディオブックアプリ「渡部龍朗の宮沢賢治朗読集」iOS版 / Android版 公開中 ▼
【iOS】https://apps.apple.com/ja/app/id6746703721
【Android】https://play.google.com/store/apps/details?id=info.watasei.tatsuonomiyazawakenjiroudokushu

幻想的で美しい宮沢賢治の言葉を、耳で楽しむひとときを。
物語の息遣いを感じながら、声に乗せて広がる世界をお楽しみください。
45 Episodes
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📖『北守将軍と三人兄弟の医者』朗読 – 三十年の戦いを終えた老将軍と、三つの病院🏥⚔️静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『北守将軍と三人兄弟の医者』。ラユーという首都の南の黄色い崖のてっぺんに、青い瓦の病院が三つ並んで建っています。リンパー、リンプー、リンポー。兄弟三人の医者がいて、一人は人間を、一人は馬や羊を、一人は草や木を治します。白や朱の旗が風にぱたぱたと鳴る、その三つの病院の前を、今日も病気の人や、びっこをひく馬や、萎れかかった牡丹の鉢が、次から次へと上っていきます。ある日の朝、町の人たちは遠くからチャルメラやラッパの音を聞きました。やがてそれは近づいてきて、町を囲む軍勢となります。灰色でぼさぼさした、煙のような兵隊たち。その先頭に立つのは、背中の曲がった老将軍。北守将軍ソンバーユーです。三十年、国境の砂漠で戦い続け、ようやく凱旋してきた将軍と、九万の兵隊。けれども将軍には困ったことがありました。三十年も馬から降りなかったために、足は鞍に、鞍は馬の背に、がっしりとくっついて離れないのです。顔や手には灰色の不思議なものが生えています。王の使いを前にしても馬から降りられず、困り果てた将軍は、三つの病院へと向かいます。人を診る兄、馬を診る弟、草木を診る末弟。それぞれの病院で、将軍と白馬には何が待っているのでしょう。将軍が砂漠で歌う軍歌、「みそかの晩とついたちは 砂漠に黒い月が立つ」という詩的な言葉。馬から降りられない将軍の困惑、算数の問答、病院での出来事。深刻さとおかしみが入り混じった、独特の語り口。砂漠の乾いた空気と、病院の場面。三十年の孤独な戦いと、帰還後の人々との関わり。重く固まった身体。物語の中で、対照的なものたちが隣り合って現れます。三十年の旅を終えた老将軍の物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。#兵隊 #狐 #月
マグノリアの木

マグノリアの木

2025-11-1616:04

📖『マグノリアの木』朗読 – 霧に包まれた心の峰々と、一面に咲く白い花🌫️🌸静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『マグノリアの木』。霧がじめじめと降る中、諒安はただ一人、険しい山谷の刻みを渉っていきます。沓の底を半分踏み抜きながら、峯から谷へ、谷から次の峯へ。真っ黒でガツガツした巌、薄黒い灌木の密林、淡く白く痛い光——よるべもない世界を進む諒安の耳に、ある時声が響きます。「これがお前の世界なのだよ。それよりもっとほんとうはこれがお前の中の景色なのだよ」と。やがて黄金色の草の頂上に立った諒安の前で、霧が融けます。そこに広がっていたのは、一面の山谷の刻みに一面真っ白に咲くマグノリアの花でした。日のあたるところは銀と見え、陰になるところは雪のきれと思われるその光景の中で、諒安は羅をつけ瓔珞をかざった人々と出会い、「マグノリアの木は寂静印です」という言葉とともに、「あなた」と「私」をめぐる対話が交わされます。霧に包まれた険しい山谷と、霧が融けた後に現れる一面のマグノリアの花。苦しい道のりを一歩一歩踏みしめて進むことと、突然目の前に開ける光と白い花々。外の風景と、諒安の中の景色。けわしさと平らかさ、暗さと光、孤独と出会い——物語の中で、対照的なものたちが隣り合って現れます。「覚者の善」という言葉、瓔珞をかざった人々の姿、寂静印としてのマグノリア。仏教的な言葉や概念が散りばめられながら、それらは霧と光と花の風景の中に在ります。詩的な言葉と幻想的な情景が織りなす、静謐で瞑想的な世界。宮沢賢治が描く、霧と光と花に満ちた不思議な風景。諒安の旅路を通して立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。#植物
いちょうの実

いちょうの実

2025-11-0911:29

📖『いちょうの実』朗読 – 千の子どもたちの旅立ちの朝🍂✨静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『いちょうの実』。空のてっぺんがまるでカチカチに焼きをかけた鋼のようにつめたく澄みきった明け方。東の空が桔梗の花びらのようにあやしい底光りをはじめる頃、丘の上の一本のいちょうの木に実った千人の子どもたちは、いっせいに目を覚まします。きょうこそが、旅立ちの日——。「ぼくなんか落ちるとちゅうで目がまわらないだろうか」と不安を口にする子、水筒にはっか水を用意して仲間に分けようとする子、「あたしどんなとこへいくのかしら」「どこへもいきたくないわね」「おっかさんとこにいたいわ」と別れを悲しむ女の子たち。木のいちばん高いところにいる男の子たちは「ぼくはきっと黄金色のお星さまになるんだよ」と空への憧れを語り合い、別の子は魔法の網を持って杏の王様のお城のおひめ様を救う冒険を夢見ています。くつが小さいと困る子、おっかさんにもらった新しい外套が見つからなくて泣きそうになる子——千人の子どもたちそれぞれに、不安も希望も夢も、そして母への思いもあります。おかあさんであるいちょうの木は、あまりの悲しみに扇形の黄金の髪の毛を昨日までにみんな落としてしまいました。そしてきょう、まるで死んだようになってじっと立っています。星がすっかり消え、東の空が白く燃えるようにゆれはじめたとき——光の束が黄金の矢のように一度にとんできました。子どもらはまるでとびあがるくらいかがやきます。北から氷のようにつめたい透きとおった風がゴーッと吹いてきます。「さよなら、おっかさん」「さよなら、おっかさん」——。この物語には、別れの朝の空気がすみずみまで満ちています。冷たく澄んだ明け方の空、霜のかけらが風に流される音、桔梗色から白光へと移りゆく東の空——そうした繊細な自然描写の中で、いちょうの実である子どもたち一人ひとりの声が丁寧に拾い上げられていきます。不安と希望、悲しみと期待、現実的な心配事と無邪気な空想が、千通りの小さな声となって語られます。子どもたちがそれぞれに準備をし、互いに励まし合い、別れを惜しみ、それでも旅立たなければならない——その一つひとつの会話に耳を傾けていると、あたかも自分もその木の下に立って、子どもたちの旅立ちを見守っているような感覚に包まれます。母と子の別れ、成長と旅立ち、そして自然の営み。冷たい北風とあたたかな陽の光。悲しみの中にある祝福。この物語が描き出す、ある秋の朝の光景を、朗読でじっくりとお聴きください。#植物
化物丁場

化物丁場

2025-11-0222:08

📖『化物丁場』朗読 – 軽便鉄道の車窓から語られる、何度も崩れる工事現場の不思議🚂🏔️雨が五六日続いた後の朝、やっとあがった空には、まだ方角の決まらない雲がふらふらと飛び、山脈も異様に近く見えています。黄金の日光が青い木や稲を照らしてはいますが、なんだかまだほんとうに晴れたという気がしない、そんな不安定な空気の中、「私」は西の仙人鉱山への用事のため、黒沢尻で軽便鉄道に乗り換えます。車室の中では、乗客たちが昨日までの雨と洪水の噂で持ちきりです。そんな中、「私」のうしろの席で、突然太い強い声が響きます。「雫石、橋場間、まるで滅茶苦茶だ。レールが四間も突き出されてゐる」——線路工夫の半纒を着た男が、誰に言うとなく大きな声でそう告げたのです。ああ、あの化物丁場だな。「私」は思わず振り向きます。化物丁場——それは、鉄道敷設の際に何度も何度も理由もなく崩れ続けた、不思議な工事現場のことでした。雨が降ると崩れる。けれども、水のせいでもないらしい。全くをかしい、と工夫は言います。黒くしめった土の上に砂利を盛ったこと、それでもそれだけでは説明のつかない、あの場所の不気味さ。工夫が語り始めたのは、十一月の凍てつく空気の中での体験でした。百人からの人夫で何日もかかって積み直した砂利が、すっかり晴れた夜、明け方近くに突然崩れ落ちる。アセチレンランプの青白い光の中、みんなが見ている前で、まだ石がコロコロと崩れ続ける様子。技師は目を真っ赤にして怒鳴り散らし、工夫たちは、一度別段の訳もなく崩れたのなら、いずれまた格別の訳もなしに崩れるかもしれないと思いながら、それでも言いつけられた通りに働き続けます。乱杭を打ち込み、たき火を焚いて番をする夜もありました。五日の月の下、遠くで川がざあと流れる音だけが響く中で過ごす時間。そして十二月に入り、雪が降り、また崩れ——何度も何度も繰り返される崩壊と積み直し。今年はもうだめなんだ、来年神官でも呼んで、よくお祭をしてから、コンクリーで底からやり直せ、と工夫たちは言い合いながらも、雪の中で作業を続けていったのです。走る汽車の車窓から見える青い稲田、白く光る線路、栗駒山の青い姿。現実の風景の中で語られる、何度も崩れる工事現場の話。それは何を意味しているのか——技術と自然、人間の営みと土地の記憶、そして説明のつかない出来事。雨上がりの不安定な空気の中、軽便鉄道は西へ西へと進んでいきます。この物語は、軽便鉄道という日常的な空間の中で、偶然乗り合わせた線路工夫の語りを通して展開されます。幻想的な世界ではなく、現実の鉄道工事という具体的な労働の場面を舞台にしながら、そこに不可解な出来事が幾重にも重なっていく構成。雨上がりの不安定な天候、行き交う雲、近く見える山脈といった自然描写が、語られる出来事の不思議さを一層際立たせています。何度崩れても積み直し続ける工夫たちの姿と、それでもなお崩れ続ける場所——語り手の淡々とした口調の中に滲む、説明のつかないものへの畏れ。軽便鉄道の車窓から見える東北の風景とともに、この不思議な体験談を朗読でお楽しみください。#鉄道 #月
📖『まなづるとダァリヤ』朗読 – 丘の上で輝きを競う花たちと、星空を渡る鳥の物語🌸🌙静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『まなづるとダァリヤ』。果物畑の丘のいただきに、ひまわりほどの背丈を持つ黄色なダァリヤが二本と、さらに高く赤い大きな花をつけた一本のダァリヤがありました。南から荒れ狂う風も、初めて吹き渡る北風又三郎の笛も、この立派な三本のダァリヤを揺るがすことはありません。赤いダァリヤは、花の女王になろうと願っていました。「こればっかしじゃ仕方ないわ。あたしの光でそこらが赤く燃えるやうにならないくらゐなら、まるでつまらないのよ」——その言葉には、誰よりも輝きたいという強い思いが込められています。黄色なダァリヤたちは、日ごとに美しさを増していく赤い花を賞賛し、その後光の大きさに目を見張ります。夜ごと星空の下を飛び渡るまなづるは、赤いダァリヤに声をかけながら、向こうの沼の方へと消えていきます。そこには、つつましく白く咲く一本のダァリヤがありました。まなづるはいつも、静かにその白い花に挨拶を交わしていくのです。太陽は毎日かがやき、赤いダァリヤの美しさは日を追うごとに増していきます。コバルト硝子の光の粉が舞う空の下、黄水晶の薄明が沈み、藍晶石のような夜が訪れ、また琥珀色の朝が来る——季節は秋へと深まり、丘の果物たちも色づいていきます。けれども、美しさを極めようとする赤いダァリヤの姿に、ある日、黄色な花たちは何か恐ろしいものを感じ取ります。「あたしたちには何だかあなたに黒いぶちぶちができたやうに見えますわ」——それは桔梗色の薄明の中での、おずおずとした告白でした。丘の上で輝きを競う花たち、夜空を渡る鳥、そしてつつましく咲く白い花。光と影、美しさと移ろい、声高な願いと静かな存在——それらが交錯する秋の日々の中で、この物語は静かに、しかし確かに何かを語りかけてきます。宮沢賢治が描く花たちの世界は、きらびやかな色彩と詩的な言葉に満ちながら、同時に深い静けさを湛えています。果物畑の丘に咲くダァリヤたちの、ある秋の物語。朗読でじっくりとお楽しみください。#傲慢 #植物
おきなぐさ

おきなぐさ

2025-10-1914:59

📖『おきなぐさ』朗読 – 銀の糸をまとう小さな花の、光と風の物語🌸✨静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『おきなぐさ』。「うずのしゅげを知っていますか」——そう語りかけられて始まります。植物学ではおきなぐさと呼ばれるこの花は、黒朱子の花びらと青白い銀びろうどの葉を持ち、まるで黒い葡萄酒を湛えた変わり型のコップのように見えます。まっ赤なアネモネの従兄、きみかげそうやかたくりの花のともだち——この小さな花をきらいなものはありません。語り手は、花の下を往き来する蟻に尋ねます。「おまえはうずのしゅげはすきかい、きらいかい」。蟻は活発に答えます。「大すきです。誰だってあの人をきらいなものはありません」。黒く見えるこの花は、お日様の光が降る時には、まるで燃え上がってまっ赤に見えるのだと蟻は教えてくれます。花を透かして見る小さな生き物たちには、この花の真の姿が見えているのです。銀の糸が植えてあるようなやわらかな葉は、病気にかかった仲間のからだをさすってやるために使われるのだといいます。向こうの黒いひのきの森の中のあき地では、山男が倒れた木に腰掛けて、じっとある一点を見つめています。鳥を食べることさえ忘れて、その黝んだ黄金の眼玉を地面に向けているのは、かれ草の中に咲く一本のうずのしゅげが風にかすかにゆれているのを見ているからです。やがて場面は、小岩井農場の南、ゆるやかな七つ森のいちばん西のはずれへと移ります。かれ草の中に咲く二本のうずのしゅげ。まばゆい白い雲が小さなきれになって砕けてみだれ、空をいっぱい東の方へ飛んでいく春の日。お日様は何べんも雲にかくされて銀の鏡のように白く光ったり、またかがやいて大きな宝石のように蒼ぞらの淵にかかったりします。山脈の雪はまっ白に燃え、野原は黄色や茶の縞になり、掘り起こされた畑は鳶いろの四角なきれをあてたように見えます。その変幻の光の中で、二本のうずのしゅげは夢よりもしずかに話し合います。「ねえ、雲がまたお日さんにかかるよ」「走って来る、早いねえ」——雲のかげが野原を走り、山の雪の上をすべり、まるでまわり燈籠のように光と影が交互に訪れます。西の空から次々と湧き出てくる雲、どんどんかけて来ては大きくなり、お日様にかかっては雲のへりが虹で飾ったように輝く様子を、二人はじっと見つめているのです。そこへ風に流されて降りて来たひばりが、強い風の苦労話をします。「大きく口をあくと風が僕のからだをまるで麦酒瓶のようにボウと鳴らして行く」と。しかしうずのしゅげは言います。「だけどここから見ているとほんとうに風はおもしろそうですよ。僕たちも一ぺん飛んでみたいなあ」。ひばりは答えます。「飛べるどこじゃない。もう二か月お待ちなさい。いやでも飛ばなくちゃなりません」。それから二か月後。丘はすっかり緑に変わり、ほたるかずらの花が子供の青い瞳のように咲き、小岩井の野原には牧草や燕麦がきんきん光っています。風はもう南から吹いていました。春の二つのうずのしゅげの花は、すっかりふさふさした銀毛の房にかわっていました。そしてその銀毛の房はぷるぷるふるえて、今にも飛び立ちそうです——。光と影、風と雲、生き物たちの声が交わる野原で、小さな花が見つめるものは何か。黒く見えながら赤く燃える花。銀の糸をまとう葉。そして風を待つ銀毛の房。蟻や山男やひばりとの対話を通して、一本の植物の静かな時間が丁寧に描き出されていきます。変幻する春の光、すきとおった風、そして飛び立つ瞬間——野原に咲く小さな花の、見えないものを見る力と、やがて訪れる旅立ちの時が、詩的な言葉で綴られていきます。朗読でじっくりとお楽しみください。#星座 #植物
畑のへり

畑のへり

2025-10-1209:45

📖『畑のへり』朗読 – 小さな蛙たちが見た畑の不思議な一日🐸🌾静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『畑のへり』。麻が刈り取られた後、畑のへりに一列に植えられていたとうもろこしが、ようやく立派に目立つようになりました。小さな虻やべっ甲色の透き通った羽虫たちが代わる代わる訪れて挨拶していきます。とうもろこしには頂上にひらひらした穂が立ち、大きな縮れた葉のつけ根には尖った青いさやができていました。風にざわざわと鳴る、穏やかな畑の一日——。そこへ一匹の蛙が跳んできて、このとうもろこしの列を目にして仰天します。上等の遠眼鏡で確かめた蛙は、何かを見るや否や、恐怖のあまり一目散に逃げ出しました。逃げた先で出会ったもう一匹の蛙に、息を切らせながら語るその姿——遠眼鏡に映ったものは、蛙の目には恐ろしい存在として映ったようです。兵隊なのか、幽霊なのか、何やら物々しい装いをした不気味な一団が、そこに並んでいたというのです。しかしもう一匹の蛙は遠眼鏡で確かめて、落ち着いて答えます。あれは恐ろしいものではない、ただのとうもろこしだと。けれども最初の蛙は納得しません。その装いのおかしさ、常識外れの贅沢さを次々と指摘します。二匹の議論は続き、世の中にはさまざまな不思議な姿をした生き物がいるのだという話になっていきます。そうこうしているうちに、人間が実際に畑に現れます。二匹の蛙は葉陰に隠れ、遠眼鏡でその様子を観察し始めます。人間がとうもろこしに何かをしている様子は、小さな蛙たちの目にはどのように映るのでしょうか。彼らの会話からは、見慣れた日常の光景が、まったく別の意味を帯びた出来事として解釈されていく様子が伝わってきます。この物語では、畑という身近な場所が、小さな生き物たちの視点を通して見ると、まったく別の世界に変わります。とうもろこしは謎めいた存在になり、人間は不思議な力を持つ生き物になる——蛙たちの会話を通して描かれるのは、見る者によって世界がいかに異なって見えるかということ、そして私たちが当たり前だと思っている日常が、別の目から見ればどれほど奇妙で驚くべきものかということです。蛙たちのユーモラスな会話、誤解と納得、恐怖と安心が入り交じる軽快なやりとり。畑のへりで繰り広げられる小さな騒動は、やがて静かに幕を閉じます。さやを失ったとうもろこしは、それでもやはり穂をひらひらと空に揺らしているのです。風にざわめく畑の穂、透き通った羽虫たち、そして遠眼鏡を覗き込む二匹の蛙——日常の風景の中に潜む不思議と、小さな生き物たちの生き生きとした世界を、朗読でじっくりとお楽しみください。#蛙 #動物が主人公 #人と動物
革トランク

革トランク

2025-10-0514:51

📖『革トランク』朗読 – 失敗と見栄と、ある青年の帰郷🎒🚂静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『革トランク』。楢岡の町に出て工学校の入学試験を受けた斉藤平太。いくつかの幸運が重なって、どうにか卒業までこぎつけた彼は、村に戻って建築設計の看板を掲げます。茶色の乗馬ズボンに赤ネクタイという出で立ちで、村の建物の設計を請け負った平太。あちこち忙しく監督して回りますが、どうも大工たちの様子がおかしい。みんな変な顔をして下ばかり向き、なるべく物を言わないようにしているのです。工事が完成したとき、平太は自分の致命的な設計ミスに気づきます。すっかり気分を悪くした彼は、そっと財布を開け、わずかな所持金を確かめると、その乗馬ズボンのまま、故郷を離れて東京へと逃げ出しました。東京での暮らしは厳しいものでした。言葉の訛りもあって仕事が見つからず、ついには倒れてしまいます。区役所に助けられ、撒水夫として働き始めた平太は、実家にもっともらしい理由をつけた葉書を送ります。しかし村長である父からの返事はありませんでした。それから二年。苦しい日々を過ごしながらも、平太は建築の仕事に戻り、監督として働くようになります。そんな彼のもとに、母の病を知らせる電報が届きます。月給をとったばかりだった平太は、立派な革のトランクを買います。けれども中に入れるものは、着ている服以外には何もありません。親方から要らない設計図を貰い、それをぎっしりと詰め込んだのでした。故郷の停車場に降り立った平太。大きな革トランクを担いで、野道を歩き、渡し場へとたどり着きます。夕暮れの川辺、せきれいが水面すれすれに飛び、月見草が咲いています。そこに集まってきた子供たちは、その立派なトランクを珍しがります——その声を聞きながら、平太は何とも言えず悲しい、寂しい気持ちになるのでした。この物語には、失敗から逃げ出した青年の姿が、ユーモアと哀愁を帯びて描かれています。繰り返される独特のフレーズが、どこか滑稽でありながら、人生の不条理さをも感じさせます。田舎と都会、見栄と現実、そして帰郷——夕暮れの川辺で立派なトランクを前にする平太の姿に、人間の弱さと切なさが静かに響きます。朗読でじっくりとお楽しみください。#衝動
📖『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』朗読 – 春の野原で繰り広げられる少年の不思議な一日🌿🌞静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』。早春の朝、ホロタイタネリという少年が、冬の間に準備した藤蔓を叩きながら、不思議な節回しの歌を口ずさんでいます。「西風ゴスケに北風カスケ」という独特の囃子詞が繰り返される中、窓の外に広がる春の野原の輝きと、陽炎の誘いに抗えなくなったタネリは、仕事を放り出して飛び出していきます。藤蔓を噛みながら野山を駆け回るタネリが出会うのは、まだ冬の眠りから覚めない木々たち、不思議な思考を漏らす生き物、そして一羽の美しい大きな鳥。春の息吹と冬の名残が混在する風景の中で、タネリは様々な存在に話しかけ、歌いかけ、遊びを求めます。時に相手にされず、時に恐ろしい何かに出会い、時に心を奪われるような美しいものを追いかけて。野原から丘へ、湿地から森へと続くタネリの放浪は、子どもの純粋な好奇心と孤独が入り混じる一日の冒険となっていきます。即興の歌や呪文のような言葉遊びが物語を彩り、現実と幻想の境界があいまいになる春の一日が、独特のリズムとともに展開されていきます。早春の風景を舞台に、自然の事物と対話を試みる少年の姿が描かれるこの物語。タネリが一日中噛んでいたという藤蔓、繰り返される「西風ゴスケに北風カスケ」という囃子詞、そして春の野山で出会う不思議な存在たち。宮沢賢治独特の言葉のリズムと、土着的でありながら幻想的な世界観が織りなす、春の一日の物語を朗読でじっくりとお楽しみください。#冒険 #人と動物 #衝動 #少年
氷河鼠の毛皮

氷河鼠の毛皮

2025-09-2124:55

📖『氷河鼠の毛皮』朗読 – 極北へ向かう列車で繰り広げられる奇妙な冒険❄️🚂極寒の地へ向かう列車で繰り広げられる奇妙な冒険の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『氷河鼠の毛皮』。氷がまるでお菓子のような形をしているほど寒い北の地から、風に吹き飛ばされて切れ切れにやって来たという、不思議な語り口で始まる物語です。十二月二十六日、イーハトヴは激しい吹雪に見舞われていました。町は白だか水色だかわからない雪の粉でいっぱいになり、風は絶え間なく電線や枯れたポプラを鳴らし続けています。そんな中、夜八時のベーリング行最大急行に乗り込む人々がいました。北極の近くまで行くのですから、みんなすっかり用意を整えています。着物は厚い壁のように着込み、馬油を塗った長靴を履き、トランクにまで寒さ対策を施して。車内には様々な人々が乗り合わせていました。その中でも特に目を引くのは、顔の赤い肥った紳士でした。毛皮を一杯に着込み、二人前の席を取り、アラスカ金の大きな指環をはめ、十連発の素敵な鉄砲を持った、いかにも元気そうなその人物。彼はイーハトヴのタイチと名乗り、ラッコ裏の内外套、海狸の中外套、黒狐表裏の外外套、さらには氷河鼠の頸のところの毛皮だけで作った上着まで身につけていました。四百五十匹分もの氷河鼠の毛皮で作られたその上着は、実にぜいたくなものでした。タイチは黒狐の毛皮九百枚を持って帰るという賭けをしたのだと、得意げに語ります。同じ車内には、堅い帆布の上着を着て愉快そうに口笛を吹いている若い船乗り、痩せた赤ひげの男、商人風の人々など、それぞれに事情を抱えた乗客たちが座っていました。列車は吹雪の中を一生懸命駆け抜け、やがて雪は止み、青い月が鉄色の冷たい空にかかりました。野原の雪は青白く見え、唐檜やとど松が真っ黒に立ってちらちらと窓を過ぎていきます。酔いが回ったタイチは、帆布一枚だけの船乗りの青年に毛皮を貸そうと申し出ますが、青年は月とオリオン座の空をじっと眺めて答えません。氷山の稜が桃色や青にぎらぎら光って、列車は極北の地へと向かって進んでいきます。この物語は、語り手自身が「風に吹き飛ばされて来た切れ切れの報告」と述べているように、断片的で幻想的な語り口で進んでいきます。極寒の地へ向かう列車という閉ざされた空間で、贅沢な毛皮に身を包んだ人間と、その毛皮の持ち主である動物たちとの対立が描かれます。人間の欲望と自然界との緊張関係、そして意外な結末へと導かれる展開は、読む者を不思議な世界へと誘います。寒さと温かさ、豪華さと質素さ、支配と反抗といった対比が織り成す、北の国からの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。#傲慢 #鉄道
📖『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』朗読 – ばけもの世界を舞台にした奇想天外な成功譚🌟🎪不思議な響きを持つ名前の主人公が織りなす、幻想と現実が交錯する物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』。極度の困窮の中で家族を失い、一人残された少年が、奇想天外で滑稽なばけもの世界に放り込まれていく物語です。主人公は、空中で見えない網を投げる「昆布取り」という摩訶不思議な労働に従事することになり、現実感覚を失いそうになりながらも、やがて自らの力で新しい世界への扉を開いていきます。学問への憧れを抱いて主人公が向かった先は、あくびと一緒に筆記帳を呑み込んでしまう巨大な博士や、一銭のマッチを十円で売り歩く奇怪な商売、複雑怪奇な利息システムで絡み合った三十人もの監督たちが跋扈する、荒唐無稽なばけもの都市でした。化学の講義という名の支離滅裂な知識体系に翻弄されながらも、思いがけず司法の世界へと導かれ、二つの世界を股にかける珍妙な事件の数々に関わることになります。新たな地位を得たネネムは、勲章が壁一杯になるほどの大出世を遂げ、特別な「藁のオムレツ」まで食べられる身分となりました。しかし、その栄達の過程では、弱者を食い物にする馬鹿げた搾取構造や、真面目な顔をして不条理を繰り返す官僚制度の矛盾と向き合うことになります。威厳ある裁判長として振る舞いながらも、心のどこかで自分自身の滑稽さを感じずにはいられません。名声と権威に包まれ、火山の噴火さえも自分の意のままになるような錯覚に陥りながらも、ネネムの心を占め続けるのは、失われた大切なものへの想いでした。権力の絶頂で踊り狂っていた彼が、ある日の巡視で遭遇したのは、過去と現在、失ったものと得たもの、そして滑稽さと切なさが交錯する運命的な瞬間でした。この物語は、現実と幻想の境界を軽やかに行き来しながら、一人の青年の成長と家族への愛を描いています。この不思議な世界では、労働搾取や高利貸しの問題、官僚制度の矛盾といった出来事が次々と展開し、ユーモアと風刺が絶妙に調和しています。琥珀色のビールで満たされる東の空、ばけもの麦の収穫風景、クラレの花咲く丘でのサンムトリ火山の噴火——詩的な描写に満ちた幻想世界が、朗読によって鮮やかに立ち上がります。ペンネンネンネンネン・ネネムという滑稽な響きの名前に込められた、深い人間愛と社会への眼差し。ばけもの世界での奇想天外な冒険を通じて描かれる、失われたものを取り戻そうとする魂の軌跡を、朗読でじっくりとお楽しみください。#伝記
📖『ペンネンノルデはいまはいないよ 太陽にできた黒い棘をとりに行ったよ』朗読 – 創作の萌芽に宿る物語の種子🌱✨静かに語られる、ひとつの物語の誕生の瞬間。今回お届けするのは、宮沢賢治が半紙一枚に書き残した創作メモ『ペンネンノルデはいまはいないよ 太陽にできた黒い棘をとりに行ったよ』。「ペンネンノルデが七つの歳に太陽にたくさんの黒い棘ができた」——この印象的な一行から始まる十二の断章は、完成した物語ではなく、創作のための覚え書きとして残されたものです。短い言葉の連なりの中に、ひとりの人物の生涯が凝縮されています。赤い眼をした父、ばくち、森での昆布とり、モネラの町への旅立ち、恋人アルネとの出会い、フウケーボー大博士との奇妙な体験——簡潔でありながら、確かにひとつの人生の軌跡が描かれています。氷羊歯の汽車、化物丁場、岩頸問答、サンムトリの噴火、セントエルモの火——これらの幻想的な言葉たちは、『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』や後の『グスコーブドリの伝記』と共通する物語世界を示しています。特に火山や噴火といったモチーフ、主人公が人々のために奮闘する姿は、グスコーブドリの物語に色濃く受け継がれていくことになります。茶色なトランプのカードを作り、みんなの仕事を楽にしようと考えるノルデの姿からは、後の作品に登場する自己犠牲的な主人公たちとの関連を見て取ることができます。「噴火を海へ向けるのはなかなか容易なことでない」「太陽がまたぐらぐらおどりだしたなあ。困るなあ」といった言葉からは、自然災害と向き合う人間の姿が浮かび上がります。これらの覚え書きには、災害や飢饉と闘う物語へとつながる要素が込められています。記された言葉の中にも、人間と自然の関係、個人の犠牲と社会への貢献という、賢治文学の重要なテーマが既に胚胎しています。この創作メモは、物語の完成形を楽しむものというよりも、作家の創作過程を垣間見る貴重な資料です。記された言葉から、他の作品との関連や創作の一端を知ることができます。完成された作品とは異なる、生々しい創作の息づかいを感じられる、稀有な体験となることでしょう。一枚の紙に記された創作の種子が、どのような豊かな物語世界と響き合っているのか。その貴重な一端を、朗読の調べとともに味わってみてください。#伝記
📖『グスコーブドリの伝記』朗読 – グスコーブドリが働き続けた日々の物語🌋🌾静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』。イーハトーヴの大きな森で、木こりの父と優しい母、妹のネリと共に幸せな幼年時代を過ごしたグスコーブドリ。しかし突然の気候変動による大飢饉が、この家族の運命を一変させてしまいます。両親を失い、妹とも離ればなれになったブドリは、一人厳しい世界に投げ出されることになります。てぐす工場での労働、沼ばたけでの農作業——様々な職業を通じて社会の現実を知ったブドリは、やがて科学への深い憧れを抱くようになります。クーボー大博士との出会いを経て、イーハトーヴ火山局で火山の観測と制御技術を学び始めるブドリ。そこは三百を超える火山を監視し、自然災害から人々を守る最前線でした。火山局での日々は、ブドリにとって真の学びの場となります。噴火の危険を事前に察知し、人工的に安全な方向へと導く技術。空気中に肥料を散布し、雨を降らせて農作物の収穫を助ける画期的な方法。科学の力によって自然災害を制御し、人々の暮らしを豊かにしていく可能性を、ブドリは身をもって体験していきます。技師として成長を遂げたブドリは、火山の観測と制御に情熱を注ぎ、人々の幸福のために働き続けます。そんな充実した日々の中で、ブドリは自分の人生に真の意味を見出していきます。しかし、平穏な時が過ぎゆく中で、再び人々を脅かす大きな試練が迫ってくることになります——。自然災害によって家族を失った一人の青年が、科学技術の世界に身を投じ、やがて大きな使命に直面していく物語。幼い頃の幸福な記憶から始まり、過酷な現実を経験し、学び続け、成長していくブドリの人生が、ここに静かに描かれています。農業、火山学、気象学といった科学的知識が物語に自然に織り込まれ、現実的でありながら理想的な世界が構築されています。個人の幸福と社会全体の福祉、科学技術の可能性とその責任といったテーマが、イーハトーヴという理想郷を舞台に、詩的な言葉と豊かな想像力によって展開されていきます。この物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。#伝記 #少年
気のいい火山弾

気のいい火山弾

2025-08-3116:56

🌋『気のいい火山弾』朗読 – 優しさと忍耐が織りなす野原の小さな物語🗿✨静寂に包まれた物語の世界へお招きします。今回お届けするのは、宮沢賢治の『気のいい火山弾』。ある死火山のすそ野、かしわの木陰にじっと座り続ける一つの黒い石——「ベゴ」と呼ばれるその石は、卵の両端を少し平らに伸ばしたような丸みを帯びた形をしており、斜めに二本の石の帯が体を巻いています。稜のない滑らかな姿は、周囲の角ばった小石たちとは明らかに異なっていました。このベゴ石には特別な性質がありました——どんなにからかわれても、嘘を言われても、決して怒ることがないのです。深い霧に包まれた退屈な日々、稜のある石たちは面白半分にベゴ石をからかいます。「おなかの痛いのはなおったかい」「ふくろうがとうがらしを持って来たかい」「野馬が小便をかけたろう」——ありもしない出来事を持ち出して笑い転げる石たちに、ベゴ石はいつも穏やかに「ありがとう」と答えるのでした。やがてベゴ石の上には小さな苔が生え、おみなえしがそれを「かんむり」と呼んで冷やかします。苔が赤く色づくと、今度は「赤頭巾」と呼ばれ、苔自身もベゴ石を馬鹿にして踊り歌うようになります。「ベゴ黒助、ベゴ黒助、黒助どんどん」——野原中の生き物たちが口を揃えてあざけりの歌を歌う中で、ベゴ石は変わらず優しい笑顔を絶やしません。しかし、その平穏な日々に突然の変化が訪れます。眼鏡をかけた四人の人たちが、ピカピカする器械を持って野原を横切ってきたのです。彼らがベゴ石を見つけたとき、これまでとは全く違う反応を示すことになります。長い間この野原で過ごしてきたベゴ石に、新たな運命が待ち受けているのです。別れの時に語られるベゴ石の言葉には、長年の優しさと忍耐、そして周囲への変わらぬ愛情が込められています。ベゴ石の揺るぎない優しさと、それを取り巻く野原の生き物たちとの関係は、様々な場面を通じて描かれています。四季の移ろいとともに語られるこの小さな世界では、日常の些細な出来事が積み重なり、やがて思いがけない転機を迎えることになります。四季の移ろいとともに語られるこの小さな世界の物語は、ユーモアと温かさに満ちながらも、どこか深い静寂を湛えています。賢治が描く自然の中の小さな存在たちの会話は、時に滑稽で、時に切なく、そして最後には意外な展開を迎えます。野原に響く小さな声たちの交響楽、そして一つの石が辿る思いがけない運命の物語を、朗読の調べに乗せてお楽しみください。#いじめ
カイロ団長

カイロ団長

2025-08-2436:00

📖『カイロ団長』朗読 – 三十匹のあまがえると舶来ウィスキーが巻き起こす騒動🐸🥃今回お届けするのは、宮沢賢治の『カイロ団長』。三十匹のあまがえるたちは、虫仲間から頼まれて花畑や庭をこしらえる仕事を愉快にやっていました。朝から夕方まで、歌ったり笑ったり叫んだりしながら働き、嵐の次の日などは依頼が殺到して大忙し。みんなは自分たちが立派な人になったような気がして大喜びでした。そんなある日、仕事帰りに見つけた新しい店。「舶来ウェスキイ 一杯、二厘半」の看板に誘われて入ってみると、店番のとのさまがえるが粟つぶをくり抜いたコップで強いお酒を出してくれます。飲めば飲むほどもっと欲しくなり、三百杯、六百杯と重ねるうちに、みんなぐっすり寝込んでしまいました。目を覚ますと勘定の請求が待っていました。しかし誰も払えるだけのお金を持っていません。結局、全員がとのさまがえるのけらいになることに。こうして「カイロ団」が結成され、とのさまがえるは団長として君臨することになりました。カイロ団長は次々と無理難題を押し付けます。木を千本、花の種を一万粒、そして石を九百貫ずつ運べという命令。体重がわずか八匁か九匁のあまがえるにとって、九百貫の石など到底運べるはずもありません。必死になって働くあまがえるたちと、威張り散らす団長。命令は日を追うごとにエスカレートし、「もし出来なかったら警察へ訴えるぞ。首をシュッポォンと切られるぞ」という脅し文句が繰り返されます。やがて青空高く、かたつむりのメガホーンが王さまの新しい命令を告げる声が響きわたります。人に物を言いつけるときの正しい方法についての布告——それは思いもよらない展開を巻き起こすことになります。物語の舞台は、黄金色の日差しが影法師を二千六百寸も遠くへ投げる朝から、木々の緑を飴色に染める夕暮れまで、時間の移り変わりとともに描かれていきます。舶来ウィスキーという異国の品物、粟つぶをくり抜いたコップ、石油缶いっぱいのお酒、くさりかたびら、鉄の棒——物語を彩る小道具たちも印象的です。けむりのようなかびの木を千本と数える機転、算術の得意なチェッコの暗算、「エンヤラヤア、ホイ」という掛け声、「よういやさ、そらもう一いき」という労働の声。通りかかる蟻の助言、もう一匹のとのさまがえるの登場、そして王さまの命令がもたらす予想外の事態。「どうか早く警察へやって下さい。シュッポン、シュッポンと聞いていると何だか面白いような気がします」とやけくそになって叫ぶあまがえるたち。石を引っ張ろうとして足がキクッと鳴ってくにゃりと曲がってしまう場面。どっと笑ってそれから急にしいんとなってしまう瞬間——ユーモラスでありながら、どこか痛切な場面の連続です。「お前たちはわしの酒を呑んだ」「仕方ありません」「今日は何の仕事をさせようかな」——くり返される命令と服従のやりとり。そこに響きわたる王さまの声は、この奇妙な関係にどんな変化をもたらすのでしょうか。宮沢賢治が描く、不思議でユーモラスな世界を朗読でお楽しみください。#蛙 #動物が主人公 #いじめ #傲慢
📖『ざしき童子のはなし』朗読 – 古い家にひそむ座敷童子の不思議な気配👦🏚️✨静寂に満ちた古い家に響く、不思議な気配の物語へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『ざしき童子のはなし』。明るい昼間、みんなが山へ働きに出て、大きな家には子供がふたりだけ。誰もいないはずの静まり返った家の中から、どこかの座敷で「ざわっざわっ」と箒の音が聞こえてきます。ふたりの子供は肩にしっかりと手を組み合って、こっそりと音の正体を探りに行きますが、どの座敷にも誰もおらず、刀の箱もひっそりとして、垣根の檜がいよいよ青く見えるきり。遠くの百舌の声なのか、北上川の瀬の音なのか、どこかで豆を箕にかける音なのか——いろいろ考えてもやっぱりどれでもないようでした。確かにどこかで、ざわっざわっと箒の音が聞こえているのです。またある日のこと。「大道めぐり、大道めぐり」と一生懸命叫びながら、ちょうど十人の子供らが両手をつないで丸くなり、ぐるぐるぐるぐる座敷の中を回って遊んでいました。どの子もみんな、そのうちのお振舞いに呼ばれて来た子供たちです。ぐるぐるぐるぐる、回って遊んでいると、いつの間にか十一人になっていました。ひとりも知らない顔がなく、ひとりも同じ顔がなく、それでもやっぱり、どう数えても十一人だけいるのです。その増えた一人が座敷ぼっこなのだと、大人が出て来て言いました。けれども誰が増えたのか、とにかくみんな、自分だけは、どうしても座敷ぼっこでないと、一生懸命目を張って、きちんと座っていました。さらに別の出来事では、ある大きな本家でいつも旧暦八月のはじめに如来様のお祭りで分家の子供らを呼ぶのでしたが、ある年その一人の子がはしかにかかって休んでいました。「如来さんの祭りへ行きたい。如来さんの祭りへ行きたい」と、その子は寝ていて、毎日毎日言い続けます。本家のおばあさんが見舞いに行って「祭り延ばすから早くよくなれ」とその子の頭をなでて言いました。その子は九月によくなり、みんなが呼ばれることになりましたが、ほかの子供らは、いままで祭りを延ばされたり、鉛の兎を見舞いに取られたりしたので、なんとも面白くなくてたまりません。「あいつのためにひどい目にあった。もう今日は来ても、どうしたって遊ばないぞ」と約束し、その子が来ると次の小さな座敷へ隠れました。ところが、その座敷の真ん中に、今やっと来たばかりのはずのあのはしかを病んだ子が、まるっきりやせて青ざめて、泣き出しそうな顔をして、新しい熊のおもちゃを持って、きちんと座っていたのです。この物語には、北上川の朗妙寺の淵の渡し守が語る、月夜の晩に紋付を着た美しい子供を舟で渡した不思議な体験も収められています。座敷童子は家から家へと移り住み、その去来によって家の運命が左右されるという、古くから語り継がれる不思議な存在として描かれています。現実とも幻ともつかない、静かな午後の古い家で起こる小さな出来事たち。箒の音、増える子供の数、隠れた座敷に現れる影——日常の中にひそやかに息づく不思議な気配を、東北の言葉で語られるいくつかの体験談として記されています。座敷童子という東北地方に伝わる精霊の存在を通して、見えるものと見えないもの、そこにいるものといないものの境界があいまいになる、静謐で神秘的な世界が広がります。#童子
とっこべとら子

とっこべとら子

2025-08-1016:45

📖『とっこべとら子』朗読 – 古狐が人を化かす不思議な悪戯の物語🦊✨静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『とっこべとら子』。 大きな川の岸に住み、夜な夜な人々から魚や油揚げを盗む古狐「とっこべとら子」をめぐる、二つの不思議な化かし話です。物語はまず、「こんな話は一体ほんとうでしょうか」という語りかけとともに、昔の出来事から始まります。慾深の六平じいさんが、ある秋の十五夜の晩、町から酔っぱらって帰る途中のこと。川岸で出会ったのは、ピカピカした金らんの上下を着た立派な侍でした。「拙者に少しく不用の金子がある」と言うその侍は、金貸しを業とする六平に、千両箱を次々と預けていきます。「ハイ、ヤッ」の掛け声とともに土手の陰から運ばれる箱は、月にぎらぎらと輝く小判でいっぱい。「そちの身に添う慾心が実に大力じゃ」と感心する侍の言葉に、六平はほくほくと十の千両箱を背負って家路につきますが――。しかし語り手は続けます。「どうせ昔のことですから誰もよくわかりませんが多分偽ではないでしょうか。どうしてって、私はその偽の方の話をも一つちゃんと知ってるんです。実はゆうべ起ったことなのです」。舞台は語り手の時代に移り、同じ川岸の近くに住む平右衛門という人の家で繰り広げられる出来事へ。平右衛門は今年の春に村会議員になり、今夜はそのお祝いの酒盛りです。親類たちが集まって「ワッハハ、アッハハ」と大さわぎの中、一人だけ一向笑わない男がいました。小吉という青い小さな意地悪の百姓です。機嫌を悪くした小吉は座を立ち、門の横の田の畔に立つ疫病除けの「源の大将」を見つめます。それは竹に半紙を貼って大きな顔を書いたもので、青い月のあかりの中で小吉をにらんでいるように見えました。やがて酒盛りが済み、お客たちがご馳走の残りを藁のつとに入れて帰ろうとしたとき、平右衛門が冗談めかして声をかけます。「おみやげをとっこべとらこに取られなぃようにアッハッハッハ」。するとお客の一人が「とっこべとらこだらおれの方で取って食ってやるべ」と答えた、まさにその時――。この物語には、人間の欲深さと狡猾さ、そして古狐の知恵と悪戯心が絡み合って織りなす、どこかユーモラスで不思議な世界が広がっています。方言を交えた生き生きとした会話や、月夜の幻想的な情景描写も印象的です。六平じいさんの「ウントコショ、ウントコショ」という重い荷物を運ぶ声、酒盛りでの賑やかな笑い声、そして「神出鬼没のとっこべとらこ」が現れる緊迫した場面まで、音の響きや情景が目に浮かぶような描写に満ちています。現実なのか幻なのか、昔の話なのか今の話なのか――語り手自身が「多分偽ではないでしょうか」と言いながらも、「実はゆうべ起ったことなのです」と続ける、この曖昧さこそが物語の魅力の一つです。古狐の巧妙な悪戯は人間たちをどのように翻弄していくのか。川岸に住む古狐とその周りの人々が繰り広げる、不思議でどこか愛らしい化かしの世界を、朗読でじっくりとお楽しみください。#狐 #人と動物 #月 #方言
📖『チュウリップの幻術』朗読 – 光に満ちた五月の農園で繰り広げられる不思議な午後🌷✨静寂の中に響く朗読の調べとともに、宮沢賢治の『チュウリップの幻術』の世界へと歩みを進めてみませんか。すもものかきねに青白い花が咲き誇る五月の農園。玉髄のように光る雲が四方の空を巡り、月光をちりばめたような緑の障壁に沿って、一人の洋傘直しがてくてくと歩いてきます。荷物を背負い、赤白だんだらの小さな洋傘を日よけにさしたその姿は、まるで有平糖でできているかのように光って見えます。黒く細い脚は鹿を思わせ、その顔は熱って笑っています。農園の中に足を踏み入れると、しめった五月の黒土にチュウリップが無造作に植えられ、一面に咲いて、かすかにゆらいでいます。そこへ青い上着の園丁がこてを下げて現れ、洋傘直しとの出会いが始まります。剪定鋏や西洋剃刀を研ぐ仕事を請け負った洋傘直しは、園丁の案内でチュウリップ畑を見ることになります。黄と橙の大きな斑のアメリカ直輸入の品種、見ていると額が痛くなるほど鮮やかな黄色、海賊のチョッキのような赤と白の斑、まっ赤な羽二重のコップのような半透明の花びら——様々なチュウリップが咲き競う中で、園丁が特別に誇らしげに指し示したのは、畑では一番大切だという小さな白い花でした。静かな緑の柄を持つその花は、風にゆらいで微かに光り、何か不思議な合図を空に送っているかのようです。その白いチュウリップの盃の中から、砂糖を溶かした水のようにユラユラと透明な蒸気が立ち上り、やがて光が湧きあがります。花の盃をあふれてひろがり、湧きあがりひろがり、青空も光の波で一杯になっていきます。山脈の雪も光の中で機嫌よく空へ笑い、チュウリップの光の酒が無尽蔵に湧き出します。洋傘直しと園丁は、その幻想的な酒に酔いしれながら、現実と幻想の境界が曖昧になっていく午後のひとときを過ごします。エステル工学校出身だと名乗る洋傘直しと、貧乏だが光る酒を誇る園丁。二人の会話は次第に不思議な調子を帯び、ひばりは歌とともに光の中に溶け、唐檜の若い擲弾兵たちは踊り出し、すももの義勇中隊も動き始めます。梨の木どもは蛹のような踊りを踊り、果物の木々は輪になって踊り歌います。光の酒に満たされた世界では、植物たちまでもが生き生きと動き回る生命を獲得していくのです。太陽の傾きとともに変化する光と影、雲の流れに左右される明暗、そして何より、あの白いチュウリップから湧き上がる光の酒が織りなす幻想の午後。現実の農園での些細な出会いから始まった物語は、いつしか光と色彩に満ちた夢幻の世界へと私たちを誘います。洋傘直しという職人が、あの特別な白いチュウリップによって束の間の幻想に誘われる、穏やかな午後のひととき。五月の午後の陽射しの中で繰り広げられる、現実と幻想が交錯する一篇。職人の手仕事から始まる日常が、花の魔法によって色鮮やかな異世界へと変容していく過程を、朗読の響きとともにお楽しみください。#心象スケッチ #夢 #植物
📖『ひのきとひなげし』朗読 – 風に舞う花たちと夕暮れの庭で繰り広げられる不思議な物語🌺🌲静謐な朗読の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『ひのきとひなげし』。風の強い夕暮れ時、まっ赤に燃え上がったひなげしの花たちが、風にぐらぐらと揺れながら息もつけないような様子で立っています。その背後では、同じく風に髪も体も揉まれながら、若いひのきが立っていました。ひのきは風に揺れるひなげしたちを見て「おまえたちはみんなまっ赤な帆船でね、いまが嵐のところなんだ」と声をかけます。しかしひなげしたちは「いやあだ、あたしら、そんな帆船やなんかじゃないわ。せだけ高くてばかあなひのき」と反発するのでした。やがて銅づくりの太陽が瑠璃色の山に沈み、風がいっそう激しくなります。風が少し静まった頃、いちばん小さいひなげしがひとりでつぶやきます。「ああつまらないつまらない、もう一生合唱手だわ。いちど女王にしてくれたら、あしたは死んでもいいんだけど」。ひなげしたちは皆、美しい「テクラ」という名の花を羨ましがり、自分たちも「スター」になりたいと憧れを抱いているのでした。そんな中、向こうの葵の花壇から悪魔が現れます。最初は美容術師として、次は医者として姿を変え、ひなげしたちに美しくなる薬を提供すると申し出るのです。その代償として求めるのは、ひなげしの頭にできる「亜片」でした。お金のないひなげしたちは皆、その取引に心を動かされることになります。この物語は、「スター」になりたいと願うひなげしたちの心の動きを、繊細な心理描写で描いています。ひなげしたちの会話は生き生きとしており、それぞれの個性や想いが丁寧に表現されています。「スター」への憧れは、現代にも通じる普遍的な願望でありながら、花という存在を通して語られることで、美しさの本質を静かに浮かび上がらせます。風の音、雲の流れ、夕暮れから夜への時間の移ろい——自然の営みと生命の営みが重なり合う中で、ひのきという存在は静かな知恵と愛情深い眼差しでひなげしたちを見守ります。悪魔の甘い誘惑と、それに対するひのきの警告は、欲望と理性、表面的な美しさと本当の価値について、聞き手にも静かな問いを投げかけます。作品全体に流れる詩的なリズムと、方言を交えた親しみやすい会話のバランスも絶妙です。色彩豊かな情景描写は、まるで一枚の絵画を見ているような美しさで、朗読を通してその世界に深く入り込むことができます。夕暮れの庭という限られた空間の中で展開される小さな宇宙が、聞く人の心に静かな余韻を残すことでしょう。朗読でゆっくりとその世界をお楽しみください。#毒 #衝動 #植物
よだかの星

よだかの星

2025-07-2022:43

📖『よだかの星』朗読 – 醜い鳥が見つめた夜空の向こう側⭐🌙静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『よだかの星』。よだかは実に醜い鳥でした。顔はところどころ味噌をつけたようにまだらで、くちばしは平たく耳まで裂けています。足はよぼよぼで、一間とも歩けません。他の鳥たちは、よだかの顔を見ただけでもいやになってしまうほどでした。美しくないひばりでさえ、よだかと出会うと、いかにもいやそうに首をそっぽへ向けてしまいます。小さなおしゃべりの鳥たちは、いつでもよだかの真正面から悪口を言いました。「鳥の仲間の面汚しだよ」「あの口の大きいこと、きっとかえるの親類なんだよ」と。しかし、よだかは本当は鷹の兄弟でも親類でもありませんでした。かえって、あの美しいかわせみや蜂すずめの兄さんだったのです。蜂すずめは花の蜜を食べ、かわせみはお魚を食べ、よだかは羽虫を取って食べていました。よだかには鋭い爪も鋭いくちばしもなく、どんなに弱い鳥でも、よだかを怖がる理由はなかったのです。それなのに「たか」という名がついているのは、よだかの羽が無暗に強くて風を切って翔けるときは鷹のように見えること、そして鳴き声が鋭くてどこか鷹に似ているためでした。もちろん、本物の鷹はこれを非常に気にかけて嫌がっていました。よだかの顔を見ると肩をいからせて、「早く名前を改めろ」と言うのでした。ある夕方、とうとう鷹がよだかの家へやって来ました。鷹は「市蔵」という名前に変えて改名の披露をしろと迫り、「明後日の朝までにそうしなかったら、つかみ殺すぞ」と脅して帰っていきました。よだかは目をつぶって考えました。一体自分はなぜこうみんなに嫌われるのだろう。今まで何も悪いことをしたことがないのに──。あたりがうす暗くなると、よだかは巣から飛び出しました。雲とすれすれになって羽虫を捕らえていましたが、甲虫が喉でもがくとき、よだかは何だか背中がぞっとしたように感じました。そしてついに大声をあげて泣き出してしまいます。「ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩よだかに殺される。そしてそのよだかが今度は鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。よだかはもう虫を食べないで飢えて死のう」山焼けの火が水のように流れて広がる夜、よだかは弟の川せみの所へ飛んで行き、「今度遠い所へ行く」と別れを告げます。そして夜明けになると、霧が晴れたお日様に向かって飛び、「どうぞ私をあなたの所へ連れて行って下さい。焼けて死んでも構いません」と願いました。しかしお日様は「お前は夜の鳥だから、今夜空を飛んで、星にそう頼んでごらん」と答えます。夜になると、よだかは美しいオリオンの星、南の大犬座、北の大熊星、天の川の向こう岸の鷲の星へと次々に飛んで行き、同じように頼みます。しかし、どの星も相手にしてくれません。よだかは力を落として地に落ちていきますが、地面に足がつく寸前、俄かにのろしのように空へ飛び上がりました。そして高く高く叫びます──その声はまるで鷹でした。この物語は、外見の醜さゆえに世界から疎外された一羽の鳥の孤独と苦悩を描いています。他者からの拒絶、生きることそのものへの罪悪感、そして最後に選択する道──よだかが辿る軌跡は、現実と幻想が入り混じる夜の世界で静かに展開されます。美醜による差別、名前をめぐる争い、食べることの罪──これらの要素が夜空の下で静かに語られていきます。夜空に輝く星々を見上げるとき、そこにはどのような光が宿っているのでしょうか。月光に包まれた夜の世界で繰り広げられる、一羽の鳥の切ない魂の軌跡。醜いと言われた存在が見つめた夜空の向こう側には、何が待っているのか。詩的で美しい言葉の調べに乗せて語られるこの不思議な物語を、静かな朗読でじっくりとお楽しみください。#動物が主人公 #衝動 #星座 #いじめ
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