Discover市場の風を読む米国の政策の落ち着きを受けて上向く資本市場
米国の政策の落ち着きを受けて上向く資本市場

米国の政策の落ち着きを受けて上向く資本市場

Update: 2025-09-24
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貿易、移民、規制をめぐる状況の確実性が高まるなかでIPOとM&Aが増えていることについて、弊社グローバル債券・公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザスが考察します。 

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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

本日は、米国の政策の変化が2025年の市場をいかに形作っているか、そしてここにきて資本市場の動きが上向いているのはなぜなのか、グローバル債券および公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザスがお話しします。

このエピソードは9月24日 にニューヨークにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

今年の初め、投資家の見方はある一つの点において一致していました。トランプ大統領が返ってくる、米国の政策はきっと大きく変わるだろう、というのがそれでした。しかし、そうした変化が経済と市場にとって何を意味するのかについては、見方があまり一致していませんでした。そこで弊社のチームは、通商政策、財政政策、移民政策、そして規制政策の変化を投資家が追跡しやすくなるような枠組みを設けました――下された選択の順序と重大さに的を絞った枠組みでした。この視点は今でも役に立っています。しかし、政権発足から250日が経過したことから、そうした変化のインパクト、持続性のある政策シグナル、そしてそれらの相場への折り込まれ方に目を向けるほうが有益ではないかと我々は考えるようになりました。

まず、政策の不確実性からみていきましょう。この不確実性はまだ高いものの、今年に入ってからのピークに比べれば低下しています。例えば、ホワイトハウスは主要な貿易相手国とのディールを済ませており、関税率の急激な引き上げは今のところ止まっています。もちろん、貿易相手国が約束を守らなければ状況が変わる可能性もありますが、何らかの影響が顕在化するまでにはしばらく時間がかかるかもしれません。たとえ裁判所が新たな関税に異議を唱えても、政権側にはこれを再度発動する手段があります。また連邦議会が2つに割れていることから、大きな政策の動きのほとんどは議員ではなく行政府から出てきています。

政策の変更が減速していることから、ワシントンで新たに生まれた持続性のあるコンセンサスは考察に値します。二大政党はもう何年もの間、貿易障壁を引き下げることと政府を民間の事業に介入させないことについてはたいてい合意できました。ところが、今ではそれが変わったように思われます。産業の形成において政府がより能動的な役割を担うこと、すなわち産業政策が今日の米国の戦略では主要なパーツになっているのです。第1次トランプ政権で始まった関税はバイデン政権でも維持されました 。し、今日では批判する側も、関税をかけることの是非より関税の発動の仕方のほうに焦点を合わせています。この変化は医療、エネルギー、そしてとりわけテクノロジーといった分野で見受けられます。半導体を例にあげましょう。バイデン政権は安全な国内サプライチェーン構築を目指してCHIPS・科学法を制定しましたが、トランプ政権は中国への輸出品にライセンス料を課したり、政府による民間企業の株式取得を増やすことを検討したりしています。

では、なぜここにきて資本市場の活動が上向いてきているのでしょうか。理由はいくつかあります。

第1に、政策をめぐる不確実性が後退し、企業が重大な決断を比較的下しやすくなっていることが挙げられます。今年は新規株式公開(IPO)や企業の合併・買収(M&A)などの活動が、経済の規模を考えれば異例なほど低調でした。しかし、企業のバランスシートは強固で、多額の現預金を保有しています。そして、個人や事業法人は資金を運用するつもりでいます。おまけに人工知能(AI)やテクノロジーのアップグレードがもたらす新しい投資ニーズも存在します。取引が増える条件は整っているのです。

弊社の法人のお客様からも、政策がもたらしうる結果の振れ幅が小さくなったことで、戦略的な計画を推進しやすくなったとうかがったことがあります。そしてその結果、IPOは前年同期比で68%、M&Aも同35%、いずれも増えているのです。低水準からの増加ですので、伸び率は今後縮小するかもしれませんが、プラスの伸びはしばらく続くと弊社ではみています。

こうした動きはすべて、市場のほかのトレンドと連動しています。例えばイールド・カーブの傾きは大きいままで、米ドル安も続いています。なぜでしょう?まず、通商政策は引き締めに傾いた状態が続きそうです。財政政策については、大統領と連邦議会が好む方策がすでに選択されており、先行きは確定したように見受けられます。そして米連邦準備制度理事会(FRB)は、経済成長を下支えするためにインフレリスクの拡大を許容する構えのようです。このことは米ドルが下落し続ける恐れがあることを、そしてこれまでよりハト派的なFRBの姿勢を反映して期間の短い債券の利回りが低下する場合でも、期間の長い債券の利回りは変動しにくくなる可能性があることを意味します。

いつものように、これらのトレンドが経済全体とどのように影響しあうかを観察していくことが重要です。またそれは、2026年の見通しを考察し始める際にも重要になるでしょう。弊社は今後も分析を続け、その結果をみなさまにお届けしてまいります。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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