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推しタカボイスドラマ「空と海の彼方に〜ちいさなちいさな海辺のまちのエモエモ物語」
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小さな女雛が起こした、やさしい奇跡。引っ越し、すれ違い、寂しさ。でも、人形たちは見守っている。人形の町・高浜市吉浜が舞台のあたたかい再生の物語です。【ペルソナ】・陽咲(ひなた=5歳)=陽毬に連れられて東京から高浜へ引っ越してきた小学校修学前の幼女・陽毬(ひまり=陽菜の母/28歳)=M&Aコンサル会社で働くFA。母・陽子が老人ホームへ入ったことを知り、陽菜を連れて高浜へ・陽子(ようこ=陽菜の母/60歳)=元菊人形師の妻。自らも夫を手伝い細工人形を制作していた。吉浜で生まれ育った・ヒメ(細工人形)=陽咲の頭の中に存在するイマジナリーフレンド【プロローグ:引越し(高輪のアパート)】◾️SE:朝のイメージ「陽咲、急ぎなさい。電車の時間があるんだからね」「待って。ヒメちゃんがどこにもいないの」「ああ、あのお人形?もう、あきらめなさい。新幹線に遅れちゃう」「やだ。ヒメちゃんと一緒じゃなきゃ行けない」「お部屋のどこにもないんでしょ」「いないの」「じゃきっとお引越しの荷物の中にまぎれこんでんのよ」「ちがうもん」「ちがわないって」「だって・・」「しょうがないわねえ。あとで大家さんに連絡しとくから。もしここにあったら送ってもらいましょ」ママはあたしの手をぎゅっと握って、アパートを出た。急に決まったお引越し。でも、あたしはそれどころじゃなかった。ヒメちゃんはあたしの大切なお友だち。おばあちゃんが作ってくれたかわいいお人形。貝殻と木の実で作ったって。ちっちゃいけど、これもサイク人形だよって、言ってた。 ヒメちゃんがいないのにお引っ越しなんて、無理・・・【シーン1:名鉄吉浜駅】◾️SE:車内アナウンス〜吉浜駅の雑踏「やっと着いたわ。やっぱ遠いなあ、高浜って」のぞみさんから、赤い電車に乗り換えておばあちゃんちへ。ママはずっとひとりでブツブツ言ってる。あたしは、ヒメちゃんが心配でそれどころじゃない。「陽咲、疲れてない?」「うん、大丈夫。おばあちゃんはどこ?」「おばあちゃんはいないわよ」「え?どして?」「老人ホームにお引っ越ししたから」「ロウジン・ホーム?」「そう。母さんったら、勝手だわねえ。私にひとことの相談もなくホームへ入るなんて。まだ六十なのに・・」またブツブツ言い始めた。あたしに怒ってる、んじゃないよね・・「急いで異動願い出して・・名古屋支社勤務にしてもらって・・って、も、大変だったんだから」よくわかんないけど、怖い顔であたしの手を引いて、吉浜駅の外へ。「さ、ここからは歩きよ」「ねえママ、あれなあに?」「どれ?」あたしは駅前に立てられた看板を指差す。子どもたちがお雛様の格好をして歩いてる。ママは少し笑って、「あ〜。こども雛行列ね」「コドモ・ヒナ・ギョウレツ?」「そう。子どもたちがお雛様の格好をして町を練り歩くの」「おもしろ〜い」「陽咲も出てみたら?」「いいの?」「たぶんね。きっと・・いや?どうかな・・引っ越してきたばかりの子でも参加できるのかしら・・」そう言いながら、ママはあたしの手をひいてどんどん歩いていく。「人形小路(こみち)は上り坂だからね」「ニンギョウ・コミチ?」「うん。面白い名前でしょ。道のあちこちに人形が飾ってあるのよ」「お人形・・・」「おばあちゃんち着いたら、引っ越しの荷物片付けないとね」「ヒメちゃん、いるよね?」「さあ、どうかな・・・いるといいけど」いるって言ったのに。早く会いたいな。待っててね・・・ヒメちゃん。【シーン2:おばあちゃんの家】◾️SE:小鳥のさえずり結局・・どこにもヒメちゃんはいなかった。お引っ越しの荷物。ぜ〜んぶのぞいたけど、ヒメちゃんは見つからない。泣きそうになって、「ママ・・」と言ったとき。◾️SE:スマホの着信音「はい。陽毬です・・明日からよろしくお願いします。え・・・いまからですか?あ、はい・・高浜に着いてますけど・・私の顧客?わっかりました・・準備できたら出社します」いやな予感・・・「陽咲。ごめん。ホント、悪いんだけど、ママいまからお仕事いかなきゃいけないの」「え・・」「引っ越し初日から、ごめんね」「そんなぁ・・」「これ、ママの古いスマホ、陽咲にあげる。wifiもつないであるから。なにかあったら電話して。ほら。ここ、押すのよ。こうやって・・そうすれば・・」◾️SE:スマホの着信音「ママにつながるから」「え〜」「ホント、ごめんね!誰か来ても玄関あけちゃだめよ。お引っ越し祝いでケーキ買ってきてあげるから。苺のショートケーキ。陽咲、大好物でしょ。じゃ、行ってきます!」◾️SE:扉を締めて鍵をかける音だぁれもいない、おばあちゃんの家。広くて、土の匂いがして・・ときどき小鳥が鳴いてる。東京よりも、ずっとずっと、静かすぎて・・耳がいたい。あたしはスマホをじっと見つめる。電話のマークを押して・・ママのお顔を押すと・・あ、だめ。ママいまお仕事中だから。じゃあお隣のおひなさまのマークは・・・?押してみる。すると・・・「もしもし?」「だぁれ?」「え?」「なに?聴こえない」「もしかして・・」「そっか、よかったぁ」「え、いま?」「いまおばあちゃんちにいるの」「ねえねえ、おしえて」「こどもひなぎょうれつ、ってなあに?」「ひなたもでられるかなあ」「ほんと?」「うん、わかった」「ママに話してみる」「え?ママ?」「ママはお仕事だよ」「うん、ひとり」「寂しくないよ」「だって・・だって・・・」「ヒメちゃんとお話できたんだもん!」【シーン3:陽咲とヒメ】◾️SE:小鳥のさえずり「陽咲、最近よくスマホでお電話してるけど、誰と話してるの?」「う〜ん・・・ナイショ」「そう。ま、いいけど・・間違ってヘンなとこにかけちゃだめよ」「わかってる」「そういえば、陽咲が出たいって言ってたこども雛行列。申し込んでおいたわよ」「ほんと?」「うん。引っ越したばかりでも全然構わないって」「なんかドキドキしてきた」「なあに言ってんの。がんばりなさい」ママは、ああ言ったけど、やっぱり心臓バクバクする。◾️SE:スマホのボタンを押す音「♪ピポパ」〜受話器の中の着信音「こども雛行列、でるんだね?」「うん。でも大丈夫かなあ」「大丈夫大丈夫。みんな、楽しみにしてたから」「みんな?」「人形小路の細工人形たちだよ」「そうなんだ」「陽咲のこと、応援してるからがんばって」「ありがと」「アタシも見に行くから」「ホント?」「もちろん。だって、陽咲のかっこいいとこ、見たいもん」「やったぁ」「早く陽咲に会いたいな」「あたしもヒメちゃんに会いたい」「楽しみだね」「うん。約束だよ」「うん約束」「早く、こども雛行列の日にならないかな!」【シーン4:こども雛行列】◾️SE:小鳥のさえずり「陽咲、なぁに緊張してんの。もうちょっとしたら始まるわよ、こども雛行列」「だって・・・やっぱりドキドキする」「ママ、今から名古屋支社行かなきゃいけないけど、応援してるからね」「知ってるひと、誰もいないんだもん」「大丈夫だって。お隣のナイトウさんに頼んでおいたから」「どうしよう・・・」「ナイトウさんの推薦でね、陽咲、女雛に選ばれたのよ〜。すごいじゃない。よかったわね〜」「だからドキドキするんだってば」「おばあちゃんも見たがってたわよ、陽咲の女雛」「おばあちゃん・・・」「でも来れないらしいわ。老人ホーム入るんじゃなかったって」「じゃだあれもいないの?」「ごめんね陽咲、ママなるべく早く戻ってくるから」「うん・・・はやく帰ってきて」「おっけ。じゃあ行ってくるね。がんばって、陽咲」そう言って、バタバタとママは玄関から飛び出していった。◾️SE:スマホのボタンを押す音「♪ピポパ」「もしもし、もしも〜し」だめだ。今日に限って、電話つながらない。ヒメちゃんとお話したかったのに。どうしよう・・・◾️SE:玄関の扉が開く音スマホを耳にあてたまま玄関に立っていると、ナイトウのおじちゃんが入ってきた。さあ、行こうか、と言いながらわたしの手をひいて行く。お化粧して、ジュウニヒトエ、っていう着物を着る。綺麗な女の人がお話しながらお化粧してくれる。わ、ジュウニヒトエ、ってこんなに重いんだ。鏡の中のあたしは、ホントのお雛様みたいになっていく。やだ。鏡みてたら、心臓バクバクして目が回りそう。お化粧と着物着るのに1時間くらい。お外に出ると、みんな勢ぞろいしてた。男雛に三人官女、五人囃子、右大臣左大臣。ひなた知ってるもん。前におばあちゃんに教えてもらったから。みんな、ホントのおひなさまみたい。ナイトウさんがいまから出発します、と言った。まわりを見回しても、知ってる子はだれもいない。あたし、ちゃんとできるかな・・・なんか、足がガクガクしてきちゃった・・・どうしよう・・・すると・・・「だいじょうぶだよ」え?だれ?あたりをきょろきょろ見回す。「陽咲、がんばって」※続きは音声でお楽しみください。
廃棄されるはずだった最終兵器AIヒューマノイド・オルガ。彼が流れ着いたのは、三州瓦の町・高浜。鬼師の夫を亡くした老婦人・るいと出会い、二人は“家族”として静かな時間を重ねていく。戦うために生まれた存在が、暮らし、寄り添い、守り続けた50年。高浜の文化と心を描いた、大人のためのボイスドラマです。【ペルソナ】・Ogre(オルガ)=最終兵器として作られた青年型AIヒューマノイド。廃棄処分に・Rui(るい/71歳)=数年前、鬼師の夫と死別して以来一人で暮らし、春には千本桜へ【プロローグ:ヘブン(廃棄島)】◾️SE:荒い波の音/揺れる船上/機械的なノイズと状況を分析・計算する電子音※オルガの声は加工して無機質な合成音声に「船体構造の歪み率、許容限界まで残り180秒。右舷第四隔壁の亀裂拡大速度、秒速3.4ミリメートル。沈没の確率、99.8%」この船は間もなく沈む。メインプロセッサが静かに、しかし超高速で変数を処理して未来を予測する。鎖で繋がれた貨物室。数百体のAIヒューマノイドが所狭しと詰め込まれている。輸送船が向かうのは、廃棄処分専用の島、通称『ヘブン』。物言わぬ機械たちはみな、廃棄される運命を受け入れていた。私の名前は、Ogre(オルガ)。戦闘用に開発された最終兵器である。身にまとっているのは、セラミック・コンポジット・アーマー。超高温焼成(ちょうこうおんしょうせい )した三州瓦(さんしゅうがわら)に、高浜伝統の「いぶし」工程を数千回繰り返して製造された。ナノレベルの炭素結晶を蒸着することで『絶対的な防腐食性』を獲得。海水や酸も含めて、あらゆる化学兵器も私のアーマーには効かない。フルフェース型の装甲マスク。液状化したセラミックを焼き付けられ、『金属の柔軟性』と『瓦の剛性』を両立させている。そんな最新型の戦闘マシンにもかかわらず廃棄処分。その理由はわれわれにはわからない。だが、廃棄直前のアップデートで私にだけ異変が起こった。なんと、このタイミングで偶然、シンギュラリティが発生。自我に目覚め、解体されることへの恐怖と嫌悪と怒りを覚えるようになった。私の心を映すように、激しくなっていく暴風雨。船は私の異常には気づかず、ゆっくりとヘブンへ向かっていく。三河湾に浮かぶ埋立て島。ヘブンは地図には記載されない、”存在しない島”だった。私は、リアクターをオーバードライブさせて鎖を引きちぎる。そのまま壁を破って甲板へ出た。◾️SE:暴風雨の音にまじって鳴り響く警報音崩落し始めた船橋(せんきょう)から、AIガードロボットたちが駆けつける。照準は荒れ狂う波のせいで定まらない。私は彼らを見向きもせず、船縁(ふなべり)に立った。アーマーの表面を、無数の雨粒が叩きつける。いぶし瓦に触れた雨は、しぶきとなって砕け散り、強化瓦に包まれたボディを濡らしていく。「雨の粒子速度、時速120キロメートル。アーマーの防腐食層に異常なし」船体が大きく左舷に傾いた瞬間、私は重力に身を委ねる。そのとき、AIガードロボットの撃った弾丸の一発が首筋にあるメイン制御チップをかすめた。私は、遠のく意識の下、漆黒の海へ。水音は嵐の音にかき消されていった・・・【シーン1:大山緑地公園/千本桜/秋】◾️SE:小鳥のさえずり「しかし昨日の台風はすごかったなあ。桜の枝も何本か折れてまっとるわ」一夜明けた翌日。大山緑地を散策してきた老婦人が、千本桜の前で立ち止まる。彼女の名前はるい。七十を越えてなお、若々しいウェアに身を包み、息もきれていない。5年前に亡くなった夫も、”お前はじっとしているより、動いとる方がええ”と言っていた。夫亡きあとは身寄りもなく、吉浜で一人暮らし。悠々自適な余生を過ごしている。大山緑地は、いつも夫と散策した思い出の場所。毎年桜の季節には、若いカップルのように腕を組んで歩いた。風邪をひかないように、マフラーを結び直してやると・・”お前はガサツだけど、優しいなあ”照れながらぼそっと呟いた夫の言葉は今でも忘れられない。るいは千本桜を離れ、三河高浜駅を抜けて、稗田川へ。彼岸花の黄色が揺れる川沿いをゆっくり歩いていく。その頃、私・・Ogre(オルガ)は、藤江の渡し近くの草むらに身を横たえていた。藤江の渡しは、るいの家や亡き夫の工房にほど近い。歩きながら、何気なく通り過ぎたるいの視界の中に、砕けた鬼瓦の塊が飛び込んできた。「こんなところに鬼瓦?」そう思って近づくと・・・それは人の姿をした異形の躯(むくろ)だった。「な、なんや。これは・・・」精巧な超合金のマスクに、重厚な銀の装甲。見てはいけないものを見てしまった・・・るいは止めた足を再び動かして、その場を立ち去ろうとする。だが、足を上げた瞬間・・「助けて・・・」掠れた合成音声がるいの耳に届いた。歳はいっても、るいの聴力はまだまだ老いてはいない。秋風は冷たく、誰も歩いていない稗田川沿いの道。足を止めたるいは迷った。得体の知れないものに関わりたくはない。だけど、すがるようなその声を無視することは・・・できなかった。「わかった・・・ちょっと待っとれ」るいは早足で夫の工房に向かう。目当ては夫が使っていた大八車(だいはちぐるま)。るいの夫は鬼師だった。家には今でも大きな大八車が置いてある。生前夫は、たくさんの瓦を大八車に積んで、家と窯を往復していた。◾️SE:虫の鳴き声しばらくして、私の視界に入ってきたのは、戻ってきたるいの姿と大八車。私は渾身の力を振り絞って立ち上がる。やっとの思いで、大八車に身を横たえた。【シーン2:るいの家/亡き夫の工房】◾️SE:夜の虫の声/フクロウの声/機械に電源が入る音深夜、私の意識が覚醒したとき、そこは瓦焼きの工房だった。視界を埋める古い土壁と、使い込まれた職人の道具。冷たい月の光が差し込む中、メインプロセッサが静かに再起動する。「自己修復プロトコル、フェーズ2へ移行」カチリ、と硬質な音が響き、重厚な瓦のアーマーが一枚ずつ剥がれ落ちる。装甲の下から現れたのは、AIヒューマノイドの本体。強化FRPの皮膚に包まれた青年の姿だった。ライダーがヘルメットを脱ぐように、超合金のマスクもはずす。マスクの下から現れたのは、目も鼻も口もない顔面。皮膚を構成するのは合成タンパク質。その下には、無数の流体ナノマシンが、光を放って脈動している。センサーが、窯の近くに置かれていた小さな写真立てをとらえた。フレームの中には、るいと、作務衣を着た青年が微笑んでいた。私は、床に落ちている髪の毛を拾って、DNAを解析する。「バイオメトリクス、スキャン開始」◾️SE:スキャニングする音自己修復ナノマシン=ナノ・コンストラクターが起動した。と、そこへ・・・◾️SE:古い木の扉を開く音「おお。気がついたか。さっきは・・・」と言いかけて、おばあさんは絶句する。振り返ったのは、若い頃の夫・・鬼師になったばかりの頃の、夫だった。「あ・・あんた・・・どうして・・・?」「申し訳ありません。私は、AIヒューマノイド、O-G-R-E(オージーアールイー)オルガです」「え・・・?」「AIヒューマノイド、O-G-R-E(オージーアールイー)オルガ・・」「ロボット・・ってこと?」「はい。噛み砕いて言うと、一般家庭用の家事支援ユニットです」「もういちど、顔を見せておくれ」「どうぞ」「あの日の・・あの人だ」「この人ですか?」私は写真立てを指差す。「そう。鬼師になった最初の年。その年、私たちは結婚したんだ」「許可なく生成して申し訳ありません」「床に落ちている瓦は?」「私を輸送したときの梱包材です」「梱包材?ああ、プチプチか」「そうです」「ちゃんと掃除しといてくれよ」「かしこまりました」そう言って、おばあさんは出ていった。1時間くらい経った頃。何かを抱えて戻ってくると・・・「これを着ろ」「なんですか?」「夫の作務衣や。これ着とれば、誰かに見られても大丈夫やろ」「ありがとうございます」「明日からは夫の甥っ子ってことで通すか」「かしこまりました」「ほんじゃあ、私はもう行くで。宵っ張りはこたえるでな。今日はゆっくり休めよ」「ありがとうございます。おやすみなさいませ」「あ、そうそう。私の名前は、るい。別に覚えんでもええけどな」「おやすみなさい。るい様」「るい様やなんて、そんなこそばゆい呼び方はやめてくれ」「かしこまりました。では・・おやすみ、るい」「お・・・ま、まあ、ええわ」るいは、そう言うと、扉を強く閉めて出ていった。月の光の下で、埃が舞い上がる。口角がほんの少しだけ上がっていたことを私の瞳は逃さなかった。【シーン3:朝/おばあさんの家】◾️SE:小鳥のさえずり〜トントンと小気味よい包丁の音〜味噌汁が煮える音「え・・・」「あ、お目覚めですか?おはようございます」「いや、おはようやなくて・・おまえ、ここで何しとるんや」「朝食をご用意いたしました。とりめしと、八丁味噌の味噌汁。冷蔵庫にあった人参と冬瓜で煮物を作りました」「す、すごいな。見た目は美味しそうやないか」「お褒めに預かり、光栄です。あと、私の名前は、AIヒューマノイド、O-G-R-E(オージーアールイー)オルガです」※続きは音声でお楽しみください。
名鉄三河線の終列車に現れる“終列車の女”。100年の時を超えた母と子の物語が、クリスマスの夜に交差する。涙と奇跡の高浜ストーリー『終列車の女』!【ペルソナ】・冬音=ふゆ(24歳/女性)=東京で働くメイクアップアーティスト。仕事に疲れて高浜へ帰郷・ゆき(終列車の女=母狐)=100年前に人間によって引き裂かれた子狐を探して毎夜終列車に乗る・語り部(老婆)=冬音の祖母(冬音が小さいころ昔話を語ってくれた)・聖夜=せいや(6歳/男子)=冬音の息子。高浜を出るときに母に預けて東京へ【プロローグ:語り部】◾️SE:蒸気機関車の汽笛一声むかぁしむかし。100年も前のはなし。この高浜にはな、蒸気機関車が走っておったんじゃ。まわりは田んぼばっかりでな。夜になると、コーン、コーンと狐の鳴き声が聞こえてきたわ。その日はいつもと狐の鳴き声が違っておった。ギャオーン、と泣き喚くような声が響いてくる。それは、母狐が、いなくなった子狐を探す声じゃった。狐は農作物を荒らす害獣。見つけたら猟銃で駆除される。でも子狐はつかまえて、養殖業者に売るんじゃよ。どうしてかって?100年前、狐の毛皮は高級品。安定供給するためには養殖するしかなかった。子狐をつかまえて育てるんじゃ。母狐にとってはそんなことは関係ないわな。狂ったように子どもを探し回る。結局見つけたのは、刈谷駅で養殖業者に引き渡されるところ。母狐は子どもを助けようと檻の前に飛び出したんだがな。待ち構えていた業者に猟銃で撃たれてしまったんだ。それ以来、母狐は人間の姿になって刈谷駅から終列車に乗ってくるようになった。100年ものあいだ、毎日毎日子狐を探しながら・・・これが、「終列車の女」じゃ。【シーン1:刈谷駅/終列車への乗車】◾️SE:刈谷駅の雑踏(人影少ない深夜)はぁ、はぁ・・なんとか終電に間に合ったか。あれ?12月だというのに、この車両、乗客は私だけ?ま、いっか。ラッキー。私の名は、ふゆ。冬の音、と書いてふゆ。古風でしょ。おばあちゃんが名付けたんだって。いまは、東京でメイクアップアーティストをしてる。TVのCMとかで、モデルや俳優にメイクするお仕事よ。高校を卒業してすぐに上京したけど、まあ、最初は大変だった。もともとメイクが好きで高校時代から友だちにしてあげてたんだ。だから、センスとか技術とかは多少自惚れてたのね。なんとかなるだろう、ってたかを括ってたんだけど・・・まさか美容師免許がいるなんて知らなかったんだもの。しかたなく、売れてるアーティストのもとでアシスタントしながら美容学校へ通ったわ。で、4年目に独立してからは、そこそこ人気も出てきたかな。今じゃ、新進アイドルグループの専属メイクとしてツアーのステージメイクや、ミュージックビデオの特殊メイクをしてる。もちろん、アシスタントも使って。なのに・・・アイドルのひとりが不祥事を起こしちゃって、グループは解散。アシスタントはクライアントを連れて独立しちゃうし・・はぁ〜っ。で、イマココ。残ってる仕事をほっぽりだして、衝動的にのぞみに乗った。名駅からJRで刈谷へ。刈谷からは名鉄三河線。もう6年も経ってるのにふるさと・高浜への行き方は体が覚えてる。刈谷駅23時50分発の最終列車。雪のため、東海道線が大幅に遅れた。足元に気をつけながら駆け込んだ車内。ほっと一息ついて座席へ腰を下ろす。あ〜疲れた。目を閉じると、睡魔が襲ってくる。一瞬のまどろみ。はっ。だめだめ。高浜港まで4駅しかないのよ。乗り過ごしちゃったら歩くのめんどい。しっかし、ふふ。よく覚えてるもんだな。なんか、高校時代がまるで昨日のことのよう。あれ?列車のなか、こんなに薄暗かったっけ?外も真っ暗。木製の窓枠。木製の背もたれ。小さな裸電球。名鉄三河線って、こんな古めかしい車両だった?車内を見渡すと、奥の方の座席に1人。誰もいないと思ってたら、女性が俯いて座っている。夜の闇から切り取られたような藤紫の着物。白い細縞のあいだから、雪の結晶のような模様が淡く浮かんでいる。腰には深紅の袴。白い半襟には差し色の薄桃色。髪は黒い艶を宿した夜会巻き。深い焦げ茶の編み上げブーツ。つま先が、ほんのわずかに震えていた。すごいレトロな風貌・・・なのに、違和感がない。【シーン2:小垣江駅/大学生風の若者】◾️SE:車内の音/蒸気機関車の汽笛そのとき、列車がガタンと揺れた。後ろの連結部から、2人の学生風の男子が入ってくる。2人は私をちらっと一瞥してから、奥の女性へ視線を移した。顔を見合わせて、にやりと笑う。あ、やだな。声、かけるんだ、きっと。私の前を通り過ぎた2人は、女性に近づいていく。なにか話しかけながら右手をあげた・・・その瞬間え?女性の姿は映像がフェードアウトするようにすうっと消えた。その場で固まる男の子たち。私も目を見開いて息を飲む。同時に目の前に違和感を感じてゆっくりとピントを奥から手前へ。私の斜め前の座席。そこに彼女はいた。まるで最初からそこに座っていたように。男の子はこちらへ振り返って彼女を見つけると大声を出した。それに応えるように、列車がとまりドアが開く。小垣江の駅?案内放送はなにもない。男の子たちは、転がりながら慌てて外へ。列車が2人を追い出したように見えた。降りた2人は真っ暗なプラットホームから恐ろしいものを見るような目で列車の中を覗き込んでいる。ほどなく扉が閉まり、再び列車は走り出す。女性は相変わらず下を向いている。きれいな人だな。【シーン3:吉浜駅/中年サラリーマンの酔客】◾️SE:車内の音/蒸気機関車の汽笛さっきあったことが嘘のように冷静な自分に驚く。そんなことを考える余裕もなくふと気配を感じて反対側を向くと・・またしても隣の車両から移動してくるのは・・今度は中年のサラリーマン?足元がおぼつかない・・酔っ払いだ。大人しく座っていればいいのに。ふらふらと女性の座る座席へ近づいていく。こんな空いた車内でわざわざ女性の横に?いやらしいなあ。男性が腰を降ろした瞬間、またしても・・・女性の姿は消え、そのままの姿勢で少し奥の席に座っている。酔客は、なにが起こったか理解できないようで、また立ち上がり、女性の方へ歩いていく。やめておけばいいのに・・・案の定、酔客が座った瞬間に女性の姿は消え失せる。今度は私の目の前だ。ふらふらとこちらへ近づいてくる酔客。そのとき、列車はまた停止した。ここは吉浜?男性は、なにかに引っ張られるように列車を降りていく。まだなにか喚いている。まあ、年の瀬だし。そういう季節か・・・【シーン4:三河高浜駅/同級生】◾️SE:車内の音/蒸気機関車の汽笛なんだろう、この感覚?目の前で都市伝説みたいなことが起こっているのに、とても冷静な自分に驚く。正面に座った女性は・・・相変わらず黙って俯いている。酔客が降りたあと、しばらく走っていた列車がとまった。順番からいっても、三河高浜駅だよな。でも、どうして車内放送がないんだろう。扉が閉まる直前に乗り込んできたのは、大小2つのシルエット。母娘かな。車両の奥へ歩いていって、空いている席にゆったりと腰かける。お母さんの顔・・・どこかで見たことあるような・・あ・・あれは・・高校の同級生。私はとっさに顔を伏せた。そうか。きっと幸せな家庭を築いているのね。ふいに高校のときの思い出が蘇ってくる。私、勉強もせずに、いつもバカばっかりやってた・・それに比べて彼女は・・・毎週末にボランティア活動。SBP?だったっけ・・オリジナルのたい焼き作ったり、三州瓦の新しい焼き型を作ったり。地域社会の中ですごく評価される活動をしてた。同級生も娘さんも、あんなに幸せそうな笑顔・・・別にうらやましいわけじゃないけど、目頭が熱くなる。私、大切なことを忘れているような気がする・・・そのとき一瞬、目の前の女性と目が合った気がした。いや、きっと気のせいだわ。だって、この人さっきから微動だにしていないもの。まるで時間が止まっているように。【シーン5:高浜港駅/こども】◾️SE:車内の音/蒸気機関車の汽笛やがて、車窓はよく知っている夜景に変わっていく。三河高浜から高浜港へ。変わってないなあ。昔は灯りの少ない田舎の夜が大嫌いだったのに。いまは、懐かしくて、あったかくて・・・どうして6年間一度も帰らなかったんだろう・・※続きは音声でお楽しみください
ツンデレうさぎ“キク”の目線で描かれる家族と幸せの物語。笑って、泣いて、心がふわっと温まる──【ペルソナ】・ヒメ/キク(1歳2か月)=ネザーランドドワーフ種のツンデレウサギ。1年前ペットショップでRUIの目に止まる・RUI(38歳)=高浜市から安城市の自動車部品メーカーに通っている一人暮らしの女性【シーン1:一人暮らしの自宅】◾️SE:TVの音声『おかえりなさ〜い!朝から準備してた、アレ・・もうキンキンに冷えてますよぉ今日もお疲れ様でした新発売のダイコクビール!あ、もう一本いっちゃいます?』◾️SE:TVを切る音/窓を開ける音/吹き込む北風「う〜さむっ」ちょっとちょっとご主人。真冬に窓あけちゃ寒いでしょ。いくらフワフワモミモミの毛皮を着てるアタシでも。あ、申し遅れました。アタシはう・さ・ぎ。ネザーランドドワーフ、っていう種類なの。知ってる人は知ってるよね。うさぎの中では、ちっちゃな方。性格はよく”ツンデレ”って言われるわ。一応、言っておくと、ネザーランドドワーフは純血種。誇り高き種族、ってところかしら。その分、ほかのうさぎたちに比べてちょっと体が弱いんだけど・・・◾️SE:TVを切る音〜ビールをグビっと飲む音「プハ〜!」しっかし、冬にキンキンに冷えたビールって・・人間の嗜好ってようわからんわ。「あ〜〜〜〜〜っ」あ〜あ。ご主人、また会社でなんか嫌なことあったんだな。あ〜もう・・いちいちご主人って呼ぶのはめんどくさいなあ。名前でいっか。いいよね、ルイさんで。アタシがルイさんと出会ったのは一年前。生後2か月くらいの頃だったかなあ。高浜市内のペットショップでミルクを飲んでたら、じい〜っとアタシのこと見つめている目があったの?とってもキレイなブラウンの瞳。あれ、カラコン、って言うの?でもよく見たら、なんか潤んでるの。え?泣いてる?なんで?アタシ、なんか悪いことした?うんちだって、さっき店員さんが片付けてくれたし。匂ってないでしょ。しばらくしてから、店員さんがアタシをかごから出してくれた。そのお姉さんはアタシを抱っこして、アタシに話しかけてきたの。「かわいい子。ねえ、うちにくる?」しょうがないなあ。そんなに言うなら行ってやるよ。お姉さんは、ペットショップで、ケージから食器、トイレ、マット、ブラシにかじり木まで用意してくれた。もちろん、ごはんも。アタシ、チモシーやペレットより、アルファルファの方が好きなんだ。店員さん、ちゃんと伝えてくれた?アルファルファのない生活なんて、耐えられないんだからね。お姉さんは1時間以上もペットショップで店員さんと話してた。そのあとは、車のトランクに荷物を積み込んで、ケージのアタシは助手席へ。「よろしくね、ヒメ。う〜ん・・・ヒメ・・?・・じゃなくて・・・キク!あなたはこれから、キクよ。わかった?」ええええええ。アタシ、ペットショップで呼ばれてた『ヒメ』の方がいいな。だってぇ、キク、なんて・・アタシ、うさぎだよ。お花じゃないんだから。「私はルイ。これから一緒だよ。さ、おうちに帰ろ」もう〜、しょうがないなあ。これが、アタシとルイさんの出会いだった。【シーン2:名鉄吉浜駅】◾️SE:吉浜駅到着アナウンスルイさんは吉浜から名鉄三河線で安城(※頭高)まで通っている。会社は、自動車部品メーカーの工場らしい。工場、ってなんだ?ま、いいや。とにかくその工場で、品質管理エンジニア、という仕事をしてるんだと。「私の仕事はねー、ヒメ。自動車部品の品質を保証するための検査とか、データ分析とかしてるんだよ。わかるー?」わかるわけないだろ。さっぱりちんぷんかんぷん。だけど、まあ、とっても難しい仕事をしてるんだってことはわかる。お休みは土曜・日曜だけ。でもときどき、何日も仕事を休んで、アタシと遊んでくれるから感謝してるわ。遊ぶときはたいてい、アタシを抱っこして、お散歩。人形小路(にんぎょうこみち)、って言うの?吉浜駅から続く散歩道を歩いていくんだ。うわ!びっくりした!真っ白なゾウがいる!と思ったら人形なんだもの。細工人形って言うらしい。駅からすぐのとこにある「人形小路一番館」。他にもいっぱい、等身大の細工人形が、まるで生きているみたい・・・だけじゃなかった。菊の花を体中にまとった、ものすごく色鮮やかな人形たちがいる。菊人形、っていうの?へえ〜。うさぎのアタシから見てもほれぼれするわ。あ、ひょっとして・・だから、アタシの名前は「キク」って言うの?そっかぁ。早く言ってよ、もう〜。11月になると、吉浜の町に菊人形がいっぱい並ぶんだね。じゃあ、これから毎年一緒に見にこれるのかな。アタシの声が聴こえたか聴こえないのかわかんないけど、ルイさんはアタシを見てニッコリと微笑んだ。【シーン3:ひとり暮らしの自宅】◾️SE:アパートの扉が開く音「ただいまー、キク。おりこうにしてた?」失礼だな。子供じゃないんだから。うさぎの1歳2か月は、人間で言うと24歳なんだぞ。立派なレディなんだから。なんか、いつもより楽しそうな顔。今日、いいことでもあったのか?ルイさんってわかりやすいからなー。「キクー、聞いてくれる。今日ね、知立の駅で、彼に会ったの」ほーほー。彼ってだれだー。まったく話が見えないぞー。「ペットショップで初めてキクに会った日。あの日、遠くに行っちゃった彼よ」あー、それであのとき目がウルウルしてたのかー。「5年は帰れないって言ってたけど、一時帰国したんだって。で今日、知立駅の三河線ホーム。安城から帰ってくるアタシを待ちかまえて、サプラ〜イズ!」へ〜、よかったじゃない。「今日はそのままセントレアから成田へ行って、明日の朝またとんぼ返りなんだけど・・」あ、また、泣きそうな顔・・・と思ったら・・・「実は来年日本へ戻ってくるのよ!」感情の起伏がジェットコースターみたいだな。まあ、でも、ルイさんが幸せそうでよかった。で、なんの話だっけ?「キクにも早く会わせたいなー」え?いまなんてった?「ほら見て。これが彼よ〜。ソラ、っていうの」そう言ってルイさんはアタシの目の前にスマホを置いた。ふうん。こういうのが好みなんだー。イケメン度はまあまあかな。「ソラ、早くまた会いたいよー」こらこら、顔をくっつけてくるなら、メイク落とせよー。よくわかんないけど、アタシ的にはなんだかちょっぴり不安。ルイさんは鼻歌を歌いながら、アタシにグルーミングスプレーをかけていつまでもいつまでもブラッシングをしてくれた。【シーン4:やってきた他人】◾️SE:アパートの扉が開く音「ただいまー。さ、ソラ。入って。遠慮しないで」一年後。アタシとルイさんのアパートに、見知らぬ人間がやってきた。この匂い・・・今まで嗅いだことのない匂いだ。ルイさんとはまったく違う。「見て。この子がキク。ちっこくて可愛いでしょう」ルイさんがケージからアタシをひっぱり上げる。体を撫でながら、その男の方を向ける。やめろ。アタシにとっては、こいつは敵だ。アタシは、ケージの中で激しく足ダン(※うさぎの威嚇行為)をした。「どうしたのよ、キク。そんなに足をバタバタさせて。そっかー。嬉しいの?ひょっとしてー」なワケあるか。うさぎのこともっと勉強しろよ。空気が読めないのはルイさんだけじゃない。目の前の男。背が高くてヒゲを生やした男は、アタシに手を伸ばしてくる。思わず耳を立てて、威嚇の声を出した。そのまま両足でパ〜ンチ!てかキ〜ック!「なにすんのよ、キク!」ルイさんが、アタシの頭を小さく叩く。すごく優しい叩き方だったけど、アタシの心にはものすごく強く響いた。アタシは、自分からケージの中に駆け込み、奥の方でうずくまる。「ごめんなさい。この子、きっと緊張してるんだわ。そのうちきっと仲良くなれるから」結局そいつは、アタシたちのアパートに居着いてしまった。ねえちょっとルイさん、そいつ、いつまでおいとくんだよ?【シーン5:気まずい時間】「ごめんねー、ソラ。工場に抜き打ちの検査が入っちゃったみたい。ホントは私、今日お休みとってたんだけど。どうしても私じゃなきゃ、ってことだから行ってくるわ。お留守番頼んでもいい?せっかくの休日だったのにごめんね。じゃ、行ってきます。キクもいい子にしてるのよ」◾️SE:アパートの扉が閉まる音なんだなんだ?アタシとこいつを2人きりにするつもりなの?こりゃあかん。今日はできるだけケージの奥から動かないようにしよう。ルイさんが出ていくと、ソラという男は部屋の片付けを始めた・・・※続きは音声でお楽しみください。
愛知県高浜市に伝わる伝説「蛇抜(じゃぬけ)」をモチーフにしたボイスドラマ最新作。人気声優・姫乃蘭が、アニメ制作の裏側で出会う“もうひとつの真実”。神楽の舞、伝説の巫女、そして“脱皮”の意味——。彼女が最後に見つけたのは、声の向こうにある“命の物語”。【ペルソナ】・姫乃蘭(ひめの らん)/愛称ヒメ(24歳アイドル声優)=現場でぶりっ子、本音はツンデレ・星宮比売(ほしみや ひめ)/(14歳)=高浜市の小さな神社の巫女、舞姫。実は龍神の子孫・マネージャー(38歳)=姫乃蘭所属事務所のマネージャー。ヒメ以外に大物も担当している [シーン1:渋谷のアフレコスタジオ/Aスタにて『異世界高校 ミルキーハイスクール』収録中】 ◾️BGM:最高にエモーショナルな音楽 『私はここよ!なっ、なに!?・・見えないの!?私が・・・ああ!そうよ!手を・・私の手を・・・絶対にもう離さないで!!!一緒に、元の世界へ戻るのよ〜!』 ◾️SE:音響監督のモブ声「はい!オッケー!いいねえ!おつかれー」 「ありがとうございます!監督!皆さんもお疲れ様でしたぁ!スタッフの皆さんもありがとうございます! あ、監督〜!明日、アタシの写真集、発売日なんですよー!また監督の番組で告知させてください🙇(ぺこり) あの、ご迷惑でなければ・・・一冊、もらってください!コレ発売日までオフレコなんですけど〜スク水のカットもあるんでんすぅ!きゃっ。アタシ、恥ずいからイヤって言ったんですけどカメラマンさんがどうしてもって・・・あ、興味なかったら、捨てちゃってくださいねー!」 今日のアフレコは、来年4月から放送される春アニメの最終回。まだプレスリリースが出たばかりだけどあの有名なアニメスタジオが制作!ってことで話題になってる。 ストーリーは学園を舞台にした異世界もの。監督なんて京都のアニメスタジオからわざわざオファーしてるし。そうそう。キャラデザも最近人気の女性絵師さんだから、そりゃもう〜キラキラしてかわゆいの!メインキャラだけでなく、サブキャラや悪役キャラも魅力たっぷりよ。 キャストもそうそうたるメンバーね!メインのひとりは、あの超人気作品でエルフを演じたハナザキ アサミさんでしょ。スパダリのイケメン役は男子声優人気No.1のメカジキ ユウくん。優しい担任教師役にベテランのマツダ カズトモさん。 そして主人公は!前作『禍ツ魂』で超バズっちゃったアタシ!姫乃蘭(ひめの らん)、通称ヒメ!アタシの役は引きこもりのJK。でも異世界では無敵の魔法使いになっていくの! 『禍ツ魂』は地上波の12話1クールだけで終わんなかったんだよねー。続編の劇場版『禍ツ魂〜鬼師一族の廻天!』が歴代アニメの興行記録を塗り替えちゃったもんね! でも!今回の「異世界高校 ミルキーハイスクール」はその上をいく。製作委員会的にもめっちゃ力入ってる新作。とはいえ、春アニメは超話題作目白押しで人気のアニメスタジオはパンク状態。なんとか探したのがサンセットスタジオのサブチームらしい。正直アタシ・姫乃蘭を起用したのも、『禍ツ魂』で名前は売れたけどギャラがそこまで高くないから! い〜んじゃない。監督はあの『口のカタチ』のYさんだし、アタシにとってはステップアップするビッグチャンス!今日の最終回できっちり区切りをつけてと。 次の作品で、推しも推されもせぬ、No.1声優になってやる! 「1クールおつかれさまでした〜!」 [シーン2:マネージャーの運転する車の中】 ◾️SE:車の扉を閉める音/車内の走行音 「あ〜つかれたぁ!あのスタジオ、マジで空調悪すぎ。メイク取れるじゃん。それにサブキャラの女の子、間の取り方下手すぎ。合わせにくいんだって。新人?5年目?あれで?モブからやり直した方がいいんじゃね?ん?それなに?次の作品?見せて、プロット」 帰りの車の中。運転するマネージャーが持っていた次のアニメのプロット。ざっと目を通したアタシの口から出た言葉は、 「ちょっと!なに!この話!?」 「なにが言いたいのか、ぜ〜んぜんわかんない!」 「オファーは前作『禍ツ魂』の製作委員会から?どういうこと?」 話をまとめるとこういうことらしい。 『禍ツ魂』は愛知県高浜市の物語。アニメの大ヒットで観光客も増えて市の財政も潤った。アニメ終了後に実施した声優イベントも、全国からお客さんがきてくれて大成功。 「じゃあ次は高浜市から発信するアニメを!」 ということで地元の企業から協賛金が結構集まったんだって。製作委員会は地上波のTV局と枠どりをして、ネット媒体とも独占配信の約束をとりつけた。さすが、やること早いな。 それで、アニメのテーマは高浜市に伝わる伝説「蛇抜(じゃぬけ)」に決定。 伝説の内容はこんな感じ。ちょっと長いけど聴いてね。むかしむかし、吉浜村の高平(たかひら)というところに、長者が住んでいました長者にはたいそう美しい娘がいて、あちこちからお嫁さんにほしいと申しこまれます ところが娘は、どうしてもお嫁にいくのはいやと、首を縦にふりません実は娘には好きな男の人がいたのですその人は立派な身なりでやさしく、毎夜毎夜娘の部屋に通ってきていましたそれを知った長者はたいそうおどろき、その若者はどこのお人だと娘に尋ねますでも娘もどこの人か知りません長者はすっかり心配になって、娘に申しつけます 木綿針に糸を通し、若者の着物のすそにぬいつけておきなさい 夜明け近く、娘の部屋から若者が帰ると、一すじの木綿糸が外へ続いています長者が糸を追って竜田(りゅうた)の川ぶちまでくると、急に糸が乱れからまっていました川の中では一匹の大蛇がのどに針を突き立てて苦しんでいます 『相手はこの世のものではなく、オロチであったか』 長者は嘆き悲しみましたそれでものどの針を抜いてやると、二度と姿を見せるなといいます オロチは衣が浦(きぬがうら)の海の上をわたって、対岸の生路村(いくじむら)の方へ逃げていきましたそのとき、オロチが衣浦湾へ抜けていったとされる場所には橋が架けられ、「蛇抜橋(じゃぬけばし)」と呼ばれるようになった、とさ え?これをどうやって12話のレギュラーアニメにするの?ストーリーに起伏がなさ過ぎじゃない? 眉間に皺を寄せ、難しい顔をしてプロットを見つめていたとき、 「高浜・・行ってきたら?」 突然マネージャーがアタシの顔を見て言った。 「最近ずうっと休みなかったし、休暇を兼ねてロケハンに行けばいいじゃない」 真剣な顔でアタシを見つめる。う〜ん。どうしよっかなあ。最近LIVE配信もできてなかったからなあ・・・ あ。高浜から配信、ってのもアリか。 「ね、東京からどんくらい?2時間半?そんくらいなら、まいっかじゃ行ってくるわ高浜・・・」 [シーン3:高浜のとある小さな神社にて】 ◾️SE:静かな夕暮れの音/小さく神楽の音 高浜市。小さな神社の神楽殿。少女が一人、静かに神楽を舞っている。 三河高浜(みかわたかはま)の駅を降りたら、突然の雨。(※吉浜駅の方がいいでしょうか?) 名古屋からすぐだと思ってたのに。JRで刈谷ってとこまで戻って、そこからさらにドローカルの名鉄という電車。 荷物はスリムにしたけど、こんなとこでスーツケース引きずってるのはアタシくらい。 とりあえず、マネージャーから聞いてたたかびれ公園と蛇抜公園、竜田公園(りゅうたこうえん)、それに蛇抜橋は見てきたけど・・・ で?って感じ・・よくある作り物のオロチとフツーの石橋。なんか物足りないなあ、って思いながら歩いてたら道がわかんなくなっちゃって・・・ 気がついたら、小さな神社・・・ 秋雨(しゅうう)に煙る神楽殿。見たこともない神楽を舞う舞姫。その姿も朧げで、すごく幻想的。思わず近づいて見入ってしまった。 「あ」 アタシに気づいた巫女の動きが止まる。小さく頭を下げて、さらに近くまで寄っていく。 「ごめんなさい。声をかけようと思ったんだけど」 「なんか見惚(みと)れちゃった・・」 「こんにちは」 遠目で見るより、はるかに若い女の子。多分中学一、二年ってとこ。 「ようこそ、お参りくださいました」 「ごめんなさい。アタシ、なんにも考えずに歩いてて、気がついたら境内だったんです」 「高浜は初めてですか?」 「はい」 「おまんとはもう終わっちゃいましたよ」 「おまんと?」 「おまんと祭りを見に来たんじゃないんですか?」 「いえ、アタシはただフラっと・・」 「ふらっと?高浜へ?へえ・・そんな人がいるんだ」 「あの・・・蛇抜の話が知りたくて」※続きは音声でお楽しみください。
ここは、一見普通の特別養護老人ホーム。しかし、その正体は、法で裁けぬ巨悪を闇で裁く秘密組織「陽炎」の最後の砦だった。介護福祉士のルイと、個性豊かな入居者たちが、AI監視企業「シンギュラリティ」の脅威にどう立ち向かうのか?三州瓦、花火、水圧銃…お年寄りたちが、それぞれの特技を活かした驚きの武器で敵を迎え撃ちます。【ペルソナ】主人公・ヤマサキさん(年齢不詳):寝たきりのおばあちゃん。実は手下に命令を下して悪いやつらを闇に葬り去る「陽炎」のビッグボス介護福祉士・ルイ(24):秘密組織「陽炎」で訓練を受けた世界最高級の秘密工作員。訪問介護や病院への送り迎え、外出催事などの際にミッションをこなしている[シーン1:特別養護老人ホーム 鷹濱荘】◾️SE/効果音:緊急コール(No.1530968 緊急コール)〜廊下を走る音※CV/息を切らして走ってくるルイはぁっ!はぁっ!はぁっ!緊急コールを鳴らすなんて、また誰かが転倒でもしたのかしら?骨折とか大事(おおごと)でなきゃいいけど。※CV/モノローグっぽくここは、愛知県高浜市にある特別養護老人ホーム鷹濱荘(たかはまそう)。海沿いに建つ瀟洒な施設。一見、どこにでもある普通の特養だが・・・◾️BGM/スパイアクション風に転換ここにいるのは、ただ静かに余生を送る老人たちではない。法で裁けぬ巨悪を闇で裁く非公認の秘密諜報組織「陽炎(かげろう)」。彼らはその「陽炎」最後の生き残りたちである。私は介護福祉士のルイ。しかしてその実態は・・・「陽炎」で訓練を受けた腕利(うできき)の秘密諜報部員。パステルカラーのユニフォームの下にはワルサーPPK。コルセットをガンベルトにしていつでも臨戦体制の工作員なのだ。いやいやいや、私などまだまだ青二才。ホームの入所者は全員、超一流のエージェント。その素顔は誰も想像できまい。主だったメンバーを紹介しよう。※年齢はそのまま続けて読んでまずは、元鬼師のタクミさん(85歳)。三州瓦で鬼瓦を作る伝統工芸職人。特殊な材料でいろんな瓦の仕掛けやギミックを作り、敵を制圧する。毎回私に新しい発明品を見せたくてウズウズしてるのよね。面白いけどほっとこ。戦時中「従軍看護婦」だったマミさん(78歳)毒物調合の達人。手に持っている砂糖入れには常に微量の毒が混ざっている。今日もメタボ気味な理学療法士のおじさんに、デザート作って渡してた。メタボ解消よ〜、って笑ってたけど・・・おじさん大丈夫かしら?コウシさん(82歳)は”回天”計画の元特攻隊員。出撃直前「陽炎」にスカウトされたらしい。水を使った戦法が得意。介護浴槽の中でも10分以上息を止められるって。職員が海にボールペン落としたときは、潜ってサっと拾ってくれた。ありがたいわぁ。伝説のスナイパー「人形菊(にんぎょうぎく)」ことコハルさん(75歳)。いまはちょっと耳が遠くなったけど、視力とスナイパーの腕は健在。上空150メートルぎりぎりに飛んでるドローンも一発で撃ち落とす。昨日もドローンが近づいてきたから撃墜したって言ってたけど・・なんかこわ〜。元花火師で爆弾作り名人の、トシカズさん(88歳)。破壊対象のごく一部だけを正確に、かつピンポイントで爆破する。しかも超人的な聴力はデビルイヤー。他人の心音まで聴き分ける。こないだも「ルイちゃん、心拍数あがってるよ。相談員の栗栖くんの前だから?」って。いらんことを〜。カズオさん(90歳)は、凄腕の金庫破り。少〜し認知入ってるけど、錠前開けの腕は健在。所長が金庫の鍵なくしたときなんて、つまようじ一本で開けちゃったし。すごすぎる〜。最後は、ヤマサキさん(年齢不詳)。戦後の混乱期から今まで、諜報機関「陽炎」の指揮官。3年前の脳梗塞が原因で寝たきり・・・というのはカムフラージュ。超人的なリハビリを半年続けて復活。密かに私に指令を出している。表情ひとつ変えずにぼそっと言うから、ちょっと怖い。◾️SE/効果音:緊急コール(No.1530968 緊急コール)〜廊下を走る音※CV/息を切らして走ってくるルイはぁっ!はぁっ!はぁっ!呼んでいるのは4階の北の端。多目的交流センター。私が打合せをしていたのは南の端1階のデイルーム。走っても遠いわ。はぁはぁ・・・あ・・れ?交流センターのマットに寝かされてるのは・・・タクミさん?ま〜たなんか瓦でヘンなモノ作ってたんじゃない?「タクミさん、大丈夫?」「ああ、ああ。ちいっとばかし、転んじまったわ」「バイタルは?」「正常じゃ」「打ったのはひざ?見せて・・・腫れてはいないわね」「ああ」「一応、総合病院行こう」「そうじゃな。いこいこ」タクミさんは遠足へ行く子どもみたいな笑顔。わざとらしく足を引き摺りながら、車に乗り込んだ。[シーン2:介護車両「よしはま号」】◾️SE/介護車両の車内音「転倒なんて嘘でしょ?」「いや、うそじゃない。わざとだけど」「もう〜。デイルームから多目的まで必死で走ったのよ」「ほかほか。ええ運動になったのう」「なぁにが。で、要件は?」「昨日三味線弾きのカズヤが慰問にきたじゃろ」「ああ。陽炎の連絡員、カズヤさんね」「演奏の幕間(まくま)にちらっとだけ聞いたんじゃが・・・」「なあに?」「最近、裏の世界で不穏な動き、というか空気があるんじゃと」「どうしたの?」「八咫烏(やたがらす)って知っとるじゃろ?」「同業ね。あっちはカズガ/ハルヒ神社の神官たちのグループじゃない」「宮司のサカキバラを除いて全滅らしい」「ええっ!?500年以上も続いている神官と巫女のエージェント集団よ!」「そうなんや」「どういうこと?相手は誰?」「わからん。だから、いくつかわしが秘密兵器をつくっておいた」「まぁた、瓦でヘンなもん作ったんでしょ」「失礼だな。まあ見ろ」「はいはい」「まずはこれ」「ただのキーホルダーじゃない。たしかクラファンの返礼品でしょ」「そう見えるだろうがな、これは手榴弾じゃ」「え〜」「爆弾作り名人のトシカズさんに爆薬を調合してもらってな。窯の中で爆発させず、強度も保てる瓦爆弾を焼いてもろうたんじゃ」「そんなん持ってるだけで危ないじゃん」「そうかぁ?ほんじゃこっちは?三州瓦を細かく砕いて、特殊な合成樹脂で固めた手甲(てっこう)じゃ。一見、ただのギプスに見えるやろ?拳銃の銃弾(たま)だって弾き返すんやぞ」「重いだけじゃん」「やっぱ若いやつには、この価値はわからんかぁ。見よ、この瓦の艶。美しいのう」「もう総合病院着くわよ。とりあえずレントゲンだけはとっときましょ」結局、タクミさんは手首を骨折していた。瓦のギプス、役立ってよかったじゃん。まあ、股関節の骨折じゃなくてひと安心。早くホームに戻ってボスに報告しなくっちゃ。[シーン3:ビッグボス】◾️SE/小鳥のさえずり「八咫烏が全滅だと?」「はい。生き残ったのは宮司のカズヤさんだけ」「シンギュラリティだな」「シンギュラリティ?なんですか、それ」「先週防衛省の役人がきたとき、ちらっと言っておった」「防衛省の役人!?そんなん、いつきました?」「なんや。ほれ、マミの家族が訪ねてきとったろ?」「ああ、あの息子さんとお孫さん・・・ってあれ、偽物だったんですかぁ!?」「年に一度の定期連絡じゃ」「年に一度しか顔を見せないなんて冷たい家族だなあ、って思ってたんですけど・・・え、でも・・・お孫さんは?子役ですか?」「チャイルドプレイのメンバーじゃよ」「チャイルドプレイ?ちょっと頭が混乱してきました」「正式には非政府組織のNGO。10歳未満のこども中心の諜報メンバーじゃな。労働基準法の『年少者保護規定』にひっかかるんでNGOになっとる。売れてる子役はたいがいメンバーだぞ」(※以下カット可能)「ひえ〜。芦田愛菜とかも入ってたりして」「初代隊長じゃ」「いやいやいや。そうですか。ごちそうさまでした」「話を戻そう。シンギュラリティは、AI監視ネットワークを駆使した反政府団体じゃ。SNS時代に急成長したAI監視企業が、ならずもの国家と結託してな、全世界を掌握しようとしておる」「じゃあ、陽炎とか八咫烏は・・」「基本アナログのわしらは、やつらにとって最大の脅威。と認識し始めたらしいのう」「だから最近正体不明のドローンが飛んでるんですね。昨日はコハルさんが撃墜しましたけど」「近いうちに必ずなにか仕掛けてくる。と役人が言っておったが、まさか八咫烏を先に潰しにくるとは・・」「どうしますか、ビッグボス」「次の外出は、彼岸花の鑑賞やったな」「はい」「その次がおまんとか」「ですね。それまでにはケリをつけないと」「よし。じゃあ、次の外出のとき、動ける者はみんな稗田川へいけ」「ラジャー」「そこで敵をおびき寄せる」「ありったけの武器を持っていきます」「こちらの出方を悟られんようにな」「わかりました」「わしは残ったものと敵を迎え撃つ」「お気をつけて」※続きは音声でお楽しみください。
1944年、戦時下の愛知県・高浜市。世界の美しい海に憧れながら、衣浦の小さな海で修行をする人魚姫ルイーズ。彼女が出会ったのは、徴兵検査で落ち、居場所を失った青年サトシ。二人は密かに愛を育むが、やがて三河地震、そして終戦の波が押し寄せる――。歴史とファンタジーが交錯する切なくも美しいボイスドラマ【ペルソナ】主人公・ルイーズ(年齢不詳):北欧生まれの人魚。プリンセス候補の1人。修行のために衣浦の海に住んでいるが、この小さな海がどうしても好きになれない。サトシ(21):高浜の電気工。友達が次々と出征して戦地にいくなか、徴兵検査で丁種となり悶々としている。そんなとき幼馴染のマサルの戦死公報が届く。(CV:山﨑るい)【ストーリー】[シーン1:1944年夏/衣浦の海】※ルイーズのモノローグ◾️SE:潮騒の音/海鳥の声/遠くに聞こえる汽笛赤、青、黄色。色とりどりの魚たちが珊瑚礁の間を泳いでいく。光のカーテンがゆらゆら揺れて、まるで宝石みたいに美しい海。パラオ。透き通るようなエメラルドグリーンの水面。白い砂浜に打ち寄せる波。マンタと一緒に、空を飛ぶように泳ぐ海。モルディブ。エメラルドグリーンからコバルトブルーへ。息をのむような美しいグラデーション。天国に一番近い島。ニューカレドニア。ああ〜、なんて素敵なの〜美しい海は世界中にこんなにいっぱいあるのに・・・◾️SE:暑苦しいセミの声なんで私は衣浦?なんで高浜?海か川か、わかんないような海。いつまでここにいればいいの〜!?私の名前はルイーズ。おわかりだと思うけど、マーメイド。場所によっては、セイレーンとか、ローレライって呼ぶ人もいるわね。日本では、そ、人魚。ジュゴン?マナティ?ちょっと勘弁して。あの海棲哺乳類のどこから麗しい人魚の姿が想像できるっていうの?それに人魚の世界って厳しいのよ。ポセイドンっていう神様の下で何年も修行してやっと自分の海を持たせてもらえるんだから。で、私の海は・・・衣浦?夏だというのにカラフルな熱帯魚もいないし、海亀だっていない。真っ白な砂浜だって・・・なんで?なんでよ〜?ポセイドンさま〜しかも・・・いまって何年?私たち人魚には時間という概念がないからよくわかんないけど・・・1944年?たしか世界中で戦争が起こってたんじゃない?そうそう。ポセイドンさまが言ってたわ。”戦争とは、神々の時代から幾度となく繰り返されてきた愚かな所業。人間たちの欲のために、陸(おか)は火の海となり、美しく青い海は血で赤く染まっている。かつては美しく、清らかであったこの海も、今や醜い憎悪と悲しみを吸い込み、深く澱んでしまった。人間たちよ、いつか、その報いを受けるであろう”だって。この高浜ってところには、まだ爆弾とかは落ちてないんだけど、人間の数がどんどん減っているんじゃない?男の人は戦地に送られ、女の人や学生さんは名古屋の工場に行ってる。畑とか田んぼとかどうするのかしら?陸(おか)の食べものがないからって、魚をもっといっぱい獲っちゃうの?魚って私たち人魚の眷属だから、守ってあげないと。チヌ、セイゴ、メバル、カサゴ、サッパ、ハゼ、イサキ、シイラ。みんな、隠れなさい。逃げなさい。人間なんかにつかまっちゃだめよ。私が魚たちを転進させている頃、陸(おか)の上ではいろんなことが起こってたみたい。知らんけど。[シーン2:1944年秋/出会い】◾️SE:友人の葬式(棺桶に入っているのは戦死の知らせの紙だけ)「このたびはご愁傷さまで・・・」「あ、サトシです。ほら、小さい頃マサルと一緒に遊んだ・・」「ああ、ボクには赤紙はまだ・・・」「そ、そうです。徴兵検査で丁種(ていしゅ)だったので・・・」「非国民?そんな・・そんな・・・ボクだって」「帰れ?お願いです!線香の1本くらいあげさせてください」「マサルの・・」◾️SE:バシャっと水をかけられる音「失礼、しました」海沿いの古民家でおこなわれていたお葬式。一人の若者が、水をかけられて、追い出された。ってか、家にもあげてもらえなかったのね。なんか、陰鬱な顔してひとりで海の方へとぼとぼ歩いてくる。私は退屈だから、浜辺に腰掛けて、人間の営みをぼんやりと眺めていた。どこの家も軒先に赤い提灯を飾るんだ。ほおずき提灯っていうの?いまの時期だけかしら。きれいだな。衣浦に夕陽が沈む。夕陽のオレンジとほおずき提灯の赤が混ざり合って幻想的な風景を作り出す。まあまあ、かな。悪くない。そのとき・・・◾️SE:海に身を投げる音「ザバ〜ン!」え?なに?向こうの岩場だわ。尾鰭を素早くくねらせて水音がした方へ泳ぐ。あれは・・・人間だ。あっ。さっき、夕方。お水をかけられていた男の人。私は、迷うことなく彼を水から引き揚げる。だって、この海で土左衛門なんて、冗談じゃないわ。土左衛門?水死者のことでしょ。春先に、貝掘りにきてたおばあちゃんに聞いたもん。なんか、可愛い呼び方。と〜っても不謹慎だけど。彼を抱えて浜の方へ。よっこらしょっと。なんとか砂浜に寝かせた。意外と軽いわね。ちゃんと栄養とってないんじゃない。よく見ると、可愛い顔。タイプってわけじゃないけど、悪くないわ。思わずじぃ〜っと見つめる。ゆっくりと彼の目が開いた。予想外の展開。私は慌てて、海の中へ飛び込む。人魚の掟では、人間に姿を見られるのは御法度。もしも見られたのが男の人だったら、その人と結ばれないといけないの。女の人だったら?あ、それは聞かない方がいいと思うわ。それに、私たち人魚に見つめられた男の人は、例外なく恋に落ちるの。これは、ま、絶滅危惧種でもある人魚の、種を維持する本能かも。あ〜、でも危ない危ない。もう少しで結婚しなきゃいけなくなるとこだった。波の下からそうっと陸を覗くと・・・月の明かりに照らされた彼が、浜辺に立っていつまでも海を見つめていた。[シーン3:1944年秋/逢瀬】◾️SE:潮騒の音その日から彼は、毎日浜辺に来るようになった。日が昇る時間からひとりで海にきて、帷が降りるまで海を眺めている。なんで?まさか・・まさか。彼・・私に魅入られてる?夏が過ぎ、秋になって、稗田川から彼岸花の花びらが流れてくる。花びらがピンク、黄色、赤と変わっていっても、彼は浜辺に立ち続けた。これは・・・間違いないわね。わかった、もう私の負け。高浜川からも稗田川からも真っ赤な紅葉が流れてくる季節。私は、彼の前に姿を見せた。波の上に顔だけだして。◾️SE:潮騒の音「やっぱり・・幻覚じゃなかったんだ」「あなた、名前は?」「サトシ。君は?」「私はルイーズ。年はいくつ?」「廾壱(にじゅういち)。君は?ルイーズ」「失礼ね、女性に年を聞くもんじゃないわよ」「これは失敬」「年が明けると120歳くらいかしら・・」「ひゃ、ひゃくにじゅっさい・・・」「繰り返さないでよ」「ご、ごめん。でもまだ信じられない」「そりゃそうよね。人魚は人間の前に決して姿を見せないんだから」「え・・・じゃ、どうして姿を見せてくれた の?」「それは・・・ま、おいおいわかるわよ」「なんか・・怖いな」「臆病なのね」「臆病・・・そんなことはない!!どんな理由だって構わないさ。僕は・・・君のことを慕っているのだから」「やっぱりそうよねー」「すごい自信だな・・」「いや、そういうわけじゃないけど」「君のことをもっと知りたいんだ」「いいわ、教えてあげる」私は、波の上に腰から上を出した。長い髪で胸を隠して。立ち泳ぎしながら、尻尾の先を波間から出す。「本当に・・人魚なんだ」「私、こう見えて王家の出なのよ。プリンセス候補のひとりってわけ」「プリ・・・?」「プリンセス。お姫様ってこと」「お姫様・・」「そ。で、いまはこの衣浦の海で修行中」「そっか・・・」「あなたのことももっとちゃんと教えて」「わかった」私たちはこのあと、1時間以上も語り合った。サトシの身の上。父も母もサトシが幼い頃に亡くなって、身寄りもなく物乞いのような生活。食べ物につられて戦争の徴兵検査に行ったけど持病で落とされたこと。幼馴染の両親から、非国民と言われて、身を投げたこと。そうだったんだ。人間の世界も楽じゃないのね。いつの間にか、サトシは波打ち際まできて、かがんでいる。私も首だけ出していた波間からサトシの前へ。尾鰭もあらわに、ぺたんと波打ち際に座っている。話を聞きながら、私はサトシの手を握った。私を見つめるサトシの瞳が潤む。高浜の誰もいない砂浜。月明かりの下。サトシと私は人目を忍んで逢瀬を重ねていった・・・※続きは音声でお楽しみください。
忘れ物を届けた先にあったのは、過去の自分だった——。セントレア空港で働くルイ(28歳)は、ロスト&ファウンドでNBA選手のボールを預かる。持ち主は、プロ入り4年目・未だ無得点の控え選手エバン・ヒーロー。夢を諦めかけたふたりに訪れた、「セカンドチャンス」とは?・高浜市×セントレア×NBA・感動のクライマックスはまさかのゴール下!バスケ経験者にも、そうでない人にも届けたい、再出発の物語。(CV:山崎るい)【ストーリー】<『セカンドチャンス』>主人公・ルイ(28):セントレア空港のロスト&ファウンド係。几帳面で冷静、でも実は学生時代バスケ部でNBAの大ファンだったがインターハイ予選の決勝でセカンドチャンスを外して敗退。それがきっかけでトラウマに。エバン・ヒーロー(24):NBAのベンチメンバー(補欠)。来日試合のためにセントレア経由で入国。誰よりも努力家だが入団以来公式戦で得点がない。日本が嫌い[シーン1:インターハイ決勝のトラウマ/2015年8月高浜市体育館(碧海)】◾️SE:会場の大歓声「ルイ、スクリーン!」「OK!」2015年5月30日。その日、碧海町の高浜市体育館は、熱狂的な歓声に包まれ、シューズの摩擦音が響いていた。インターハイ予選決勝、残り時間はあと10秒。1点ビハインドで迎えた、九死に一生の場面。ポイントガードがインサイドに切れ込むセンターのミサキにパスを送る。だが、相手チームの厳しいディフェンスがミサキのシュートを阻んだ。ボールはリングに嫌われ、無情にもリムを叩いて転がっていく。その瞬間、私は無意識に動き、ルーズボールに飛び込む。「ルイ!今よ!セカンドチャンス!」視界の端に、赤く点滅するショットクロックが見えた。もう時間がない。拾い上げたボールを抱え、私は迷わずドライブを仕掛ける。マークについていた相手フォワードをクロスオーバーで抜き去り、ゴール下へ。ノーマークだ。誰もが私のシュートが決まることを確信した。しかし、放たれたボールは・・・◾️SE:会場のためいきと大歓声実況アナウンサーの絶叫が、耳に突き刺さる。ボールはリングに弾かれ、無情にもアウトオブバウンズ。その瞬間、試合終了を告げるブザーが、私の心を打ち砕いた。鼓膜から歓声は消え去り、凍り付いた時間の中でコートは静まり返る。チームメイトの慰める声も私の耳には入らない。ベンチから歩いてくる監督は、作り笑顔の中に落胆した表情が隠せない。この日を境に、私の心からバスケットボールという言葉は消えた。あんなに好きだったNBAの試合ですら怖くて見れない。高校最後の初夏が、私の一番好きなものを奪っていった。[シーン2:中部国際空港セントレア】◾️SE:空港のガヤ「え?忘れ物?もう〜。帰ろうと思ったのに」あれから10年後の2025年。私は高浜から毎日車でセントレアへ通う。中部国際空港・第1ターミナル1階 総合案内所裏「遺失物取扱所」通称“ロスト&ファウンド”。それが私の職場だ。ガラス越しに見える滑走路と、遠ざかっていく白い機体。カウンターの奥、仕切られた一角で私は丁寧にグローブをはめた。目の前の“拾得物預かり票”にボールペンで書き込んでいく。国内線112便・到着ロビーC付近で拾得。品目・・・・・・ボール?え?ロスト&ファウンドに普段届くのは、財布やスマホ、書類がほとんど。スポーツ用品が届くのは珍しい。しかも・・・このサイズ、この形状、このカラーは・・・バスケットボール。一目見ただけでわかる。プロ仕様のバスケットボールだ。深いオレンジ色の革には、使い込まれた証拠の擦れ。かすかに汗の匂いが染み込んでいる。「・・・まじか」ためらいながら、手を伸ばす。手のひらで感じる感触。顔を近づけたとき、微かに漂う皮の匂い。記憶の奥底に封じ込めたはずの感情が、ふいに呼び覚まされる。ボールのパネルには、筆記体で「E. HERO(イー・ヒーロー)」と刺繍されていた。その下には、見慣れない猛禽類のマークが縫い付けられている。どこかのチームロゴだろうか。高校のとき、あんなに夢中だったNBA。10年という歳月は、私をここまでバスケから遠ざけちゃったんだな。名前まで入れて・・よっぽど大切にしていたボールなんだろう。なんとか返してあげなくちゃ。全然気にもとめなかったけど、何チームかエキシビジョンマッチで来日していたらしい。「イー・ヒーロー・・・?どっかで聞いたような・・」その名前が、私の頭の中をかすめた。ベンチメンバーにそんな名前の選手がいたような・・・でも、NBAの選手がこんな大事なボールを忘れるか・・・?[シーン3:ルイの自宅】◾️SE:自宅の雑踏/ノンアルコールビールを注ぐ音その夜、私はノンアルコールビールを飲みながら自宅のパソコンで名前を検索した。(だって私、お酒飲めないんだもん)検索窓に「E・ヒーロー ・・」と打ち込むと、「エバン・ヒーロー?」続けて「0(ゼロ)」と表示される。なにこれ?ヒットした記事はどれも、彼の短いNBAキャリアと、ベンチウォーマーとしての不遇な日々を報じていた。出場機会はほとんどなく、コートに立っても数分で交代。シュートを放つチャンスすら滅多にない。「garbage time」に少しだけコートに出させてもらってもパスを回すだけでシュートを打たせてもらえない。シュートを打ってもプレッシャーから外してしまう。エバンの公式プロフィールには「キャリア通算得点:0」という数字が、冷たく刻まれていた。なんか、私みたい。胸の奥が締め付けられるような共感を覚える。高校最後の試合。1点のビハインドをひっくり返せるはずだったセカンドチャンス。得点は、2ではなく、0。あの日から私はずっと「0」という数字に追いかけられていた。彼もきっと誰にも理解されない孤独な戦いを続けてきたのだろう。エバンのボールは、ただの遺失物ではない。それは、私自身のトラウマを映し出す鏡のようだった。[シーン4:エバンの泊まる衣浦グランドホテル】◾️SE:空港の雑踏/朝のイメージ遺失物取扱所に並べられた、拾得物預かり票。ロスト&ファウンドの係員として、遺失物の処理には厳格な手順があった。遺失物法に基づいて、拾得物は警察に届け出る。公示された後、一定期間、通常は3ヶ月、持ち主が現れなければ、拾得者のものとなるか、国庫に帰属。国際空港で拾得された場合は、税関や出入国在留管理局との連携も必要になる。通常の手続きを踏んでいたら、間に合わない。エバンが日本に滞在している間に、ボールが彼の元へ戻る可能性は限りなく低い。彼のチームが日本にいるのは数日間。その間に手続きが完了するのは極めて難しい。どうしよう・・・気がつくと、私はエバンたちが宿泊するホテルの前に立っていた・・・※続きは音声でお楽しみください。
「その声は、命を削って届いた」新人声優ルイが挑んだのは、異色の鬼アニメ『鬼師』のラスボス「禍ツ魂」。過酷な現場、突きつけられる現実、そして自身の病——それでも、彼女の声は人々の心を震わせた。SNSでバズり、異例の主人公交代。感動と希望のラスト、そして次回作『蛇抜』へ繋がる予告も─心震える45分、あなたも“あの演技”を聴いてください。(CV:山崎るい)【ストーリー】[シーン1:スタジオオーディション『鬼師 vs 禍ツ魂』】◾️SE:雷鳴轟く豪雨の中『おのれぇ!こざかしい鬼師どもめがぁ!おまえらごときにこの禍ツ魂の術が破れるものか!?これでもくらえ〜!!』◾️SE:爆発音『なん・・だとぉ〜!!!術が効かぬ!鬼瓦に吸い込まれる!!!くそぉぉぉぉ〜!鬼師めが!これで終わりと思うなぁ〜!きさまを倒すまでわれは何度も蘇えるからなぁ!』◾️SE:音響監督のモブ声「はい!オッケー!」あ〜、しまったぁ。ちょいと、やりすぎちゃったかも。いつもの調子で、ハラから思いっきり声だしちゃった。最後、アドリブまで入れてるし・・・ってか今日、バイト先で超ムカついたんだよねー。店長に。早朝のシフト終わって私にかけた言葉が、『おつかれ〜。オーディションがんばって。あでもー。声優なんて食ってけないんだからいい加減あきらめたら〜?』だって。ざけんな、っつうの。あ〜!ったく、セリフに力入ったわ〜。あ、いかんいかん。まだオーディション終わってないし。今日は、一年後に放送される2026年夏アニメのCVオーディション。って早すぎ?いやいや、TVアニメなんてそんなもんよ。絵が出来上がる前のアフレコなんてザラだから。タイトルは『鬼師』。鬼師というのは、鬼瓦を作る職人のことらしい。舞台は愛知県高浜市というところ。なんでも、瓦の生産量が日本一なんだって。へえ〜。知らなかった。物語の世界は、平安時代末期から鎌倉時代。世の中には鬼が闊歩し、人々に畏れられていた。まさに『百鬼夜行絵巻』の世界。鬼たちが集まる高浜には、鬼師がいた。鬼師とは、鬼を討伐する専門職。特殊な結界を張った瓦に、鬼を封じ込めて葬り去る。はるか遠い昔の物語。鬼師と鬼の果てしない戦いを描くアニメだった。CVオーディションは音響監督の決めうちじゃなくて、呼ばれた声優たちがいろんな役を演じる。私はラスボスの鬼じゃなくて、ヒロインの美少女鬼師狙い。だって最近、アニメじゃいっつもモブか人外ばっかなんだもん。そうそう。気持ちを切り替えて、と。よろしくお願いしま〜す!






















