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復職名人が読む三手先

Author: Centro Salute

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この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。

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今回は、先日行った産業医基礎研修会の反省会を行いました!テーマだけでなく、運営やその後のフォローなど、いろいろと考えてみました。 告知 第35回日本産業衛生学会全国協議会 模擬裁判「裁判のソコが知りたい」 3人が登壇予定です 11月28日(金)16時30分〜18時10分 あわぎんホール5階大会議室 Podcast公開収録 11月27日(木)17時30分〜19時(予定) とくぎんトモニプラザ 大会議室 終了後、懇親会を開催予定です。またご案内いたします。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾 産業医基礎研修会の後半+週末の産業研法学会で、19連勤になる見込み。 前園 夜、家事が終わった後に寝るまでの小一時間で読める、優しい系の漫画を探してます。 銀の匙 Silver Spoon 動物のお医者さん いいひと。 森 オンラインデータベースをGrowiで構築しました。 議論した内容 基礎研の内容・運営について 直近の基礎研は成功裡に終わり、懇親会への参加者も多く、今回研修を受けた受講者のうち実際に産業医を始める方が過去最高になる見込み。 来年度の基礎研の実施時期は、9月が5連休であるため、7月と10月に変更する予定である。 事前に手書きの制約書/重要事項確認書を提出させるステップを設けた。来年度も続ける。 健診事後措置の実習では、受講者が戸惑うような意地悪な出題形式(教えずにやらせるなど)は避け、講義の後に実習を行う流れを意識する。 実習で用いるケーススタディの健診結果は、就業制限の必要性を検討しやすい、より「程よい」健康状態の悪い人を選定する。 弁当の質を上げる方針と並行して、コーヒーやお菓子(チョコ、飴など)の提供は、コロナ禍で中止していたが、復活させることを検討する。 産業医を始める先生への支援 受講者からの質問の半分程度は、講義内容よりも産業医活動そのものに対するものであり、例年よりリアルな活動を想定した質問が多かった。特に産業医を始めた際、「孤独」や「相談相手がいない」という悩みが受講者から多く寄せられた。 産業医活動への橋渡しやステップアップ支援として、地域や経験に応じたネットワーク化(メンター制度)の構築が必要である。 インターネット禁煙マラソンの事例を参考に、経験者(先輩)が初心者を支援するメンター制度を基礎研修了者を対象に実施できる。 メンター・メンティは、3~5人程度のグループを作り、その中で希望者が当事者間の合意で関係を築く形式を検討する。 地域ごとの自主運営に近い勉強会(東京、大阪、名古屋など)を、やりたい人が3人以上集まったところから支援していく。 この支援活動の費用は、Office d'Azurがスポンサーすることも視野に入れ、自主運営をサポートする形で進める。 編集後記 高尾 産業医基礎研修、あと12年(12回)はやるつもりなので、4年に1回想定の自治体向け基礎研とあわせれば、おおよそ2500人の産業医を世に送り出すことになりますね。うち、、、500人くらいが実際に産業医をやってくれるのが目標!? 前園 弁護士には「労働法弁護士になるための基礎研修」のような単位制度はありません。 生涯研修のような更新単位もありません。(倫理研修は義務として存在しますが) ときどき、「質の担保のために、弁護士も10年に1回は更新試験を受けさせるべきだ」という厳しい意見も聞かれますが、継続的に学ぶ機会が(強制的に)あることで、得るものも多いだろうと思ったりします。 森 ゾノ先生の発話量がかなり少なくなってしまったので、次回以降はもっと話してもらおうと思います! (次回は、産業保健法学会の反省会を予定しています!)
今回は、産業医面談のニーズがなぜあるのか、面談のタネと仕掛けについて、議論しました! 告知 第35回日本産業衛生学会全国協議会 模擬裁判「裁判のソコが知りたい」 3人が登壇予定です 11月28日(金)16時30分〜18時10分 あわぎんホール5階大会議室 Podcast公開収録 11月27日(木)17時30分〜19時(予定) とくぎんトモニプラザ 大会議室 終了後、懇親会を開催予定です。またご案内いたします。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾 ボストンに出張してきました 前園 Nintendo Switch2をゲットしました 森 AI音声アナウンスを流す際の注意点について 議論した内容 産業医・医療職と人事・総務の違い 医療職(産業医)は、相手の反応を過度に気にせず、伝えるべき医学的事実を必ず伝える。一方、人事・総務は、従業員が怒ったり否認したりするのを恐れ、「体調が良くなさそうだから」といった曖昧な言い方をし、産業医に難しい役割を押し付けようとする。 多くの会社では、療養導入時に従業員の否認や怒りに対し変化球で対応しようとして失敗し、業務的アプローチの一貫性が欠けている。 臨床経験のある医療職は、伝えるべきことはその日のうちに伝える姿勢を持ち、「ヒットアンドアウェイ」のような技法を用いつつも、相手の受け入れ段階を見ながら情報を伝える。 「あなたは仕事ができていない。それは病状が悪いからだろう」という本質的なメッセージは、産業医にとっても人事にとっても伝えにくい枕詞である。それでも産業医はメッセージを伝え切る。 伝えるべき重大な情報は、相手が怒ることを織り込んだ上で、情報の正確性と一貫性を保ちながら伝えることが重要である。 質問の整理とコミュニケーション 長すぎる質問は、意図が不明瞭になり、回答を困難にする。これは、相手の怒りや否認を恐れてどうでもいい情報が混ざるためである。 相談する際は、100文字程度に整理することで、本質的な問題が明確になり、答えも導き出しやすくなるかもしれない。 重要な情報や優先順位が高いことは、相手が怒ろうが否認しようが直接伝えるべきであり、躊躇すると問題解決から遠ざかる。 「これは医療の問題だから」と人事・総務が口を挟まないことで、仕事の問題として伝えるべき本質から目をそらしてしまう状況がある。 医療への「逃げ」問題と企業の期待 企業の人事・総務は、従業員が病気を理由に遅刻や業務遂行の困難を正当化しようとする状況を恐れる。従業員の反発を恐れて産業医に面談を依頼するのは、普段のやり取りで反論してきた従業員が精神的に不安定になると、さらに反論が強くなるためである。 産業医は上司や人事よりも距離があるため、従業員からすると怒りをぶつけにくい存在であり、外部の専門家として難しいことを言わされやすい立場にある。ただ、企業が産業医に「言うべきことを代わりに言って怒られ役になってほしい」と期待するのは、産業医の中立的な立場を考えると「ひどい」期待である。 産業医が耳の痛いことを言っても、体調を崩す従業員はいる。人事・総務は、救急車を呼ぶなどの判断ができないため、いざという時の対応を想定し、産業医に任せたくなる気持ちは理解できる。企業の人事・総務は、「そんなに心配なら同席するから、言うべきことはあなたが読み上げなさい」というスタンスで臨み、高尾メソッド(役割分担と手順化)を実践すべきである。産業医は、まずは同席して人事・総務が実践できるよう学習を支援すべきである。 療養導入時の課題と動画の可能性 療養開始時のAI音声動画は可能だが、療養導入時の動画作成やその使い方は難しいのではないか。 療養導入は、本来「労務提供の受領拒否」という親心であり、懲戒を避けるための手段であるため、労務管理上の指摘動画は作れるはずだ。 アバターに指摘させても、人が言うからこそ受け入れられる反応があるため、人間が関与する重要性があるのでは。裁判官の代理をAIができるかという問いと同様に、客観的なデータに基づく指摘はAIでも可能だが、有効性や妥当性の観点から人間が必要な「儀式」である。 通常の労務管理とシームレスに繋がっているべきであり、従業員が遅刻の理由を健康問題にすり替えるのは、本来の労務管理の流れではない。面接シナリオを用いて淡々と伝える方法が、イレギュラーな対応には有効かもしれないが、療養か懲戒か選択の余地がある間は動画では決めつけになってしまう。 療養導入時では、通常勤務の定義や労働契約の内容をAI動画で説明させ、その上で人間が具体的な逸脱について伝える、という役割分担が考えられる。 議論のまとめ 従業員の勤怠不良に対し、シナリオを使い、健康問題にすり替えてくることは想定して対応する。会話のゴール(遅刻はダメ、改善してください)を達成し、理由を述べてうやむやにされることを避けることが重要だ。 「種明かし」の結論は、「種と呼べるほどの種ではなかったことを明かした」ということだ。誰にでもできる簡単な話である。 ただし、種が分かっても実践には「手際の良さ」などのテクニックが重要になるかもしれない。ここは面接シナリオで補えるはず。 編集後記 高尾 産業医面談の「魔法のタネ」は、いたってシンプルなもの。そして、面接シナリオ(OR動画)を利用すれば、実践にもテクニックもそれほど要りません。 前園 マジックといえば私は子どもの頃はトランプマンに熱狂していたことを思い出しました。調べてみると今でもご活躍中らしく、公式インスタグラムもありました!皆さんぜひ、フォローをお願いします。 https://www.instagram.com/trumpman_official?igsh=MXdyc2l4ZmliNDZwMw== 森 収録トラブルにより、いつもよりも音声のズレが生じてしまったので、その修正が大変でした!
ポッドキャスト「復職名人が読む三手先」第82回では、AMAの復職ガイドラインについて議論しました。 告知 第35回日本産業衛生学会全国協議会 模擬裁判「裁判のソコが知りたい」 3人が登壇予定です 11月28日(金)16時30分〜18時10分 あわぎんホール5階大会議室 Podcast公開収録 11月27日(木)17時30分〜19時(予定) とくぎんトモニプラザ 大会議室 終了後、懇親会を開催予定です。またご案内いたします。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾 ウイスキーのストックが83本を超えました。最近はジャパニーズが手に入りやすくなってます。 中国のSF小説「三体」を全巻読破しました。 前園 笑い飯・哲夫著の「ブッダも笑う仏教のはなし」を読みました。 https://amzn.asia/d/0yF5t05 森 日本人の死生観について本を読んでみました。 https://note.com/pelicans/n/ncfa5b993ab08 議論した内容 AMA復職ガイドラインにおける「リスク」「キャパシティ」「トレランス」の定義 AMA Guide to the Evaluation of Work Ability and, Return to Work Second Edition https://amzn.asia/d/bcT1TJP Risk 従業員が特定の業務に従事することで、本人、同僚、第三者などに害をなす恐れがある状態である。これには「就業制限」を考慮する。例えば、コントロール不良のてんかん患者の航空機パイロットやタクシー運転手への就業制限がこれに当たる。これは本人はできるが、雇用主としてはやらせるべきではない側面がある。 Capacity 筋力、柔軟性、持久力といった、科学的医学的に測定可能な身体的能力を指す。「ワークリミテーション」として表現する。肩の手術直後の患者の上肢挙動を伴う作業の制限などが例である。これはあくまで現時点での能力であり、本人の潜在的な能力ややる気によって変動しうる。精神的な能力はここには含まれない。 Tolerance 従業員が特定の作業を「やろうと思えばできるが快適にはできない」状態である。従業員がそれをやるかやらないかは本人が選択する。医師はトレランスについて意見を述べるべきではないと明確にされている。これは医学的科学的に測定・検証されないため、医師間で意見の不一致が生じる主な原因となる。 @Hiroshi_Tsuji https://x.com/Hiroshi_Tsuji 日本型雇用慣行への適用と課題 医師の意見の整理 日本の文脈、特に精神疾患に関する復職判断では、主治医意見がリスク、キャパシティ、トレランスの概念を混在させて述べられていることが多い。精神疾患における「異動が望ましい」や「軽減勤務」といった意見は、多くの場合、本人の「やりたくない」というトレランスの問題である可能性が高い。日本の医師は「全部医者がやってあげようとする」傾向があるが、AMAガイドラインは医学が関与すべき範囲を明確に線引きしている。 メンバーシップ型雇用との不整合 AMAガイドラインは米国におけるジョブ型雇用を前提としている。日本のメンバーシップ型雇用では職務を限定せず、能力不足の場合でも教育研修や異動による支援が当然とされる傾向があるため、キャパシティの評価は「する意味すらあまりない」ことが多い。これは「働く権利」や「雇用した責任」といった日本独特の文化的背景が、労働契約外の支援を企業に要求する原因となっている。 医師の役割の再定義 医師は「単なるアドバイザーに過ぎない」という立ち位置を明確にすべきである。「ドクターストップでできない」という医師の意見が、実際には医学的根拠のないトレランスの問題であるにもかかわらず、本人の意思をすり替えている状況が問題である。産業医は、リスク、キャパシティ、トレランスの概念を主治医に共有し、トレランスの問題については意見を求めず、尊重しない旨を事前に伝えるべきである。これにより、医学的根拠に基づいた意見表明に専念できる環境が整う。 具体的な運用と展望 企業内での合意形成 企業と労使間で、AMAガイドラインの考え方を取り入れ、自社に落とし込んで採用する旨を合意することが重要である。これにより、主治医に対して合理的な根拠を持って復職判断の基準を示すことができる。 教育研修の強化 産業医や医療従事者へのAMAガイドラインの普及、特にリスク・キャパシティ・トレランスの概念の共有が不可欠である。これにより、日本の「過保護的」な健康管理を見直し、より合理的で明確な復職支援体制を構築することを目指す。 メンタルヘルス不調への適用 メンタルヘルス不調においては、リスクもキャパシティも概念として成立しにくく、ほぼトレランスに関する問題だろう。自傷行為のリスクなども、特定の業務に起因するものではなく、治療コントロールの問題として捉えるべきである。 司法への浸透 準備書面などを通じて、裁判官などの司法関係者にもこの概念を広く知ってもらうことで、より公正な判断が期待できるのでは。 編集後記 高尾 お盆休みを利用して、連載原稿のドラフトを複数準備しました。5本目くらいになると、だいぶ内容が希薄になってくるのが自分でもわかります。。。 前園 まさか仏教的な探求を森先生もされているとは思いも寄らなかったです。 「長年連れ添うと夫婦は似てくる」などといいますが、森先生と私もどんどん似てきたということでしょうか。 いやしかし、労務の現場は諸行無常。 メソッドの議論は常に3人、喧々諤々・是々非々でなければなりません。 改めて気を引き締めたいと思います。 森 AMAガイドラインの正式名称を入力すると、なぜかWordPress側でエラーが出てしまい、四苦八苦しました(おそらく、なんらかの不正な攻撃コードと誤解されていた)。
ポッドキャスト「復職名人が読む三手先」第81回では、最近耳にする高尾メソッドの誤用について、その懸念や何を大事にしているのか議論しました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 雑談 高尾 若者向けと高齢者向けとで、病院の対応も分けた方が良いのでは、と思いました。 前園 家族旅行へ行ったところ、アレルギー表示が杜撰なホテルでした。 森 ポッドキャストの配信方法を少し変えました。リンク切等がありましたら、お知らせください。 議論した内容 高尾メソッドの誤用と本質 高尾メソッドが産業医によって誤解され、職場の健康管理における「楽をする」ためのツールとして誤用されている懸念がある。 メソッドの本来の想定ユーザーは法人の人事・総務担当者であり、産業医が主体ではない。 メソッドは思考を整理する軸を提供し、不要な悩みを軽減するが、仕事を安易に片付けるためのものではない。 安易に結論に飛びつくのではなく、原則に立ち返り、現実の状況を考慮しながら頭を使って考えるプロセスが重要である。 メソッドは「考え方」であり、「こうすれば良い」という具体的な手順書ではない。 原理原則と段階的な改善の必要性 職場の健康管理において、「業務的」と「医療的」の区別を理解することが極めて重要である。 労働者の不利益を避けるためには、会社側や関係者全員が痛みや負担を分かち合い、段階的に軌道修正していくプロセスを無視してはならない。 メソッドは、安易な後退や脇道に逸れることを防ぎ、あるべき方向へ進むための指針である。 理論は実践にそのまま適用できるものではなく、現実の多様な条件を考慮し、誤差を減らしていく努力が求められる。 メソッドは、後から学ぶ者がより少ない時間と労力で到達できるよう言語化された経験の集合体である。 「考える」ことの重視 高尾先生の回答は、長時間の議論の背景と思考プロセスを凝縮したものであり、単に結論を暗記するだけでは意味がない。 重要なのは、原理原則に基づいて自ら考え、問題解決のプロセスを実践することである。 「高尾メソッドはメソッドではない」という表現も、考えることの重要性を強調するものである。 ※このShowNoteはNotebooklmを活用して自動生成した要素を含みます。内容は参考情報であり、正式な見解は放送内容をご確認ください。
ポッドキャスト「復職名人が読む三手先」第80回では、産業医科大学の森晃爾先生をゲストに迎え、森先生の産業医としてのキャリアを中心に、産業医業務への考え方などを伺いました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 森先生のご経歴 1960年愛知県生まれ。86年産業医科大学医学部卒業。90年同大学院博士課程修了。 92年エッソ石油の医務部長。2000年エクソンモービル医務産業衛生統括部長。 2003年から産業医科大学産業医実務研修センター所長。 2005年~10年副学長。 現在は産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室教授、福岡県労働衛生指導医。 森の父です。 森晃爾先生の産業医キャリア初期 32歳でエッソ石油(後のエクソンモービル)に専属産業医として入社。きっかけは、産業医科大学初代学長・土屋健三郎先生とエクソンモービルの労働衛生トップであったトム・マクドナー先生との縁である。 当時の企業風潮は若手産業医の現場経験を歓迎し、ガソリンスタンドでの実地作業や地方営業への同行など、幅広い経験を積ませてくれた。 全従業員1200人を対象に、全国の事業所で全員面談を実施し、従業員との信頼関係を築き、現場の課題を深く理解した。 当時の健康増進プログラムは、既存のTHPや人間ドックなどの資源を組み合わせて効果的に実施した。 外資系企業のエクソンモービルはリスク管理に非常に厳格で、問題発生前から多額の費用を投じて訓練を行うなど、日本企業とは異なる文化を持っていた。 産業医の仕事は単なる医療行為に留まらず、企業コンサルティング的な発想が必要だと感じていた。 企業の合併とダイナミックな業務 エクソンモービルの合併時には、早期退職制度の支援や新たなグローバル基準の導入、合併チームの構築など、ダイナミックな業務を経験した。 特に早期退職制度の支援では、従業員の不安解消のための教育を行い、精神的に不安定な状況を抱える社員への対応に尽力した。 合併を機に、それまで潜在していた従業員のメンタルヘルス問題が顕在化するケースを多く経験した。 産業医科大学への帰還と教育への貢献 森先生は大学卒業時には、特にやりたいことがなく、研究室に配属されたことがきっかけで産業医学の道に進んだ。 日常の社会とそこで生きる人々に興味があり、臨床医学ではなく産業医を選択した。 産業医科大学の卒業生として、産業医学の経験を大学に伝え、産業保健の「言語化」の必要性を強く感じ、実務研修センターでその実現に努めた。 ハーバードメソッドのケースメソッドを産業医の教育に導入するなど、実践的な研修プログラムを開発した。 産業医大の産業医養成プログラムについて 高尾メソッドへの評価 高尾メソッドは「冷たい制度」として見られがちだが、「システムとして成り立っている」と評価した。 人事や職場の役割を明確にする汎用性の高い選択肢であり、特に地方自治体など、これまでの健康管理が行き届きにくかった組織に非常にフィットする。 「システムはドライに、運用はウェットに」という原則が高尾メソッドにも当てはまると述べた。 エクソンモービルの「ドライな」リスク管理の考え方や、早期退職における「優しい」退職支援の例を挙げ、高尾メソッドに通じる点があると示唆した。 定年退職後の展望 今年度で定年退職し、今後は「普通の産業医」としての活動(週3日程度)を望んでいる。 加えて、学会活動のコンサルティングや社会貢献、インドネシアの大学での客員教授、健康経営のコンサルティングを計画している。 森産業医事務所、森労働衛生コンサルタント事務所、森健康経営研究所という3つの組織が並列にあるような状態をイメージしている。 若手産業医へのメッセージ 医者であることを忘れず、組織やマネジメントを理解することの重要性 一つの業界や文化、組織を深く理解することが、他の多様な現場を理解する上での基礎になる 組織のトップが抱える孤独さや経営側の視点を理解し共感することが、産業医として深く関わる上で非常に重要。 ※このShowNoteはNotebooklmを活用して自動生成した要素を含みます。内容は参考情報であり、正式な見解は放送内容をご確認ください。
第80回にゲスト出演予定の、産業医科大学教授・森晃爾先生に何を聞くか、先生の著書「企業医務部の挑戦」を読みながら、事前に議論しました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】⁠ 各ホストの近況報告 高尾 中高の同期会計画で、遠方からの参加者への配慮が不足していたことについて反省。 前園 ゲンロン戦記 森 四国カルストへ行きました。 議論した内容 次回ゲスト(産業医科大学 森晃爾先生)への質問項目 森晃爾先生の著作について 『企業医務部の挑戦』 著作の発刊時期(1996年)と、高尾や森先生自身が産業医活動を始めた時期との関連性、当時の産業医活動の情景を知りたい。 産業医科大学と産業保健の歴史 産業医科大学が設立された当初、企業界から見てどのような存在だったのか 森先生が産業医を始めた頃の産業医・産業保健の実態(資格や勉強の有無、活動内容) 専属産業医や嘱託産業医活動の初期イメージと、現在の違いについて 著書にある健康管理活動のレパートリー(アブセンティズム対策、海外巡回健康相談など)が、どのような経緯で生まれたのか(手本があったのか、オリジナルな発想か) 海外の産業保健制度との違いや、米国企業における産業保健の位置づけについて エッソでの経験 森先生がエッソを辞めた後、同社の産業保健体制がどうなったのか 外資系企業におけるリスクマネジメントと、日本法人のコスト意識のバランスについて 産業医科大学の組織と外部からの見え方 産業生態科学研究所や実務研修センターの位置づけ、役割。外部からは理解しにくい部分について 産業医学推進研究会 森先生が産業医科大学に入学し、産業医の道に進んだ経緯 キャリア初期のエピソード 産業保健の変遷と現代的課題 当時の従業員に対する見方(性善説ベース)と、現在の性悪説・性弱説との違い 疾病利得への認識の変化と、当時の状況 安全配慮義務や労働災害に関する司法の動向を、どの程度把握し、どのように位置づけていたのか 安全と衛生の専門性の垣根と、労務管理が健康管理に協力を求めてきた経緯 実践としての産業医学と研究としての産業医学の乖離・連携について 個人的な質問 高尾メソッドや、高尾らの最近の活動に対する森先生の率直な印象 過重労働対策やメンタルヘルス対策を、労務問題と医学的な健康影響評価として大胆に整理することへの意見 10年後、20年後(2035年、2050年)の産業保健の課題や問題意識について 後進の育成について ※このShowNoteはNotebooklmを活用して自動生成した要素を含みます。内容は参考情報であり、正式な見解は放送内容をご確認ください。
合宿2日目の夜に行ったライブ配信の音源を再編集したものです。質問への回答を中心に、踏み込んだ議論をしました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】⁠ 美術鑑賞と芸術の捉え方(雑談) MOA美術館を訪問。高尾先生は和物が多くてつまらなかった。モネなどの印象派作品の見方との比較。 葛飾北斎の絵は余白の取り方が巧み。街並みや船の描写は写実的だが、富士山の描写は写実的ではない。 ゾノ先生は個々の作品より、美術館の空間全体やライティングに注目し、空間設計から学んだ。 西洋美術は文脈(アンチテーゼ)があるのに対し、東洋美術は思いつきの行き当たりばったりな個性派という印象。 芸術鑑賞は脳のシナプスを繋げ、「なんだこれ」という疑問が思考の発達に重要。   議論した内容 会社で働く能力の回復への助言のあり方 産業保健師や会社が、従業員の能力回復を直接助けるという表現は不適切。 能力回復は本人が行う。会社や産業保健は適切なフィードバックやきっかけを提供する役割。 療養専念期から復職準備期、復帰基準に対するフィードバックが重要。 助言で回復に誘う経験は、本人のキャパシティに助けられた偶然(フロック)の可能性がある。ゴルフの例えで説明された。 従業員自身の早く復帰したいという真なる意欲が、能力回復の鍵。 復職準備状況の確認方法(多分働けると思うという連絡に対して) 「多分働けると思う」という曖昧な表現では不十分。会社は具体的な説明を求めるべき。 「主張立証責任」のような裁判用語は避けるべき。従業員が復帰基準を満たすと判断できる材料の提供を会社が求める。 会社は復帰基準を明確に定め、従業員に周知する。 就業制限解除のタイミングとストップ要件の運用 ストップ要件の解除タイミングはあらかじめ決めておくのが基本。ただし、一部の「モンスター社員」には永遠に解除しない態度も必要とされる場合がある。 産業医学的ストップ要件には合理的な期限があるが、上司の判断要件は継続し得る。 「いつまで適用されるか」という問いには、「いつでも適用される」という姿勢がベター。一部従業員によるルール悪用防止のため。 復職準備としてのボランティア活動の評価 ボランティア活動は、「やりたいことをやる」感覚が強く、復職準備に必要な規律性にはそぐわない。 指揮命令下に入らず、対価も発生しないため、労働契約との関係で労務提供義務を果たす準備とは評価しにくい。 企業側は、ボランティア活動を復帰準備として評価することに非常に慎重な態度が適切。 誠実に復帰準備をしている従業員からは、このような報告は来ないことが多い。 健康診断結果が改善しない社員への対応(就業制限・休業検討) 会社が設定したルール(例:3ヶ月で改善傾向がなければ休業検討)は、運用できないなら定めるべきではない。 従業員が休業に抵抗する場合、会社側に賃金請求権の問題が残る。 即座に倒れるリスクがあるごく一部の健康状態(例:血圧の極端な高値、結核疑い)以外は、強制的な休業には慎重な対応が必要。 会社は基準の合理性を明確にし、誰にでも一律に適用できる運用体制を築くのが重要。 産業医は個別の事案ではなく、基準値設定の段階で意見を出すことで、会社の方針に合理性を持たせるべき。 過剰配慮はしないルールへの移行と従業員への伝え方 過去の過剰配慮から過剰配慮はしないルールへの変更は、世間の情勢変化を背景に今が伝える唯一のタイミング。 従業員が完全労務提供できている今のうちに、今後のストップ要件などを明確に伝えるべき。 人事担当者が伝えることに躊躇するなら、動画などを活用した会社のルール客観的周知も有効。 産業医との情報共有のあり方 嘱託産業医との関係は、会社が方針を決定し、産業医がその方針を理解・協力する立場である。 従業員が人事ルートではなく産業医に直接相談を持ちかける場合、情報共有の必要性が発生し得る。 日本の産業医業界は、中央省庁のガイドライン重視からチャレンジ精神に欠ける傾向がある。 労働安全衛生法は、生活習慣病など従業員自身がコントロールすべき健康管理の文脈では時代遅れである。 多害性のあるメンタル不調者への復職対応 同僚や部下への多害行動があった場合、まず懲戒処分を検討すべき。これは疾病の有無に関わらず行う対応。 刑事責任や懲戒免責の対象となる精神疾患は極めて限定的。一般的な精神疾患による多害行動は処分対象となる。 加害者を被害者の部署に戻すのは避け、左遷的な異動を即日行うのが適切。これは復職原則とは独立した問題。 会社が多害行動を放置した場合、被害者のメンタル不調が業務上認定されるリスクがある。 自己申告の血圧記録の信憑性と判断 従業員の自己申告に疑う合理的根拠がある場合、そのまま信用しない。 安易に疑念を抱くのは避け、客観的な根拠に基づいて判断すべき。 自己申告制の就業制限は、初回は自己申告を受け入れ、2年目からは医師による測定を求めるなど、段階的な対応が有効。 ※このShowNoteはNotebooklmを活用して自動生成した要素を含みます。内容は参考情報であり、正式な見解は放送内容をご確認ください。
先日3人が揃った産業医生涯研修会の振り返りを行いました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ ■近況報告 高尾:ノルウェー出張中に舌の痺れと顔の冷感を経験した。帯状疱疹の可能性を自己診断し、ビタミンB12を試したが、容量が少なく効果は限定的であった。具体的な症状として舌の右側の痺れと、顔面神経の上顎枝領域の冷感を挙げ、この症状について医療相談を求めている。 前園:森より先にウイスキー収集を始めたと報告する。ジャパニーズウイスキー(イチローズモルト)やアイラモルト(ラガヴーリン)などを集め、味覚や香りについて学んでいる。 森:大阪万博の「いのちの未来」パビリオンを訪れた経験を共有した。アンドロイドによる案内がスムーズだったことに触れ、AI音声動画による療養説明も、最初に「そういうものだ」と受け入れさせれば違和感なく進むと述べる。 ■議論の概要 精神障害の労災認定基準について(高尾): 令和5年改正のポイントは「カスハラ」と「感染症の危険性」業務の追加である。 長時間労働(月160時間以上または3週120時間)や悲惨な体験は「特別な出来事」として即座に労災認定につながる。 人事異動や昇進など通常の人事権行使も心理的負荷「中」と評価され、時間外労働と組み合わせると労災認定のリスクが高まる点を指摘する。 ハラスメントは身体的攻撃を伴うなど、かなり重大なものしか心理的負荷「中」とされず、世間の感覚と基準にギャップがあると述べる。 労災と安全配慮義務について(前園(ゾノ)): 安全配慮義務は予見可能性と結果回避義務を要件とする。 予見可能性を否定することは難しいため、結果回避義務を尽くすことが重要であり、そのためには労働者を休ませるアプローチが最も確実だと主張する。 医療職が「患者の話を聞くこと」と「必要な情報を収集し判断すること」を区別し、適切に説明を行うことの難しさに言及した。 両立支援について(森): 両立支援が「一人歩き」し、企業が過度に家庭の面倒を見るかのような誤解が生じていると批判する。 両立支援ガイドラインは義務ではないため、企業は残したい人材に手厚く支援し、そうでない人材には不要と明確にすべきだと主張する。 日本の雇用構造では、両立支援が同僚への負担転嫁につながる可能性があり、労働生産性を低下させる要因になりうると指摘する。 「禁止されていないことはやっていいことではない」という、日本人が「自由」を履き違えている現状を問題視する。 安全衛生委員会における産業医の役割について(高尾): 安全衛生委員会の規定や産業医の役割を概説し、メンタル対策や化学物質管理などの役割を期待されていると述べる。 衛生講話をAI音声動画化し、メソッドに準拠した内容を企業に提供することで、自然と企業の健康管理体制を改善できる可能性を示唆した。 事例検討グループワーク(前園(ゾノ)&森): ポッドキャスト第74回で扱った事例をグループワーク形式で実施した。 第74回 事例はパワハラ主張や家族の関与など、多くの要素を含み、現実的な問題提起ができたと評価する。 働く女性の健康管理と生理休暇について(高尾): 生理休暇は歴史的に女性差別的な側面があり、現代ではその役割を終えつつあるという問題意識を提示した。 現代女性の月経回数は大幅に増加しており(昔は50回程度、今は450回)、生理痛は我慢するメリットがなく、治療法も確立されているため、治療を推奨すべきだと主張する。 生理休暇を「なんでも休暇」のような、性別問わず利用できる上位互換の制度に発展させる可能性について議論した。 理屈では可能だが、日本特有の「空気」が改革の障壁になっていると分析する。 このShowNoteはNotebooklmが作成しています。内容についてホストは保証致しません。
先日仙台で行われました、自由集会の反省会を行いました。 自由集会本編 自由集会質疑応答 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ ■近況報告 高尾 アニサキスの保険金が振り込まれました。 前園 急激な気温上昇によりお腹がぐるぐる、ぎゅるぎゅるする体調不良 森 ラガーブーリン16年   ■議論の概要 参加者の約8割が既知のリスナーであったイメージ。 来年も学会会場外での開催を予定しており、学会参加していなくても参加可能である。 名刺交換タイム 懇親会:席が混み合い、移動しにくかったため、多くの人と話せなかった反省がある。 公開収録中に参加者にお酒を飲んで歓談してもらう形式の是非について 高尾の2分制限 質疑応答で質問をぶった切ってしまう傾向について反省   ■来年以降の開催に向けて 総時間は今回同様の3時間程度(収録と休憩含む)が適切である。 参加者同士の交流促進のため、名刺交換タイムやグループワークを意図的に設けることを検討する 質問を考えるグループワーク(10分程度)の導入も検討する。 プロモーション強化として、口コミやフライヤーの配布、他のブースへのチラシ設置が提案された。特にポッドキャストの名刺サイズフライヤーの配布が有効である。 地方での公開収録(出前企画)として、大阪での次回開催前に、佐賀や徳島など他の場所での公開収録と交流会を兼ねたイベントの開催を検討する。
先日仙台で行われました、自由集会の第二部質疑応答セッションの音源を公開します!当日いただいた質問に対して、回答しました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ ■議論の概要 産業医の中立性と独立性|弁護士が代理人や顧問として中立ではないことと比較し、産業医は労働者個人と会社の間で中立が求められるわけではない、との見解が出ている。むしろ、労働者集団の健康管理においては中立でなければならない。独立性については、経済的独立性が確保されていないと担保が難しいとの意見があった。企業が費用を負担する第三者委員会も、その中立性には微妙な側面がある。 産業医が一人で中立・独立の立場を取る危険性|産業医は労働者の代弁者でも会社の代弁者でもなく、企業の意向を理解しつつも目の前の労働者に厳しいことを言わなければならない場合に悩むのは当然である。中立性と独立性を守るには、契約破棄も辞さない態度が必要になる場合がある。大学にいることのメリットとして、中立性・独立性を意識して活動できることが挙げられた。 メンタル不調者への対応|個人と集団というキーワードが重要である。個人に対しては、労働契約を満たして就業再開する意思があるなら止めないというスタンスも中立性・独立性の一環になりうる。しかし、科学物質管理などの場面では、産業医学的見地から企業の利益を損なう勧告も必要となり、労働者集団に対する中立性が求められる。 病識が欠如している職員への対応|就業規則に受診を命じる条文を追加することも可能だが、それだけでは不十分である。命令の合理性が必要であり、また命令しても本人の希望に沿った診断書が出てくるなど、問題が解決しないケースもある。重要なのは、病気の有無ではなく、勤務からの逸脱に焦点を当てた指導を行い、その結果として懲戒処分か療養かという選択肢を本人や家族に示すことである。家族の理解と協力が鍵となる。 就業規則の作成|かえって会社を縛り、柔軟な対応を難しくする可能性が指摘された。復帰基準などを作り込むと、その通りにやらなければならなくなり、運用が複雑になることがある。ハラスメントの懸念を払拭するには、事前に書面を作成し、それを読み上げる準備をすることが推奨された。 シナリオを用いたコミュニケーション|相手の思うことを先んじて「決めつけているわけではない」と伝えるなど、丁寧にシナリオを作成することで、円滑な受診勧奨が可能になる。 休復職を繰り返す50代男性へのキーパーソン対応|家族の同席を強く推奨するが、身寄りがない場合は、親戚、友人、会社の先輩、労働組合委員長なども選択肢になりうる。個人情報保護の観点から、本人の同意が取れない場合でも、自傷他害の恐れがあれば例外規定を適用し、連絡を取るべきである。緊急連絡先の毎年更新も推奨された。前の配偶者や子供、叔父などがキーパーソンになる可能性も言及された。会社としては採用時に緊急連絡先を取得するが、プライバシーに属する離婚などの情報は積極的に把握できないため、防災訓練などの機会に緊急連絡先の確認・更新を行うことが有効である。 メソッド導入に伴う人事負担の増加|「今まで労務管理をサボっていた人事」にとっては当然の負担であり、不健康な状態を是正する過程だと説明された。シナリオ作成は保健師が担い、人事は確認するだけで済むケースもある。メソッド導入で再休職が減り、現場の生産性が向上するなど、見合うだけのメリットがある。ルールを定める手間はかかるが、運用例を流用することで作業化が可能となり、結果的に人事の担当者個人の負担を軽減し、業務を分担できる。 メソッド導入の効果(肌感覚)|再休職事例の確実な減少、難渋事例(口答え事例)のほぼゼロ化が挙げられた。職員への教育が行き届くようになり、産業医への問い合わせや主治医の診断書への不安が減る。業務マネジメントとしての復職・休職対応が可能になり、作業化によって精神的負担も分かち合えるようになる。 休職期間の延長や休職人数の増加への懸念|メソッド導入当初は伸びる要素があるが、これは手順に慣れていないためであり、慣れれば計画的に短期で復職に導ける。早期の療養導入を徹底すれば、結果的に休職期間は短縮され、人数も減る可能性がある。これまで療養期間が短すぎたのであれば、伸びるのが本来あるべき姿である。 週1報告の受領書における振り返り|再発防止を考えるのではなく、以前よりもしっかりと復帰準備をしてもらうことが重要である。メンタルダウンの再発防止は主治医に任せるべきであり、企業側が求めるのは「仕事の行き詰まりに関する振り返り」に限定すべきである。復帰準備で何をさせるかは本人に考えさせ、会社側は必要な修正を加える。 休職期間中の振り返りによる悪化|療養専念期と復帰準備期を明確に分けることで回避できる。療養専念期には生活リズムを整えることに専念させ、復帰準備期になってから仕事上の対策を考えさせるべきである。 受診指示に応じない社員への対応|安易な配置転換は「いじめ」や「ハラスメント」になりうるため避けるべきである。重要なのは、受診の可否ではなく、勤務上の問題(事例性)を指摘し、改善を求めることである。改善しない場合は懲戒処分も視野に入れつつ、本人や家族と粘り強く交渉する。無理やり休ませる措置ではなく、療養勧奨として強く促すスタンスが示された。 従業員の借金の有無確認|純然たるプライバシーであり、会社が安易に介入すべきではない。金銭問題が復職理由であっても、復帰基準を満たさない限り復職は認められない。金銭問題は療養中に解決しておくべき課題である。 休職中の寮からの退去および引っ越し費用|メソッドでは寮での療養は原則として防ぎ、実家への帰省を促すが、引っ越し費用まで企業が負担することはない。復職が決まった後にアパートを借りるなど、生活環境を整えることも復帰準備の一環である。 会社側の弁護士に期待する役割|面接シナリオや説明文書のリーガルチェック、ハラスメントにならない表現への助言である。弁護士は保守的な文書作成が得意であり、コンサルティング的な役割が期待される。産業保健法学会における弁護士の認知度はまだ低いが、今後ニーズの高まりとともに変化する可能性がある。 ライン作業者がしゃがみ込むケース|貧血の診断があっても、業務上の支障があるかどうかが重要である。単にしゃがみ込むこと自体が問題なのであれば、「しゃがみ込むな」と指示し、安全上の問題点を説明して改善を求める。受診勧奨に応じなくても、業務上の問題が改善しない場合は、会社として対応する必要がある。 「仕事が要因で病状が悪化したため、同じ仕事に戻れば再発する」という主治医の意見|療養開始時にこの意見を想定した説明を組み込むことが有効である。アスリートの例を参考に、仕事が要因であれば、今度は仕事が要因とならないよう準備する必要があることを強調する。人間は変化に適応できる生物であるという視点も有用である。 メソッド導入への会社の反発|上司が人材育成を普段から行っていると「思っている」にもかかわらず生じることがある。実際には人材育成や労務管理ができていないケースが多く、その不健全な状態をメソッド導入によって是正することへの抵抗がある。また、これまでの「魚を与えていた」関係から「魚の取り方を教える」関係への転換には、会社側の信頼関係や覚悟が求められる。 このShowNoteはNotebooklmが作成しています。内容についてホストは保証致しません。
先日仙台で行われました、自由集会の第一部「公開収録セッション」の音源を公開します!高尾メソッドをめぐる様々な意見をテーマに議論しました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ ■業務遂行能力の波に対する猶予 高尾メソッドは、契約上の宣言に基づき業務遂行能力の波を許容するが、長期間の不調は容認しない。 日本の低い労働生産性がさらに下がることは問題である。 復職には「復帰準備完了シート」で「ちゃんと全部やります」と宣言することが重要だ。 休職からの回復猶予は非常に重視するが、就業しながらの回復猶予は待たない。 「労務基準」や「労働契約」の遵守、つまり本人が「やる」と宣言する意思に重きを置く。 ■高尾メソッドのエビデンス 単純な前後比較データは存在するが、中立性の確保は難しい。 「RCT(ランダム化比較試験)」のような厳密なエビデンスは、倫理的・現実的に不可能だ。 そのため、過去との比較などの「観察研究」に頼らざるを得ず、徐々に積み上げていく必要がある。 企業への説得材料としてエビデンスが求められることに対し、「騙されたと思ってやってみて。やればわかるから」というスタンスだ。 ■健康管理の整理 重要なのは、医療的健康管理と業務的健康管理の役割分担と使い分けであり、医療的健康管理が業務を侵害しないよう線引きすることだ。 産業保健の役割は、個人への医療的健康管理だけでなく、集団をイメージした「業務的健康管理」において期待できる部分がある。 医療的アプローチは本人の同意という任意性が必須であり、強制されると医療からも脱線する。 当事者意識が失われ、問題が複雑化する傾向がある。 特定の「ややこしい事例」だけでなく、どの事例に対しても淡々と一貫した手続きを行うことが、自然な証拠形成につながる。 緊急の産業医面談は不要な場合が多く、上司や同僚からの「労務情報」(仕事ができていないこと)が重要だ。 本人が自分の問題について何が議論されているのかをよく理解することが重要だ。 ■法律と実務のギャップ メソッドは、「適正に見分ける」という発想で運用しているわけではない。 入社時の初心を忘れず、誠実に労働契約を果たす意思があるかを確認するものであり、一方的に約束を破り、仕事を選り好みする人に対しては「仕事がない」と伝えるのだ。 「スムーズに退出してもらう」のではなく、「相当いつまででもちゃんとやってください」と伝え続け、それでも無理な人が結果的にドロップする形だ。 メソッドは「復職名人」であり、会社が厳しいと思われがちだが、本人がやる気があれば休職期間満了後でも現職復職を推奨する。 中小企業向けの弁護士が、メソッドを「有用な辞めさせる方法」と誤解して適用する「もらい事故」の可能性がある。 法人として導入の過程で労使間の議論を経て行うべきものだ。 ■配慮について 「配慮は限定的に行う」という原則は、社員が「全部できる」という前提に基づいている。 能力を見極めるとは得意な点を見つけることであり、「できない部分を容認する」という意味ではない。 「適正配置」は人事的な適材適所であり、病気に対する「配慮」として行うべきではない。 障害者の「合理的配慮」も、「元の労働契約に沿った労務提供をするための配慮」であれば問題ない。 高尾メソッドは基本的に「無限定正社員」が元の労働契約に立ち返ることを重視する。 社員が「自分の不利益は嫌です」と主張し、医療者の介入により「不利益のない選択肢はないのか」となるのは、「労働者としての誠実性」に欠ける。   このShowNoteはNotebooklmが作成しています。内容についてホストは保証致しません。
合宿で収録した音源の5本目です。今回はケースへの議論を通して、弁護士の対応アプローチについて深掘りしました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠   ■議論した内容 産業保健における社員の問題行動への注意指導とハラスメントリスクへの備えについて議論した。弁護士による相談事例の傾向から、ハラスメントと指導の区別、パワハラにならない指導方法が大きなテーマとなっていることを確認した。 弁護士の助言は、裁判で負けないための保守的な観点が強く、現場での問題解決とは異なる側面があると感じた。特に、同じ指導を繰り返しても改善しない人への対応策が不明確である点が挙げられる。 指導の記録を残すことや書面で指導することの重要性が、弁護士の助言にも見られる共通点である。しかし、弁護士は個別の書面指導に留まり、包括的な「シナリオ」や「パッケージ」としての指導方法は提供していない傾向にある。 弁護士の助言が現場でうまく機能しないのは、フィードバックの機会が少ないこと、そして詳細なシナリオ作成にかかる報酬の問題があるためではないかという考察があった。 我々の「シナリオ」や「説明動画」といったアプローチは、弁護士の助言から一歩進んだ標準化された対応を目指している。これは個別の問題解決だけでなく、企業全体の仕組みとして導入することを意図している。 弁護士が訴訟を見据えた助言をすることで、かえって紛争を避けられない状況を生み出す可能性があるという指摘があった。目の前の問題解決ではなく、「裁判になった時にどうするか」という視点が、かえってトラブルを助長するかもしれない。 我々の「シナリオ」は、読む人と書く人を分けることで、指導のニュアンスを排除し、一貫性のあるメッセージを伝えることを目指している。これにより、従業員が会社側の意図を正確に理解し、逸脱行動を抑制する効果が期待できる。 「通常勤務ができること」を最終ゴールとし、従業員に改善を促すことが重要であると強調した。決して解雇や懲戒を目的とせず、あくまで労務提供義務を果たす意思と行動を示すことを求める。 ハラスメント対応においては、被害者の「処罰感情」は、加害者の処分決定において最重要ではないことを明確に伝える必要がある。処分は会社の秩序維持のために行われるものであり、被害者の感情に直接応えるものではないことを理解させるべきだ。 コミュニケーションにおいて、一度や二度の説明で全てが伝わるという「甘い期待」は避けるべきだ。一貫した、丁寧な、そして繰り返し行われるコミュニケーションが、関係者間の共通認識を築く上で不可欠である。 弁護士が提供する助言と異なり、我々のシナリオは再現性が高く、誰にでも適用可能である。多くの場合、問題が解決に向かうが、それでも行動を修正できないケースは、例外として割り切るべきだと述べた。
合宿の夜に行ったライブ配信の音源を再編集したものです。質問への回答を中心に、踏み込んだ議論をしました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠   ■議論した内容 長期休職者の対応(膠着ケース)について 休職者への対応は個別ケースでなく、定型化された対応を定期的に行うことが重要だ。 休職期間満了前に、復職ステップやスケジュールを事前に伝え、定期的に進捗を確認すべきだ。 対応は保健師ではなく、会社(人事・総務)が事務的な説明として行う方が、事態が動きやすい。保健師は、人事が活動できるよう、同席やサポートを後押しする役割を担う。 放置すると長期化する可能性が高い。定期的な面接や説明の繰り返し自体が、本人の復職モチベーションにつながることがある。 紛争予防のためにも、最終的に休職満了による退職に至る場合でも、会社が本人と会ってコミュニケーションをとっておくことが重要だ。 「上司が怖い」を理由に休職中の社員への対応について 基本的には、会社として復帰基準を粛々と伝え続けることが重要だ。 「上司の問題」と「本人の復職準備の責任」を切り離して考えるべきだ。具体的なハラスメント行為の申し立てがない限り、会社はその主張をそのまま受け入れず、本人には復職準備に集中するよう求める。 「怖い」が具体的にどういう意味か詳細を確認し、具体的な指摘があれば上司にフィードバックを行うことは可能だ。 「多責思考」の従業員には、「自分ごと」として復職準備に向き合ってもらうための働きかけ(フィードバック)が必要だ。 面談時には、リーガルチェック済みの「面接シナリオ」などを活用し、人事担当者が淡々と読み上げることが推奨される。産業保健職はその作成支援やデモンストレーションを行う。 身体疾患(がんなど)による休職者の復職基準について 原則として、メンタルヘルス不調の場合と同様の復職基準を適用すべきだ。 会社側や保健師が「この人はできないだろう」と先回りして決めつけ、安易に復職基準を下げたり、職務限定を設けたりすることは避けるべきだ。 復職可否の判断は、本人が「やれと言われればやります」と答えるかどうかに尽きる。本人の意欲と意思を尊重し、会社が求める職務遂行性を確認する姿勢が大切だ。 万一、復職後に問題が発生した場合は「ストップ要件」を設けて対応することで、安易に復職基準を下げることを避けるべきだ。 復職基準の運用は、保健師の個人的な判断で行うべきではない。基準は会社が定めるべきものであり、個人の判断で操作するとトラブルの原因となる。 白衣高血圧と就業制限について 会社が定めた就業制限基準がある場合、診断書の内容に関わらず、その基準を原則として適用すべきだ。 「本人が納得するかどうか」は、会社のルール適用において必須ではない。会社は説明責任を果たすが、説得を目標とすべきではない。 「白衣高血圧」が将来の高血圧を予測する因子であるという医学的根拠を踏まえれば、就業制限の合理性は十分に主張可能だ。 診断書の提出時期についても、「後出しは認めない」など、手続き上のルールを明確にし、厳守させるべきだ。 就業制限基準は、会社が一方的に定めても問題ないが、その内容が医学的に妥当であり、人事・総務が主体となって運用されるべきだ。 傷病休職と育児休業の同時期復帰について 多くのケースでは育児休業の方が期間が長く、傷病休職が育児休業中に終了することを前提に検討される。 傷病休職が育児休業突入の満了に近いタイミングで終了する場合、「3ヶ月の特別延長」パターンが推奨される。これは、傷病休職と育児休業を同時に進め、育児休業からの復帰タイミングに合わせて傷病休職からの復帰判断も行うというものだ。 最終的には、通常勤務ができる状態であることを確認することが目標となる。 産業保健師に期待される役割について 産業保健師は、純粋な医療的健康管理サービスを提供しつつも、その範囲を超えないよう自制すべきだ。 一方で、業務的健康管理の推進においては、医療的知見を持つ専門家として、人事や上司が抱く不安(職場での事故など)を取り除き、思考停止状態を解除する役割が期待される。 「人は簡単には死なない」という事実を伝えることで、人事が過度に保守的にならず、適切な業務命令を躊躇しないよう後押しする重要な役割がある。 「対集団」へのアプローチが期待される。会社全体の休職制度や健康管理の方針について、専門家として意見を述べ、適切な方向へ導くべきだ。 人事が産業保健職に業務を「丸投げ」しようとする場合、それを引き受けるのではなく、人事を主役に据える姿勢が重要だ。 従業員が明らかに休職が必要な状態になった際、人事が止められない場合の「ストッパー」としての役割も期待される。早期介入で最悪の事態(懲戒解雇など)を防ぐことに貢献する。 日本の産業保健は法的な縛りが少ないため、企業の期待と従業員のための活動を両立させるため、「5度ずつ曲げるように」少しずつ業務的健康管理の方向へ導く役割が求められる。 概要はNotebookLMで作成しています。不正確な場合がありますが、ご了承ください。
合宿で収録した音源の4本目です。今回は受領書によるフィードバックについて、議論を深めました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠   ■議論した内容 特に、週1報告とそれに対する受領書でのフィードバックが非常に重要であるという認識を共有しました。こじれた事例ほどその活用が求められます。 週1報告と受領書のやり取りは、脈々と続く対応の中で確立されるべき本体部分であり、単なる盤面切り取りの対応ではないと強調されています。 受領書フィードバックの真髄は、単に報告を受けたという意味ではなく、週1報告に含まれる「ダメ出しが必要な記述」に対して、エレガントな言葉で適切にフィードバックし、軌道修正を促すことにあります。 これまでの復職支援が単なる通勤訓練などに留まり、本質的な部分(本人が自身の言動の問題点に気づくこと)にリーチできていなかった点を指摘しています。 本人がやりたいようにやってしまっている事例の軌道修正には時間と手間がかかりますが、文書でのフィードバックが有効です。 文書でのフィードバックは、お互いに必要以上に感情的にならないという利点があります。 「常識がない」と嘆くのではなく、会社側が適切なフィードバックを通じて「会社としてやってはいけないこと」を教えてこなかった責任があるという視点も提示されました。 受領書でのフィードバックは「正論」を返すものであり、相手が理解するまでやり続ける姿勢が必要です。 このフィードバックは会社(法人)からのメッセージであり、特定の個人だけでなく、今後のやり取りにも使える標準化されたものであるべきだと考えられています。 受領書を使うような企業では、ブラック企業のように即座に解雇するのではなく、フィードバックを行うこと自体が、ある種の「幸せ」であるとも言えます。 週1回の頻度は、毎日では負担が大きく、月1回では忘れがちになる中で、適切であると考えられます。 療養専念期においては、基本的に「受領しました」という返事のみで、フィードバックは行いません。 復帰準備期におけるフィードバックは特に重要であり、療養専念期には触れなかった本人の課題やネックとなっていた部分(本人にとっての「傷口」)に、あえて触れて向き合わせることが必要です。 復職して業務が始まってからでは、時間的・精神的な余裕がなく、こうした根本的な問題に向き合う機会がないため、復帰準備期にこそ直面させるべきです。 療養中に本人の苦手な部分と向き合い、一時的に悪化しても、それは回復を待てる状態だからこそできることです。 担当者によって対応がブレないよう、社内での共通理解や運用ルール(型)が必要です。 このフィードバックは過渡期には非常に重要ですが、本人が復帰基準を理解し、適切に対応できるようになれば、安定期には不要になっていく可能性もあります。 報告内容によっては、療養専念期など早い時期に厳しいフィードバックが必要になるケースもありますが、通常は本人の報告内容がフィードバックを導くと考えられます。 フィードバックの核心は、不適切だが看過できない報告内容に対して、エレガントな言葉で正面から指摘することです。 文書で報告させることで、本人の考えや理解のレベル、問題点が可視化されるという利点があります。 不適切な報告を受け取った際に、何も返さずに黙認すると、それが会社として許容されたと捉えられかねないリスクがあります。パワハラと捉えられかねない記述に対しても、適切に触れる必要があります。 文書でやり取りすることの重要性は、記録に残る、リスク回避になるという点でも感じられます。 上司による労務管理においては「勤務態度が不真面目」といった評価になりがちですが、フィードバックにおいては、評価ではなく「具体的な事実」に基づいて指摘することが重要です。 サポート窓口方式(複数名で確認し、法人メッセージとして伝える)は、個人の負担を軽減し、客観性を保つ上で有効です。 療養開始前の問題を適切に把握し、文章として記録・共有しておくことが、療養中のフィードバックの前提となります。 「良いフィードバック(ポジティブフィードバック)」については、休職中の労働者の状況(ゼロより下の状態)や、調子に乗ってしまうリスクを考えると、非常に難しいという見解が示されました。特に保健師案ではポジティブフィードバックが多くなりがちですが、注意が必要です。 労務管理においては「本来あるべき水準」をベンチマークとするのに対し、医療職は「療養開始前からの回復度」を時系列で見て評価する傾向があり、視点の違いを理解する必要があります。 フィードバックの「型」を作成したり、事例を蓄積したりすることの重要性が議論されました。AIによる作文支援や、フィードバック事例集の書籍化といったアイデアも出ました。 フィードバックの事業所案作成は、業務内容に関わるため、まずは人事担当者が主体となって行うのが妥当ではないかという意見も述べられました。 パワハラにならない指導表現に困るケースが多く、フィードバック集にはニーズがあると考えられます。 週1報告の基本的なパターンは決まっており、「この部分がまだ足りません」というフィードバックを基本とすることで対応できることが多いです。 「もっと具体的に報告してください」「もっと実践に向けて考えてください」といったフィードバックを通じて、本人の具体的な考えや実践性を引き出すことが重要です。 カウンセラーの中にはポジティブな話を通じてネガティブな話を効果的に伝えるという考え方もあるが、それは個人間の信頼関係があって成り立つものであり、法人とのやり取りとは性質が異なる可能性が示唆されました。 NotebookLM は不正確な場合があります。回答は再確認してください。
合宿で収録した音源の3本目です。今回は事例を題材とした弁護士の視点について、議論を深めました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠   ■議論した内容 事例:新卒・試用期間中の従業員がミスを連発し、勤怠も乱れて休職状態となり、主治医から「在宅勤務なら復職可」の診断書が出たケース 会社が産業医面談を求めたところ、産業医からは「主治医の意見を踏まえると復職不可とは言えないが、会社で最終的に決めてほしい」という意見が出た。 このような事例に対し、弁護士間での議論では、産業医の意見が曖昧であることや、それに対する弁護士の期待(「もう一歩踏み込んで復職不可と言ってほしい」という期待)が語られている。 産業医の意見が「会社で判断してほしい」というものであることに対し、産業医としては悪くないベターな対応だが、その意見の裏にある産業医の読み(結局復職させるだろうという見通し)や、会社が辞めさせるつもりであるならば、その意見は「辞めさせてもいいと言っているに等しい」と解釈されうる危険性が指摘された。 弁護士がこのようなケースで産業医に意見を求めることの是非が議論された。 弁護士の助言が「裁判の勝ち負け」を土俵として見ているため、解雇や退職後の紛争を想定し、証拠として信用性の高い産業医意見を得ようとする傾向がある。 主治医の「在宅勤務なら復職可」という意見について、本来の労働契約における労務提供はできないと解釈できるにも関わらず、医師に直接言わせないと判断しない思考停止の状態になっている 適切な対応としては、医者をあちこち引っ張り出す前に、会社が本人に直接、労働契約に沿った業務遂行が可能か確認するべきであり、必要であれば本人に主治医に確認してもらうように促すべきでは。 主治医や産業医に意見を求める際の質問の仕方について、オープンクエスチョンではなく、医学的根拠の有無など質問を明確にして尋ねるべき 親や家族を関与させるかについても議論され、弁護士は揉め事や個人情報保護の観点から消極的になりがちだが、早期に、かつ会社側から積極的に関与を求めることで、紛争化した場合でも会社側のプロセスへの理解を得やすくなるなどのメリットがある 試し出勤(出社テスト)について 弁護士の助言が曖昧で決定打に欠ける理由:最終的な裁量権が会社にあること、紛争化後(末路)の対応に特化していること、多様なケースの積み上げ経験が不足していること、クライアント(会社人事総務)の「やめさせたい」という本音を前提としていること 会社の人事総務側の問題点:時間切れに弱いこと、決断力がないこと、裁判を恐れるあまり不適切な対応をしてしまうこと、労務管理の問題を病気の問題にすり替えてしまう傾向があること 弁護士と産業医/顧問医のスタンスの違いとして、弁護士が短期決戦や紛争化後のリスク回避を重視しがちなのに対し、顧問医的な立場では長期戦や紛争にならないための早期対応(予防法務)を重視する傾向があるのでは 問題がこじれる根源的な理由として、会社の人事総務が頼りないこと、問題発生の初期段階で適切な対応ができていないこと(後手後手であること)が最も問題である
合宿で収録した音源の2本目です。今回は主治医産業医の一人二役の問題について深めました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ ■主治医産業医の一人二役とは? 文字通り、臨床医である産業医が、自身の担当する会社の従業員を自院に誘導したり、主治医として診察したりすること。 臨床医ベースの産業医における、患者獲得目的や純粋な親切心から生じる関わり。 かつては工場内診療所などで見られた形態だが、近年は企業内診療所は閉鎖傾向にある。 通常、主治医の役割がドミナントになりやすい構造。   ■第一段階の問題:利益相反 主治医は患者の利益を100%追求する一方、産業医は会社の利益(事業者の利好保持、労働者と事業者の公平)のために業務を行うため、立場の対立(利益相反)が生じる可能性がある。 復職支援など、一見利益が一致する場面もあるが、労働者からの特別な配慮希望などが入ると対立が表面化する。 これは弁護士の双方代理禁止の概念に近く、産業医が本人の要望を会社に伝える際に「代理人活動」に近づき、利益相反が顕在化しうる。 弁護士は利益相反の可能性があれば同意を取り、生じたら辞任する。主治医産業医も同様に、コンフリクトの可能性を契約時に明示し、生じた場合の対応(例:主治医を辞める)を決めておくべき。 真っ当な産業医は、最初から他の医師に主治医を依頼することが多い。 地域に他の医師がいない場合など、やむを得ず兼務する場合は、産業医としての役割を医療的な健康管理に限定せざるを得なくなる可能性も。   ■第二段階の問題:産業医活動中の暗黙の期待と契約関係 通常の産業医活動(面談など)においても、従業員側に「暗黙の医療契約」やそれに類する期待・誤解が生じているのではないかという問題。 産業医としての面談だが、従業員との間に個別の契約関係はないとされるにも関わらず、「ここだけの話」として会社に伝えない情報が発生し、特定の社会的関係が生じる。 産業医が従業員から会社にとって必要な情報を知りながら、必要な措置を会社に意見しないことによる事業者リスクの問題。 特に、従業員から自殺を示唆するような情報などを「会社に言わないで」と言われた場合の対応など、緊急例外的な場合の線引きが難しい。 産業医が情報を知っていることは事業者が知っていることとイコールと見なされ、訴訟リスクにつながりうる。 社内でダブルスタンダードが生じる可能性(例:社内基準と健康相談で得た情報に基づく個別判断の違い)。これは統括産業医や事業者視点では問題。   ■第三段階の問題:法令間の矛盾とリスク ストレスチェックの実施者と産業医の兼務の問題。実施者として高ストレス者を知っても、本人が面接指導を申し込まなければ中途半端な状態になる。 労働安全衛生法における健康診断結果の取り扱いと個人情報保護法のギャップ。安衛法で事業者が結果を知ることが定められていても、本人の同意なく機微情報を知ることは問題視されうる。 安衛法の「親代わりの健康管理」という前近代的な構図と、個人情報保護法の進んだ制度(EUベース)との間の矛盾。 これらの法令間の矛盾が、労働者と事業者の認識相違から紛争に発展するリスクがある。 例えば、検診結果に基づく就業制限が原因で従業員が不利益を被った場合、就業制限措置の違法性や産業医への不法行為訴訟につながる可能性。特に、法定項目だけでなく、法定外項目も一緒に取り扱っている場合、同意の有効性などがさらに問題になる可能性がある。 安全衛生に関する立法と個人情報保護に関する立法は相性が悪いため、今後も矛盾が表面化する可能性がある。 検診結果の生データなど、実務産業医が知る必要のない情報は切り分けるなど、情報の取り扱いに細心の注意が必要。 保健師も同様に、従業員からの秘密保持への期待と人事との情報共有の間で板挟みになるリスクがある。法的位置づけの不明確さからトラブルになりやすい面も。   ■結論として 主治医産業医の一人二役は、さまざまなリスクをはらんでおり、時代的にも許容されなくなりつつある危うい状況。 複数の法令が絡み合い、矛盾も生じているため、関係者は自身が「危ない橋を渡っている」という自覚を持つ必要がある。 働き方改革による産業保健機能強化は、実態として責任増強になっている面も。 情報の適切な取り扱いと、自身の業務範囲の明確化が、今後ますます重要になる。
合宿で収録した音源の1本目です。今回は産業保健職の役割について掘り下げました。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠   ■議論の概要 医療職、特に産業保健職は従業員との対話を重視する傾向があるが、その中で本来話し合うべきではないテーマ(主に労働条件や配置転換などに関する従業員の希望)を取り上げてしまうことがある。 社長や経営者には従業員の希望を聞いて実現したり、配置転換を命じたりする権限がある。しかし、産業医や産業保健職にはそのような権限がない。 産業保健職が権限なく従業員の希望を聞くことは、叶えられない期待(誤解に基づく期待)を与えてしまう可能性がある。これは、医療契約のように「あなたの望みを叶えるために努力します」と約束しているかのように聞こえてしまうため問題となる。 医療職は情報が多いほど良いと考えがちで、意図せずとも希望を聞き出してしまう傾向がある。従業員側も、産業保健職になら話しやすい、希望が叶うかもしれないという期待を抱きやすい。 多くのこじれた事例の根源には、本来話し合うべきでないテーマを話し合い、従業員に誤解や過度な期待を与えてしまうことがある。従業員が自分の希望を検討に値する内容だと「昇格」させてしまう側面もある。 産業保健職が話を聞く場面の役割や位置づけが不明確であることが、この問題の一因である。会社側が役割や制約を明確に示せていない(いわゆる丸投げ)ことも問題。 臨床医療と産業保健の立場の違い: 臨床医療は「ネガティブリスト」的:患者のためにほとんど何でもやってよく、やってはいけないことが限定されている。 産業保健は「ポジティブリスト」的:職場において、やっていいことが極めて限られている。労働者と会社の間の約束の範囲内で、元に戻す手伝いをするのが基本であり、労働条件への口出しはできない。 労働者と使用者の二者間の問題を、産業保健職が代行して解決しようとしてはならない。特に、本人に代わって上司、同僚、人事に話をするのは問題となる場合がある。 臨床経験のある医療職が産業保健の仕事にそのまま向いているかには疑問符がつく。人の役に立ちたいというモチベーションが、会社の役に立つことではなく従業員の役に立つこと(希望を叶えること)に向かいやすいため。 議論の結論として見えてきた産業保健職の重要な役割: メンタル不調者対応などにおいて、早期に休ませる(療養勧奨)ことが重要な役割の一つとなりうる。 専門知識に基づき、早期療養の重要性や予後について説明し、従業員の休職に対する抵抗感を払拭する手助けをすることが期待される。 日本には休みたがらない、休めない文化があり、休職に対するネガティブな固定観念(退職へのステップなど)が根強い。休職者数、復帰率、再休職率などの透明性のあるデータを社内で提示することが、不安軽減につながる可能性がある。 会社側の役割として: 産業保健職への万能感や幻想を捨て、自社の産業保健活動の役割や枠組みを明確にすることが必要。労働者と会社の二者間で話し合うべき問題を明確にする。 産業保健活動においては、個人のスキルに頼るのではなく、平均的に効果が出せる仕組みを導入することが重要。 会社から指示された通りにまずはやってみて、うまくいかなかった経験から学ぶことも重要である。 本テーマについて産業看護職・保健師の方からの意見交換を歓迎。 (NotebookLMで作成したもので、内容の正確性は保証しません)
今回は、2つのテーマについて取り上げました。 【自由集会開催のお知らせ】 今年も自由集会を開催いたします。 日時 令和7年5月16日(金)13時〜17時 場所 仙都会館8階会議室(宮城県仙台市青葉区中央2ー2ー10) 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠   ■雑談 高尾 アニサキスになりました 前園 沖縄へ旅行してきました 森 万博に行ってきました   ■会社がどうしたいか、聞く必要はあるのか 人事機能が不十分な会社での対応について、会社の意向を聞くことが産業医の対応を歪めるリスクがあるという考えと、会社の考えを知るための探索的な問いかけとしてはありうるという考えが話されました。 会社が健康管理を「自分ごと」として捉えていない課題や、思考停止している担当者へのアプローチ、会社としての主体性を明確にすることの重要性について話しました。 弁護士の立場から、依頼者(法人)の意向を受けて法的なリスクを減らすことや、「こうすべき」というコンサル領域の線引きについて話しました。 経験を積む中で自身のスタンスを確立することや、産業医のクライアントを多角的に捉える視点についても話しました。   ■AI音声の活用の可能性 最新のAI音声が非常に自然になっていることに触れ、労働者の健康管理分野での活用について話しました。 特に休職者への療養開始説明動画のナレーションでの活用に注目し、感情を排除したニュートラルな情報提供や、アップデートの容易さといったメリットについて話しました。 汎用的な動画教材や、会社ごとのカスタマイズ、各種研修・説明資料(復帰準備、Eラーニングなど)への活用についてもアイデアが出ました。 講演やセミナーにおいて、総論部分を事前学習用動画として提供し、当日の時間を質疑応答などに使う効率的な形式が考えられると話しました。 対面での講演とAI動画を組み合わせるインタラクティブな形式の可能性や、人間は人間が好きという視点、大学講義の短縮化の現状など、効率的な情報伝達の必要性について話しました。 AIが現実世界の経験に基づいた応用的な質問を生成することにはまだ限界がある点も話しました。 今後、AI音声活用を含めた動画コンテンツを具体的に作成していく意向について話しました。  
今回は、いただいた質問について、労務管理的な視点から回答しました。 【自由集会開催のお知らせ】 今年も自由集会を開催いたします。会議室を別に借りて、時間の縛りなく議論する予定です!ぜひ学会参加予定の方はお時間の確保をお願いいたします。また終了後に、懇親会も開催予定ですので、そちらもぜひご予定を空けておいてください。 日時 令和7年5月16日(金)13時〜17時 場所 仙都会館8階会議室(宮城県仙台市青葉区中央2ー2ー10) 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ ■雑談 高尾:F1のシーズンが始まりました 前園:西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか 森:基礎研の抽選で苦労しました   ■若手従業員の育成に関するお悩み 私が所属しているのは中堅企業の人事部で、各部門のマネージャーと連携しながら人材育成や組織運営を支援しています。現在、ある部門で話題になっているのが、30代前半の中途採用社員Aさんについてです。Aさんは専門性を買われて採用された方で、入社当初から「この人はリーダー候補だ」と大きな期待を受けていました。新規案件や外部連携にも関わらせるなど、成長の機会も意識的に与えてきたようです。しかし、ここ最近、周囲や上司の評価が大きく揺らいでいます。Aさんは与えられた業務を「こなす」ことには問題がないものの、自分から積極的に仕事を取りに行く姿勢がなく、「自分が無理なくできる範囲のことだけを引き受ける」という受け身な働き方にとどまっている印象です。報告もこちらから確認しないと出てこず、プロジェクトの進捗も「誰かが動いてから」「指示があってから」動くような場面が目立ちます。部門長からは、「何か一つでも自分から動く姿を見せてほしい」「前に出て引っ張るような姿勢が見えない」と、主体性の乏しさに強いもどかしさを感じている様子です。さらに、仕事が途中で止まってしまったり、提出物が遅れたりした際には、「家庭の事情で時間が取れず…」「上司が忙しそうだったので相談を控えていました」など、言い訳が先に立つような発言が重なっており、責任感にも疑問符がついてきています。フィードバックに対しても「わかりました」と返事はするのですが、実際に行動が変わらず、“聞いて終わり”“受け流している”ように見えることが多く、上司としては疲弊感を抱えているようです。また、地味な業務やチーム全体の調整といった、いわゆる「雑務」については、「自分の仕事ではない」「他のメンバーがやるべき」といった雰囲気がにじみ出ており、プロ意識やチームの一員としての自己完結力にも不安があります。Aさん自身は、「やるべきことはやっている」「求められれば対応する」という認識のようですが、部門側としては「このままではリーダー層として任せるのは難しい」と、役割や期待値を“絞る”方向での再設計を検討し始めている段階です。このような、“一見問題はないけれど、惜しいまま止まってしまっている若手”に対して、現場マネージャーとしてどのように関わればよいのか、また、期待値の調整や業務の任せ方をどう見極めればいいのか、ぜひアドバイスをいただければ幸いです。 「自分はできている」と思い込んでいる可能性がある。期待される役割と現実とのギャップを明確にフィードバックすることが不可欠 経験の軸とピープル軸 フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 時間的制約などを言い訳にして、フィードバックを正面から受け止めていないのが問題ではないか 「制約によりできない」ことよりも「限られた時間をどう使ったか」を自ら問う視点が重要 「チームへの貢献意識」や「仕事への向き合い方」の欠如も課題。ただこれは、意識転換により改善の可能性あり 上司がリスクを取ってでもフィードバックしていることの重要性と、その働きかけを真摯に受け止める素地の育成 フィードバックは1回で完了しない。継続的な対話と方向性のすり合わせが不可欠 成長とは、無駄に見えることや境界線上の仕事も含めて射程を広く持つことから生まれる フィードバックを「指摘」ではなく「育成のための対話」と捉え、セルフフィードバックを促す仕組みづくりが必要
今回は高尾先生からの持ち寄りテーマについて、議論してみました。 【自由集会開催のお知らせ】 今年も自由集会を開催いたします。会議室を別に借りて、時間の縛りなく議論する予定です!ぜひ学会参加予定の方はお時間の確保をお願いいたします。また終了後に、懇親会も開催予定ですので、そちらもぜひご予定を空けておいてください。 日時 令和7年5月16日(金)13時〜17時 場所 仙都会館8階会議室(宮城県仙台市青葉区中央2ー2ー10) 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 ⁠https://peing.net/ja/takaomethod⁠ 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 ⁠https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ ■雑談 高尾:大相撲を見てきました 前園: 世界標準のフィードバック 森:悠太のアラビアータ   ■「だから産業医面談しなきゃいけない」から「だけど仕事なんだよね」へ 問題がある→だから産業医面談しなきゃいけない→配慮しなきゃいけない 問題がある→まずはフィードバック→仕事なんだよね 産業医が介入すると「配慮」に話が進みがちだが、上司が対応すれば「でも仕事だから」で締められる可能性がある 健康相談と就業措置は明確に分け、前者は医療職に、後者はまず上司に対応させるのが自然な順番 現場の問題を「労務問題」から「医療問題」にすり替える構図が定着しつつある 産業医面談が問題解決の手段ではなく、満足感や責任回避のために使われているケースも 面談の構造化不足や、「問診的」な運用が改善されておらず、情報収集だけで終わってしまっている 医療者の「助けたい」という性質が、組織側の「手放したい」という動機と合致し、安易な引き渡しが起きている 人事や上司が責任を持たず、専門職に丸投げする傾向がある 上司には「指導して改善しなければ法人が対応する」という役割の限界を認識させる必要がある 組織として「できない人」をどう受け止めるかが問われており、医療の力による“免罪符”の時代は終わりつつある 「できていないという事実」とどう向き合うか、そのために必要なのは、まずは率直なフィードバックをはじめとする労務管理である
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