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Author: RKKラジオ

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エンタメ・教育・ITの専門家が気になる話題を徹底解説!!


第1金曜日・・・映画解説・研究者 上妻祥浩さん

第2金曜日・・・ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん

第3金曜日・・・熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗さん

第4・5金曜日・・・元RKKアナウンサー 宮脇利充さん


◆WEB https://rkk.jp/515news/

◆メール 515@rkk.jp


★地上波ではRKKラジオ(熊本)FM91.4    AM1197で、毎週金曜日 午後5時15分から放送中。是非生放送でもお聴きください。

57 Episodes
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🔶 頻発する異常気象、問われる“私たちの備え”今年も日本各地で大雨や台風などの自然災害が相次ぎました。熊本でも8月、そしてわずか1か月後の9月に再び大雨が発生し、各地で被害が報告されました。「もはや“ここでは起きない”という考えは通じません。私たちは自然の恵みと同時に、猛威にも向き合わなければならない時代に生きています」と語るのは、ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんです。🔶 “情報難民”になった朝――突然の落雷被害斉場さんが特に印象的だったと語るのが、9月10日の朝。熊本に線状降水帯が発生し、夜明け前から雷と豪雨に見舞われました。「朝、テレビをつけていたら突然映らなくなったんです。停電ではなく、ケーブルテレビの機器が落雷で壊れてしまっていました。照明も点くし電気も通っているのに、情報だけが途絶えてしまった。まさに“情報難民”状態でした」テレビが見られなくなり、地域の最新情報を得られない不安の中、斉場さんが頼ったのはラジオでした。「こういうときこそ、地元局の放送が命綱になります。RKKラジオでは、通常番組を変更して気象情報を伝えてくれた。そこでようやく“雨はまだ続く、雷も収まらない”という現状を知ることができました」しかし、この経験から痛感したのは「放送局から『危険です』と伝えられたときには、すでに自分の地域は危険な状態にある」という現実でした。🔶 “危険情報”が出る頃には、すでに危険は始まっている災害が発生するスピードが年々早まっています。「近年は、雨が降り始めてから短時間で被害が出るケースが多くなりました。『備える間もなく水が来た』という声をよく耳にします。じわじわと増水するのではなく、短時間で一気に状況が変わる。これが今の災害の特徴です」そのため、斉場さんは「放送が通常編成のうちに動くことが命を守る第一歩」と強調します。「テレビやラジオが『危ないです』と言い始めた時点では、もう逃げ遅れている可能性がある。だからこそ、番組が普通に進行しているうちに、私たちは準備を始めなければいけません」🔶 “君たちはどう備えるか”――3つのヒント斉場さんは、自身の経験をもとに“命を守るための3つの備え”を挙げました。1️⃣ 複数の情報入手手段を持つこと「テレビが壊れても、ラジオがあれば助かる。スマートフォンが充電切れでも、乾電池式ラジオがあれば情報は得られます。携帯の充電をこまめに行うことも大切です」2️⃣ 小さな変化に“早めに気づく”こと「気象情報のコーナーで“少し注意が必要”と伝えられた時点で、自分事として捉えること。『どうせ大したことはない』と流すのではなく、最悪の可能性も考えておく。普段から天気予報やニュースを“ながら聞き”しておくことが大切です」3️⃣ 安心ではなく“不安”を探すこと「人はどうしても“安心したい”と思ってしまいますが、災害時は逆です。『この台風は九州の西を通るから大丈夫』ではなく、『もし進路が変わったら?』と不安要素のほうを意識して行動する。それが命を守る備えにつながります」🔶 “最悪を想定する勇気”が命を守る「安心を探す行動は、人間として自然なことです。でも、災害の前では“最悪のシナリオ”を想定して動く勇気が必要です」と斉場さんは語ります。「いつ起こるかわからないからこそ、今から備えておく。行動を1時間、いや10分でも早くすることで、助かる命があると思っています」まとめ大雨、地震、台風――いつどこで災害が起きてもおかしくない時代。情報を受け身で待つのではなく、自ら取りにいくこと。そして「安心ではなく不安を探す」という意識の転換こそが、これからの私たちに求められている備え方です。「君たちはどう備えるか」その問いは、決して他人事ではありません。🗣️ お話:ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん🎙️ 聞き手:江上浩子(RKK)
🔶 『おーい、応為』(10月17日公開)👉 公式サイトはこちら https://oioui.com/今月最初のおすすめは、浮世絵師・葛飾北斎の娘、葛飾応為(お栄)を描いた作品『おーい、応為』です。主演は長澤まさみさん。父・北斎を演じるのは永瀬正敏さんです。長澤さん演じる応為は、豪快で少し乱暴な言葉遣いながらも、繊細な筆致を持つ絵師。その姿は、芸術家としての葛藤と親子の絆を鮮やかに映し出しています。北斎役の永瀬さんも、重厚かつ人間味あふれる演技で、芸術家親子のせめぎ合いを力強く表現しています。監督は『日日是好日』で知られる大森立嗣さん。人間ドラマを丁寧に描く手腕が、本作でも発揮されています。特徴的なのは、時代劇でありながら西暦表記を用いるなど、一見すると意表を突く演出が盛り込まれている点です。また、劇中で応為が拾ってきた犬が引っ越しの度に荷車に座り続け、少しずつ成長していく姿で年月の流れを表現するなど、細部にまで工夫が光ります。女性浮世絵師として先駆的な存在であった応為の生きざまは、時代を超えて強い共感を呼ぶでしょう。🔶 『盤上の向日葵』(10月31日公開)👉 公式サイトはこちら https://movies.shochiku.co.jp/banjyo-movie/次にご紹介するのは、柚月裕子さん原作のベストセラー小説を映画化した『盤上の向日葵』です。主演は坂口健太郎さん。さらに渡辺謙さん、小日向文世さん、佐々木蔵之介さん、土屋太鳳さんら豪華キャストが出演しています。物語は、身元不明の白骨死体が発見される事件と、天才棋士の波乱の人生が交錯しながら展開します。坂口さん演じる青年棋士は、苦難の中で才能を開花させ、将棋の世界で頂点を目指す姿を見せます。師匠役として、小日向さんが温かく支える存在を、渡辺謙さんが賭け将棋の名人として迫力ある演技を披露。二人の対照的な師弟関係が物語に厚みを与えています。サザンオールスターズによる主題歌「暮れゆく街のふたり」です。映画内で口笛として繰り返し登場し、切なさと哀愁を伴う旋律が物語を彩ります。人間ドラマとしてもミステリーとしても、強く心に残る作品です。🔶 『爆弾』(10月31日公開)👉 公式サイトはこちら https://wwws.warnerbros.co.jp/bakudan-movie/同じく10月31日に公開される『爆弾』は、サスペンス性あふれる一作です。主演は山田裕貴さん。共演に佐藤二朗さん、伊藤沙莉さん、染谷将太さん、渡部篤郎さんらが名を連ねています。物語は、酔っ払いとして取り調べを受けていた男が、突如「これから爆発が起きる」と予言。その言葉通りに連続爆破事件が発生していくという緊迫の展開です。佐藤二朗さんが演じる謎の男は、不気味さと狂気を併せ持ち、物語の中心で強烈な存在感を放ちます。刑事役の渡部篤郎さんは、佐藤さんとの対峙を通じてベテラン俳優としての重みを示しています。原作は呉勝浩さんの小説『爆弾』。江戸川乱歩賞を受賞した傑作ミステリーで、俳優陣も「原作の重みを背負って挑んだ」と語るほどの緊張感あふれる撮影となったそうです。緻密な構成と息詰まるサスペンスが、観る者を圧倒するでしょう。⭐まとめ10月は、芸術と親子の絆を描く『おーい、応為』、将棋と人生を交錯させた重厚な人間ドラマ『盤上の向日葵』、そして狂気と予言に翻弄されるサスペンス『爆弾』と、濃厚なラインナップが揃っています。それぞれに異なるジャンルながら、観る人の心に強く響く作品です。映画解説研究者の上妻祥浩さんによる推薦でした。ゲスト:上妻祥浩/聞き手:江上浩子(RKK)
本日のテーマは「思い込み」です。政治家の発言やSNS上の情報が、根拠の不確かな“印象”や“思い込み”と結びついたとき、社会にどのような影響が生まれるのか――宮脇利充さんが具体例を手がかりに考え方の整理を提案します。🔶 奈良の鹿をめぐる発言――根拠はどこにあるのか総裁選の所見表明で取り上げられた「奈良の鹿」への迷惑行為を起点に、訪日客への規制強化を訴える発言が注目を集めました。一方で、管理当局側は“暴力行為の確認なし”との説明をしており、両者の主張に隔たりが見られます。宮脇さんは「政治家の言葉は社会に与える影響が大きい。事実関係を丁寧に示す姿勢が欠かせません」と指摘します。ポイント“見聞きした話”や“体感”が、統計や公式確認より先行すると誤解が広がりやすくなります。とくに移民・観光・治安など感情を刺激しやすいテーマでは、印象の増幅に注意が必要です。🔶 通訳不足で「不起訴」?――現場との食い違い同じ場で語られた「通訳確保が間に合わず不起訴」という趣旨の言及についても、実務側からは「そのような事例は把握していない」とする説明が紹介されました。宮脇さんは「データや事例提示なく『よく聞く』という言い方は、誤った前提を固定化しかねません」と述べ、エビデンス提示の重要性を強調します。🔵ポイント司法・警察運用には手続きの上限や代替手段が整備されているケースが多く、“印象ベース”の断定は慎重に。発言者の立場が高位になるほど、聞き手は“事実”として受け取りやすく、言葉の重みが増します。🔶 JICA「アフリカ・ホームタウン」構想と誤情報拡散国際交流を目的とした取り組みが「移民定住制度」と誤解され、自治体や機関に大量の抗議が殺到した一件も紹介。公式の否定が繰り返されても、SNS上の“確信”が抗議行動を持続させる構図が浮き彫りになりました。🔵ポイントSNSのアルゴリズムは、自分の確信を補強する情報を“集めて並べる”傾向があり、偏りに気づきにくくなります。公式ソースの一次情報(発表資料・FAQ・窓口)を確認する「逆引き」習慣が、誤拡散のブレーキになります。🔶 スポーツの国際舞台に見る“リスペクト”の回路世界陸上のように、国籍や背景を超えて互いの努力を讃える場面がある一方で、SNSでは“敵/味方”の二分法が加速しがちです。宮脇さんは「同じ“世界を見る”でも、接し方次第で態度は大きく変わる。まず落ち着くこと、そして確かめることが出発点です」と呼びかけます。🔶 今日はここを持ち帰る:思い込みに飲み込まれない5つの習慣出所を見る:誰が、いつ、どの立場で述べた情報かを必ず確認します。一次情報に当たる:記事なら元資料、発言なら全文・動画・逐語をチェックします。反証を探す:賛成の根拠だけでなく、反対の根拠も並べて比較します。数と手続き:統計・制度・運用の“仕組み”を確認し、個別体験の一般化を避けます。言葉の重み:影響力のある人の発言は“事実”として流通しやすい――受け手も発信側も自覚します。「確かめて、落ち着いて、考える。思い込みの速度を、いったん緩めましょう」(宮脇利充)🔶 まとめ政治の場でもSNSの空間でも、“印象”が“事実”を上書きすると、社会の議論は荒れやすくなります。大切なのは、根拠を確かめる手間と、違う意見に耳を澄ます余裕です。宮脇さんは「自分の中の思い込みにも光を当てたい」と結びました。出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん/聞き手:江上浩子(RKK)
🔶 テーマの背景:教育は学校の“専売特許”ではありません田中慎一朗校長は「教育は、家庭と学校が一緒に子どもを育む営みです」と強調します。市教育委員会内では先月、「家庭と学校の連携について考える会」(PTAのあり方を含む)が発足し、田中校長も委員として参加しています。第1回会合では、現役PTAや学校現場の声を交え、今後の方向性について議論が始まったところです。🔶 いまPTAに起きていること:加入率低下と“休止化”近年、PTAの加入率は下がり、学校によっては活動が休止状態という例も見られます。前提としてPTAは任意団体であり、加入の有無で子どもが不利益を受けてはならない――これは大前提です。そのうえで田中校長は、「PTAは学校と家庭をつなぐ、大切な“橋”であり続けてきました。なくなることで失われる機能は小さくありません」と指摘します。🔶 PTAの“3つの機能”:なくして気づく基盤インフラ1. 共助機能(助け合い・ピアの支え)大会遠征や活動に伴う費用の一部補助など、会費を原資に“いざ”というときの支えになります。経済的支援だけでなく、悩みや不安を分かち合うピア(同じ立場)コミュニティとして機能します。転入直後など、相談先が見つけにくい家庭の受け皿にもなります。2. 監督機能(監視ではなく“モニタリング”)学校は「子どものため」を軸に全力で動きますが、ときに“思い”が先行して硬直化することもあります。PTAは保護者代表として、行事や運営、学習・生活指導の進め方に建設的な意見を出し、学校と対等な立場で改善を促す存在です。個別の苦情が“全体の声”なのかを確かめる手続き(集約・合議)を担い、校長や学校側の相談相手(セーフティネット)になります。3. 教育機能(“教える”から“共に育てる”へ)強い一方通行の指導が通りにくい今こそ、学校と家庭が“指導の一貫性”を共有し、共に育てる体制が不可欠です。学校ツアーや校内観察、職業講話・体験(キッザニア型企画)など、PTAが“学びの場”を開発・運営することで、地域ぐるみの学びが広がります。出水南中では、PTA活動が評価され文部科学大臣表彰を受けるなど、機能の可視化にも結びついています。「PTAは“学校の下部組織”ではありません。保護者の代表として、学校と“対等に”子どもたちの最善を考えるパートナーです」(田中校長)🔶 誤解されがちなポイント:任意加入と“公平”の両立任意加入は不変:加入しないことによる不利益はあってはなりません。組織の透明性がカギ:会計・意思決定・役割分担を“見える化”することで、非加入の理由(負担感・不透明感)を減らせます。“関わりやすい小さな参加”を用意:ワンショットのボランティア枠、オンライン会合、タスク細分化で参加障壁を下げます。🔶 出水南中の実践アイデア(再現可能なヒント)学校ツアー&コメントバック:保護者目線の気づきを学校へ“伴走フィードバック”。職業講話・体験デー:保護者の専門性を学びに変換、キャリア教育の共同設計。三者パートナー会議:生徒会長×PTA会長×校長が同じテーブルで、校内課題を“協議→合意→実装”。🔶 これからのPTAデザイン:5つの提案ミッション再定義:「子の最善の利益」を憲章化し、活動を“目的ドリブン”に。役割のマイクロ化:1時間・単発・オンラインOKの“小さなジョブ”を量産。情報のオープン化:議事録・予算・効果測定を簡潔にWeb共有。合議の仕組み:個別意見→PTAで集約→学校へ提案の標準ルートを整備。評価と表彰:関わりの可視化(バッジ・感謝状・SNS紹介)でモチベーションを回す。🔶 まとめ:PTAは“なくすか/残すか”ではなく、“進化させる”田中校長は、「PTAは学校にとって“良き友人”です。時に支え、時に諫め、共に育てる。いま必要なのは“今のまま”ではなく、“これからの形”を共に考えることです」と結びました。教育は学校だけでは担いきれません。家庭と学校、そして地域が“協育”の視点で手を結ぶとき、子どもたちの学びと安心は確かなものになります。出演:熊本市立出水南中学校 校長・田中慎一朗さん聞き手:江上浩子(RKK)
🔶 熊本の渋滞、道路整備だけでは解決できない課題週末の夕方、多くの人が車の中で渋滞に巻き込まれています。熊本でも道路整備は進んでいますが、渋滞解消にはなかなかつながっていません。西環状道路の開通もありますが、便利になれば車が集中し、結果的に渋滞が増えるという“いたちごっこ”の状況です。この現実を踏まえ、熊本県は「道路を作れば解決」という発想だけでなく、民間と協力して取り組む仕組みを導入しました。🔶 熊本県渋滞対策パートナー登録制度の取り組み県は今年5月から「熊本県渋滞対策パートナー登録制度」をスタートしました。これは、時差出勤・テレワーク・公共交通の利用など、企業が主体的に渋滞解消に取り組むことを促す制度です。登録企業にはロゴマークが交付され、「渋滞対策に取り組んでいる企業」であることを示せます。8月29日時点で、264の事業者が登録済みです。ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんが率いる「さいばーとれいん」も登録第1号企業として名を連ねています。🔶 AIで見えた登録企業の傾向斉場さんは、県が公開している登録企業データをAIで独自に分析しました。その結果、製造業や事務系の職種が多く登録していることが判明しました。これらの企業は「9時始業・17時終業」といった時間帯が固定されやすいため、時差出勤やリモートワークに取り組みやすい傾向があります。一方、小売業など「顧客が来店する時間に合わせざるを得ない業種」は、登録が少ないという特徴も見られました。🔶 行政に求められること行政に対しては「車を使わない選択肢を提供してほしい」と斉場さんは語ります。熊本市内は自転車移動もしやすい一方で、自転車専用レーンや着替えの設備が少なく、ビジネス利用には課題があります。バスは本数が少なく遅れも多いため、利用者が安心して乗れる環境整備が必要です。🔶 事業者への提案 ― 配送や集客の工夫企業には「車を使わない工夫」を求めたいと斉場さん。例えば、配送時間を朝の渋滞時間帯から夜間にシフトさせる取り組みや、大型店舗での「催事渋滞」への対策として、混雑する時間帯ではなく空いている時間帯に来店した顧客へ特典を与える仕組みも考えられます。駐車場料金の差別化なども一案です。🔶 県民一人ひとりにできること渋滞に巻き込まれることは「時間とお金の損失」だと斉場さんは指摘します。車の中で動けずに費やす時間は失われた人生の一部であり、ガソリン代も無駄になります。スーパーで1円単位の節約を考えるのと同じように、「渋滞を避ける工夫」も個人が取り組むべき課題です。公共交通を使える場面では積極的に使うことも重要です。🔶 まとめ ― 渋滞解消は“あなた”から始まる熊本県の「渋滞対策パートナー登録制度」は9月いっぱい、企業の登録を受け付けています。制度に限らず、行政・企業・そして県民一人ひとりが意識を変えることで渋滞は減らせるはずです。「渋滞を減らすのは、あなた」この言葉が示すように、解決の第一歩は身近な行動の見直しから始まります。出演:ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん聞き手:江上浩子(RKK)
終戦から80年の節目を過ぎ、いま観るべき3本が揃いました。カズオ・イシグロの長編デビュー作を原作にしたミステリアスな人間ドラマ、実話ベースの深海サバイバル、そしてSNS時代の「無実の加害者」を描くサスペンス。内容の重さは異なりますが、どの作品も“いま”を考えさせてくれます。🔶遠い山なみの光(9月5日公開)👉 公式サイト:https://gaga.ne.jp/yamanami/イシグロ文学の“余白”がスクリーンでささやく。1980年代のイギリス。日本人女性(吉田羊)のもとを、疎遠だった娘が訪ねてきます。物語はそこから1950年代の長崎へと行き来し、若き日の彼女(広瀬すず)と、謎めいた女性(二階堂ふみ)との出会いが、静かな緊張を帯びてほどけていきます。原爆後の街の空気、家族や婚姻、義家族(三浦友和が印象的)との関係──“語られないこと”が語る、イシグロらしい余韻が核です。見どころ1980年代ロンドンと1950年代長崎を織り交ぜる構成が生む“捉えどころのなさ”。広瀬すず×二階堂ふみ、対照と共鳴で進む女性同士の心理線。「本当は何が起きたのか」を観客に委ねるミステリー性。上妻さん評:「丁寧に観た人ほど“あ、そうか”が積み上がります。見終わって語り合いたくなるタイプの1本です」🔶ラスト・ブレス(9月26日公開)👉 公式サイト:https://lastbreath.jp/深海の限界時間、酸素メーターは容赦なく減っていく。スコットランド沖。海底パイプラインの修理任務中、支援船のトラブルで潜水士の1人が海底に取り残されます。残り酸素はわずか──船上と海中のチームが総力戦で挑む、実話ベースの“タイムリミット・サスペンス”。事故のドキュメンタリーを手がけた監督による劇映画化で、実際の船・技術・手順に基づく描写が緊迫感を跳ね上げます。見どころ飽和潜水の手順や機材運用をリアルに再現。「最後の一呼吸」へ収斂する編集と音。海の暗闇と狭小空間が作る極度の没入感。上妻さん評:「予告だけで手汗。『助かるのか?』が全編を貫きます」🔶俺ではない炎上(9月26日公開)👉 公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/oredehanai-enjo/“加害者にされた日”は、誰の明日にも起こりうる。普通のサラリーマン(阿部寛)が、SNSで殺人犯と名指しされます。拡散、特定、断罪。正義を名乗る群衆の暴走に、生活も人間関係も崩れていく──ヒッチコック譲りの“巻き込まれ型”を、現代日本のネット空間に移植。夏川結衣、芦田愛菜の存在感も濃く、特に芦田の啖呵は物語の芯を震わせます。冤罪スリラーでありつつ、それだけでは終わらない“もう一歩深い”問いを投げてきます。見どころ阿部寛の“普通さ”が恐怖を増幅。夏川結衣・芦田愛菜ほか脇の芝居が熱い。「発信する側」の責任を観客に返す構造。上妻さん評:「SNSの怖さが主題ですが、そこに留まらない。ネタバレ厳禁、劇場で確かめてください」ゲスト:上妻祥浩/聞き手:江上浩子(RKK)
🔶 先週の続き――紹介できなかった一冊宮脇利充さんが先週紹介しきれなかった本、『女たちのポリティクス』(ブレイディみかこ著、幻冬舎新書、2021年刊)。刊行から4年が経っていますが、現代の政治状況と不思議なほど呼応する内容を含んでいます。著者ブレイディみかこさんは福岡市生まれ、イギリス在住のライターであり保育士。『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で知られ、英国社会のリアルを等身大で描く筆致で注目を集めました。*女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち (幻冬舎新書)/ブレイディ みかこ (著)🔶 フェミニズムとナショナリズムの危うい結合同書の中で注目すべき章の一つが「小池百合子とフェミニズム」です。ここでブレイディさんは、ヨーロッパにおける「フェモナショナリズム(フェミニズム+ナショナリズム)」を紹介します。イスラム過激派による女性の権利抑圧に抗議するフェミニストの声が、極右ナショナリストに利用され、排外主義へと転化する構図です。ブレイディさんは、この枠組みを日本に置き換え、「ムスリム男性」を「おっさん政治」として捉えるべきだと提起します。共通の敵を設定して攻撃することで人気を得るのは、典型的なポピュリストの手法。短期的には憂さ晴らしになっても、長期的には自らの首を絞める危険性を孕んでいると警鐘を鳴らします。🔶 日本政治と「おっさん政治」批判宮脇さんは、直近の参議院選挙を振り返り、既成政党への不満から新興勢力に投票が流れる傾向を指摘しました。ただし、そこには理念や政策の根本的な相違を見極めず、「とにかく既存政治への対抗」として票が動く危うさが潜んでいると警戒します。🔶 小池百合子都知事と関東大震災追悼文問題「小池百合子とフェミニズム」の章ではもう一つ、関東大震災(1923年)後に起きた朝鮮人虐殺の追悼文問題に触れられています。歴代東京都知事が追悼文を寄せてきた中で、小池都知事は2017年以降、一度も寄せていません。9月1日、関東大震災から102年を迎える追悼集会で、小池知事が追悼文を再び寄せるのか、あるいは8年連続で見送るのか――政治家としての姿勢が問われています。🔶 万博が映す「国の顔」さらに宮脇さんは、大阪・関西万博を訪れた体験も語りました。各国パビリオンは「お国自慢」が中心で、文化や資源の豊かさを前面に出しています。しかし宮脇さんが求める「その国の課題や矛盾」といったネガティブな情報はほとんど見られませんでした。日本館は「持続可能な社会」をテーマに、会場内の廃棄物を燃料に電力を生み出す仕組みを展示。また、隣接するカルティエがサポートするウーマンズ パビリオンも注目されており、「フェミニストも非フェミニストも訪れる価値がある」と宮脇さんは強調しました。話し手:宮脇利充(元RKKアナウンサー)/聞き手:江上浩子(RKK)
🔶 図書館で出会った一冊宮脇利充さんが図書館で偶然手に取った『女たちのポリティクス』(幻冬舎新書/2021年刊)を紹介します。刊行から4年が経ったいまも、内容は現在の政治状況に通じる示唆に富み、時間を超えて読ませる一冊だといいます。🔶 ブレイディみかことは誰か著者のブレイディみかこさんは1965年福岡市生まれ。イギリス・ブライトン在住のライターで、保育士としての経験も持ちます。代表作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(2019年)は、英国の多様性や教育現場を等身大に描いて高く評価されました。🔶 世界の女性リーダーたちが照らす政治の現在地本書は、メルケル(独)、スタージョン(スコットランド)、蔡英文(台湾)、アーダーン(NZ)など各国の女性リーダーを取り上げます。コロナ禍対応で成果を上げた国々の分析を通じ、「女性だから」ではなく「ずば抜けて優秀だから」トップに押し上げられたという、ジェンダーを超えた資質論が示されます。決断の速さや推進力、的確な優先順位付けなど、危機下で光るリーダーシップの共通項が浮かび上がります。🔶 日本のジェンダーギャップと政治分野の遅れ世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本は依然として下位に位置し、とりわけ政治分野の遅れが目立ちます。4年を経ても構図が大きく変わらない現状に、本書の示唆はなお有効だと宮脇さんは語ります。🔶 小池百合子と“フェモナショナリズム”「小池百合子とフェミニズム」の章では、政治信条の一致・不一致を超えて支持が集まる背景を「フェモナショナリズム(フェミニズム×ナショナリズム)」という概念で読み解きます。女性の権利を政治的手段として利用する動きは欧州右派の女性リーダーにも見られ、日本文脈では“おっさん政治”への反発が特定勢力を利する危うさにも注意を促します。🔶 いま読む意義――「性別より資質」を見抜く眼コロナの記憶が薄れつつある今こそ、本書は危機下の統治に必要な資質を思い出させます。女性か男性かではなく、難局で結果を出せる資質を持つ人物を選べているか――有権者の視点が問われている、と宮脇さんは結びます。話し手:宮脇利充(元RKKアナウンサー)聞き手:江上浩子(RKK)〇書籍情報書名:『女たちのポリティクス  台頭する世界の女性政治家たち』著者:ブレイディみかこ出版社:幻冬舎新書(2021年刊)URL: https://amzn.to/45Qa99y〇ジェンダー・ギャップ指数日本の順位:118位/148か国 (2025.6.12発表)内閣府男女共同参画局
お盆の時期、熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、教員生活の原点を思い起こさせる出来事を経験しました。新任時代の教え子たちが帰省に合わせて集まり、同窓会のような再会の場を設けてくれたのです。「当時の生徒たちはやんちゃで、バイクを乗り回したり、体育館の袖でタバコを吸ったりと、毎日が戦いでした」と田中校長は振り返ります。当時は新任教師として必死に指導しても、反発ばかりでわかり合えたとは言い難い日々。それでも田中校長は、教え子たちのそばを離れず、関わり続けました。🔶“先生と飲みたい”と言われた瞬間再会した教え子のひとりはこう語りました。「大人になって、一緒に飲みたい先生と、そうでない先生がいます。田中先生は会いたいと思える先生でした」この言葉に、田中校長は胸を打たれたと言います。当時は反抗期真っ只中でふてくされていた生徒たちも、大人になって改めて“そばにいてくれた存在”の意味を感じていたのです。🔶教育は結果がすぐ出ない営み田中校長は、この経験から「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を想起しました。直訳すれば「否定的能力」ですが、ここでいう“ネガティブ”とは悲観ではなく、「不確実な状態にとどまり続ける力」を意味します。もともとは英国の詩人ジョン・キーツが、劇作家シェイクスピアの作風を評する中で友人に宛てた手紙に登場した言葉です。勧善懲悪ではなく、人間の多面性や曖昧さを描ききる力。それを後世の人々が教育や医療、福祉など幅広い分野で引用するようになりました。🔶結果を急がず“揺れ”に寄り添う教育現場でも、子どもの行動や態度はすぐに変わるとは限りません。「不登校や望ましくない行動に直面すると、すぐに解決策を探し、成果を求めたくなります。しかし、うまくいく時もあれば、そうでない時もある。その“揺れ”に寄り添い、関わりを止めないことが大切です」と田中校長は語ります。これは子育てにも通じます。親は結果をゴールに据えがちですが、子どもはそれぞれのタイミングで変化します。表面には出なくても、心の中では少しずつ反応や変容が起きているのです。🔶“居続ける”ことが信頼を生む新任時代、田中校長は結果が見えなくても、反発や嘘に直面しても、生徒のそばを離れませんでした。その姿勢が、後年「信用してみようと思ったきっかけだった」という生徒の言葉につながります。「教育技術が特別にあったわけではありません。関心を持ち続け、居続けること。それが最終的に子どもの心に届いたのだと思います」と田中校長。🔶不確実性に耐える力が今こそ必要現代社会は「すぐ結果を出さなければ」という焦りに駆られやすく、うまくいかないとイライラしてしまうことも少なくありません。「だからこそ、不確実な中にとどまり続ける力が必要です。教育も子育ても、営みそのものが大切なのです」と田中校長は力を込めます。出演:熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗聞き手:江上浩子
終戦80年──「核武装論」がSNSで呼び起こした議論と2つの現実原爆投下から80年の節目を迎えた今年、熊本市の大西一史市長がSNSに投稿した一言が、日本社会に大きな波紋を広げました。核兵器をめぐる賛否両論、そしてその先に見えてきた“2つの現実”についてお伝えします。🔶発端は1つのSNS投稿です今年7月8日、アメリカのトランプ前大統領が原爆投下を正当化する発言を行いました。これに対し、大西市長はX(旧Twitter)で「核兵器をなくすことは、政治家としても人間としても、私たちの責務だと強く思っています」と投稿しました。この投稿は28万5千回以上閲覧され、多くの賛同と同時に反対意見も巻き起こしました。賛同派は「日本こそ核廃絶を訴えるべきだ」とし、反対派は「時代が変わった今、日本も核武装して国を守るべきだ」と主張しました。🔶再びの発信、そして拡大する反響です大西市長は7月21日、「あらためて言わせてもらって、よかですか?」という言葉で始まる投稿を行いました。そこでは、「日本が核兵器を持つことは、法的にも現実的にも人道的にもできません」「核に頼らない世界を実現することこそ、日本に求められる本当の強さです」と明確に表明しました。この2度目の投稿は848万回以上閲覧され、「いいね」は9万5千件、リツイートは2万8千件に達しました。現職の政治家がSNS上でここまで強い立場を公にすることは珍しく、反響の大きさを物語っています。🔶現職政治家の発信が持つ意味ですライブ配信ディレクターの斉場俊之さんは、この発言について「市長という肩書きだけでなく、一人の政治家として譲れない思いを示した。政治家が自らの言葉で立場を明確にすることは、SNS時代において非常に意義がある」と語ります。現職の政治家は支持層や立場への配慮から、賛否を分けるテーマへの発言を避けがちです。しかし今回、大西市長はその“踏み込まなさ”の壁を越えました。🔶賛否を分けた「2つの現実」です斉場さんは、大西市長の発信によって2つの現実が可視化されたと指摘します。核のない世界という理想は追い続けるべきものであること国際社会の摩擦や対立の中で、安全保障のための力を求める現実があること「誰も核兵器を“良いもの”とは思っていない。なくせるならなくしたい。ただし世界情勢の中で『持たなければ守れない』という意識も根強いです」と斉場さんは話します。🔶避けて通れない議論です核兵器をめぐる議論は、平和な日常の中では意識されにくいものです。しかし、現実的な安全保障を考えれば避けて通れないテーマです。「重要なのは、この議論が分断を生まないことです。互いを否定し合うのではなく、異なる立場からより良い答えを探ることが大切です」と斉場さんは強調します。🔶SNSが議論の場になる時代ですSNSは時に“石の投げ合い”の場になりますが、それでも多様な意見を交わす貴重な空間です。スマートフォン1つで誰もが平和について語り合える場でもあります。「小さな声でも集まれば大きな力になります。自由で多様な意見交換の中から、未来に向けた新しい答えを見つけていきたいです」と斉場さんは語ります。出演:ライブ配信ディレクター 斉場俊之聞き手:RKKアナウンサー 後生川凜
終戦80年の夏に観る、心を揺さぶる3本の話題作🔷 若き命が見た“地獄”──『長崎 ~閃光の影で~』2025年の今年、終戦から80年を迎える8月に、戦争の記憶を呼び起こす1本の映画が公開されました。『長崎 ~閃光の影で~』(8月1日公開)は、原爆投下直後の長崎で、負傷者の救援に奔走した3人の看護学生の手記をもとに描かれた実話ベースの作品です。爆心地にほど近い町で、それぞれの家族の安否もわからぬまま、命の現場で懸命に働いた10代の少女たち。助けられる命と、救えなかった命のはざまで葛藤し、泣きながらも成長していく姿が丁寧に描かれています。主演は若手実力派女優・菊池日菜子。彼女のインタビューでは、鋭い思考力と深い感受性が光っており、23歳とは思えない成熟した言葉に驚かされました。演技にもその深みが感じられます。監督は長崎出身の松本准平。自身の故郷への想いと、世代を越えて語り継がれるべき記憶を、映像として見事に再現しています。▶︎公式サイトはこちら👉 https://nagasaki-senkou-movie.jp/🔷 空港の密室で試される“ふたり”の真実──『入国審査』同じく8月1日に公開された『入国審査』は、心理的な緊迫感が支配するサスペンス映画です。舞台はトランプ政権下のアメリカ。スペインから移住を試みた若いカップルが、ニューヨークの空港で思わぬ事態に直面します。入国審査の場で突如、別室に連れて行かれた2人。そこで待ち受けていたのは、次々とプライバシーに踏み込む質問の嵐。やがて、互いに隠していた事実や本音が浮かび上がり、2人の関係性が静かに揺らいでいきます。上映時間はわずか77分。にもかかわらず、詰め込まれた内容の密度と心理描写の鋭さには圧倒されるほどです。実際に監督自身が入国審査で経験した理不尽さをもとにした作品ということで、そのリアリティにも注目が集まっています。▶︎公式サイトはこちら👉 https://movies.shochiku.co.jp/uponentry/🔷 恐竜、再び。陸・海・空で繰り広げられる壮大な冒険──『ジュラシックワールド/復活の大地』この夏、親子で楽しめる超大作として注目されているのが、『ジュラシックワールド/復活の大地』(8月8日公開)です。シリーズ通算7作目にあたる本作は、原点回帰ともいえる展開が魅力。舞台は初代『ジュラシックパーク』の島。心臓病の新薬開発に必要な恐竜のDNAを採取するという極秘ミッションを背負った女性工作員と科学者たちが、未知の恐竜世界に挑みます。注目は、陸・海・空すべての環境に生息する三大恐竜たち。特にオープニングの海中シーンは、スティーヴン・スピルバーグ監督による第1作を彷彿とさせる臨場感で、映画ファンにはたまらない演出です。主演のスカーレット・ヨハンソンが銃を構え、恐竜に立ち向かう姿も印象的。女性ヒーローの時代を象徴するようなカッコよさが、スクリーンで鮮やかに映えます。▶︎公式サイトはこちら👉 https://www.jurassicworld.jp/🔶 この夏、映画館で“記憶”と“冒険”に出会う戦争の悲劇を見つめ直す作品、現代社会を鋭く切り取るサスペンス、そしてド迫力のアドベンチャー。ジャンルは異なれど、心に残る作品が揃った8月の映画館。暑さを忘れて没入できる珠玉の3本。ぜひ、涼しい映画館でご体感ください。🎤 解説:上妻祥浩  🎙 聞き手:江上浩子
🔶静かに成立した“重大法案”通常国会の終盤、日本学術会議を特殊法人に移行する法律が2025年6月11日に成立した。自民党・公明党・日本維新の会の賛成多数によって可決されたこの法案は、2026年10月の施行をもって、戦後75年近く「国の機関」として存在してきた学術会議の在り方を大きく変える。一方でこの法改正に関するメディアの扱いは限定的であり、多くの国民がその本質に触れる機会を持たないまま、重要な節目が通過していった。🔶 端緒は“6人任命拒否”問題この問題の発端は2020年、当時の菅義偉首相が日本学術会議の会員候補105人のうち、6人の任命を拒否したことに遡る。従来の政府見解では、学術会議から提出された候補者は"形式的に"首相が任命するのが慣例とされてきた。菅首相は「総合的・俯瞰的観点から」とのみ説明し、それ以上の理由は明かさなかった。この曖昧さが「学問の自由の侵害」として多くの学者・市民の批判を呼んだ。「理由を言わないことが最大の問題。説明責任を放棄することで、学者に“忖度”を促すような空気が生まれてしまう」――と、宮脇利充さんは警鐘を鳴らす。🔶恐怖による支配構造と“政治忖度”の懸念理由なき拒否は、政府にとって都合の悪い学者を排除する“サイン”にもなり得る。中国での事例(企業関係者がスパイ罪で拘束され、その根拠が不透明なまま重罰を受けるケース)を引き合いに、宮脇さんは「恐怖による自己規制が広がる構図は、民主主義にとって非常に危険だ」と指摘する。「このままでは、学問の独立性が損なわれ、政権の顔色を伺う研究者が増えてしまう可能性すらある」🔶日本学術会議の本来の役割とは学術会議は1949年、第二次世界大戦で科学が軍事に利用された反省から誕生した。「軍事研究は行わない」という立場を堅持しつつ、政府に対して科学的知見から勧告や提言を行う、独立性の高い組織として存在してきた。「学者の役目は政府の下請けではない。人類全体の幸福のために、真理を追求し続けること」――宮脇さんの言葉は、学術会議が果たしてきた歴史的背景を物語る。🔶法改正の“実質的な中身”とは?今回の法改正では、以下の変更点が含まれている:会員数の拡大(210人 → 250人)任命主体の移行(首相から会議へ)勧告権の維持財政支援の継続一見、自由度が増したかのように見えるが、実態は異なる。新たに加わる“外部識者”による選考介入、首相による監事と評価委員の任命など、政府による影響力の強化が進む。「外から見ると良い改革のように見えるが、中身を見れば“支配構造の強化”ともとれる内容。これが将来的に学問の自由を脅かさないかどうか、慎重な監視が必要だ」🔶アカデミズムと政治の距離感学術・科学・メディアへの圧力は、海外でも見られる。宮脇さんは「アメリカのトランプ政権を例にとっても、まず最初に攻撃されるのはメディアと学問だった」と話す。「科学的知見が権力にとって“不都合な真実”であるとき、それを封じ込めようとする力が働く。それは民主主義社会の健全性を蝕む第一歩になる」“自由”の本質は、異なる意見が共存できることにある。日本学術会議の制度改正が、学問の自由と政治の距離にどのような影響をもたらすのか。いま改めて、私たち一人ひとりがこの問題に目を向けるべき時期に来ている。聞き手:江上浩子(RKKアナウンサー)話し手:宮脇利充(元RKKアナウンサー)
熊本市立出水南中学校 校長・田中慎一朗さんが語る、夏休みの本質的な価値「思ったようにいかないこと」「期待した返事が返ってこないこと」「理由もなくうまく進まないこと」。こうした“エラー”や“ノイズ”は、できれば避けたいものとして扱われがちだ。しかし田中慎一朗さんは、「むしろそれこそが人を育てる」と語る。🔶生成AIが“一番わかってくれる”という時代近年、生成AI、とりわけChatGPTに代表される対話型AIが、若者の相談相手になっているという。田中さんによれば、中高生の中には「自分のことを一番わかってくれるのは友達でも親でもなく、スマホの中のChatGPTだ」と感じる生徒が少なくないという。「音声入力で会話する中で、ChatGPTはユーザーの“好み”や“言葉の傾向”を学びながら、もっとも心地よい返答を返してくれます。ある意味、自分の分身と対話しているようなものです」AIは否定せず、評価もせず、ただ自分の言葉を“整理して返してくれる”。これは心理カウンセラーが実践する“傾聴”とよく似ているという。だからこそ、生成AIとの対話は心地よく、孤独の癒やしにもなりうる。🔶 だが、世界は“自分の枠”の外にあるただし田中さんは、そうした“心地よさ”だけに浸っている危うさにも触れる。AIとの対話はあくまで自分の枠内に閉じた世界。そこには偶然の出会いや、違和感、不快感といった“摩擦”が存在しない。「なぜアナウンサーになったのか」「なぜ教員になったのか」と問われたとき、私たちの多くは“偶然の出会い”や“予期せぬ経験”をきっかけに、人生の進路を決めている。田中さん自身も、かつて「教員なんて絶対なりたくない」と思っていたが、たまたま目にした“夏休みの宿題の表紙の海の写真”がきっかけで、海外の日本人学校で働きたいと思うようになり、教職の道へと進んだのだという。「きっかけはジグソーパズルのピースのように、何気ない日常に転がっているんです。ノイズやエラーといった思わぬ出来事の中に、人生を変える出会いがあるかもしれない」🔶 エラーは「成長の素」。ノイズは「飛び出す契機」人は誰かと関わる中でこそ、違いや不快感に出会い、自分の価値観を揺さぶられる。田中さんはそれを「怒りや悲しみといった感情は、厄介だけれども、その感情があるからこそ新たな行動が生まれる」と表現する。生成AIとの対話では、そうした感情が起こりにくい。逆に人と人とのリアルな関わりでは、“嫌な気持ち”や“衝突”もつきものだ。しかし、そこからしか得られない発見があるのだ。「感情的になることを恐れず、違和感を大事にしてほしい。それが新しい自分や価値観との出会いになるはずです」🔶夏休みこそ、“無駄に挑戦”する時間を夏休みは、自由な時間が多く、普段はできないことに挑戦できる季節。田中さんは、「だからこそ、AIの中にとどまるのではなく、あえて“無駄なこと”や“関係なさそうなこと”に飛び込んでみてほしい」と語る。「トライ&エラーとよく言いますが、エラーを恐れず、“挑戦そのもの”を楽しんでほしい。むしろエラーやノイズこそが、自分の人生を深めてくれる“宝”になる可能性があるのです」ChatGPTは確かに便利で、自分を理解してくれるように感じる。しかし、自分の世界を広げるのは、いつだって“外側”にある体験なのだ。—話し手:熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗聞き手:江上浩子
ライブ配信ディレクターでラジオパーソナリティの斉場俊之さんが、自他ともに認める「混雑嫌い」の性格を持ちながらも、2025年に開催中の大阪・関西万博を訪問。今回は「混雑が嫌いなサイバーが万博に行ってみた」というテーマで、自身の体験を振り返りながら、万博の魅力や注意点を語った。🔶 並ばない万博は本当か?実際は…「並ぶのが大嫌い」と話す斉場さんは、比較的空いているとされる7月の平日を選んで万博会場へ。朝9時の入場を目指し、開場30分前に到着したものの、入場ゲートを通過するまでに約40分、全体で70分ほどの待機時間がかかったという。「日陰がほとんどないので、帽子と水分は必須」と語るように、炎天下での待機には注意が必要だ。一方、11時や12時の入場枠では比較的スムーズに入場できる傾向もあるとのこと。ただし、万博では入場時間帯ごとに入場者が制限されるため、早い時間に入ると比較的空いた状態で会場内を回れるというメリットもある。事前予約は2ヶ月前と7日前の抽選による2回のチャンスのみで、最大2つのパビリオンしか予約できない。また、当日や3日前からの先着順予約はほとんど埋まっているのが現状だ。「結局、並ぶことを前提に楽しんだほうがストレスが少ないかもしれません」と斉場さんは率直な感想を述べた。🔶 「大屋根リング」は圧巻。回り方のコツも伝授「まず目を引くのが、世界最大級の木造建築とされる『大屋根リング』です」と語る斉場さん。全長約2キロメートルのリング型構造物は、万博会場の中心を囲み、その上に登れば会場全体を一望できる。「私はその大きさに圧倒されて全部は回れませんでしたが、建築物としての迫力は本当に圧巻でした」また、会場は日陰が少ないため、こまめな水分補給と帽子の着用が欠かせない。給水ポイントや自動販売機も設置されているので、活用しながら無理のない行動を心がけたい。🔶 並ばないコツは「空いているところに入る」「私は基本的に、行列が少ないパビリオンを見つけたら迷わず入るスタイルでした」と語る斉場さん。人気施設に固執せず、そのとき空いている場所を優先することで、館内で過ごす時間を最大化し、暑さ対策にもなるという。特に、聞き慣れない国や中小の国々のパビリオンに足を運ぶことで「こんな国があるんだ」と多くの学びが得られたと語る。また、複数の国が共同出展している「コモンズ館」では、次々と多国の文化に触れられる“プチ世界旅行”のような体験ができたという。「それぞれのパビリオンに入ると、その国ならではの香りが漂ってくるんです。お香だったり食べ物の香りだったり。五感で楽しめるのが万博の醍醐味です」🔶「映像だけでは物足りない」というリアルな感想今回の万博では、多くのパビリオンで映像コンテンツが主軸となっていた印象を受けたという。「炎天下で並んで、入ってみたら映像を見るだけ。私は映像に関わる仕事をしているからこそ、もっとリアルな体験や本物に触れる仕掛けがあってほしかった」実際、イタリア館のように本物の美術品が展示されていたり、音楽やダンスなどの“体験”ができる施設には来場者が多く集まっていた。「みんな目が肥えてるんだと思います。本物やリアルな体験に価値を感じているのがよくわかりました」🔶 現実と夢が繋がる万博に企業館では未来的な展示が多く並び、「こんな未来が来るといいな」と思えるような内容もあるが、斉場さんは「夢の提示だけでなく、今の課題とどう繋がるのかを示してほしい」と感じたという。「交通問題や地域の課題に取り組む立場として、もう少し現実に寄り添った内容があると、未来への説得力が増すのではと思いました」🔶 地理の教科書を片手に、万博へ最後に斉場さんは「地理の教科書を読んでから行くと、より楽しめるかもしれません」と締めくくった。万博はまさに“生きた世界地図”。混雑が苦手という自分の殻を破って飛び込んだことで、多くの新しい発見や学びを得られた今回の体験。読者にとっても、万博の楽しみ方を見つけるヒントとなるはずだ。🔵ライブ配信ディレクター:斉場俊之さん🔵聞き手:江上浩子
解説:上妻祥浩(映画解説研究者)/聞き手:江上浩子🔶 長崎の街を舞台に描く静かな再生の物語『夏の砂の上』(7月4日公開)👉 公式サイトはこちら:https://natsunosunanoue-movie.asmik-ace.co.jp/舞台は坂の町・長崎。事故で幼い息子を失い、妻(松たか子)とも別居中となった主人公・小浦治(オダギリジョー)は、仕事も失い、人生の袋小路に立たされています。そんな彼のもとに現れるのが、妹・阿佐子(満島ひかり)の娘である姪・優子(髙石あかり)。事情があり、彼女を一時的に預かることになったことで、思いがけない二人暮らしが始まります。この作品は、坂や階段、路面電車など長崎の“日常の風景”が丁寧に描かれており、観光地としての長崎ではなく、“暮らしの長崎”を体感できるのが魅力です。共演は森山直太朗(元同僚・陣野)、高橋文哉(優子のバイト先の先輩・立山)、篠原ゆき子(陣野の妻・茂子)、光石研(元同僚・持田)ほか、豪華なキャスト陣が脇を固めます。静かに心を動かされる再生のドラマ。この夏、ぜひ劇場で体験したい一作です。🔶沖縄の記憶に刻まれた実話――『木の上の軍隊』(7月25日公開)👉 公式サイトはこちら:https://happinet-phantom.com/kinouenoguntai/本作の原作は、故・井上ひさし氏が沖縄戦の実話をもとに舞台化しようとしていた未完の作品。その構想を引き継ぎ、舞台劇として完成・上演され、今回ついに映画化されました。物語の中心は、沖縄・伊江島でガジュマルの木の上に逃れた二人の兵士。戦争が終わったことを知らぬまま、二年間、木の上でサバイバル生活を続けていたという驚くべき実話がベースです。主演は堤真一(本土出身の上官)と山田裕貴(地元出身の兵士)。この対比は、本土と沖縄の関係性を象徴的に映し出し、それぞれの葛藤や希望が丁寧に描かれます。特に印象的なのは、故郷を戦場にされた地元兵・慎平の「日常を取り戻したい」という切実な思い。その叫びは、熊本地震の記憶とも重なり合い、観る者の心を深く揺さぶります。実際に2人が潜んでいたガジュマルの木は、今も伊江島に残されています。🔶伝説の爆破スリラー、50周年で蘇る!『新幹線大爆破』(7月19日よりリバイバル上映)👉 公式サイトはこちら:https://daiichieigeki.com/3891/7月19日(土)〜27日(日)、本渡第一映劇(天草)にて、1975年公開の伝説的サスペンス映画『新幹線大爆破』が35mmフィルムでリバイバル上映されます!時速80kmを下回ると爆発する爆弾が仕掛けられた新幹線。そのスリリングな展開と社会派ドラマの融合は、今なお色褪せない傑作です。犯人役を演じるのは名優・高倉健。上映料金はワンコイン500円。この貴重な機会、ぜひ天草でお楽しみください。🔶 編集後記今月は、“日常”をどう描くか、どう再構築するかが共通のテーマとして浮かび上がる作品が揃いました。長崎の坂と心の坂道を重ねた『夏の砂の上』本土と沖縄の分断を静かに問う『木の上の軍隊』昭和の列車に込められた社会の緊張感『新幹線大爆破』ぜひそれぞれの劇場で、心に残る“今月の一本”を見つけてみてください。
2020年7月4日未明、熊本県南部・球磨地方を襲った記録的な豪雨により、球磨川流域では50名の命が奪われ、住宅やインフラにも甚大な被害が及んだ。あれから間もなく5年。地域住民は生活再建や事業の立て直しに懸命に取り組んできた。そんな中、「川辺川ダム建設」が静かに、しかし着実に再び動き出している。元RKKアナウンサーであり、かつてから川辺川ダム問題に関心を寄せてきた宮脇利充さんは、「なぜ今、ダム建設が再び進んでいるのか」「果たしてその必要性は本当にあるのか」と問いかける。🔶かつて白紙撤回されたはずのダム計画が…川辺川ダム建設計画は、2008年に当時の熊本県知事が「白紙撤回」を表明し、実質的に中止された。しかし2020年の水害を受けて、今度は「流水型(穴あき型)ダム」として再び構想が浮上した。これは、治水に特化し、通常は水をためず、豪雨時のみ水量を調整するという形式だ。2027年度には本体基礎の掘削工事に着手し、2035年の完成を目指すという。完成すれば日本最大級、あるいは「最後の大型ダム」となる可能性もある。しかし、この計画には大きな疑問が残る。🔶「同じ豪雨が再来しても、ダムでは救えない」――市民調査が突きつけた事実市民グループや専門家による調査では、2020年の豪雨で亡くなった方々の多くが、球磨川本流ではなく支流の氾濫や山腹崩壊による土砂災害によって命を落としていたことが判明している。また、豪雨の降雨域は川辺川上流とは大きく離れており、仮にそこにダムが存在していたとしても、「命は救えなかった可能性が高い」と指摘されている。それにもかかわらず、国土交通省と熊本県はこれらの調査結果に十分な応答を示さないまま、ダム建設を推し進めているのが現状だ。🔶「手続きの裏側」で進んだ国の戦略さらに注目すべきは、国交省が旧計画(多目的ダム)の廃止手続きを正式に行わなかったことだ。白紙撤回後も10年以上計画を「寝かせ」、新たなダムを「継続案件」と位置づけることで、環境アセスメント(影響評価)を回避。結果として、スピーディに新計画を推進できる道筋をつけた。これにより2023年には土地収用法に基づく「事業認定申請」まで進んでおり、建設に反対する地権者の意向にかかわらず、土地の使用が可能となる段階にまで来ている。🔶「声を上げづらくなった」地域の空気感2008年の白紙撤回時には県内外で大きな議論と盛り上がりを見せた川辺川ダム問題。しかし2020年以降、報道も少なく、地域の関心も盛り上がっているとは言いがたい。その背景には、国交省が「ダムがあれば人吉市周辺の浸水範囲は6割減少した」と発表したことがある。多くのメディアはこれをそのまま報じ、「ダムがあれば救われた命があったかもしれない」という空気が広まった。「声を上げづらくなった」というのは、かつて環境保全を訴えていた住民や団体の率直な気持ちだ。自分たちの行動が、あの被害と関係していたのでは――という悔恨のようなものが、声を押し殺している。🔶今、本当に必要なのは何か?「穴あきダム」であっても、川の自然環境は大きく変わる。山の崩壊や支流の氾濫が主因であることがわかっている今、約4900億円とも言われる巨額の予算を「山林の再生」や「地域の防災力強化」に投じる方が、よほど効果的ではないか――。宮脇さんはそう訴える。「川辺川ダム建設が進む今こそ、再び私たち一人ひとりが考えるべき時です。『本当に命を守る方法とは何か』を、冷静に、丁寧に、向き合っていく必要があるのではないでしょうか」ゲスト:宮脇利充さん(元RKKアナウンサー)聞き手:江上浩子
🔵「褒める」とは何か――熊本市立出水南中学校校長・田中慎一朗さんに聞く「褒める」という行為は、子どもの成長や自信を育む上で重要だと広く言われています。しかし、その褒め方や意図次第では、子どもの心に届かないどころか、逆効果になることさえある――。熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、「褒めるとは何か」について、私たち大人が改めて考える必要があると語ります。🔶褒めることは「伸ばす前提」になっていないか私たちはしばしば、「褒めて伸ばす」という表現を使います。これは一見、子どもの良さを引き出すポジティブな姿勢に見えます。しかし田中校長は、この「伸ばす前提」の褒め方に疑問を投げかけます。「褒めることで、子どもに何かを期待したり、伸ばそうとしたりする気持ちが先行してしまうと、子どもは『自分が本当に評価されているわけではなく、大人の意図でコントロールされようとしている』と感じることがあるのです」特に中学生は、その鋭い感受性で大人の意図を敏感に察知します。無理に褒めようとしたり、表面的な言葉で取り繕うと、むしろ反発を招くこともあるのです。🔶大切なのは「その子の努力や変化を見つける視点」田中校長は、子どもの頑張りに気づくためには、日頃からの観察と関心が不可欠だと強調します。「たとえば、45分間の授業でずっと座っていられたこと。それは、動きたくて仕方がない子にとっては大きな努力の結果なんです。その小さな変化を見つけて、『頑張ったね』『今日は落ち着いて聞けていたね』と声をかける。それが本当の意味での褒める、認めるということだと思います」褒めることは、点数や目に見える成果だけで判断するのではなく、その子の努力や成長に寄り添うこと。それが子どもにとっての「自分は見てもらえている」という安心感につながります。🔶外発的動機づけと内発的動機づけ――どちらを育むか「100点を取ったらご褒美をあげる」という外発的動機づけは、短期的には効果的かもしれません。しかし田中校長は、長い目で見れば「内発的動機づけ」、つまり子ども自身の内側から湧き上がる興味や意欲こそが重要だと言います。「知識を得ることが面白い、もっと知りたい、学ぶって楽しい――そう思えるような関わりを、日常の会話や学校の授業の中で積み重ねていく必要があります」褒めることはそのための手段であり、目的ではないのです。🔶大人自身が「リスペクト」をもって接する姿勢を田中校長自身、「自分ができないことを、子どもができている場面に出会うことがある」と言います。そんなときこそ、「すごいね、それどうやってるの?」と素直に尋ね、リスペクトを示すことが大事だと話します。「褒めるために無理にポイントを探すのではなく、その子の良さ、強みを認め、リスペクトする。そうした積み重ねが、子ども自身の自信や次の挑戦への意欲につながると思うのです」🔶普段からの関わりが、褒める力になる最後に田中校長は、こう結びます。「子どもたちは、大人の言葉や視線をとてもよく見ています。だからこそ、日々の関わりの中でその子を知り、小さな変化や努力に気づいて声をかけてほしい。それが子どもたちの心に届く“褒める”ということなんです。ぜひ、子どもたちと対話を重ね、認める言葉をかけてあげてください」「褒める」とは、子どもを育てるだけでなく、大人自身の成長を促す営みでもあるのかもしれません。出演熊本市立出水南中学校校長・田中慎一朗さん聞き手:江上浩子
🔵ニュース515+plusのコメンテーターとしておなじみの斉場俊之さんが、思いがけず「自転車レースデビュー」を果たしました。きっかけは、日々の生活における渋滞ストレスからの脱却。気軽に利用できるシェアサイクル「チャリチャリ」から始まった自転車生活は、ついに海を越えて長崎県・壱岐島でのレース出場へとつながりました。🔶「ツール・ド・壱岐島」――島全体がサーキットになる一大イベント斉場さんが挑んだのは、6月8日に開催された「ツール・ド・壱岐島(壱岐サイクルフェスティバル)」。1989年から続く歴史ある大会で、今年で第37回を迎えました。一般市民も参加できる本格的なレースであり、当日は島内の道路が完全封鎖され、交通規制のもと自転車だけが走行を許されるという、まさに“島がサーキットになる”特別な一日です。全長50キロのコースを、斉場さんは見事1時間52分で完走。「スポーツとは無縁の人生だった」という本人の言葉からも、その達成感はひとしおだったようです。🔶島全体で支え合う応援と安全の仕組み「沿道には、消防団の方や島民の皆さんがずっと立って応援してくださっていて、あの声援がなかったら完走はできなかったかもしれません」スタート前は緊張で心拍数が上がっていたという斉場さんですが、島民の温かな応援に心が落ち着き、走るリズムを取り戻せたと語ります。競技中に沿道の人々に手を振り返す余裕もあったとのこと。地域をあげてのこの大会は、競技者だけでなく、島全体が一つの空気で包まれる“お祭り”でもあります。🔶52歳の挑戦「成長するって、まだできるんだ」今回のレースに向けて、斉場さんは1か月間にわたるトレーニングを積んだそうです。坂道の多いコースに備え、菊池や山鹿の山道でアップダウンを意識した走行を重ね、「少しずつ速くなっていく自分」に驚きと喜びを感じたと言います。「この年になると“成長”ってなかなか実感しづらい。老化の方が気になる年齢だけれど、努力すれば成果は出る。何かを始めるのに年齢は関係ないと実感できました」年齢を重ねてなお、新しい挑戦の中で自分をアップデートできるという体験は、きっと多くの人の背中を押すでしょう。🔶自転車の楽しさ、そして危険性への意識元々は渋滞回避のための移動手段だった自転車。斉場さんは、今回の経験を通してその「楽しさ」自体に目覚めたと言います。「サーキット化された道路を、ノンストップで全力で漕ぐ。普段の生活では決してできない体験でした。気持ちよかったですね」一方で、スピードが出る分、危険性への注意も必要だと強調します。レース中には転倒者も出ており、日常の走行では特に、交通ルールの遵守やヘルメットの着用といった安全対策が重要であると呼びかけました。🔶きっかけは「渋滞が嫌」でも、人生は思わぬ展開へ「まさか自分がレースに出るなんて思ってもいなかった」という斉場さん。だからこそ、「自分には向いていない」と決めつけず、興味がわいたことには一歩踏み出してみてほしいと語ります。「うまくいかなかったら途中でやめてもいい。でも、やってみると案外自分に合っていることってあるんです。僕は来年もまた壱岐に行って、2回目の挑戦をしたいと思っています。よかったら皆さんも一緒に行きませんか?」斉場さんの挑戦は、「変化を恐れずに踏み出す勇気」が新たな景色を見せてくれることを教えてくれます。次はあなたの番かもしれません。
映画解説研究者の上妻祥浩さんを迎え、6月に公開される注目の日本映画3本をご紹介いただきました。いずれも異なるテーマを持ちながら、観る者に深い感動と気づきを与えてくれる力作です。🔶吉田修一原作の大作『国宝』――歌舞伎の美と闇に迫る壮大な人間ドラマ(6月6日公開)👉 公式サイトはこちら https://kokuhou-movie.com/まず紹介されたのは、6月6日公開の映画『国宝』です。直木賞作家・吉田修一の同名小説を原作とした大作で、吉沢亮と横浜流星という豪華なW主演が話題となっています。物語は、長崎のヤクザの親分の息子として生まれた少年が、偶然にして歌舞伎の才能を見出され、上方歌舞伎の大御所(渡辺謙)に引き取られ育てられるところから始まります。そこには、すでに渡辺の実の息子(横浜流星)もおり、2人は兄弟のように芸を磨き合い、互いに切磋琢磨していきます。厳しい芸の世界で生きる苦悩と誇り、そして「どちらが主役を張るのか」といった葛藤が描かれ、物語は歌舞伎の美しい舞台裏とともに、深い人間ドラマとして展開します。吉沢亮は「この作品は自分の代表作になった」と語っており、1年半に及ぶ徹底した役作りで歌舞伎役者としての所作や発声を習得。本作のクオリティの高さを物語っています。また、寺島しのぶ演じる渡辺謙の妻も見逃せません。歌舞伎の家に生まれた彼女ならではの迫真の演技で、複雑な家族関係を繊細に表現しています。🔶『フロントライン』――未知のウイルスと闘った医療現場の記録(6月13日公開)👉 公式サイトはこちら https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/続いては、6月13日公開の『フロントライン』。2020年初頭、新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」を舞台に、医療関係者たちの奮闘を描いた実話ベースの作品です。未知のウイルスに直面した最前線の混乱と葛藤を、リアルな描写で映し出しており、当時の緊張感と命を守る責任の重さを改めて思い出させてくれます。出演は小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、窪塚洋介など、いずれも実力派揃い。ヒーロー出身の俳優も2人おり、安心感と説得力を同時に感じさせてくれます。手探りの中で築かれた対応策が、後の日本の感染症対策に繋がっていく過程は、今だからこそ落ち着いて振り返ることのできる貴重な映像資料でもあります。🔶『囁きの河』――水害を越えて希望を描く熊本発の物語(6月27日 熊本ピカデリーで先行公開)👉 公式サイトはこちら https://sasayakinokawa-movie.com/最後に紹介されたのは、2020年に熊本県南部を襲った豪雨災害を背景にした映画『囁きの河』。6月27日に熊本ピカデリーで先行公開される本作は、実際の被災地・人吉球磨を舞台に、全編オールロケで撮影された「熊本の手作り映画」として注目を集めています。主演は人吉市出身の俳優・中原丈雄。水害で家族や大切なものを失った人々が、それでも希望を見出しながら明日へと歩んでいく姿を、静かに、そして力強く描いています。上妻さんは「自身の親戚も人吉におり、幼い頃から何度も被災してきた」と語り、この作品がいかに現実に根ざしたリアリティを持っているかを強調しました。また、俳優・中原丈雄の出演で作品に深みと落ち着きをもたらしています。現在も水害の爪痕に苦しむ方がいる中で、本作は「再生」や「共に生きる」ことの大切さを優しく伝えてくれます。熊本に暮らす方々にとっては、特に胸に響く作品となるでしょう。3本の作品に共通するのは、人間の弱さと強さを見つめ、そこから生まれる希望を丁寧に描いている点です。どれも一過性の話題ではなく、観た人の心に残る、深い余韻をもたらす作品ばかり。気になる一本があれば、ぜひ劇場で味わってみてはいかがでしょうか。(聞き手:江上浩子)
「国選弁護制度は崩壊するのか」——。これは熊本県弁護士会会報の4月号に掲載された、板井俊介弁護士による寄稿記事のサブタイトルである。衝撃的ともいえるこの言葉は、いま国選弁護制度が直面している厳しい現実を鋭く突いている。本稿では、熊本県を例に挙げながら、国選弁護制度の現状とその背景にある構造的な課題について解説する。🔶 国選弁護士の「担い手」が足りない国選弁護士とは、経済的に私選弁護士を依頼できない被疑者・被告人に対し、国の費用で付けられる弁護人のことだ。憲法第37条にも明記されている「刑事被告人の防御権」を保障するために欠かせない制度である。しかし熊本県では、こうした国選弁護を引き受ける弁護士の登録者数が激減している。例えば、休日当番制を維持するためには、最低でも月に40人の弁護士が必要だが、2024年度の登録者はぎりぎりの40人。2025年度はさらに減ると見られている。日中にも国選案件が入るため、登録弁護士たちは常に複数の案件を同時に抱え、過密な業務に追われている。🔶 報酬の低さが直撃登録者の減少には、報酬の低さという大きな要因がある。たとえば熊本市から離れた八代や人吉、天草の警察署へ接見に行く場合、往復で4時間以上を要し、接見の待機時間を含めれば「半日~1日がかり」の業務になる。しかし、報酬は1回の接見につきおよそ2万円。しかも、被疑者段階での接見には上限があり、最大で8万円しか支払われない。起訴後の接見には一切の報酬が出ない。否認事件ともなれば、接見の回数や時間は増加する上、被害者との示談や賠償対応などで弁護士の業務負担はさらに重くなる。それでも報酬は据え置かれたままなのだ。さらに外国人被疑者の場合は、通訳の確保やスケジュール調整といった、通訳人との調整業務まで弁護士が一手に担うことも少なくない。🔶 弁護士数は増えているのに…不思議に思うかもしれない。熊本県の弁護士数は20年前の約100人から、現在では約300人へと3倍に増えている。それにもかかわらず、なぜ国選弁護の担い手は増えないのか?その理由は、事件数が増えていない一方で弁護士が増加したため、1人あたりの収入は事実上半減しているという経済的事情がある。弁護士の多くは個人事業主であり、生活のためにはより利益の見込める案件を優先せざるを得ない。国選事件のような低報酬・高負担の業務は敬遠されがちなのだ。国選弁護の報酬を支払っているのは、法テラス(日本司法支援センター)である。ところが、その職員には検察庁からの出向者も多く、弁護士側の実情が十分に理解されていないという指摘もある。また、法テラスが報酬単価を改定するには、法務省を通じて財務省から予算を確保する必要があるが、防衛費が倍増する一方で、司法予算にはなかなか資金が回らないのが現実である。🔶 地方と都市の“司法格差”国選弁護の担い手不足は、地方ほど深刻だ。東京、大阪、名古屋といった大都市圏や、札幌・仙台・広島・高松・福岡といった高裁所在地の都市では比較的制度が維持されているが、それ以外の地方都市では熊本と同様の危機に直面している。新人弁護士の就職先においても地域差が顕著である。2025年に誕生した新人弁護士1564人のうち、約67%が東京に就職。秋田や高知など、8つの地方弁護士会では就職者がゼロだった。熊本でもわずか8人にとどまる。これは“司法の一極集中”を意味しており、地方の弁護体制が今後さらに弱体化していく恐れがある。🔶 この制度が崩れれば、冤罪が増える国選弁護制度の存在意義を忘れてはならない。それは「すべての人に、適切な法的防御を受ける権利を保障する」という、司法の根幹に関わるものである。これは憲法第37条にも明記された国民の権利である。そしてこの制度が機能しなくなれば、もっとも深刻な影響を受けるのは経済的弱者であり、過去の冤罪事件の多くも、そのような立場に置かれた人々が巻き込まれてきた。適切な弁護活動がなされるためには、適正な報酬制度が欠かせない。これは単に「ボランティア精神」に頼っていい問題ではない。🔶 志ある弁護士が活動を続けられる社会に板井弁護士は、国選弁護の現場で得た経験こそが、民事事件にも活かされるとし、自身も今後も関わっていきたいと述べている。その志を支えるには、「制度としての持続可能性」が必要であり、いままさにその基盤が揺らいでいる。地方における弁護士不足と国選弁護人の減少は、「他人事」ではない。国民一人ひとりの司法アクセスを守るためにも、制度の再設計と資源配分の見直しが求められている。解説:宮脇利充(元RKKアナウンサー)聞き手:江上浩子
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