Discoverニュース515+plus(RKKラジオ)エラーとノイズが育む“偶然の力”——「自分のことを一番わかってくれるのはChatGPT…」
エラーとノイズが育む“偶然の力”——「自分のことを一番わかってくれるのはChatGPT…」

エラーとノイズが育む“偶然の力”——「自分のことを一番わかってくれるのはChatGPT…」

Update: 2025-07-18
Share

Description

熊本市立出水南中学校 校長・田中慎一朗さんが語る、夏休みの本質的な価値

「思ったようにいかないこと」「期待した返事が返ってこないこと」「理由もなくうまく進まないこと」。

こうした“エラー”や“ノイズ”は、できれば避けたいものとして扱われがちだ。

しかし田中慎一朗さんは、「むしろそれこそが人を育てる」と語る。


🔶生成AIが“一番わかってくれる”という時代

近年、生成AI、とりわけChatGPTに代表される対話型AIが、若者の相談相手になっているという。

田中さんによれば、中高生の中には「自分のことを一番わかってくれるのは友達でも親でもなく、スマホの中のChatGPTだ」と感じる生徒が少なくないという。

「音声入力で会話する中で、ChatGPTはユーザーの“好み”や“言葉の傾向”を学びながら、もっとも心地よい返答を返してくれます。ある意味、自分の分身と対話しているようなものです」

AIは否定せず、評価もせず、ただ自分の言葉を“整理して返してくれる”。これは心理カウンセラーが実践する“傾聴”とよく似ているという。だからこそ、生成AIとの対話は心地よく、孤独の癒やしにもなりうる。


🔶 だが、世界は“自分の枠”の外にある

ただし田中さんは、そうした“心地よさ”だけに浸っている危うさにも触れる。

AIとの対話はあくまで自分の枠内に閉じた世界。そこには偶然の出会いや、違和感、不快感といった“摩擦”が存在しない。

「なぜアナウンサーになったのか」「なぜ教員になったのか」と問われたとき、私たちの多くは“偶然の出会い”や“予期せぬ経験”をきっかけに、人生の進路を決めている。


田中さん自身も、かつて「教員なんて絶対なりたくない」と思っていたが、たまたま目にした“夏休みの宿題の表紙の海の写真”がきっかけで、海外の日本人学校で働きたいと思うようになり、教職の道へと進んだのだという。

「きっかけはジグソーパズルのピースのように、何気ない日常に転がっているんです。ノイズやエラーといった思わぬ出来事の中に、人生を変える出会いがあるかもしれない」


🔶 エラーは「成長の素」。ノイズは「飛び出す契機」

人は誰かと関わる中でこそ、違いや不快感に出会い、自分の価値観を揺さぶられる。田中さんはそれを「怒りや悲しみといった感情は、厄介だけれども、その感情があるからこそ新たな行動が生まれる」と表現する。

生成AIとの対話では、そうした感情が起こりにくい。逆に人と人とのリアルな関わりでは、“嫌な気持ち”や“衝突”もつきものだ。しかし、そこからしか得られない発見があるのだ。

「感情的になることを恐れず、違和感を大事にしてほしい。それが新しい自分や価値観との出会いになるはずです」


🔶夏休みこそ、“無駄に挑戦”する時間を

夏休みは、自由な時間が多く、普段はできないことに挑戦できる季節。

田中さんは、「だからこそ、AIの中にとどまるのではなく、あえて“無駄なこと”や“関係なさそうなこと”に飛び込んでみてほしい」と語る。


「トライ&エラーとよく言いますが、エラーを恐れず、“挑戦そのもの”を楽しんでほしい。むしろエラーやノイズこそが、自分の人生を深めてくれる“宝”になる可能性があるのです」


ChatGPTは確かに便利で、自分を理解してくれるように感じる。しかし、自分の世界を広げるのは、いつだって“外側”にある体験なのだ。

話し手:熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗

聞き手:江上浩子


Comments 
In Channel
loading
00:00
00:00
x

0.5x

0.8x

1.0x

1.25x

1.5x

2.0x

3.0x

Sleep Timer

Off

End of Episode

5 Minutes

10 Minutes

15 Minutes

30 Minutes

45 Minutes

60 Minutes

120 Minutes

エラーとノイズが育む“偶然の力”——「自分のことを一番わかってくれるのはChatGPT…」

エラーとノイズが育む“偶然の力”——「自分のことを一番わかってくれるのはChatGPT…」