終戦80年──「核武装論」がSNSで呼び起こした議論と2つの現実
Description
終戦80年──「核武装論」がSNSで呼び起こした議論と2つの現実
原爆投下から80年の節目を迎えた今年、熊本市の大西一史市長がSNSに投稿した一言が、日本社会に大きな波紋を広げました。核兵器をめぐる賛否両論、そしてその先に見えてきた“2つの現実”についてお伝えします。
🔶発端は1つのSNS投稿です
今年7月8日、アメリカのトランプ前大統領が原爆投下を正当化する発言を行いました。これに対し、大西市長はX(旧Twitter)で
「核兵器をなくすことは、政治家としても人間としても、私たちの責務だと強く思っています」
と投稿しました。
この投稿は28万5千回以上閲覧され、多くの賛同と同時に反対意見も巻き起こしました。
賛同派は「日本こそ核廃絶を訴えるべきだ」とし、反対派は「時代が変わった今、日本も核武装して国を守るべきだ」と主張しました。
🔶再びの発信、そして拡大する反響です
大西市長は7月21日、「あらためて言わせてもらって、よかですか?」という言葉で始まる投稿を行いました。
そこでは、
「日本が核兵器を持つことは、法的にも現実的にも人道的にもできません」
「核に頼らない世界を実現することこそ、日本に求められる本当の強さです」
と明確に表明しました。
この2度目の投稿は848万回以上閲覧され、「いいね」は9万5千件、リツイートは2万8千件に達しました。
現職の政治家がSNS上でここまで強い立場を公にすることは珍しく、反響の大きさを物語っています。
🔶現職政治家の発信が持つ意味です
ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんは、この発言について
「市長という肩書きだけでなく、一人の政治家として譲れない思いを示した。政治家が自らの言葉で立場を明確にすることは、SNS時代において非常に意義がある」
と語ります。
現職の政治家は支持層や立場への配慮から、賛否を分けるテーマへの発言を避けがちです。しかし今回、大西市長はその“踏み込まなさ”の壁を越えました。
🔶賛否を分けた「2つの現実」です
斉場さんは、大西市長の発信によって2つの現実が可視化されたと指摘します。
- 核のない世界という理想は追い続けるべきものであること
- 国際社会の摩擦や対立の中で、安全保障のための力を求める現実があること
「誰も核兵器を“良いもの”とは思っていない。なくせるならなくしたい。ただし世界情勢の中で『持たなければ守れない』という意識も根強いです」と斉場さんは話します。
🔶避けて通れない議論です
核兵器をめぐる議論は、平和な日常の中では意識されにくいものです。しかし、現実的な安全保障を考えれば避けて通れないテーマです。
「重要なのは、この議論が分断を生まないことです。互いを否定し合うのではなく、異なる立場からより良い答えを探ることが大切です」と斉場さんは強調します。
🔶SNSが議論の場になる時代です
SNSは時に“石の投げ合い”の場になりますが、それでも多様な意見を交わす貴重な空間です。スマートフォン1つで誰もが平和について語り合える場でもあります。
「小さな声でも集まれば大きな力になります。自由で多様な意見交換の中から、未来に向けた新しい答えを見つけていきたいです」と斉場さんは語ります。
出演:ライブ配信ディレクター 斉場俊之
聞き手:RKKアナウンサー 後生川凜