Ep.753 SpaceX、評価額8000億ドル報道を否定──マスク氏「資金調達の事実はない」(2025年12月11日配信)
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本日は2025年12月7日、日曜日です。週末のテック業界を、ある「桁外れの数字」が駆け巡りました。SpaceXの企業価値が、なんと8000億ドル(日本円にして約120兆円)に達するという報道です。
事の発端は、BloombergやWall Street Journalが12月5日から6日にかけて報じたニュースでした。これらのメディアは、「SpaceXが評価額8000億ドルを前提とした株式の売出し(公開買付け)を準備しており、これはOpenAIの5000億ドルを抜いて世界最大の未上場企業になる動きだ」と伝えました。もしこれが事実なら、テスラに匹敵する規模の巨大企業が、非上場のまま存在することになります。
しかし、この報道に対し、イーロン・マスクCEOは即座に反応しました。彼は自身のX(旧Twitter)で「不正確だ」と一蹴。「SpaceXは長年にわたりキャッシュフローがプラスであり、資金調達の必要はない」と述べ、今回の報道にあるような「資金集め」を否定しました。
マスク氏の説明によると、現在行われているのは定期的な「自社株買い(buyback)」や従業員向けの株式売却機会の提供であり、外部から巨額の資金を調達する増資ラウンドではないとのことです。また、市場関係者の間では、実際の取引価格は8000億ドルよりも低い、5600億ドル(約85兆円)程度になるのではないかという冷静な見方も出ています。それでも、前回(2025年半ば)の4000億ドルから短期間で価値が急騰していることに変わりはありません。
この背景には、衛星通信「Starlink」の驚異的な成長があります。マスク氏が強調したように、来年のSpaceXの収益においてNASAなどの政府機関からの収入は5%以下に過ぎず、大半はStarlinkの商業収益が占める見込みです。かつて「ロケット屋」だったSpaceXは、今や世界規模の「通信インフラの巨人」へと変貌を遂げたのです。
一部では2026年後半にIPO(新規株式公開)が計画されているとの観測もありますが、マスク氏は以前から「火星移住計画が軌道に乗るまでは上場しない」と公言しています。8000億ドルという数字が独り歩きした今回の騒動は、投資家たちのSpaceXに対する熱狂と、その実態の計り知れなさを浮き彫りにしたと言えるでしょう。




