Ep.756 Microsoft、AIエージェントに「月給」を請求?──AWSが持つ冷静な「プランB」(2025年12月11日配信)
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本日は2025年12月8日、月曜日です。Microsoftが、ソフトウェアビジネスの根幹を揺るがすかもしれない、ある「過激な実験」を検討していることが明らかになりました。
The Informationのスクープ記事および周辺情報を統合すると、Microsoftは企業向けに提供する「AIエージェント」に対して、人間と同じような「サブスクリプション料金」を課すことを計画しています。つまり、あなたの会社がAIエージェントを1つ導入する場合、それは単なるツールではなく、「1人のデジタル従業員」としてカウントされ、その分の月額ライセンス料(Seat)を支払う必要がある、という考え方です。
なぜ、Microsoftはこのような奇策に出ようとしているのでしょうか? その背景には、AIの進化がもたらす「ジレンマ」があります。もしAIエージェントが優秀になりすぎて、企業の業務を完全に自動化してしまったらどうなるでしょうか。企業は人間の従業員を減らすかもしれません。すると、これまでMicrosoftのドル箱だった「従業員数に応じたOfficeのライセンス料」が激減してしまいます。この「共食い(カニバリゼーション)」を防ぐために、Microsoftは「AIエージェントにも給料(ライセンス料)を払わせる」ことで、人間が減っても収益が維持できるモデルを作ろうとしているのです。
一方で、クラウドの王者AWS(Amazon Web Services)は、これとは対照的なアプローチをとっています。記事ではこれを「Fallback Plan(フォールバック・プラン)」と表現しています。これは、もしAIエージェントが期待通りに普及しなかったり、企業が導入に失敗したりした場合でも、AWSがダメージを受けないための「プランB」です。AWSは、AIアプリそのもので賭けに出るのではなく、どんなAIが流行ろうとも必要となる「計算資源(コンピュート)」や「ストレージ」といったインフラ部分を確実に押さえることで、リスクを回避しつつ収益を確保しようとしています。
「AIを新たな労働力として課金したい」Microsoftと、「AIがどう転んでもインフラ屋として生き残る」AWSのフォールバック・プラン。このスタンスの違いは、2026年のAIビジネスが「夢」から「現実的なコスト対効果」を問われるフェーズに移る中で、企業のIT予算配分に大きな影響を与えることになりそうです。




