Ep.754 Netflix、ワーナーを827億ドルで買収──“世紀の愚策”か、覇権の完成か(2025年12月11日配信)
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本日は2025年12月8日、月曜日です。週末、メディア業界を揺るがすビッグニュースが飛び込んできました。Netflixが、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの映画・テレビスタジオ部門およびHBO事業を、総額827億ドル(約12兆円)で買収すると発表したのです。
Web上の情報を統合すると、この契約は先週金曜日に合意に至りました。Netflixはワーナーが持つ「ハリー・ポッター」や「DCコミックス」、「ゲーム・オブ・スローンズ」といった超強力なIP群と、HBOというプレステージ・ブランドを手に入れます。一方で、CNNなどのニュース部門やスポーツチャンネルは切り離され、「Discovery Global」として別会社化される見通しです。
しかし、提示されたThe Informationの記事を含め、専門家の見方は冷ややかです。なぜこの買収が「827億ドルの大失策(Blunder)」と呼ばれるのでしょうか。理由は大きく3つあります。
第一に、規制当局との全面戦争です。ただでさえ巨大なNetflixが、ハリウッドの歴史あるスタジオを飲み込むことに対し、エリザベス・ウォーレン上院議員は「独占禁止法の悪夢」と断じました。トランプ政権下の司法省がこの統合を承認するかは不透明で、巨額の違約金が発生するリスクがあります。
第二に、企業文化の衝突です。データ至上主義のNetflixと、クリエイター主導の伝統を持つHBOやワーナーの融合は、水と油と言われてきました。過去にAOLやAT&Tがワーナーの買収に失敗したように、今回も優秀な人材が流出し、ブランド価値が毀損される恐れがあります。
第三に、財務へのインパクトです。Netflixはこれまで、自社制作コンテンツへの投資で成長してきましたが、今回は巨額の負債を抱え込むことになります。映画館オーナー協会からも「映画産業への脅威」として激しい反発を受けており、既存の映画ビジネスのエコシステムを維持しながら、配信への移行を進めるという難しい舵取りを迫られます。
「コンテンツの王」を目指すNetflixの野望は、果たして吉と出るか、それとも「勝者の呪い」となるか。2026年のメディア業界は、この巨大な統合作業の行方に振り回されることになりそうです。




