Ep.763 Accenture、Anthropic特化の専門部隊を設立──3万人のエンジニアが切り拓く「AI実運用の時代」(2025年12月11日配信)
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企業のAI活用が、「とりあえず試してみる」段階から「本気で使い倒す」段階へと大きくシフトしようとしています。世界的なコンサルティングファームであるAccentureと、生成AI「Claude」の開発元であるAnthropicは2025年12月9日、パートナーシップの大幅な拡大を発表しました。
この提携の目玉は、Accenture内に新たに設立される「Accenture Anthropic Business Group」です。Accentureはこの取り組みのために、なんと約3万人の自社プロフェッショナルに対し、Anthropicの技術に関する専門トレーニングを実施します。これはClaudeに関連する人材育成としては過去最大規模の展開となります。
なぜ、これほどの規模の人員が必要なのでしょうか? 背景にあるのは、多くの大企業が直面している「PoC(概念実証)の壁」です。多くの企業がAIの実験を行っていますが、セキュリティへの懸念や、既存システムとの統合の難しさから、全社的な本番運用になかなか踏み切れていません。特に金融や医療、公共サービスといった規制の厳しい業界では、AIの回答の正確性や安全性が厳しく問われます。
そこでAccentureは、Anthropicが持つ「Constitutional AI(憲法的AI)」──つまり、あらかじめ定められた原則に従って安全に振る舞うAI技術と、自社が持つ業界ごとの深い知見を組み合わせることで、この壁を突破しようとしています。
また、今回の提携では「ソフトウェア開発の変革」も大きなテーマです。Accentureのエンジニアたちは、AIコーディングアシスタントである「Claude Code」を業務に全面的に採用し、ソフトウェアの開発スピードや品質を根本から底上げすることを目指します。これにより、クライアント企業に対しても、より迅速なシステム構築を提供できるようになるでしょう。
興味深いことに、Accentureはつい数日前にもOpenAIとの提携強化を発表したばかりです。特定のAIベンダーに依存せず、クライアントのニーズに合わせて最適なAIモデルを組み合わせる「マルチLLM戦略」こそが、今後のエンタープライズAIの勝敗を分ける鍵になりそうです。




