第566回:AI・デジタル活用を 浸透させる7つのポイントとは?『The Digital Culture Challenge』レポート紹介
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AI・デジタル活用の浸透を阻む壁。その正体と乗り越えるための7つのポイント
AIをはじめとするデジタル技術の活用が企業の競争力を左右する時代になりました。しかし、「新しいツールを導入したものの、なかなか社内に浸透しない」「経営層と現場の温度差が大きい」といった悩みを抱える経営者やWeb担当者の方も多いのではないでしょうか。
実は、その問題は日本だけでなく、世界中の多くの企業が直面している共通の課題です。今回は、グローバルなコンサルティング企業キャップジェミニの調査レポート『The Digital Culture Challenge』を参考に、デジタル変革を成功させるために本当に重要なこと、特に組織の「文化」に焦点を当てて、具体的な7つのポイントを解説していきます。
デジタル変革を阻む最大の壁は「企業文化」
多くの組織がデジタル技術を導入しても、変革が定着しない最大の理由は、技術そのものではなく「企業文化」にあります。レポートによると、調査対象となった約1500社の企業が、変革の最大の障壁として文化的な問題を挙げています。
最新のAIツールを導入したとしても、それを使う人々の意識や行動様式、組織全体の価値観が変わらなければ、本当の意味での変革は起こりません。大切なのは、新しい技術を迎え入れるための土壌、つまり「デジタル文化」を組織の中に育んでいくことです。
経営層と現場の間に横たわる「認識のギャップ」
このレポートで特に興味深いのは、経営層と現場従業員の間に存在する「認識のギャップ」です。多くの場合、経営層は「うちはデジタル化が進んでいる」と考えていても、現場の従業員は「全く使いやすい状況になっていない」「仕組みが整っていない」と感じています。
このギャップが存在する限り、部門間のデータ連携や協力体制はうまく機能しません。会社として一丸となって新しいアイデアを実行していくためには、まずこの認識のズレを埋め、全員が同じ方向を向く必要があります。
デジタル文化を組織に根付かせる「7つの習慣」
では、具体的にどのような文化を育てていけばよいのでしょうか。レポートでは、デジタル変革を成功させるために重要な7つの要素が挙げられています。これらは、単なるスローガンではなく、日々の業務に落とし込むべき「習慣」と捉えると分かりやすいでしょう。
1. 顧客志向:顧客が本当に喜ぶことは何か?
まず基本となるのが、全ての変革を「顧客のため」という視点から始めることです。自分たちがどう変わるかではなく、「どうすれば顧客にもっと価値を提供できるか」を起点に考えることで、デジタル活用の目的が明確になります。
2. イノベーション:新しい挑戦を許容する空気
特にAIのような変化の速い分野では、「まず試してみる」という姿勢が不可欠です。失敗を恐れず、新しいことに挑戦できる心理的安全性が確保されているかどうかが、変化への対応力を大きく左右します。この1、2年の遅れは、ウェブサイト制作が出始めた頃とは比較にならないほどのビハインドになりかねません。
3. データ駆動:経験や勘を「言語化」し共有財産に
「データ駆動」と聞くと、難しい分析をイメージするかもしれません。しかし、ここで重要なのは、個人の経験や勘といった「暗黙知」を、誰もが理解できる「言語化」された情報、つまり「形式知」に変えていくことです。熟練の職人が無意識に行っている工夫を動画に撮り、なぜそうするのかを一緒に解き明かしていく。そうして得られた情報を蓄積・共有することが、組織全体の能力向上に繋がります。
4. オープンさ:誰もが自由に意見を言える環境
年齢や役職に関係なく、誰もがフラットに意見を交換できる環境は、新しいアイデアの源泉です。「これを言ったら自分が担当させられるから言わない」といった空気が蔓延していては、貴重な気づきが埋もれてしまいます。まずは、どんな意見も一度受け止めてみるという姿勢が大切です。
5. 共同:部門間の壁を越えた協力体制
営業、製造、カスタマーサポートなど、顧客と接点を持つ各部門は、それぞれ異なる貴重な情報を持っています。しかし、部門ごとの目標(KPI)が協力の妨げになることも少なくありません。会社全体として最適な成果を出すために、部門間でスムーズに連携し、情報を共有できる仕組みが求められます。
6. デジタル思考:「まずデジタルで楽にできないか」と考える
繰り返し行う作業に直面したとき、「これまで通り手作業でやった方が早い」と考えるのではなく、「一度仕組み化すれば、後がずっと楽になるのではないか」と考える習慣を持つことが重要です。最初は少し手間がかかるかもしれませんが、その一度の苦労が、将来の大きな生産性向上に繋がります。
7. 機敏性:変化に素早く適応する
これはビジネスの世界でよく言われる「アジリティ(Agility)」に近い考え方です。完璧な計画に固執するのではなく、状況の変化に応じて柔軟に方針を転換し、迅速に行動することが求められます。まず小さな単位で実行し、そこから得られたフィードバックを元に素早く学習・修正を繰り返していく。こうしたアプローチが、不確実性の高い時代を乗り切る上で不可欠な要素となります。
成功企業から学ぶ、変革を推進する具体的なアクション
レポートでは、デジタル変革の最前線を走る企業が、これらの文化を醸成するために具体的な施策を講じていることも紹介されています。
- 評価制度の見直し:結果だけでなく、新しいことに挑戦したか、他部門と協力したかといった「プロセス」も評価対象に加える。
- 経営層のロールモデル化:経営層自らがデジタルツールを使いこなし、変革への強い意志を行動で示す。
- ボトムアップの促進:現場の意見を積極的に吸い上げ、経営判断に活かす仕組みを作る。
- スキルアップへの投資:研修や外部パートナーの活用を通じて、従業員のデジタルリテラシー向上を支援する。
これらは、評価制度という分かりやすい部分から手をつけることで、組織全体へのメッセージにもなります。
中小企業こそ、今が変革のチャンス
「大企業だからできることだ」と感じるかもしれません。しかし、むしろ意思決定のスピードが速く、組織の規模が小さい中小企業の方が、こうした文化変革は進めやすい側面があります。
大切なのは、完璧を目指していきなり全てを変えようとするのではなく、まずは従業員へのアンケートや、評価項目を少し見直すなど、できることから一歩ずつ着実に進めていくことです。
技術はあくまで手段です。本当に重要なのは、その技術を使いこなし、会社の成長に繋げるための「人」と「文化」です。今回の7つのポイントを参考に、自社の文化を見つめ直すきっかけにしていただければ幸いです。
Web活用の「最初の一歩」に関するよくあるご質問
- Q1: なぜ高価なデジタルツールを導入しても、社内に浸透しないのでしょうか?
- A1: 技術やツールの問題ではなく、企業の「文化」や「行動意識」が変わっていないことが最大の原因と考えられます。新しいツールを受け入れ、活用するための土壌となる企業文化を見直さない限り、本当の意味での変革は定着しません。
- Q2: デジタル化を進めたいのですが、経営層と現場の社員とで意識がズレている気がします。どうすれば良いですか?
- A2: 意識のギャップは多くの企業が抱える問題です。まず経営層がデジタル活用のロールモデルとなり、現場の意見を積極的に取り入れるボトムアップの仕組みを作ることが重要です。双方がオープンに話せる文化を醸成することから始めましょう。
- Q3: デジタル変革を成功させるために、具体的にどんなことから始めれば良いですか?
- A3: まずは「顧客志向」や「データに基づいた判断」「新しいことへの挑戦を許容する雰囲気」など、7つの重要な要素を意識することから始めましょう。全てを一気に行うのではなく、KPIの見直しや、プロセスを評価する制度の導入など、できることから着手するのが効果的です。
- Q4: 社員から新しいアイデアや意見が出てこないのですが、どうすれば活発になりますか?
- A4: 意見をオープンに言える「心理的安全性」の確保が不可欠です。「意見を言ったら担当させられる」といった風潮をなくし、どんな意見もまずは受け止める姿勢を経営層が示すことが大切です。年齢や経験に関わらず、フラットに議論できる場を作りましょう。
- Q5: 部署間の連携がうまくいかず、データや情報が共有されません。何か解決策はありますか?
- A5: 部署ごとに目標が異なり、協力すると自部署の評価が下がるような仕組みになっていないか見直す必要があります。会社全体で協力することのメリットを示し、部署横断の目標設定や、協力姿勢そのものを評価する仕組みを取り入れることが有効です。
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