第558回:顧客は”新規参入”をどう見ているか?知名度ゼロからのWeb戦略、新規事業で最初に考えるべきこと
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はじめに:知名度ゼロからWebで認知されるには
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。今回は、多くの方から寄せられる「知名度がゼロの状態から、どうやってWebサイトで認知してもらえばいいのでしょうか?」というご質問にお答えします。この悩みは、これまでWeb活用にあまり取り組んでこなかった方、あるいは新しく事業を始めたり、特定の地域に進出したりする方など、様々な状況で発生する、非常に重要かつ難しい問題です。この記事では、この課題に対してどのように考えていけばよいのか、その道筋を解説していきます。
新規参入の難易度を測る「2つの軸」
この問題を考える上で、業種や業界で細かく分類するのではなく、大きく2つの軸で整理すると、次の一手が見えてきます。
軸1:顧客は「新しい会社」をどう見ているか?
まず大切なのが、あなたの業界のお客様が、新しい会社の参入をどのように捉えているかという観点です。プラスに感じるのか、マイナスに感じるのか、あるいは特に何も感じないのか。これを把握することが重要です。
例えば、長く続いていることが信頼につながる業界は数多く存在します。特に、住宅や車のような高額な商品、あるいはアフターサービスが重要になる商材では、「長く続いていること」自体が安心材料になります。このような業界では、新規参入のハードルは非常に高くなるため、攻め方を工夫する必要があります。
一方で、お客様が業界に何らかのブレイクスルーを求めているような状況であれば、新規参入がプラスに働くこともあります。まずはご自身の事業が参入しようとしている市場のお客様が、新規参入に対してどれくらい抵抗感を持っているのか、あるいは歓迎しているのかを客観的に評価してみてください。もし抵抗感が強い市場であれば、既存のサービスとは異なる、まったく別の商品として見せるような戦略が必要になるかもしれません。
軸2:どれだけ「比較検討」されやすいか?
もう一つの軸は、提供するサービスがどれだけ比較検討しやすいかという点です。最も分かりやすいのは、価格やスペックといった定量的な情報で示せるサービスです。これらは比較が容易なため、新規参入であっても、優れたコストパフォーマンスを提示できればお客様に選ばれる可能性は高まります。
しかし、化粧品のように法律によって表現できることが限られていたり、サービスの価値が数値で示しにくい定性的なものであったりする場合、話は複雑になります。このような市場で新規参入するには、数値以外の部分、例えばブランドイメージや世界観といった情緒的なアプローチが求められるため、一般的に難易度は上がり、多くの予算が必要になります。
事業戦略の根幹から見直す勇気
まずは「勝てる場所」を探す
これら2つの軸でお客様の事情を分析した結果、参入難易度が非常に高いと判断された場合。例えば、定性的な価値が重視され、全国の競合と比較される上に、広告PRに多額の予算が必要になる、といった状況です。もし自社の体力ではそれが難しいのであれば、理想を言えば「勝てる場所を探す」という視点に切り替えることをお勧めします。
事業の準備を進め、いざ「売るぞ」という段階でマーケティング戦略の軌道修正を行うのは簡単なことではありません。しかし、マーケティングやセールスは、商品開発の段階から始まっています。自分たちの予算や人的リソースといった制約の中で、どこに参入すべきかを特定し、そこに向けて商品を開発していかなければ、正直なところ手詰まりになる可能性が高いのです。
Webだからといって魔法のテクニックがあるわけではありません。最終的には商品やサービスの魅力が全てです。もし魅力が伴わないままプロモーションを強化すれば、お客様が実際に使った際の期待とのギャップが広がり、リピーターはつかず、結果的に延々と新規顧客を獲得し続けなければならない状況に陥ってしまいます。
理想的なのは、ランチェスター戦略で言うところの「橋頭堡(きょうとうほ)」を築けるような場所を見つけることです。つまり、「特定のターゲットの、特定のニーズ」に対してはナンバーワンになれる、というような小さなシェアを取れる場所を見つけ出し、そこから事業を展開していくのが賢明です。
Webは「魔法の杖」ではなく「フィードバック装置」
Webの世界では、競争力のない商品でも売り方次第で売れた時代が過去にはありました。しかし、今や誰もがWebを活用するのが当たり前になり、お客様は簡単に商品を比較検討できます。そんな時代に「知名度ゼロ」という問いの核心は、Web上のテクニック論ではなく、「いかに商品サービスを磨き、攻めやすい市場を見つけるか」という事業戦略そのものにあります。
では、Webをどう活用するのか。それは、市場からのフィードバックを得るためのツールとして使うのです。例えば、Webサイトのアクセス解析を見て、お客様がどのページに興味を持っているのかを探る。あるいは、いくつかのパターンの広告文を試して、どれが最も市場に響くのかをテストする。ゼロから始める段階では、最初から大きな成果を求めるのではなく、お客様の反応を見ながら「どうすればもっと受け入れられるか」を試す場としてWebを活用し、少しずつ売上を立てていくイメージを持つことが大切です。
ローカル戦略のすすめ
地域に根差すことの強み
予算が限られている場合、全国を対象としたネット販売は非常に厳しい戦いになります。そこで有効なのが、ローカル(地域)に絞るという考え方です。地域密着であれば、やれることはたくさんあります。
お客様の立場からすれば、無数の選択肢の中から「これを選ぶべき理由」を早く提示してほしい、というのが本音でしょう。「自分も納得でき、周りも納得させられる理由」を提供できれば、新規参入でも十分にチャンスはあります。その「理由」は、Webの外にも存在します。地元のボランティア活動への参加や、タウン誌への掲載といった地域での活動は、特に対象年齢層が上がるほど、企業の印象を大きくプラスに押し上げてくれます。
私自身のお客様が地域の地場産業の方々が多いということもありますが、事業の立ち上げやすさという点では、確実にローカルに分があると感じています。将来的に全国展開を目指す場合でも、まずは地盤を固め、商品のブラッシュアップを図るためにローカルから始めるのは、非常に有効な戦略です。
やってはいけないこと:強引な営業とデジタルタトゥー
事業を成長させたい一心で、強引な営業手法に頼るのは避けるべきです。特に、新規事業の立ち上げ期に「とにかく数を打って反響を取る」というスタイルの営業代行会社などから提案を受けることがあるかもしれません。
しかし、注意すべきは、契約に至らなかった大多数の人々に与える「悪印象」です。「昔、あの会社から強引な電話がかかってきた」といった記憶は、後からボディブローのように効いてきます。今や、不審な電話番号はすぐにネットで検索され、悪い評判は「デジタルタトゥー」として残り続けます。最悪の場合、社名付きでSNSに投稿されるリスクさえあります。
無理な営業で短期的な売上を立てるよりも、お客様に受け入れられる形で着実にファンを増やしていく。この姿勢が、長期的な成長の鍵を握ります。
まとめ:事業の成功は「戦う場所」で決まる
新規事業を始めることは、社会に新しい価値を生み出す素晴らしい挑戦です。しかし、良い商品を持っていても、売り方や市場の選び方が悪ければ成功は難しいのが現実です。
私たちのような専門家にご相談いただく際も、ご自身のビジネスモデルが、客観的なフレームワーク、例えば3C分析(Customer, Competitor, Company)やSWOT分析などを用いて整理され、「なぜこの市場で勝てるのか」という戦略が明確になっていると、より具体的で質の高いサポートが可能になります。
Webのテクニックに頼る前に、まずは自分たちの事業展開そのものを見つめ直す。それが、知名度ゼロから成功を掴むための、最も確実な一歩となるはずです。
このPodcastが解決できるFAQ
- Q1. 知名度が全くない状態から、ネットで認知してもらうにはまず何をすればよいですか?
- A1. まず、自社が参入する市場の特性を顧客目線で分析することが重要です。新規参入への抵抗感は強いか、他社と比較されやすいかを見極め、自社の強みが活かせる「勝てる場所」を探すことから始めましょう。
- Q2. 新規参入が難しい業界(高額商品など)では、どのようなWeb戦略が有効ですか?
- A2. 真正面から戦うのではなく、見せ方を変えて別の商品としてアピールするなどの工夫が必要です。また、いきなり全国展開を目指すのではなく、地域に密着したローカルな活動で信頼を築き、地盤を固める戦略が有効な場合があります。
- Q3. Web集客を成功させるために、テクニックよりも重要なことは何ですか?
- A3. Web上のテクニックよりも、顧客に「選ばれる理由」となる商品・サービスの魅力そのものが重要です。Webは、その魅力を伝えたり、顧客からのフィードバックを得てサービスを改善したりするためのツールとして活用する視点が成功の鍵となります。
- Q4. 予算や人員が限られている場合、Webでどうやって認知度を上げていけばよいですか?
- A4. 限られたリソースを最大限に活かすため、戦う市場を絞り込むことが不可欠です。例えば、全国対象ではなくローカルに絞ることで競合が減り、Web以外の施策と組み合わせた効果的なアプローチが可能になります。
- Q5. 新規事業を始める際、Webはどのように活用するのが最も効果的ですか?
- A5. Webを単なる販売チャネルと捉えるのではなく、市場の反応を見るための「フィードバック装置」として活用することが効果的です。サイトのアクセス解析や広告の反応を見ることで、市場に受け入れられるサービス開発に繋げることができます。
配信スタンド
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代表取締役・コンサルタント 中山陽平
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