Ep.730 孤高の巨人が歩み寄る?──AWSとGoogleが手を組んだ「AWS Interconnect」の衝撃(2025年12月4日配信)
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ラスベガスで開催中のAWS re:Invent 2025から、非常に驚きのある、そして業界の転換点とも言えるニュースが飛び込んできました。あの「クラウドの巨人」AWSが、競合であるGoogle Cloudと手を組み、両社のクラウドを直接つなぐ新サービス「AWS Interconnect - multicloud」を発表したのです。
これまで、AWSといえば「All-in on AWS」、つまりすべてのシステムをAWSに集約することを推奨する姿勢が目立っていました。他社のクラウドとつなぐことは技術的には可能でしたが、複雑なVPN設定や、物理的なデータセンターでの回線引き込みなど、数週間かかる面倒な手続きが必要でした。いわば、AWSは「高い城壁」の中にユーザーを囲い込む戦略をとっていたわけです。
しかし、今回の発表はその城壁に自ら扉を作ったようなものです。 新しい「AWS Interconnect」を使えば、エンジニアは管理画面から数回クリックするだけで、AWSとGoogle Cloudの間に高速な専用線を開通させることができます。これまでは物理的な作業を含んで数週間かかっていた開通作業が、なんと「数分」で完了するというのですから、現場のエンジニアにとっては魔法のような話です。
なぜ今、AWSは競合との接続を容易にしたのでしょうか? 背景には「AI」と「障害対策」という二つの切実な事情があります。現在、AI開発の現場では「データはAWSにあるが、学習に使いたい特定のAIモデルはGoogleにある」といった状況が日常茶飯事です。データを自由に、高速に移動させたいという顧客の熱烈な要望を無視できなくなったのです。 また、今年10月に発生した大規模なクラウド障害も影響しているでしょう。一つのクラウドに依存するリスクを避けるため、複数のクラウドを併用する「マルチクラウド」が企業の当たり前の選択肢となり、AWSもその現実を受け入れ、インフラとしての利便性を取る道を選んだと言えます。
なお、現在はGoogle Cloudとの接続がメインですが、2026年にはMicrosoft Azureとの接続も計画されています。クラウド事業者が互いに敵対する時代から、ユーザーのために協力し合う「相互接続」の時代へ。今回のニュースは、その象徴的な出来事として長く記憶されることになるでしょう。




