Ep.735 Amazonの逆襲──「30分配送」で挑むクイックコマースの覇権争い(2025年12月4日配信)
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「翌日配送」の常識を作ったAmazonが、今度は「数十分」の世界を取り戻すために動き出しました。The Informationの報道によると、Amazonは米国で、食料品や日用品を最短30分程度で届ける新しい超高速配送サービスの計画を進めています。
かつてAmazonには「Prime Now」という即配サービスがありましたが、これをメインのアプリに統合した経緯があります。なぜ今、再びこの領域に注力するのでしょうか。その背景には、InstacartやDoorDash、Uber Eatsといった「ギグ・エコノミー型」プラットフォームの脅威的な進化があります。 これらのサービスは、当初はレストランの食事やスーパーの生鮮食品を運ぶだけでしたが、現在では洗剤から充電ケーブル、化粧品に至るまで、あらゆるものを「今すぐ」届けるインフラに変貌しています。消費者が「明日でいいや」と思うものはAmazonで買いますが、「今すぐ欲しい」と思う電池や牛乳はDoorDashで頼む──この行動様式の定着により、Amazonは最も購買頻度の高い「日常の接点」をライバルに奪われつつあるのです。
報道によれば、Amazonの新しいサービスは、同社が所有する高級スーパー「Whole Foods Market」の店舗網や、都市部に配置された物流拠点を活用すると見られています。巨大倉庫からトラックで運ぶ従来のモデルではなく、消費者の生活圏に食い込んだ小型拠点(MFC)から、機動力のある配送網を使って一気に届ける戦略です。
これは単なるスピード競争ではありません。顧客がアプリを開く回数、つまり「マインドシェア」を巡る戦いです。もしAmazonがこの即配領域で覇権を握り返せなければ、Eコマースの帝王としての地位が揺らぎかねない。そんな危機感が、この巨人を再び「超即配」という泥臭く激しい戦場へと駆り立てているようです。




